【給与計算】社会保険料の算出方法は?アウトソーシング先についても解説
社員の給与計算では、社会保険料の算出も欠かせません。社会保険料は、年に1回の算定のほか、不定期で発生する社会保険料率の改定に合わせて計算する必要があります。この記事では、給与計算における社会保険料の計算方法について詳しく解説していきます。後半ではおすすめの給与計算ソフトについてもご紹介。ぜひ参考にしてください。
- 給与から源泉徴収(天引き)される社会保険4つ
- 給与計算で社会保険料を算出する方法
- 社会保険料の計算時に気をつけるべきポイント
- 社会保険料の計算をスムーズにすすめる方法
- おすすめの給与計算ソフト3選
- まとめ:社会保険料の算出にはアウトソーシング・システムの導入がおすすめ!
給与から源泉徴収(天引き)される社会保険4つ
給料から源泉徴収(天引き)される社会保険料は、「健康保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料」「雇用保険料」の4つです。この4つは、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の3つをまとめた「健康保険」と、「雇用保険」に分けて呼称する場合もあります。ただし、給与明細ではそれぞれ記載が必要なため注意しましょう。
社会保険の種類 | 詳細 |
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健康保険 | 病気・怪我・出産・死亡時の保険として生活を保障する制度。 |
厚生年金保険 | 定年後の年金受給に加えて、万が一の障害、死亡の際に遺族年金を受給するための制度で、会社員は全国民が加入する「国民年金」にプラスして加入する。 |
介護保険 | 40歳以上の会社員が支払う保険で、病気や怪我などによって介護が必要となった際の生活を支えるための制度。 |
雇用保険 | 失業や育児休業などの理由によって働けなくなった際の生活や再就職を支えるための制度。 |
給与計算で社会保険料を算出する方法
ここからは、社会保険料を算出するための具体的な方法について説明していきます。支払いのミスや抜け漏れを防ぐために、まずは概要と計算のタイミングを理解しておきましょう。
まずは標準報酬月額を算定する
社会保険料は、標準報酬月額をベースに算出されます。標準報酬月額とは、会社員の社会保険料を計算しやすくするために、給料の月額を区分(等級)ごとに設定した計算用の金額のことです。
基本的には入社時と年に1度の見直しによって算定されます。給与に大幅な変更があったなど、一定の要件を満たした場合は随時改定されることも。
「健康保険」と総称される健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料は、年に1度どの会社でも実施される算定手続きによって算出されます。4月・5月・6月の給料の平均額(=標準報酬月額)を計算し、年金事務所に提出する手続きが算定であり、給与額の増減に合わせて社会保険料が確定します。
算定手続きが完了すると、2〜3ヵ月後に「標準報酬月額決定通知書」が届くため、申請内容とズレがないかを確認した上で給料に反映。保険料の控除は9月分から始めます。
ただし、会社によっては9月に徴収する場合と10月に徴収する場合があるため、事前に自社の給与規定を確認しながら進めましょう。
1.健康保険
健康保険料は前述のとおり、算出した標準報酬月額によって変動する社会保険です。収入が高ければ高いほど保険料も高くなり、反対に収入が低ければその分保険料負担も抑えられます。
具体的な金額は、加入している健康保険組合ごとの保険料一覧を参考にしましょう。健康保険組合の場合は、加入する都道府県によって保険料が異なります。
また、社員が居住している都道府県ではなく、本社がどの健康保険支部に加入しているのかによって金額が決まるため注意が必要です。
また、加入する健康保険組合によっては、給与の増減にかかわらず健康保険料が一律の場合もあります。医師・弁護士・建設業者・理美容師などが加入する職域国保では特にその傾向が強いため、事前に確認しましょう。
2.厚生年金保険料
厚生年金保険料も、算出された標準報酬月額によって変動します。厚生年金保険料の額は、日本年金機構による保険料一覧を参考にしましょう。都道府県ごとの金額差はなく、全国一律で同じ保険料一覧が使用されています。
なお、厚生年金保険料は年齢にかかわらず、社会保険に加入している人であれば全員控除が必要です。「年金」という名前の性質上、控除開始年齢が20歳以上だと決められていると感じる方もいるかもしれませんが、加入年齢に下限はありません。
年齢に関係なく、就職した時点で厚生年金の加入対象となるため、あらかじめ対象者を把握しておく必要があります。
3.介護保険料
介護保険料も、標準報酬月額によって変動する社会保険です。満40歳以上かつ社会保険に加入している社員から徴収されます。
つまり、40歳未満であれば控除されない保険料なので、万が一控除してしまった場合は速やかに返還しなければなりません。事務手続きの手間を増やしてしまうため、ミスがないよう注意しましょう。
介護保険料は、65歳以上の「第1号被保険者」と40歳から64歳までの「第2被保険者」によって算出方法が異なるため注意が必要です。
また、健康保険同様、健康保険組合によっては介護保険料が一律で設定されている場合があります。基本的には加入している健康保険組合の保険料一覧を参照するのが、もっとも確実な方法です。
4.雇用保険料
雇用保険料は、雇用保険料率にその月の賃金総額をかけて算出されます。そのため、年に1~2回しか変動しない健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料とは異なり、毎月計算が必要です。
また、雇用保険料率は、年度や事業の内容により異なります。2021年の場合、一般事業における雇用保険料率は1,000分の3です。農林水産・清酒製造・建設の場合は1,000分の4であり、一部の業種においては受給する割合の高さや時期により不安定になりやすいことなどが要因となり、雇用保険料率が高くなっています。
また、失業率や実質賃金をもとに、全業種毎年保険料率が変わるため、ニュースをチェックしておくことが大切です。
社会保険料の計算時に気をつけるべきポイント
ここからは、社会保険料を計算する際に気をつけるべきポイントについて説明していきます。社会保険料の計算では、それぞれの計算方法と不定期で発生する社会保険料率の改定に関する情報の確認が重要。それ以外にも社員や自社の都合によって社会保険料率を随時改定しなければいけないタイミングがあります。詳しく確認していきましょう。
従業員の年齢
介護保険の計算では、社員の年齢に注意が必要です。社会保険に加入している場合、健康保険・厚生年金保険・雇用保険を徴収する必要があります。前述の計算方法を利用して控除していけば問題ありません。
しかし、介護保険料に限っては、加入している健康保険組合にかかわらず社員が40歳になる月から徴収が開始されます。社員の年齢・誕生日順に並び替えたデータの作成や、40歳を迎えるタイミングでアラートを出すシステムの導入など、漏れがないよう対策が必要です。
昇給・降給が発生した際
昇給・降給が発生し、給与が変動する際にも注意が必要です。少額の変動であれば問題ありませんが、標準報酬月額が2等級以上変わる場合は、算定手続きによって新たに「月額変更届」を提出する必要があります。
同時に変更した標準報酬月額等級分、社会保険料も変更となるため、変更月に合わせた処理が必要です。人事評価・賞罰や、契約社員が正社員となり給料体系が変わった際、産休・育休から復帰して時短勤務に変更する際などは、とくに注意しましょう。
手当が発生した際
手当が発生する際も、社会保険の変動がないか確かめておきましょう。家族手当、扶養手当、家賃手当、健康手当、勤続手当、皆勤手当などを支給することで毎月の金額がベースアップ(もしくはダウン)する場合には、昇給・降給時同様、月額変更届の提出が必要です。
ただし、インセンティブの支給やまとまった通勤手当を一度に支給するなど、1ヵ月限定の増減であれば月額変更届による再算定は必要ありません。雇用保険料の変動にだけ注意しながら、いつもどおり計算すれば問題ないでしょう。
社会保険料の計算をスムーズにすすめる方法
ここからは、社会保険料の計算をスムーズに進めるための方法をご紹介します。自社にかかる手間や負担を減らしながら正しく計算するためには、社会保険制度や労務管理に関する専門知識を持つ人に頼るのがおすすめです。もしくは、専門知識がなくても使いやすいツールを導入し、自社内で簡単に給与を計算できる方法を確立していきましょう。
- 社会保険労務士にアウトソーシング
- 専門知識を持ったフリーランスにアウトソーシング
- 給与計算システムを導入
方法1:社会保険労務士にアウトソーシング
社会保険労務士と顧問契約を結び、給与計算業務をアウトソーシングする方法があります。社会保険労務士は社会保険制度や人事労務管理に関するスペシャリストであり、難関国家試験を突破した専門家です。依頼方法は社労士事務所との契約のほか、個人の社労士と専属契約を行うことも可能。
制度そのものの仕組みにも詳しいため、万が一社員との間にトラブルが発生した際や、就業規則を改定したい際にも頼もしい存在です。労務・総務・人事などのバックオフィスをトータルサポートしてもらうことで、強力なパートナーとなるでしょう。ただし、顧問契約料が高い場合もあるため注意が必要です。地域や社労士のスキルによって費用が変動するため、事前にしっかり確認しておきましょう。
方法2:専門知識を持ったフリーランスにアウトソーシング
給与計算や労務管理の実績が豊富なフリーランスにアウトソーシングするのもひとつの方法です。社労士と顧問契約を締結するよりも費用を抑えられます。業界での就業経験が長い人や、自社が加入している健康保険組合に詳しい人なら、安心して任せられるでしょう。
一方で、相手の社会的信用を見抜き、どの業務を依頼するかなど、自社にも依頼に関する知識やノウハウが必要な点には注意が必要です。また、事前に機密情報や個人情報を含む管理方法をヒアリングし、情報漏洩のリスクに対応できるかどうかも確認しなければなりません。とくに、日常的にフリーランスを利用していない会社の場合は、最初からすべてをアウトソーシングせず、基本的な計算項目だけ手伝ってもらうなど段階的な導入をおすすめします。
方法3:給与計算システムを導入
給与計算システムやソフトを導入し、自社内で給与計算を行う方法です。給与計算ソフトを導入すれば、給与計算だけでなく、算定や労働保険料の計算に必要な賃金台帳をすぐに出力できます。年末調整・勤怠管理まで対応できるシステムも少なくありません。
専門知識がない担当者でも使いやすいシステムを選択すれば、社内の業務負担も削減できます。また、自社内に継続してノウハウを蓄積しやすいため、長期的に考えると専門家へのアウトソーシングでコストをかけるよりも、トータルコストを抑えられるでしょう。今後、外注費用を抑えたい会社や、さらなるDX化を推進させたい会社は、給与計算システムもご検討ください。
関連記事:給与計算ソフトを徹底比較!2023年のおすすめは?
おすすめの給与計算ソフト3選
ここからは、おすすめの給与計算ソフトをご紹介していきます。給与計算ソフトによっては、社会保険料の計算や、見落としがちな社員の生年月日などを自動算出してくれる機能もついています。また、社会保険料率の変更や算定の時期にアラートを出してくれる機能も。自社に合ったソフトを導入し、効率的に給与計算を行いましょう。
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料金
月800円/ユーザー -
初期費用
なし
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最低利用期間
なし
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最低利用人数
5人
人事労務freeeは、給与計算、保険料計算、勤怠管理、年末調整、入退社手続き、マイナンバー管理、会計および経費精算連携などをトータルで行える給与計算ソフトウェアです。中小企業における導入率No.1を掲げており、豊富な実績を誇るサービスとして知られています。
サポート体制が充実しているほか、専門用語の解説や算定時期のアラート機能も完備。労務管理初心者でもわかりやすいUX/UIが徹底されているため、複雑な手続きも見える化できます。人事労務に関する作業時間を減らしたいケースにもぴったりです。
また、賃金台帳・出勤簿・労働者名簿の自動出力機能があるため、産休手当金・育休給付金・傷病手当金申請の際にも便利です。さらに、書類の記入方法や社会保険料の計算方法など、基礎知識の情報を発信しているため、社労士の手を借りることなく内製化の実現も可能でしょう。
- 残業手当の自動計算機能
- 通勤手当の自動計算機能
- 社会保険料の自動計算機能
- 所得税の自動計算機能
- 住民税年度更新機能
- 各種手当や控除の計算設定
- 導入支援・運用支援あり
- チャットサポートあり
- メールサポートあり
- 電話サポートあり
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以前に利用していたking of timeより使いやすいのと給与明細や源泉徴収票、給与振込先の登録など一括して全てを賄えるので。
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様々な勤務状態における入力方法が簡易で楽であるために、勤怠管理がやりやすい。また入力画面が見やすい。
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料金
お問い合わせ -
初期費用
なし
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最低利用期間
なし
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最低利用人数
なし
Doremingは、勤怠管理・給与計算に特化したソフトウェアで、シンプルでわかりやすいツールを導入したい会社にはとくにおすすめです。社員の社会保険料を自動計算できるだけでなく、シフトや勤怠情報を入力するだけで税金などを計算できるため、少ない工数で振り込み額を把握できます。
また、給与明細の自動表示や、スタッフごとの支払い履歴表示にも対応可能です。情報をエクスポートすれば賃金台帳としても利用できるため、ハローワークや健康保険組合、年金事務所への提出が必要な場面にも活用できるほか、賞与計算や年末調整にも使用できます。
賞与にも社会保険料がかかることを考えれば、一元管理しやすいツールを選定するというのも重要なポイントです。年末調整の際には扶養家族や保険料控除情報を入力するだけで、申告書作成に必要な数値を確認できます。
- 残業手当の自動計算機能
- 社会保険料の自動計算機能
- メールサポートあり
- クラウド(SaaS)
- モバイルブラウザ(スマホブラウザ)対応
- 通信の暗号化
- シングルサインオン
- 給与(賞与)の振込一覧表出力機能
- 源泉徴収票の作成機能
- 賃金台帳の作成機能
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料金
お問い合わせ -
初期費用
なし
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最低利用期間
なし
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最低利用人数
なし
ARDIOは、給与計算・社会保険料計算などの労務管理に特化したソフトウェアです。1973年に発売された老舗システムとして、度重なる法改正にも迅速に対応してきた実績があります。
また、社会保険労務士が監修しているシステムでもあり、昨今注目が集まっている電子申請システムにも対応。年次業務としてボリュームが大きい労働保険料計算にも対応しているため、社会保険計算に関する内容をトータル管理できるのもメリットです。
システムエンジニアやインフラエンジニアによる個別でのオンボーディングサポートもあり、システムの扱いに慣れていない人でもスムーズに導入することが可能。自社が抱える課題に沿った個別の設定にも対応できるため、困ったときに相談できるビジネスパートナーとしても頼もしいでしょう。
- 残業手当の自動計算機能
- 社会保険料の自動計算機能
- 所得税の自動計算機能
- 各種手当や控除の計算設定
- 導入支援・運用支援あり
- 電話サポートあり
- オンプレミス(パッケージ)
- ISMS
- Pマーク
- 操作ログ取得
まとめ:社会保険料の算出にはアウトソーシング・システムの導入がおすすめ!
社会保険料の計算は、ミスが許されない上に専門知識が必要な業務です。万が一間違いがあった場合には、社員への返還や修正申告など複数の手間が発生します。会社への信頼が落ちることにもつながりかねません。
手間をかけずに正確な計算をしたい場合は、社労士やフリーランスへのアウトソーシング、もしくは給与計算・社会保険料計算に長けたシステムの導入がおすすめです。複数のアウトソーシング先やツールを比較・検討し、自社に合ったものを導入しましょう。お悩みの際はぜひアイミツの無料相談もご利用ください。
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