【2024年最新】所定労働日数とは?計算方法、注意点も解説
法令を遵守した適切な労務管理を行うためには、労働時間・休日・給与などの各項目の把握・管理・明示を徹底しておくことが重要。所定労働日数は、労務管理を行う上で押さえておくべき重要な項目の1つです。
当記事では、所定労働日数の概要・計算方法から、設定する理由、休日の扱い、所定労働時間との関係、押さえておくべき注意点までを解説していきます。
- 所定労働日数とは
- 所定労働日数を設ける理由
- 所定労働日数の計算で重要な「休み」の扱い
- 所定労働日数と所定労働時間の関係性
- 所定労働日数関連で覚えておきたい注意点
- 所定労働日数や法定労働時間の管理には勤怠管理システムがおすすめ
- まとめ
所定労働日数とは
所定労働日数とは、企業側が就業規則・労働契約に定めた従業員が就労する日数のことです。年間の日数を定めた年間所定労働日数と、月ごとに定めた月間所定労働日数・月平均所定労働日数があります。
所定労働日数は、割増賃金の計算・年次有給休暇の取得日数の決定にも用いられるため、厳密に設定しておくことが重要です。以下に、年間所定労働日数・月平均所定労働日数の計算方法と、実労働日数の違いについて解説します。
年間所定労働日数の計算方法
所定労働日数を定めるには、まずは基本となる年間所定労働日数を算出する必要があります。計算方法は以下のとおりです。
年間所定労働日数=365日-年間休日
1年間の日数である365日から、年間休日を引くことで算出できます。一般的には、就業規則などで定める所定休日日数を用いて計算を行います。
月平均所定労働日数の計算方法
実際の実務においては月平均所定労働日数を用いるケースが多いため、算出方法を知っておくことが重要。月平均所定労働日数は、以下の計算方法で求めることができます。
月平均所定労働日数=年間所定労働日数÷12ヵ月
年間所定労働日数の数値を12で割ることで算出します。
実労働日数との違い
労働日数の概念には、所定労働日数だけでなく実労働日数もあります。実務にあたっては両者の違いを正しく理解・把握しておくことがポイント。
- 所定労働日数:会社がルールとして定めた労働日数
- 実労働日数:実際に社員が働いた労働日数
実労働日数は休暇や欠勤は除外されるため、所定労働日数よりも少なくなります。反対に、休日出勤などを行えば多くなります。
所定労働日数を設ける理由
所定労働日数が設けられている理由は、割増賃金の算出・有給休暇付与日数や条件確認などを行う際に必要となるためです。適切な労務管理を行うためにも、所定労働日数が何に用いられているかを知っておくことは重要。以下に解説しているので、ぜひご確認ください。
割増賃金の計算に用いる
企業は、所定労働時間外の労働が発生した場合には、基礎賃金に一定の割増率を乗じた分の賃金を支払うことが、労働基準法第37条により定められています。
- 時間外労働:25%
- 休日労働:35%
割増賃金の計算を行うには、所定労働時間を基準として、時間外労働や休日労働の把握を行います。例えば、基礎賃金(時給)2,000円の場合の時間外労働・休日労働の割増賃金(時給)は以下のように計算します。
- 時間外労働の場合:2,000円×1.25=2,500円
- 休日労働の場合:2,000円×1.35=2,700円
有給休暇の付与条件や日数の確認に用いる
働き方改革の施行により、企業は一定の条件を満たした労働者に対して最低10日の年次有給休暇を付与することが義務付けられています。うち5日は個人が自由に取得できるとされ、5日を超えた日数に関しては労使協定を締結すれば企業側が計画的に付与することが可能です。労働者が年次有給休暇を取得する条件は、以下の2つ。
- 雇用日から6ヵ月以上継続的に雇用されている
- 所定労働日数の8割以上出勤している
上記の有給休暇の付与条件・日数の確認を行う際に、所定労働日数が必要となります。
所定労働日数の計算で重要な「休み」の扱い
所定労働日数の算出においては、年間日数から休みを差し引いて計算が行われます。そこで重要となるのが、どのような休みを所定労働日数に含めるのかという点。計算に含まれる休みと含まれない休みがあるため注意が必要です。
ここでは、所定労働日数の算出において必ず理解しておくべき2種類の休みについて解説します。正確な算出を行うためにも、ぜひ確認しておいてください。
休日(所定労働日数に含まれない)
休日とは、労働基準法により最低週1日の設定が義務付けられた法定休日と、企業が任意に設定する法定外休日の2種類があります。
一般的には、カレンダーに従い日曜日を法定休日に定め、土曜日や業務に影響の少ない日を法定外休日に定め、週休二日としているケースが多く見られます。いずれも就業規則に定める年間休日(労働の義務が無い日)に該当するため、所定労働日数には含まれません。つまり、年間日数から差し引く値として用いられます。
休暇(所定労働日数に含まれる)
休暇とは、本来であれば労働する義務があるにも関わらず労働が免除された日のことです。年間休日には該当しない休みであるため、所定労働日数に含まれます。つまり、所定労働日数を算出する際には影響を与えない値となります。
休暇には、大きく分けて法律により定められる法定休暇と、企業が任意で定める法定外休暇があります。例えば前者では有給休暇・産前産後休業・育児休暇など、後者ではリフレッシュ休暇や慶弔休暇などが該当します。
所定労働日数と所定労働時間の関係性
所定労働日数と所定労働時間は相互に関係しているため、両者の関係性を理解しておくことが重要。以下に解説しているので、ぜひご確認ください。
所定労働日数は所定労働時間を算出する際に必要
所定労働時間とは、労働契約上定められた労働時間のことです。月ごとに日数・休日にバラつきがあるため、年間の労働時間を12ヵ月で割ることで、月平均でならした労働時間を算出する必要があります。
この月平均労働時間を求める際に、所定労働日数が必要となります。
月平均所定労働時間=年間所定労働日数×1日の所定労働時間÷12ヵ月
例えば、所定労働日数245日・所定労働時間8時間の場合は、以下のような計算となります。
240日×8時間÷12ヵ月=160時間(月平均所定労働時間)
時給算出に用いられる
所定労働日数は、所定労働時間の算出だけでなく、時間外労働の時給を算出するのにも用いられます。法定労働時間外の時間外手当・深夜手当・休日出勤手当などの各種手当を正確に算出して給与に反映するためには、時間内に該当する労働時間と時間外に該当する労働時間を正確に把握することが必要。その基準となる値として月間所定労働日数・月間所定労働時間を設定しておかなければなりません。
これらを設定していないと正確な時間外労働の時間の把握と時給の計算ができず、法令違反や労使トラブルを招く要因となるため注意が必要です。
時給から時間外労働で発生する各種手当を計算する方法
時間外労働が発生した場合には、企業は基本時給に労働の内容に応じた割増率を掛け合わせた手当てを支払う必要があります。以下の表は、各種手当・割増率・計算方法・計算例をまとめた表です。
手当の種類 | 割増率 | 計算式 |
---|---|---|
時間外手当 (残業手当) |
1時間あたり25% | 時間外手当(残業手当)=時給(1時間あたりの賃金)×残業時間×1.25
例(時給2,000円・月残業時間10時間の場合) 2,000円×10時間×1.25=25,000円 |
深夜手当 | 1時間あたり25% ※時間外手当と重なる場合は50% |
深夜手当=時給(1時間あたりの賃金)×深夜労働時間×1.5
例(時給2,000円・時間外の深夜労働が15時間の場合) 2,000円×15時間×1.5=45,000円 |
休日出勤手当 | 1時間あたり35%
※時間外手当25%は加算されない ※深夜労働と重なる場合は60% |
休日出勤手当=時給(1時間あたりの賃金)×休日労働時間×1.35
例(時給2,000円・月休日労働が20時間の場合) 2,000円×20時間×1.35=54,000円 |
深夜手当は一般的に時間外手当と重複するため、割増率は実質的に50%となります。
上記の表は一般的な時間外労働の手当てを計算した表ですが、例外として月60時間を超えた時間外労働の割増率は50%、深夜労働が加わると75%となるため、時間外労働が長時間となってきた場合は念のため留意しておく必要があります。
所定労働日数関連で覚えておきたい注意点
所定労働日数は労務管理を行う上で必須となる要件であり、さまざまなルールが設けられています。そのため、基本的な概要・計算方法だけでなく、意識しておくべき注意点が多くあります。以下に、所定労働日数関連の注意点について解説しているので、ぜひご確認ください。
就業規則や労働条件通知書には休日の記載が必要
所定労働日数は、年間日数(365日)から年間休日を引いて算出されるため、年毎の休日数により増減があります。給与や有休の計算の基準となる所定労働日数を厳密に毎年変更することは現実的ではないため、基準となる年の日数を算出したら、就業規則へ記載して所定労働日数を確定させておかなければなりません。
就業規則ならびに労働条件通知書には、所定労働日数の記載が義務付けられています。以下に、それぞれの記載方法について解説します。
就業規則への記載の仕方
就業規則とは、労働時間・休日・給与といった労働条件・就労にあたっての職場のルールなどをまとめた規則集のことです。所定労働日数の記載方法は決められていませんが、就業規則に記載すべき必須の項目。以下は、具体的な記載例となります。
- 休日は以下の通りとする。
土曜日・日曜日
祝日(日曜日と重なった場合は翌日に振替)
年末年始休日(12/28~1/4)
夏季休日(8/13~8/16)
その他会社が指定する日 - 法定休日は毎週日曜日とする。
- 業務上の都合により会社が必要であると認める場合は、前項の休日を他の日と振り替える場合がある。
労働条件通知書への記載の仕方
労働条件通知書とは、自社で就労をおこなうにあたっての契約期間・就業場所・労働時間・休日・給与などの労働条件を記載した書面のこと。採用した人材と労働契約を結ぶ際には、企業側が必ず発行しなければならない書面です。就業規則と同様に、記載方法は任意ですが休日の記載が必須となっています。具体的な記載例については以下のとおりです。
定例日は下記の通り。
- 毎週土曜日
- 毎週日曜日
- 祝日および振替休日
- 年末年始休日(12/28~1/4)
- 夏季休日(8/13~8/16)
- その他会社が指定する日
※詳細は就業規則を参照
所定労働日数の上限は決まっていないが注意は必要
所定労働日数は上限が定められていないため、企業が自由に設定が可能です。しかし、法定休日に関しては最低週1日の付与が定められているため、実質的には年間日数365日から年52週・週1休日を差し引いた313日が所定労働日数の上限となります。
しかし、こちらはあくまでも理論上の上限であり、年間313日も労働者を働かせると、長時間労働による心身の不調・離職の増加・コンプライアンス違反などさまざまな問題が懸念されます。一般的には年間105日が労働基準法に違反しない限界のラインとされているため、企業の生産性とワークライフバランスの兼ね合いを見て、現実的な所定労働日数を設定するようにしましょう。
実労働日数が所定労働日数を超えた場合の対応
繁忙期・業務集中などで休日出勤が発生すると、実労働日数が所定労働日数を超えてしまう場合があります。そこで企業側が考えなければならない問題が、休日手当の支払いの必要性です。
この問題に対しては、休日出勤が発生した日が法定休日であるか否かで手当の支払い義務が異なります。前者の場合は休日出勤手当の対象となるため割増率35%を加算した金額を支払う必要がありますが、後者に関しては割増率を乗じず通常の賃金を支払えば済みます。法定休日が判断の決め手となるため、実労働日数が所定労働日数を超えてしまった場合には、まずは就業規則に定める法定休日のルールを確認しましょう。
実労働日数が所定労働日数に満たない場合の対応
反対に、従業員の欠勤により所定労働日数に実労働日数が満たないというケースもあります。この場合に企業側が考えるべきは、欠勤した日を控除できるか・どのように控除するかという点です。基本的には欠勤した日数分をそのまま控除することが可能ですが、以下のような特殊な勤務形態の場合は控除の可否や対応方法が異なってきます。
項目 | 控除 | 対応方法 |
---|---|---|
フレックスタイム | 可 | 総労働時間に満たない時間のみ控除 |
変形労働時間制 | 可 | 欠勤日の日毎所定労働時間分のみ控除 |
シフト制 | 可 | 欠勤日の日毎所定労働時間分のみ控除 |
年俸制 | 可 | 1日換算分を控除 |
完全月給制 | 不可 | 控除できない |
日給制・時間給 | 不可 | 実際に就労した日・時間の給与を支払う |
歩合給 | 基本給のみ可 | 基本給部分の1日分のみ控除 |
定時勤務以外の勤務形態を採用している場合は、詳細を確認しておきましょう。
所定労働日数や法定労働時間の管理には勤怠管理システムがおすすめ
労務管理を適切に行うには、所定労働日数・所定労働時間を事前に設定するのがまずは重要。その上で、これらに基づいた実労働日数・労働時間の把握と割増賃金・休日付与を実施しておく必要があります。しかし、従来のアナログな業務方式では、煩雑で複雑な労務管理・勤怠管理を正確かつ効率的に行うことは困難。そこでおすすめとなるのが、勤怠管理システムの導入です。
勤怠管理システムとは、出退勤の打刻・集計・管理などの業務をデジタル化することで、自動化・効率化を行えるシステム。リアルタイムで状況を正確に把握することが可能となり、不正の防止や法改正にもスムーズに対応できるため、法令に則った確実な業務・管理を行えます。労務管理・勤怠管理に課題を抱えている方は、ぜひ導入することをおすすめします。
関連記事:勤怠管理システムとは?導入事例やメリット・デメリットを解説
まとめ
法令・コンプライアンスの遵守が重視される現代社会では、ルールに則った上で従業員の労働時間・労働日数・賃金・休日・休暇などに適切に対処することが求められます。しかし、従来のアナログな方法では、どうしても正確性・効率性に難があるため、適切な労務管理・勤怠管理を行うことは困難です。
齟齬の無い正確な管理をスムーズに行うためには、勤怠管理システムを導入して業務のシステム化・デジタル化を行うことがおすすめです。とはいえ、勤怠管理システムは多数あり、どれを導入すべきか迷ってしまうでしょう。
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