給与計算における源泉徴収とは?源泉徴収税額の計算方法も解説
会社勤めの方はもちろん、経営者や個人事業主も源泉徴収の内容を把握しておくことが重要です。しかし、源泉徴収の仕組みは複雑で、給与や報酬を支払う相手によって計算方法や税率、控除額が変化します。要点に注意しながら計算、納付を行うのは簡単ではありません。そこで今回は、源泉徴収の基本的な知識から仕組み、対象となる所得、納付期限、計算方法について解説していきます。注意点も併せてご紹介しますので、ぜひ源泉徴収を行う際の参考としてください。
- 源泉徴収とは
- 源泉徴収の対象となる所得
- 源泉徴金額の納付期限
- 源泉徴収を行う流れ
- 源泉徴収で抑えるべきポイント
- 源泉徴収税額の計算方法
- エクセルで源泉所得税額を計算する方法
- 源泉徴収税額を計算する際に注意すべきポイント
- まとめ
源泉徴収とは
源泉徴収とは、給与や報酬などを支払う側が、受け取る側に代わってその給与や報酬にかかる税金をあらかじめ差し引いて国へ納税する制度のことです。
日本では所得税(個人の収入にかけられる国の税金)を自ら計算し、納税する「申告納税方式」が採用されています。
しかし、日本全体でこの方式による納税を行うと、納税側はもちろん国の負担が大きくなることから、これらの課題を解決する方法として源泉徴収が導入されました。
所得税における源泉徴収の仕組み
日本では、給与や報酬の支払いを受けた際に確定申告を行い、納税します。確定申告は年に1回です。しかし、この期間に一斉に申告されると、税務署では処理しきれず大変な混雑が予想されます。
また、1年間の所得税をまとめて納付するため、所得が多い人の負担も大きくなるでしょう。源泉徴収はこれらを解決するために、個人の代わりに定期的に納税できる制度として導入されました。
なお、月々の源泉徴収は給与額に基づいておおよその金額を控除しているため、毎年12月に「年末調整」で帳尻合わせを行います。
源泉徴収の対象となる所得
源泉徴収の対象となる所得は、給与や報酬などを含め以下のようなものが挙げられます。
- 各種手当や賞与などを含む給与
- 役員報酬や使用人への手当
- 弁護士、税理士への報酬や原稿料
- 銀行の預貯金や債券から得た利子
- 株式などの配当
- 退職金
- 受け取った側に利益が生じる現物の支給(無償や低い価格で譲り渡された物品や土地、建物など)
弁護士と税理士への報酬に関しては、個人事業主であり誰も雇用していないのであれば源泉徴収の必要はありません。なお、給与に関しては、正社員だけでなくパートやアルバイトも含むすべての従業員が対象であり、正社員と同様の方法によって計算されます。
源泉徴金額の納付期限
源泉所得税の納付は、基本的に源泉徴収を行った月の翌月10日までで、徴収した額を所轄の税務署に納付します。
たとえば、11月1日~11月30日までの給与で源泉徴収を行った場合は、12月10日までが納付期限。これは給与日にかかわらず、すべての事業所に共通しているものです。
ただし、給与を支給している従業員の数が常に10人未満の場合は、6ヵ月に1度の納付にできる特例があります。これは、小規模事業者の資金的な負担を減らすための措置であり、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を所轄の税務署に提出して承認を受けることが必要です。
源泉徴収を行う流れ
源泉徴収の流れとしては、書類などの準備、金額の計算、支払い(徴収)、納付の工程に分けられます。給与で源泉徴収を行う場合は、給与すべてが対象となるわけではありません。控除などを適用した上で行います。
とはいえ、どの控除を適用するかは従業員によって異なるため、実情を把握するために申告書を提出してもらうことが必要。次に課税所得を算出し、給与所得の源泉徴収額表を参照しながら額を確定させます。
確定した額は徴収を行い、「所得税徴収高計算書」に金額を記載した上で税務署もしくは銀行で納付。なお、納付書は対象となる給与や報酬によって様式が異なります。給与と資格者報酬は「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」、そのほかの報酬は「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」です。
源泉徴収で抑えるべきポイント
次に、源泉徴収を行う際に注意したいポイントについてご紹介します。源泉徴収の対象となる取引・支払先の判断の仕方には注意しなければなりません。取引は法律で定められたもののみ、支払先は個人・法人関係なく行われます。以下で詳しく確認していきましょう。
法律で定められた取引のみ源泉徴収をする
まず個人への支払いや報酬に関しては、すべての取引が源泉徴収の対象とはなりません。源泉徴収の対象となるのは、所得税法や租税特別措置法などで決められている取引のみです。
このことから、商品の製造・販売を行っている個人事業主などとの取引の際も、上記の法律が適用されないケースでは、支払いの際に源泉徴収を行う必要はありません。事前にこれらの法律を確認し、源泉徴収が必要かどうかを確認してください。
支払先が個人以外でも源泉徴収が行われるケースがある
源泉徴収は個人事業主への報酬支払のほかにも、法人や海外居住者が対象となる場合があります。ただし法人の場合は、本来源泉徴収の対象となる利子や配当で源泉徴収を行う必要はありません。なぜなら、利子や配当として入金されたものはすでに源泉徴収が行われているからです。
この場合徴収方法などは詳しく確認しなくても問題ありませんが、会計を行う場合のデータ入力が通常とは多少異なるため注意が必要です。
源泉徴収は個人・法人関係なく行う
個人・法人以外であっても、一定の個人を除けば官公庁や町内会、非営利組織などの属性に関係なく対象となる取引では源泉徴収の対象です。相手の職業や属性ではなく、取引が法律で対象とされているかどうかで考えましょう。
源泉徴収税額の計算方法
源泉徴収の税額を計算する場合は、まず課税所得を算出する必要があります。課税所得を求める計算式は以下の通りです。
支払った給与総額(基本給・残業代・各種手当)-非課税の手当-社会保険料=課税所得
また、課税所得を算出するには給与所得控除額を知る必要があるため、国税庁が発表している給与所得控除額が記載されている一覧表をチェックしてください。一覧表には給与の水準や扶養している人数ごとの税額が表記されています。
月払いは「月額表」、日・週払いは「日額表」、賞与は「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を確認しましょう。計算式にあるように、手当の中には非課税のものがあるため、国税庁から公表されているこれらも併せてチェックすることが大切です。
給与所得控除
給与所得控除とは、給与所得者が経費の代わりにみなし経費として差し引かれる額のことです。会社が収益を計算する場合に、収入から経費を差し引くのと同様の考え方と言っていいでしょう。
たとえば給与が162万5,000円以下であれば、控除額は55万円になり、それ以上では収入金額の40~10%に10万円をマイナス、もしくは8~110万円をプラスした金額が控除されます。上限は195万円です。
ただしこれらは毎年変更が行われるため、国税庁のホームページで間違いのないよう確認してください。
非課税の手当
非課税の手当については国税庁が定めており、以下のようなものが挙げられます。
- 一定の額以下の通勤手当・旅費・出張費
- 業務を行う上で必要となる接待費や交通費
- 結婚出産の祝い金や葬式の香典など冠婚葬祭に必要な費用、見舞金
- 療養になった場合の休業補償
源泉徴収の際に、これらに該当する手当があれば給与から差し引いてください。
エクセルで源泉所得税額を計算する方法
ここまで源泉徴収額の計算方法についてご紹介してきましたが、基本的に計算はExcelなどの表計算ソフトで行われるかと思います。
Excelで計算を行う場合は、国税局のホームページにあるその年の「給与所得の源泉徴収税額表」のExcel版をダウンロードしましょう。別シートに計算式を組み、対象となる従業員の控除後の給与等の額と扶養親族の数を入力することで簡単に計算できます。
源泉徴収税額を計算する際に注意すべきポイント
次に、源泉徴収額を計算する際に注意すべきポイントを紹介します。100万円を境に変化する税率、源泉徴収における消費税の取り扱い方、源泉徴収の対象となるものに対して注意が必要です。これらをしっかりと把握した上で計算を行わないと、実際の金額から大きくずれる可能性があります。
100万円を基準に税率が異なる
源泉徴収額は、相手に支払う金額が100万円以下か、100万円を超えるかによって税率が変化します。100万円以下であれば税率は10.21%、100万円を超える分に関しては20.42%の2段税率です。
例えば70万円の報酬であれば「70万円×10.21%=7万円1,470円」、120万円の報酬であれば「(100万円×10.21%)+((120万円-100万円)×20.42%)=14万2,940円」となります。
消費税も含めた金額を対象に計算を行う
源泉徴収額は、原則として消費税も含めた金額を対象として算出を行います。ただし、請求書に報酬金額と消費税を明確に区分して表記した場合に限って、消費税を抜いた金額で源泉徴収を行うことが可能です。
たとえば、10万円の報酬を支払う場合、通常は11万円が源泉徴収の対象となるため、徴収額は1万1,231円です。一方で消費税を区分して表記した場合、10万円が徴収の対象となるため、徴収額は1万210円まで減らせます。そのため消費税はなるべく区分するのがおすすめです。
源泉徴収の対象をしっかり確認する
源泉徴収の対象となるのは報酬や給与だけではありません。取材費や交通費、謝礼などを名目として支払った場合も源泉徴収の対象となります。
ただし、報酬を支払う側が直接交通機関やホテルなどで支払いを行い、なおかつ常識の範囲内の料金であれば対象とはなりません。
また、前述したように物品による支払いを行った場合でも報酬や給与とみなされるため、これらを金額に変換し課税所得に上乗せする必要があります。
まとめ
本記事では源泉徴収の基本的な知識や対象となる所得、納付期限、源泉徴収額の計算方法を紹介するとともに、注意すべきポイントについてもご紹介しました。
源泉徴収は対象となる範囲が広く、税率も金額によって大きく変化します。さらに、控除する金額も個人によって異なるため、丁寧に確認しながら控除額を計算することが大切です。
なお、これらの計算は給与計算ソフトで自動化できます。源泉徴収を効率化させたい方は、別記事「給与計算ソフトを徹底比較」もぜひご覧ください。
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