働き方改革推進支援助成金とは何か?活用事例とともに解説
昨今、大企業や中小企業に関わらず、多くの企業が「働き方改革」に取り組むことを求められています。働き方改革に取り組む上で積極的に活用を検討したいのが「働き方改革推進支援助成金」です。取り組んでいる内容によっては、申請することで多額の助成を受けられることがあります。この記事では、働き方改革推進支援助成金の概要から各コースの詳細、申請手続きの流れなどを紹介します。
- 働き方改革推進支援助成金とは何か
- 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
- 働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)
- 働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)
- 働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)
- 働き方改革推進支援助成金申請手続きの流れ
- まとめ
働き方改革推進支援助成金とは何か
働き方改革推進支援助成金とは、働き方改革に取り組む企業が国から受け取れる助成金のことです。下記の4コースに分かれているため、自社が取り組む働き方改革の内容に応じたコースを選ぶ必要があります。
・労働時間短縮・年休促進支援コース
・勤務間インターバル導入コース
・労働時間適正管理推進コース
・団体推進コース
令和4年の交付申請期限は2022年の11月30日までです。各コースの詳細については、次章以降で紹介します。
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
労働時間短縮・年休促進支援コースは、時間外労働削減・休暇促進に向けた取り組みが対象となる助成です。詳しい対象事業主や申請要件、助成額、活用事例について順番に紹介します。
なおこのコースは申請が集中したため、2022年10月4日に受付が停止されている状況です。
労働時間短縮・年休促進支援コースの対象事業主
労働時間短縮・年休促進支援コースの支給対象は、下記のすべての条件を満たす中小企業の事業主です。
(1)労働者災害補償保険を適用している
(2)厚生労働省が定める成果目標1~4(後述)のいずれかに取り組んでいる
(3)年5日の年次有給休暇を取得できる環境の整備に取り組んでいる
ここで言う「中小企業」とは「資本または出資額」「常時使用する労働者」のいずれかが下記条件を満たしている企業のことを指します。なお業種により条件が異なるため注意しましょう。
小売業(飲食店を含む):5,000万円以下または50人以下
サービス業:5,000万円以下または100人以下
卸売業:1億円以下または100人以下
その他:3億円以下または300人以下
労働時間短縮・年休促進支援コースの申請要件
前述した(2)の成果目標は以下の4つです。少なくともいずれか1つを選びましょう。
(A)36協定における時間外・休日労働時間数の縮減
(合計時間数を月60時間以下、または月60時間を超え月80時間以下に設定)
(B)年次有給休暇における計画的付与制度の新規導入
(C)時間単位の年次有給休暇制度の新規導入
(D)特別休暇の新規導入(病気、教育訓練、ボランティア、新型コロナウイルス関連、不妊治療などの中から1つ以上)
なお上記とは別に、3%以上の賃金引き上げを目標に加えることも可能です。また取り組みの内容も具体的に定められています。下記7つのいずれかに該当する取り組みが助成対象です。
(a)労務管理担当者への研修
(b)労働者への研修、周知、啓発
(c)外部専門家からのコンサルティング
(d)就業規則・労使協定などの整備
(e)人材確保に向けた取り組み
(f)労務管理を目的とするソフトウェア・ハードウェアの整備
(g)業務効率化を目的とするハードウェアの整備(パソコン、タブレット、スマートフォンを除く)
労働時間短縮・年休促進支援コースの助成額
助成額は成果目標の達成状況に応じて決まります。具体的には以下2項目のうち、低い金額が支給される助成額です。
(1)選んだ成果目標の上限額+賃金加算額
(2)経費の合計額×補助率3/4
なお成果目標ごとに上限額が決まっています。成果(B)の上限額は50万円、成果(C)・(D)の上限額は25万円です。成果(A)や賃金引き上げに関しては、達成状況によって細かく変わります。詳細は厚生労働省のWebサイトをご確認ください。
労働時間短縮・年休促進支援コースの活用事例
アナログ方式の労務管理をソフトウェアで効率化する場合、この助成金を活用できます。労務管理ソフトウェアの導入費用を助成金によりカバーしつつ、従業員の負担軽減を実現できるでしょう。
しかし労務管理ソフトウェアは種類が多く、どれを選ぶべきか分からず頭を抱える企業も少なくありません。労務管理ソフトウェアを導入する場合は「アイミツSaaS」の活用がおすすめです。人気のSaaS(クラウドサービス)を多数紹介しており価格や機能・特徴など、さまざまな要素で比較できます。労務管理ソフトウェアを導入する際は、以下の記事を参考にしてください。
労務管理システムとは?機能と導入のポイントも紹介【2022年最新版】
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働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)
勤務間インターバル導入コースは、勤務と勤務の間に一定の休息時間を設ける取り組みが対象となる助成です。勤務間インターバルを設けることで、従業員の健康保持・負担軽減を図りたい企業に適しています。詳しい内容について以下で紹介します。
勤務間インターバル導入コースの対象事業主
勤務間インターバル導入コースでは、下記条件のすべてを満たす中小企業の事業主が対象です。なお中小企業の定義は、労働時間短縮・年休促進支援コースと同様です。
(1)労働者災害補償保険を適用している
(2)36協定を締結しており、過去2年間で月45時間を超える時間外労働の実態がある
(3)年5日の年次有給休暇を取得できる環境の整備に取り組んでいる
(4)下記いずれかの事業場を持つ
[1]勤務間インターバルを導入していない
[2]9時間以上の勤務間インターバルを導入しているが、適用者が半数以下
[3]9時間未満の勤務間インターバルを導入している
勤務間インターバル導入コースの申請要件
勤務間インターバル導入コースでも、成果目標の達成に向けて取り組む必要があります。ただし、成果目標は(4)の事業場によって異なる点に注意が必要です。それぞれ下記のように決まります。
[1]に該当する場合:労働者の半数超が対象となる勤務間インターバルの新規導入
[2]に該当する場合:勤務間インターバルの対象を労働者の半数超に拡大
[3]に該当する場合:2時間以上延長し、9時間以上の勤務間インターバルを労働者の半数超に適用
また労働時間短縮・年休促進支援コースと同様に、3%以上の賃金引き上げを目標に加えることも可能です。助成対象となる取り組みも同様で、下記7つのいずれかに該当する必要があります。
(a)労務管理担当者への研修
(b)労働者への研修、周知、啓発
(c)外部専門家からのコンサルティング
(d)就業規則・労使協定などの整備
(e)人材確保に向けた取り組み
(f)労務管理を目的とするソフトウェア・ハードウェアの整備
(g)業務効率化を目的とするハードウェアの整備(パソコン、タブレット、スマートフォンを除く)
勤務間インターバル導入コースの助成額
「新規導入の有無」および「休息時間数」に応じて助成の上限額が決まります。具体的には下記のとおりです。
■新規導入を含む場合
休息時間数が9時間以上11時間未満:上限額80万円
休息時間数が11時間以上:上限額100万円
■適用範囲の拡大または時間延長のみの場合
休息時間数が9時間以上11時間未満:上限額40万円
休息時間数が11時間以上:上限額50万円
また賃金引き上げを成果目標に加えている場合、助成額がプラスされます。実際に引き上げた人数・引き上げ率によって上乗せ金額が変わることを覚えておきましょう。
勤務間インターバル導入コースの活用事例
勤務間インターバルの導入時には、シフト管理機能を持つ勤怠管理システムが役立ちます。勤怠管理システムの導入費用をこの助成金でカバーすれば、初期投資を抑えつつ効率的に勤務間インターバルを導入できるでしょう。
勤怠管理システムを導入する場合も「アイミツSaaS」の活用がおすすめです。さまざまな勤怠管理システムを比較検討できます。効率的なシフト管理を行いたい方は、以下の記事もぜひご確認ください。
スケジュール管理・シフト管理機能でおすすめの勤怠管理システム10選【2022年最新版】
働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)
労働時間適正管理推進コースは、労働時間の管理方法を適正化するための取り組みを対象としている助成です。労働時間の二重管理による生産性の低下や、労務管理書類の管理に課題を抱えている企業に適しています。
詳しい対象事業主や申請要件、助成額、活用事例について以下で紹介します。
労働時間適正管理推進コースの対象事業主
労働時間適正管理推進コースでは、下記のすべてを満たす中小企業の事業主が対象です。
(1)労働者災害補償保険を適用している
(2)36協定を締結している
(3)年5日の年次有給休暇を取得できる環境の整備に取り組んでいる
(4)労働時間管理に統合管理ITシステムを採用していない
(5)労務管理書類を5年間保存することが就業規則などで規定されていない
なお(5)に関しては、2020年から労務管理書類の保存期間が5年に延長されたことを受けた条件です。
労働時間適正管理推進コースの申請要件
労働時間適正管理推進コースでは、下記3つの成果目標すべての達成に向けて取り組むことが求められます。
(A)労働時間管理と賃金計算のリンクや、賃金台帳などの管理ができる統合管理ITシステムの採用
(B)労務管理書類を5年間保存することを規定
(C)「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に沿った研修の実施(労働者・労務管理担当者がともに対象)
助成額を上乗せしたい場合は前述した2コースと同様、3%以上の賃金引き上げを目標に加えることも可能です。また助成対象となる取り組みも同様に決まっており、下記7つのいずれかに該当する必要があります。
(a)労務管理担当者への研修
(b)労働者への研修、周知、啓発
(c)外部専門家からのコンサルティング
(d)就業規則・労使協定などの整備
(e)人材確保に向けた取り組み
(f)労務管理を目的とするソフトウェア・ハードウェアの整備
(g)業務効率化を目的とするハードウェアの整備(パソコン、タブレット、スマートフォンを除く)
労働時間適正管理推進コースの助成額
助成額は成果目標の達成状況に応じて決まります。下記のうち低い金額が助成額です。
(1)成果目標達成時の上限額100万円+賃金加算額
(2)経費の合計額×補助率3/4
成果目標の上限額が100万円で固定されていますが、それ以外は労働時間短縮・年休促進支援コースと同様です。
労働時間適正管理推進コースの活用事例
紙のタイムカードを利用しているために、労務管理担当者が手作業で給与計算しなければならないケースがあります。その場合には、勤怠実績をエクスポートできる勤怠管理システムの導入が効果的です。この助成金を活用すれば低コストで勤怠管理システムを導入でき、労務管理担当者・労働者の負担軽減が期待できます。
前述したとおり、勤怠管理システムを選ぶ際には「アイミツSaaS」が役立ちます。また勤怠管理システムの導入メリットを知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。
勤怠管理システムとは?メリットと事例を具体的に解説【2022最新版】
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働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)
団体推進コースは、複数の中小企業事業主から構成される団体が、傘下にある中小企業の労働条件改善に向けて取り組む際の助成です。詳しい対象事業主や申請要件、助成額、活用事例について以下で紹介します。
団体推進コースの対象事業主
これまでの3コースとは異なり、特定の事業主だけでなく事業主団体が対象になる点が特徴として挙げられます。団体推進コースを活用する場合は、下記条件のすべてを満たす事業主団体でなければなりません。
(1)すべての事業主が労働者災害補償保険を適用している
(2)所属する事業主のうち、1/2以上が「中小企業」に該当する
(3)事業主団体として1年以上の活動実績がある
(4)3事業主以上で構成されている
団体推進コースの申請要件
団体推進コースの成果目標は、1つのみです。事業主団体が事業実施計画で定める「時間外労働の削減」または「賃金引き上げ」に向けた取り組みを、所属する事業主の半分以上に適用することです。
なお助成対象となる取り組みは、これまでの3コースと大きく異なります。働き方改革に取り組む事業の内容が、下記10点のいずれかに該当する必要があります。
(a)市場調査
(b)新ビジネスモデルの創成に向けた開発・実験
(c)費用の低減に向けた実験(労働費用を除く)
(d)労働時間などの改善に向けた取引先との調整
(e)販路拡大などの実現に向けた展示会開催・出展
(f)好事例の収集、普及啓発
(g)セミナーの開催など
(h)巡回指導、相談窓口設置など
(i)業務効率化に向けた設備・機器の導入・更新
(j)人材確保に向けた取り組み
団体推進コースの助成額
成果目標を達成できた場合、取り組みに要した経費を補うために助成金が支給されます。上限額は500万円ですが、都道府県単位で構成される規模の大きい事業主団体の場合は、1000万円に増額されることがあります。助成額は下記のうち最も低い金額です。
(1)経費の合計額
(2)総事業費-収入額
(3)上限額
団体推進コースの活用事例
時間外労働を削減するために、事業主団体の各社でグループウェアを導入するケースがあります。グループウェアを導入することで、情報共有・コミュニケーションの無駄を削減可能です。業務効率化・時間外労働の削減につなげられるでしょう。
一方で、グループウェアの種類は多く、サービス選びに失敗すると期待した効果が得られないことも考えられます。こうした事態を防ぐためには「アイミツSaaS」の活用がおすすめです。機能や連携ツール、無料プランの有無など、さまざまな要素でグループウェアを比較できるため、より合うものを見つけられます。グループウェアに興味がある方は、以下の記事もぜひご覧ください。
グループウェア全サービスを徹底比較!おすすめも紹介!【2022年最新版】
働き方改革推進支援助成金申請手続きの流れ
申請手続きに関して、取り組み実施前の「交付申請」と取り組み後の「支給申請」を行う必要があります。申請書の提出先が「労働局雇用環境・均等部(室)」である点は変わりません。具体的な申請手続きの流れは下記のとおりです。
(1)「交付申請書」「事業実施計画書」を最寄りの労働局雇用環境・均等部(室)に提出
(2)交付決定後、提出した計画に沿って取り組みを実施
(3)取り組み完了後「支給申請書」を最寄りの労働局雇用環境・均等部(室)に提出
(4)審査が行われ、支給の有無・助成額が決定
なお団体推進コースとそれ以外の3コースでは、各手続きの期限が異なるため注意しましょう。
■団体推進コース
交付申請書の提出:2022年11月30日(水)まで
取り組み実施:2023年2月17日(金)まで
支給申請書の提出:事業実施予定期間の終了日から30日後まで
※2023年2月28日(火)まで
■その他3コース
交付申請書の提出:2022年11月30日(水)まで
取り組み実施:2023年1月31日(火)まで
支給申請書の提出:事業実施予定期間の終了日から30日後まで
※2023年2月10日(金)まで
最初の手続きである交付申請書の提出期限は、いずれのコースでも「2022年11月30日(水)まで」です。期限を過ぎると助成が受けられないため、早急な対応が必要といえます。
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まとめ
今回は、働き方改革推進支援助成金の概要から各コースの詳細、申請手続きの流れまで紹介しました。
働き方改革推進支援助成金は、中小企業が幅広く受けられる魅力的な助成金です。一方で、満たすべき要件や申請手続きが複雑なため、専門知識が求められます。また申請期限も短いため、助成を受けたい企業は早めに専門家へ相談することをおすすめします。
なお働き方改革の取り組みとして、ITツールの導入による業務効率化がおすすめです。中でも、労働者・労務管理担当者にとってプラスになる「勤怠管理システム」の導入をおすすめします。
勤怠管理システムについて詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。
勤怠管理システムとは?メリットと事例を具体的に解説【2022最新版】
スマホ対応のおすすめ勤怠管理システム11選【2022年最新版】



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