日本企業の雇用形態とは?種類や違い、雇用問題の現状を紹介【2025年最新】
新型コロナウイルスの感染拡大を経て、近年では働き方の見直しが進んでいます。日本企業には正社員、非正規社員、パート・アルバイトなど様々な雇用形態がありますが、現状では非正規雇用者が全体の4割を占め、賃金は正規の6割程度に留まり、これが格差の温床となり、未婚率の上昇、出生率の低下、経済の低迷を招いています。
時代の変化と共に雇用形態が大きく変わろうとする今、どのような働き方を選択するかに興味がある方や企業も多いでしょう。
そこで本記事では、従業員の雇用方法を考えている経営者、これからの働き方を模索している方に向けて、日本企業の雇用形態の種類と、それぞれの特徴、日本の雇用問題の現状を詳しく解説します。
雇用形態とは
そもそも今回のテーマ「雇用形態」とは何でしょうか?
雇用形態とは、働くときに会社と結ぶ労働契約の分類を指します。実際に企業で働くときには色んな働き方があります。ざっと思い浮かべてみると、正規、非正規、派遣、アルバイト、パート……などがあるでしょう。
一昔前は就職と言えば正社員で働くのが主流だった日本社会も、今や非正規雇用が全体の4割にのぼり、色んな雇用形態で働く人が増えています。また働き方も多様化し、リモートワークの出現でオフィスに行かずに働く人も増えています。
様々な雇用形態で働くことは今や当たり前の時代。働き方は今後さらに多様化していくことが予想されます。
日本の雇用の歴史
かつての日本社会は終身雇用が前提で、一度正社員になれば一生その会社で働くのが当たり前でした。正社員&終身雇用の慣行は日本の高度成長期を支え、目覚ましい経済発展の原動力そのものだったのです。
しかし、バブル崩壊以降景気は悪化。企業は人件費の節約のために、解雇リスクの少ない非正規雇用の割合を増やしていきます。さらに平成8年の労働者派遣法改正により、派遣対象業務が自由化されたことを受け、派遣社員の採用がさらに増加。
正規&終身雇用が当然であるという風潮は既に過去のものであり、現在は非正規雇用が珍しくありません。その結果、低所得者が増え、出生率の低下、年金未払いなど、将来の社会基盤を揺るがす深刻な事態が生じています。
政府与党が掲げた「一億総活躍プラン」はこうした社会的背景から生まれたものであり、現在、国を挙げて雇用形態の違いによる格差を是正する方向で政策が進められています。
正規社員と非正規社員とではどう違うの?
昔は正規社員が主流、現在は非正規社員が全体の半数近くを占めている…という話がありましたが、そもそも「正規社員と非正規社員の違いは何なのか?」ということを改めて聞かれると、漠然としている方も多いと思います。正規と非正規は一体何が違うのか、ここで今一度確認しておきましょう。
正規社員
正規社員は契約期間の定めなく、定年まで働くことを前提にフルタイム(1日8時間、週40時間)で働く労働契約を結んでいる人を指します。正規社員は労働基準法で規定された存在ではなく、社会通念上、上記条件で働く人を「正規社員」と呼んでいます。
非正規社員
非正規社員は正規社員以外の人を指します。派遣、契約社員、パ―ト、バイトなどは全て非正規社員に該当します。非正規社員は正規社員に比べて短い労働時間で働くことができますが、給与は上がりにくく、一般的に賞与もありません。雇用も不安定なので、解雇のリスクを常に抱えているなど、様々なデメリットが問題視されています。
正規社員と非正規社員を比べると、非正規は正規に比べ自由度が高い分、待遇、安定度という点では大分不利であることが分かります。
直接雇用と間接雇用の違い
雇用形態には「直接雇用」と「間接雇用」の区分もあります。直接雇用、間接雇用は従業員が誰と契約しているのかが焦点となります。
直接雇用
直接雇用は会社と直接雇用契約を結び、指定された仕事をすることで、その会社からお給料を貰います。ごく一般的な会社員は直接雇用に当たります。
間接雇用
間接雇用は実際に働いている企業と直接雇用契約は結んでおらず、給料も別の会社から支払われます。間接雇用の代表格は派遣社員です。派遣社員は派遣先企業で就労しますが、雇用契約は人材派遣会社と結んでおり、給与は派遣会社から支払われます。事故・トラブル等が起こったときの対処は基本的に派遣会社が行うのが一般的です。
常勤と非常勤の違い
正社員、非正規と並んで、常勤と非常勤という言葉もよく使われます。
常勤
常勤はフルタイム(1日8時間、週40時間以上、週5日)で働く職員のことで、正社員は常勤職員という扱いになります。
非常勤
非常勤は限られた勤務日数、勤務時間で働く職員のことで、一週間当たりの労働時間の定めはありません。パート・アルバイトは全て非常勤に該当します。非常勤でも常勤と同じ仕事をすることもありますが、一般的に待遇、福利厚生は常勤には及びません。非常勤で多いのは大学講師、塾講師、医師、看護師などです。
日本企業で現状利用されている7種類の雇用形態
現在、日本の企業には正社員の他に派遣、契約社員、パートタイム、短時間正社員、家内労働者、請負、在宅ワーカーの7種類の雇用形態があります。労働条件や待遇はそれぞれの雇用形態によって大きく変わります。ここでは、その内容について詳しく解説していきます。
待遇比較表
項目 | 正社員、短時間正社員 | 契約社員 | パート労働者 | 家内労働者、在宅ワーカー、請負 |
---|---|---|---|---|
勤務時間 | 就業規則の規定通り | 契約時間通り | 自由に選べる | 自由に選べる |
残業 | あり | 選択可 | 選択可 | なし |
有給休暇 | あり | 正社員同等 | とれない場合が多い | なし |
ボーナス | あり | 契約に準じる | なし | なし |
交通費支給 | あり | 殆どあり | なし | なし |
雇用の安定 | 無期限 | 契約期間まで(延長アリ) | なし | なし |
派遣労働者
派遣労働者は、人材派遣会社と労働契約を結び、企業に派遣されて仕事をする労働者です。実際の労働で指揮命令をするのは派遣先の会社ですが、給与は人材派遣会社から支払われます。万が一、トラブルや事故があったら、人材派遣会社が対応をしなければなりません。
派遣労働者のメリットは、派遣先や従事する業務を選べる事、有給休暇が取りやすいこと、残業無しを選べるなど、自分のライフスタイルに合った働き方ができる点です。自由な働き方をしたい人にとっては便利な雇用形態です。
デメリットは派遣期間が切れたら雇用の保障がないこと、賞与がでないこと、交通費の支給が無しの場合もあることです。派遣社員は雇用の安定という点では正社員に比べると不利で、時間給で働くことから全体的に所得は低い傾向にあります。
契約社員(有期労働契約)
契約社員は雇用期間が決められた労働者です。
一般的に正社員の雇用期間は無期ですが、契約社員は有期契約であり、契約期間満了をもって雇用契約は終了します。1回の契約の雇用期間は最長で3年です。
契約社員のメリットは、社会保険に加入しやすいこと、交通費は支給されること、休暇が取りやすいこと、契約によってはボーナスが支払われるなど、比較的正社員に近い待遇を得られることです。
デメリットは、契約期間が終了したら延長されない限り雇用がなくなる点です。延長されるかどうかの保障はないので、基本的に身分は不安定です。また契約で定められた時間は就労する義務があるので、パートやアルバイトほどは自由がききません。
パートタイム労働者
パートタイム労働者は1週間の勤務時間が、正社員に比べて短い労働者のことです。
パート、アルバイト、非常勤は全てパートタイム労働者に該当し、パートタイム労働法に基づいて業務に従事します。
パートタイム労働者のメリットは勤務時間が自由に選べる、残業に応じる義務はない、転勤がないといったことがあげられます。主婦や学生、フリーランサーにとっては便利な雇用形態です。
一方、賞与がない、有給休暇が殆どない、労働時間によっては社会保険に加入できないといったデメリットもあります。
現在、パートタイム労働者でも雇用期間が5年を超えた場合、無期雇用に転換できることになり、短時間労働者を巡る雇用状況は一歩前進と言えるでしょう。
短時間正社員
短時間正社員は、普通の正社員に比べて労働時間・日数が短い社員のことです。
パート・アルバイト・派遣・契約社員との違いは、雇用期間に制限がない点、賞与・基本給・退職金の算出方法が正社員と同等である点の2つです。
短時間正社員のメリットはパートタイマーの様に働きながら、正社員並みの待遇、福利厚生を受けられる点です。ボーナスも支給されることから、非正規社員に比べると所得の点でも恵まれています。
これといったデメリットはなく、会社側は短時間正社員制度を作る事で、優秀な人材の定着、採用・教育訓練コストの削減を達成することができるでしょう。企業のイメージアップ&社員のモチベーションアップに資する制度で、多様な働き方が求められる中で、注目を集めている雇用形態です。
業務委託(請負)契約を結んで働いている人
雇用形態の中には業務委託・請負契約という形もあります。
業務委託・請負契約は成果物を納期までに納品する契約です。
ある業務を委託するときや、請け負う時に結ぶ契約の俗称で、法律で規定をされている契約ではありません。
よって、正社員、契約社員、パート、アルバイト、派遣などは労働基準法の保護下にありますが、業務委託・請負契約を結んでいる人はその範囲外です。
業務委託・請負契約のメリットは、納品までのプロセスが問われない点です。期日までに納品物を治められれば、いつどこで働いても良いので、フリーランスなどフレキシブルに働きたい人には適しています。
デメリットは成果物に不備がある、納期が守れない等、取引上のトラブルがある場合、責任を問われる可能性がある点です。
家内労働者
家内労働者は依頼主から委託を受けて自宅で納品物の加工・製造・作業をする人のことです。
代表的なのはいわゆる「内職」で、その他に、外交員、集金人、電力量計の検針人、特定の会社から委託されて業務を行う個人事業主(exヤマハのピアノの先生・シルバー人材センターの業務)も家内労働者に含まれます。
家内労働者は事業主ですが、家内労働法に基づいて業務を委託しなければなりません。支払のトラブル等をなくすために内職などでは「家内労働手帳」を交付することと、最低工賃の遵守が義務付けられています。
家内労働者のメリットは自宅で働ける点です。育児・介護で在宅の必要性がある方にとっては便利な雇用形態です。昔から主婦に人気の雇用形態であるのも頷けます。
デメリットは、雇用が不安定、低賃金、社会保障がない点などがあげられます。
在宅ワーカー
在宅ワーカーは外部の仕事をオンラインで請け負っている人のことです。
従来、在宅の仕事と言えば部品組み立て、シール貼りといった内職が主流でしたが、現在はパソコンなどの情報通信機器を使った在宅ワークが増えています。
業務内容はデータ入力、HP作成、ライティング、アンケートなどがあり、スキルがなくても始められる仕事もあるので、フリーランサー、主婦、高齢者などの新しい働き口として人気を集めています。またビジネスマンの副業としても注目されています。
雇用形態はもっぱら請負・委託なので、納品物を納期までに納めれば、そのプロセスは問われないので、時間に縛られず、自由なスタイルで働ける点が魅力です。
ただし、委託者に対しては弱い立場であり、一方的に仕事が打ち切られることもあるので、安定しているとは言いでしょう。
労働形態が変化した背景・日本の雇用問題の現状
企業で働くにも様々な労働形態がありますが、これほどまでに多様化したのは比較的最近のことです。雇用形態が現在のような形になったのはいつ頃からなのでしょうか?ここでは労働形態が変化した背景と日本の雇用問題の現状を解説します。
経済・働き方の変化
労働形態の多様化の背景には日本経済の変化があります。
第二次世界大戦後の昭和30年代、日本経済は本格的な高度成長期を迎えました。この頃、日本の産業は第一次産業から第二次、三次産業に代わり、農林魚用で収入を得るのではなく、企業に就職をして賃金を得て生計を立てる人が増えていきました。
企業は優秀な男子を囲い込むために、新卒者を正社員で雇い、終身雇用、年功序列で待遇するスタイルが一般化します。雇用、収入の安定により、一億総中流の社会が実現し、夫は正社員、妻は専業主婦、または家計補助のためにパートで働くのが日本の家庭の一般的な風景でした。収入もバブル期までは右肩上がりです。
しかし、1990年代のバブル経済の崩壊、経済のグローバル化以降、企業は人件費削減に走り、正社員・終身雇用といった日本型雇用慣行は崩れていきます。現在までその傾向は続き、非正雇用者の割合は増大の一途をたどっています。
家族構成の変化
1950年代以降の高度経済成長期は日本の産業構造が大きく変化した時代です。第二次、第三次産業の発展とともに、それまで地方に住んでいた人たちが職を求めて都会に流入。大都市で就職をする人が急激に増加します。都市部への人口集中した結果、都会で結婚・出産する人も増加。都会の核家族が増えていきます。さらに現在では未婚化が進み、独居生活をする人の割合が急激に増えています。このように、日本の家族構成は高度経済成以降、大きな変化を遂げて現在に至っています。
戦後の日本は三世帯同居も多く、子供は3人以上という家庭も珍しくありませんでしたが、核家族化で出産数は減少。現在は非正規雇用の増加により、低収入がネックとなりさらに出産数が減り、生涯未婚率も増加しています。今後は単身世帯が増えることが予想されており、日本は本格的な少子高齢化時代を迎えようとしており、その対策の一環として雇用環境を改善するべく働き方改革が推進されています。
人口・寿命の変化
日本は1947年から1949年、1971年から1974年までの2回にわたりベビーブームが起こり、それぞれ年間出生数は250万人、200万人を超しており、前者は団塊の世代、後者は団塊ジュニア世代と呼ばれています。しかし、それ以降は出生数は減少の一途をたどり、1984年には150万人を割り込み、2016年には97万人となり、明治以来初めて100万人を割る事態となっています。出生率の低下に伴い、人口は2010年の1億2806万人をピークに年々減少。2060年には8674万人になるとも言われています。
また、医療水準の向上により寿命は延び、1940年代の平均寿命は50歳台でしたが、2017年は女性87・26歳、男性が81・09歳といずれも80歳を超えています。現役世代の減少、社会福祉費の増大から、現在、政府は高齢者の雇用を進める政策にも力を入れています。
女性の社会進出
雇用形態の多様かの背景には女性の社会進出もあげられます。高度成長期における産業構造の変化により女性の働く場も増加。1985年には「男女雇用機会均等法」が成立し、女性が男性波に働く環境も整備されます。
こうした流れの中で、女性の社会進出は本格化。総務省統計局のデータによると1980年には専業主婦世帯が,1114万世帯であるのに対し、共働き世帯は614万世帯でした。その後、1990年代を境に共働き世帯数が専業主婦の世帯を超え、2010年には専業主婦世帯797万世帯、共働き世帯は1012世帯となり完全な逆転現象を起こしています。
しかし、こうした状況の中でも家事、育児、介護は女性の仕事という風潮、待機児童問題などがネックとなり、女性活躍を阻む要因が依然立ちはだかっています。
その結果、結婚、育児、介護をきっかけに正規雇用を断念せざるを得ない人も多く、その後はパート、アルバイトなど非正規雇用として働かざるを得ない状況があり、現在、女性労働者の半数以上は非正規雇用として働いています。
こうした問題を受けて、政府が推し進める働き方改革では「女性活躍推進」も大きなテーマとして取り上げられています。
雇用形態によって異なる社会保険の加入条件
社会保険は、従業員の雇用形態によって加入条件が異なります。以下は、雇用形態別の社会保険の加入条件です。
- 雇用保険
週20時間以上勤務する場合、正規・非正規社員が適用 - 労働災害保険
全雇用形態の従業員に適用 - 厚生年金、健康保険
週30時間以上勤務する場合、または以下の全条件を満たす場合に適用
1.週の所定労働時間が20時間以上であること
2.雇用期間が1年以上見込まれること
3.賃金の月額が88,000円以上であること
4.学生でないこと
引用元:日本年金機構
まとめ
日本企業の雇用形態については以上です。以前の日本は正社員&終身雇用が大前提でしたが、現在では多様な雇用形態で働くのが当たり前の時代となっています。IT革命により今後その動きはますます拍車がかかるでしょう。働き方改革が叫ばれている現在、どのような雇用形態を選ぶかは従業員だけでなく企業にとっても重要な問題です。
雇用形態別のメリット・デメリットをよく踏まえて、自社はどの雇用形態で採用するのがベストかよく考えて、一番適切な方法を選ぶことをおすすめします。
なお、企業が人材を採用する際、雇用形態だけでなく勤怠管理の方法も重要です。労働基準法に則った適切な勤怠管理を行うにはシステム化が必須でしょう。PRONIアイミツ(当サイト)ではITツール受発注支援のプロとして、勤怠管理システム選びについての相談を受け付けています。いくつかの質問に答えるだけで希望要件に合ったサービスが分かる診断(無料)もありますので、ぜひ一度お試しください。
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