現代の労務管理における課題とは?働き方改革で変わる内容とポイント
従業員の労働条件や労働環境などを整え、管理する労務管理。働き方改革法の施行もあり、適切に労務管理を行うことは企業にとっての義務です。本記事では労務管理における課題と主な業務内容、課題解決のポイントを明らかにし、役立つツールを紹介します。
- 労務管理とは
- 労務管理の業務内容
- 現代の働き方における労務管理の課題
- 自社の労務管理状況を見直すことで課題が見えてくる
- 労務管理に関する課題解決の方法
- 労務管理の課題を解決!労務管理ツール導入のメリット
- 失敗しない!労務管理ツール導入のポイント
- まとめ
現代の労務管理における課題とは?働き方改革で変わる内容とポイント
労務管理は、従業員の労働条件や労働環境などを整え、管理する業務のことで企業の経営資産のなかでもとりわけ重要な「ヒト」に関わる部分を担います。しかし、労務管理上の課題を正確に把握できている方は少ないのではないでしょうか。
そこで本記事では、現代の働き方における労務管理の課題と課題の解決方法を紹介します。課題解決に役立つ労務管理ツールも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
労務管理とは
まずは、労務管理とは何かといった点をあらためて確認しましょう。
企業の重要な経営資産は「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」と言われていますが、そのなかでも最重要の「ヒト」に関する業務を行うのが「労務」です。つまり労務管理とは、従業員の労働環境や労働時間、休日・休暇、福利厚生、待遇などの管理を行うことを指します。さまざまな施策で、従業員のモチベーションを上げ、生産性の向上を図るのも労務管理の役割です。
労務管理を担う部署は企業によってさまざまで、人事部が担当する企業もあれば総務部が行う企業もあります。いずれにしても、従業員ができるだけ良い環境で働けるように、従業員の側に立ってさまざまな業務を行うのが労務管理です。
労務管理の業務内容
ここからは、労務管理に関する主な業務内容をまとめていきます。主な業務内容は以下の通りです。
- 給与計算(給与計算を自動化するツールはこちら)
- 福利厚生(福利厚生代行サービスはこちら)
- 安全衛生管理(健康管理を効率化するツールはこちら)
- 業務改善
- 契約内容の管理
- 帳簿の管理
- 就業規則の管理
上記のように、労務管理にはさまざまな業務内容があります。また、法令によって義務付けられている業務内容もあるため、法令違反にならないように注意が必要です。次項からは、労務管理の課題を解説していきます。
現代の働き方における労務管理の課題
労働人口の減少や労働生産性の低下、長時間労働によるさまざまな弊害などの解決を目的として2019年4月から順次施行されている、いわゆる「働き方改革法」。法律の整備は進んでいるようには見えるものの、企業は対応しきれていないのが実情です。
テレワークやサテライトオフィス、あるいはフレックスタイム制など、一昔前と比べると多様な働き方が認められるようになりました。しかし、企業側の労務管理が多様化する働き方にまだまだ対応できていないのです。
有給休暇の消化率
働き方改革法の成立により、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して、年5日の有給休暇を取得させなければならなくなりました。正社員や契約社員はもちろん、労働時間や労働日数をクリアしたパート・アルバイトに対しても、年5日の有給休暇を取得させなければなりません。これは努力目標ではなく使用者側の義務で、違反した場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
しかし、有給休暇の取得率が格段に上がっているとは言い難いのも事実です。厚生労働省の調査によると、2019年度の有給休暇取得率は56.3%に留まっています。前年の52.4%より取得率は数パーセント上がり、過去最高を記録してはいるものの、さらに改善する余地はあるでしょう。
社員の労働時間の管理
働き方改革法では、従業員の労働時間を把握することも義務付けられています。働き方改革法成立以前にも、使用者は従業員の労働時間を把握しなければならないと定められていましたが、労働時間の客観的な把握を義務付けるものではありませんでした。そのため、記録に残らない形での時間外労働、いわゆるサービス残業が横行していました。
働き方改革法では、従業員の労働時間を客観的な形で把握することが求められています。客観的は把握とは、たとえばタイムカードやパソコンの使用履歴、勤怠管理システムなどを指します。従業員の労働時間をいまだに紙で管理している企業は、早急に労働時間の管理体制を見直さなければなりません。
フレックスタイム・テレワークによる労働状況管理
テレワークの場合、労働時間を客観的に把握することが難しくなります。タイムカードで勤怠管理を行っている企業は多いですが、テレワーク中はタイムカードに打刻できません。人によってはオンとオフの切り替えがつかず、延々と残業をしてしまうケースも考えられるでしょう。
テレワークにおける勤怠管理の難しさの解決には、勤怠管理システムを導入が有効です。ネットワーク上で利用するタイプの勤怠管理システムであれば、インターネット環境さえあればどこからでもタイムカードに打刻できます。就業状況も一目で把握できるため、無駄な残業も防止できます。
フレックスタイム制も勤怠管理が複雑化しますが、勤怠管理システムの導入によって、多くの課題は解決できるでしょう。
法改正への対応が必要
近年、就業規則や労働安全衛生など、労務管理に関する法律の改正が行われています。このように、法改正が実施されるたびに、労務管理の業務や管理方法の見直しが必要です。事前に準備しておくことで、今後の法改正にも柔軟に対応できるでしょう。
なお、2024年4月以降には「物流・運送業界」「医療業界」「建設業界」において残業規制が厳しくなるため、特にこれらの業界では労務管理の整備が必要です。
自社の労務管理状況を見直すことで課題が見えてくる
労務管理における、自社が改善すべき課題がわからないという方もいるのではないでしょうか。有給休暇消化率、雇用形態や労働条件の管理、フレックスタイム・テレワークの管理の3つを細かく見ていくことで、改善すべき課題が見えてきます。
有給休暇消化率の把握はできているか?
使用者は、従業員の有給休暇消化率を把握し、年に5日以上の有給休暇を取得させる必要があります。まずは、自社の従業員の有給休暇取得率が把握できているかチェックしましょう。
とはいえ、数多くの従業員を抱える事業所や部署では、有給休暇の消化率を把握することだけでも一苦労です。「誰がいつまでに何日の有給休暇を取得しなければならないか」など、上長が把握しなければなりません。従来までは、有給休暇を残日数で管理する企業が大半でしたが、残日数だけでは有給休暇の取得状況を正確に把握することは困難です。
そのため、働き方改革法では「年次有給休暇管理簿」という帳票を作成し、3年間管理することが義務付けられています。
従業員の雇用形態や労働条件を把握できているか?
従業員の雇用形態や労働条件が把握できているかも重要なチェックポイントです。多様な働き方が認められつつあるいま、すべての従業員が同じ労働条件や雇用形態であるとは限りません。従業員の雇用形態や労働条件を把握していないと、意図せずに時間外労働を強いてしまっていたなどのトラブルが発生する可能性もあるでしょう。
多くの企業では、従業員を雇用する際に雇用形態や労働条件を定め、書面による交付を行います。なかには、書面を作成せずに口約束で雇用契約を結ぶ企業も少なくありません。書面による交付は、トラブル時に労使双方ともにメリットがあることです。労働条件や雇用形態を把握できていない、あるいは書面による交付をしていない企業は早急に改善すべきです。
フレックスタイム・テレワークの管理はできているか?
フレックスタイムやテレワークの労務管理に悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。オフィスに出勤しないテレワークの場合、タイムカードへの打刻を行えません。また、出勤時間と退勤時間が人によって異なるフレックスタイムを導入すると、労務管理が一気に複雑化します。
フレックスタイムやテレワーク時には、パソコン上でタイムカードに打刻する打刻ツールや、出勤・退勤の記録、有給休暇などの申請や取得状況が記録できる勤怠管理システムの導入がおすすめです。インターネット上のサーバーを利用するクラウド型の打刻ツールや勤怠管理システ厶を利用することで、インターネット環境さえあればどこからでも出退勤を記録しておけます。
労務管理に関する課題解決の方法
ここまでで、自社の労務管理のどのあたりに問題や課題があるのかが把握できたのではないでしょうか。労務管理上の問題や課題が整理できたところで、ここではそれぞれの課題ごとの解決方法をお伝えします。
労働状況を管理しやすい環境を整備する
適切な労務管理を行うためには、労働状況を把握しなければなりません。紙ベースで従業員の労務管理を行っている企業は少なくありませんが、紙の場合、客観的に把握することが難しく、集計にも時間がかかってしまいます。まずは紙での労務管理を止め、デジタルな手法に移行することをおすすめします。
人的リソースの不足を理由に、適切な労務管理ができないという企業も少なくないでしょう。そういった企業は、労務管理の業務をアウトソーシングすることも視野に入れてみてはいかがでしょうか。従業員の働き方に関する法改正は今後、より一層進んでいくと考えられており、労務管理の業務も高度な専門性が要求されることが予想されています。
そもそもの労働条件を見直す
労働条件や働き方に課題がある企業は、そもそもの労働条件が適切なものなのか精査し、必要であれば労働条件を見直す必要があります。
経営者のなかには、「法律に則った労務管理では利益が上げられない」と考える方もいるかもしれません。労働条件を見直さないままだと従業員のモチベーションや生産性が低下し、結果的に利益が下がるということも十分考えられます。さらに長時間労働や休日出勤などが常態化した企業は、従業員の定着率が低く、人材も育ちません。
労働条件を見直すことによって、従業員の士気やモチベーションを上げ、生産性を向上させることも可能です。
労務管理ツールを導入する
仕事をするのに必ずしも出社しなければならないという時代ではなくなりました。働き方改革や新型コロナウイルスの影響もあり、政府はテレワークやサテライトオフィスの活用を推進しています。
テレワークやサテライトオフィスの場合、従業員の勤怠管理が難しいと考える方も多いでしょう。しかし、インターネット上のサーバーを利用するクラウド型の勤怠管理ツールであれば、テレワークやサテライトオフィスにおける勤怠管理の懸念は払拭できます。
クラウド型の勤怠管理ツールには、出退勤の打刻機能、有給休暇の申請・承認機能、残業防止アラート機能などが搭載されています。これらの機能を活用することにより、勤怠管理にかかる工数を減らせることと同時に、精度も上げられます。
労務管理の課題を解決!労務管理ツール導入のメリット
労務管理にかかる工数の多さや、業務の煩雑さに悩む方も多いと思います。働き方委改革法の成立以前とは違い、労務管理はルーチンワークではなくなりました。ここでは、労務管理の効率向上に大きな役割を果たす労務管理ツールの導入メリットを解説します。
正確な労務管理を実現できる
労務管理ツールを導入する一番のメリットは、正確な労務管理を実現できる点でしょう。タイムカードやExcelで勤怠管理を行っている企業も少なくありませんが、タイムカードにしろExcelにしろ、集計作業が必要になるため、正確な労働時間を把握するのには時間がかかります。
タイムカードやExcelでは、従業員の労働状況をリアルタイムで把握できません。そのため、気づかないうちに時間外労働の上限を超えてしまう可能性があります。勤怠管理システムであれば、従業員の労働状況をリアルタイムで把握できます。月ごとや年ごとの労働時間は自動計算され、設定された時間外労働の上限が近づくと上長と従業員にアラートで通知する機能も搭載しています。
労務管理の効率をアップできる
労務管理の業務を効率化できる点にも、労務管理ツールの導入メリットはあります。労務管理の業務のなかには、扶養家族の情報、マイナンバーなど、従業員から提供を受けなければ業務が進まないものも少なくありません。提出が遅れている従業員には個別に通知や督促することも労務管理の仕事のうちで、提出が遅れる従業員が多ければ多いほど業務は遅滞し、締め切り間際に業務が立て込むことも考えられるでしょう。
労務管理システムでは、従業員の情報は従業員自らシステム内に入力します。労務管理を行う部署が情報を集める必要はなく、入力されたデータは申請書類などに自動抽出されるので、システム入力の手間もかかりません。
社内のコミュニケーションを活性化できるものも
テレワークやサテライトオフィスの場合、事業所内や部署内でのコミュニケーション不足に陥ってしまうリスクがあります。勤怠管理システムのなかには、チャット機能や社内SNS機能、掲示板機能など、コミュニケーションの活性化に役立つ機能を搭載しているものも少なくありません。
従業員のプロフィールを表示できる機能を持つ勤怠管理システムもあります。規模の大きな会社ではとくに、「名前は知っているけれど、どういった業務を行っているかわからないので仕事をお願いしづらい」ということがよくあります。プロフィール表示機能を利用すれば、コミュニケーション不全による業務の遅滞を防げ、部署の垣根を超えることで新しいアイデアが生み出される可能性もあるでしょう。
失敗しない!労務管理ツール導入のポイント
ここでは、労務管理ツールを導入するときのポイントをお伝えします。一口に労務管理ツールと言っても、ツールによって特性やできることが違います。失敗しないためのポイントを把握して、自社に最適なツールを導入しましょう。
自社の業務形態に合ったツールを導入する
労務管理ツールの多くは、勤怠管理機能や打刻機能などを搭載しています。ただ搭載している機能の種類はツールによってさまざまです。勤怠管理ツールの機能を最大限活かすには、自社の業務形態や業界に向いたツールを導入することが重要です。
たとえば業務管理ツールのなかには、生産計画機能や資材所要量計画機能、工程進捗管理機能などが搭載された製造業の導入に向いたツールもあります。また、医療業界や医療施設に特化した業務管理ツール、インターネット予約システムと連携できる宿泊業界向けのものもあります。自社の業務形態や業界に最適なツールを導入しましょう。
予算を決めた上で比較検討を行う
労務管理ツールの導入にあたって、考えるべきなのが予算です。労務管理ツールの導入にあたっての予算を決めた上で、予算の範囲内で最適なツールを選ぶという考え方をおすすめします。機能を多く搭載すればその分予算はどんどん膨らんでいくため注意が必要です。
たとえば従業員が5人程度の事業所の場合、必要最低限の機能を有していれば十分なことが多いです。規模の小さな事業所であれば、無料のものでも十分なケースもあるでしょう。導入費用や運用費用、オプションの費用などを精査し、コストパフォーマンスを考えた上で導入するツールを選びましょう。
セキュリティー・サポート体制を確認する
労務管理ツールは、導入すればそれで終了ではありません。ツールの導入はあくまでスタートで、適切に運用することで会社に利益をもたらせることが業務管理ツールの導入目的です。そのため、セキュリティーやサポート体制がしっかりしている会社からの導入をおすすめします。
従業員の個人情報の固まりである労務管理ツールは、万が一にも情報漏洩させるわけにはいかないものです。情報が暗号化されているか、情報セキュリティの国際規格である「ISO27001」などの認証を取得しているかは最低限確認しましょう。
適切に運用していくために、サポート体制が手厚いかも重要なポイントです。予算の範囲内でできるだけサポート体制が手厚い会社から導入してください。
まとめ
この記事では、労務管理における課題と主な業務内容、課題解決のポイントを明らかにし、役立つツールを紹介します。労務管理における課題は企業によって異なりますが、その多くは労務管理ツールを導入することで解決可能です。
とはいえ、数ある労務管理ツールを細かく分析し、自社に合っているかどうかを判断することは難しいことです。どういった労務管理ツールを導入すればいいかわからないという方はぜひアイミツにご相談ください。
どのような労務管理ツールがあるか詳しく知りたい方は、「労務管理システム一覧比較!22サービスの価格や機能、特徴を徹底比較」をご覧ください。
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