給与計算の小数点以下の処理で注意すべきこととは?
給与計算で時間外労働手当てを算入すると、どうしても小数点以下の端数が生じてしまうとお悩みではないでしょうか。また小数点以下の端数が生じた際に、切り捨てるのか切り上げるのか、どのように対処すべきなのかお困りの方も多いことでしょう。そこで今回は、
- 給与計算において小数点以下の端数が出た場合はどう対処するべきか
- 給与計算のミスをなくすためにはどうするべきか
この2つを中心に解説していくので、給与計算でお悩みの方はぜひ参考になさってください。
- 給与計算における端数や小数点以下の考え方・注意するポイントとは?
- 給与計算の端数や小数点以下の処理方法
- 会社で独自のルールを作ることも可能?
- 給与計算のミスをなくすために
- 端数処理もスムーズ!ミスをなくせる給与計算ソフト3選
- まとめ
給与計算における端数や小数点以下の考え方・注意するポイントとは?
まずはじめに、給与計算において「小数点以下の端数」とは、どのように捉えられるのか確認しましょう。
給与計算においては、労働基準法でどのように定められているかが重要ですが、労働基準法第24条第1項では「賃金は、その全額を支払わなければならない。」と定められています。つまり、給与計算を進める上で小数点以下の端数が生じた際に、勝手に切り捨てることは法律で禁じられているということ。給与は1円単位できっちり全額支払わなければなりません。給与計算である一定の額に満たない場合は端数の処理も認められていますが、基本的には勝手に端数分を切り捨てるのは許されていないことを押さえておきましょう。
給与額のみならず、給与額を算出する上で参照する労働時間に関しても、基本的には1分単位で厳密に計算しなければなりません。
給与計算の端数や小数点以下の処理方法
給与計算における小数点以下の考え方や押さえておくべきポイントをご紹介しましたが、ここからは実際にどのように処理すべきかを確認しましょう。
- 割増賃金計算の端数や小数点以下の処理
- 1ヵ月の賃金支払い額における端数や小数点以下の処理
- 遅刻や早退、欠勤などを取り扱う際の端数処理
の3つについて解説します。
割増賃金計算における端数や小数点以下の処理
時間外労働の割増賃金を計算する際は、該当する月の給与額から1時間当たりの賃金を算出し、それに1.25を乗じる必要があります。小数点以下の端数が出てしまった場合は、50銭未満であれば切り捨て、50銭以上であれば切り上げとするのが決まりです。1050.2円の場合は1050円、1050.7円の場合には1051円となる仕組み。1ヵ月当たりの合計額で算出した場合も同様です。
また「労働時間に関しても、基本的には1分単位で厳密に計算」と述べましたが、時間外労働に関してももちろん同様。しかし1ヵ月通算で算出する際は、30分以上1時間未満を切り上げる場合、30分未満を切り捨てることもできます。
つまり、仮に時間外労働時間が40時間20分だった場合、20分は切り捨てて40時間とすることが可能。その場合、他の月で50時間35分だった場合は35分が切り上げられるため、51時間が割増賃金の対象額です。
1ヵ月の賃金支払額における端数や小数点以下の処理
1ヵ月の給与総額を算出し、所得税や社会保険料などを差し引いた実際の賃金支払額に、100円未満の端数が生じることがあるでしょう。その場合、50円未満であれば切り捨て、50円以上であれば切り上げて計算することが可能です。
つまり、賃金支払額が55万1,020円の場合は、端数の20円が切り捨てられ、給与額は50万1,000円。一方、賃金支払額が55万1,070円の場合は70円が切り上げられ、実際に支払われる給与額は50万1,100円となる仕組みです。また、もしも1ヵ月の賃金支払額に1,000円未満の端数が出てしまった場合は、翌月の給与振り込みに繰り越すことも可能です。
これら1ヵ月分の賃金支払額に関する端数処理については、あらかじめ就業規則に記しておかなければなりません。万が一、就業規則内に端数の処理方法を記さないまま上記の処理を行えば、労働基準法違反のため注意しましょう。
遅刻・早退・欠勤の扱い
遅刻や早退、欠勤があった場合は、「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいて賃金を計算しなければなりません。つまり働いていない時間に関しては、給与を支払うことはできない決まりです。例えば、就業時間が9時から17時にもかかわらず10時に出勤した場合は、1時間分の賃金をカットして計算しなければなりません。これを遅刻早退控除と呼びます。
もし月給制・定時勤務において遅刻早退控除を計算しなければならない場合は、「1ヵ月当たりの給与額÷1ヵ月当たりの平均所定労働時間×遅刻や早退の時間=遅刻早退控除額」の計算式を利用しましょう。また遅刻・早退した時間は端数を切り捨てて10分や15分単位で計算するのではなく、必ず1分単位で計算するように注意しましょう。
会社で独自のルールを作ることも可能?
ここまで給与計算における端数・小数点以下の処理方法について解説してきましたが、法律によって決められている最低限のルールを破らなければ、その他の部分について企業の独自ルールを設けることは問題ありません。例えば、端数はすべて切り上げるというルールを設けても法律違反にはならないと言えます。一方で、無断遅刻などに対する罰則として、30分単位の切り捨てによる減給ルールを設けるパターンもあるでしょう。
法律の範囲内であれば独自のルールを定めることは何ら問題ありませんが、従業員ときちんと意見のすり合わせを行い、ルールを設ける際には必ず周知することを忘れないでください。
給与計算のミスをなくすために
給与計算には複雑なルールが多数盛り込まれており、どうしても給与計算ミスが発生してしまうもの。ここからは、複雑な給与計算であってもなるべくミスをなくすためにはどうすべきか、詳しくご紹介します。
正しい知識を身につける
給与計算のミスをなくすためにまず行うべきは、正しい知識をあらかじめ身につけておくこと。解説した内容はもちろん、給与計算に関してはさまざまなルールが存在します。労働基準法に則ったルールをきちんと把握しておかなければ、思わぬところで計算ミスをしてしまうでしょう。
最近の給与計算システムは非常に高性能で、これまでのように経理の知識が豊富でなくとも利用できるのは事実でしょう。しかし、基本的なルールや知識がまったく身についていない状況では、万が一システムの操作ミスで計算ミスが起こっていても気付けません。給与計算ミスにきちんと気付くためにも、あらかじめ基本的な知識を身につけておきましょう。
給与計算ルール・労働時間の管理方法を見直す
2つ目にあげられるのが、給与計算ルールや労働時間の管理方法を見直してみること。給与計算を複数人で行い担当分野がバラバラの場合は、給与計算ミスが起きやすい状況かもしれません。相対的にチェックできる人材がいないことから、ワンストップ対応するよりミスや漏れが発生しやすいのです。
そのような場合は、給与計算時に参照するチェックリストを作成する・ダブルチェック体制を徹底するなど、新たな給与計算ルールを設けると効果的でしょう。また給与計算時には勤怠データを用いますが、労働時間の管理方法にもこだわる必要があります。従業員全員分を一元管理できる勤怠管理システムを導入するなど、労働時間に関しても正確に管理できるよう徹底してください。
給与計算システムを見直し
給与計算システムをすでに利用している場合、そのシステムを本当に使いこなせているのか、自社にマッチしているのかなどを見直してみるのも大切です。「給与計算システムを導入すれば大丈夫」と胡座をかいてしまうのはNG。導入すれば給与計算業務が必ず効率化するわけではなく、給与計算システムであれば何でもいいわけではありません。
自社にマッチした給与計算システムなのか・現場で使いやすいシステムなのかが重要です。給与計算システムを導入しているにもかかわらずミスが目立つ場合は、従業員にとって使いづらいシステムの可能性があります。その他の給与計算システムも候補に入れ、無料トライアルなどを活用しながら使いやすいシステムに変更しましょう。
別記事「給与計算システムの選び方」では、給与計算システムのメリット・デメリットや、詳しい選び方を解説していますので、合わせてご覧ください。
人事情報を一元管理する
4つ目にあげられるのが、人事情報を一元管理すること。従業員の人事情報が変わるたび、給与計算にも変更が生じます。例えば従業員の昇給や降給をはじめ、パートから正社員に雇用契約が変更された場合、あるいは扶養人数や交通費などが変更された場合は、給与計算にも影響を及ぼすでしょう。
給与がこれまでより大きく変動する場合は改定届を作成する必要がありますが、このような人事情報の変更は担当者が把握しておく必要があります。人事情報をきちんと一元管理できていなければ対応漏れが出てしまうため、給与計算のミスへとつながってしまうかもしれません。人事労務システムを導入していない場合は、検討をおすすめします。
ペーパーレス化を促進し人的ミスを減らす
給与計算のミスをなくすために行うべきこととして5つ目にあげられるのが、ツール導入でペーパーレス化を促進し、人的ミスをできる限り減らすこと。
給与計算システムもExcelも使っておらず、給与計算用紙で手書き対応している場合、ツールを利用するよりも人的ミスが増えてしまいます。ちょっとした書き間違いなどが後々大きなトラブルに発展してしまうこともあるため、ぜひ各種ツールを導入してペーパーレス化を促進しましょう。人的ミスが減り、給与計算ミスの減少にもつながります。
端数処理もスムーズ!ミスをなくせる給与計算ソフト3選
ここからは、端数処理もスムーズに行えて計算ミスを減らすことのできる給与計算ソフトを紹介していきます。給与計算ソフトを見直したい方や、現段階ではExcelなどで給与計算を行なっているという方は、ぜひチェックしてください。
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料金
月400円/ユーザー -
初期費用
なし
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最低利用期間
なし
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最低利用人数
なし
ジョブカン 給与計算は、社労士の監修のもと豊富な機能が搭載されたクラウド型の給与計算ソフトです。同シリーズの労務管理システムや勤怠管理システムと連携して利用でき、給与計算や帳票作成の自動化が可能。保険料や所得税など各種控除額をはじめ、定額の残業代なども含めて自動で算出することができるため、給与計算に多くの手間がかかっているという企業にはうってつけでしょう。実際に導入した企業からは、給与計算にかかる時間が半減したなどといった喜びの声も寄せられています。
- 残業手当の自動計算機能
- 通勤手当の自動計算機能
- 社会保険料の自動計算機能
- 所得税の自動計算機能
- 住民税年度更新機能
- 各種手当や控除の計算設定
- チャットサポートあり
- メールサポートあり
- 電話サポートあり
- クラウド(SaaS)
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料金
月800円/ユーザー -
初期費用
なし
-
最低利用期間
なし
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最低利用人数
5人
人事労務freeeは、業種や企業規模も問わず、幅広い会社に導入されているクラウドサービスです。人事労務関連の業務についてこれ1つで対応できるのが大きな特徴で、給与計算をはじめ明細発行や振込、出退勤の打刻や従業員データの変更などをまとめて行うことができます。
転記作業がなくなることでヒューマンエラーが減るほか、等級変更があった場合などにはアラートが通知されるため、給与計算におけるミスをこれまでより減らすことができるでしょう。
- 残業手当の自動計算機能
- 通勤手当の自動計算機能
- 社会保険料の自動計算機能
- 所得税の自動計算機能
- 住民税年度更新機能
- 各種手当や控除の計算設定
- 導入支援・運用支援あり
- チャットサポートあり
- メールサポートあり
- 電話サポートあり
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以前に利用していたking of timeより使いやすいのと給与明細や源泉徴収票、給与振込先の登録など一括して全てを賄えるので。
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様々な勤務状態における入力方法が簡易で楽であるために、勤怠管理がやりやすい。また入力画面が見やすい。
ジンジャー給与
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料金
月500円/ユーザー -
初期費用
なし
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最低利用期間
12ヶ月
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最低利用人数
10人
ジンジャー給与は、人事システムや勤怠管理システムなどと柔軟に連携しながら利用できるクラウド型の給与計算ソフトです。データ連携によって給与計算を正確に行えるほか、給与計算を自動化できることにより大幅な効率化を実現。年末調整の計算も自動で行えます。IPアドレスの制限や操作ログの保管などセキュリティ面が充実している点が心強いでしょう。ユーザー1人につき300円〜というわかりやすくリーズナブルな料金体系も魅力です。
- 残業手当の自動計算機能
- 通勤手当の自動計算機能
- 社会保険料の自動計算機能
- 所得税の自動計算機能
- 住民税年度更新機能
- 各種手当や控除の計算設定
- 導入支援・運用支援あり
- チャットサポートあり
- メールサポートあり
- 電話サポートあり
まとめ
今回は、給与計算における端数や小数点以下の扱い方についてご紹介するとともに、給与計算ミスを起こさないためにはどうするべきか解説しました。給与計算には、労働基準法に則った細かなルールが数多く定められています。どれか1つでも見落としていると、思わぬ計算ミスにつながってしまうでしょう。
給与計算ミスをなるべく減らすためには、税率や保険料などに関しても対応できる給与計算システムがおすすめです。計算を自動化することで負担を大幅に軽減できるため、人員不足やミスの多発などでお困りの方は導入を検討してみましょう。給与計算ソフトについて詳しく知りたい方は、別記事「給与計算ソフトを比較・おすすめ解説」もご覧ください。
探すのに時間がかかる
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