テレワークにおける人事評価の進め方とは?事例から学ぶ対策方法
近年、労働者がそれぞれの事情に合わせて柔軟に働けるよう、働き方改革が推進されています。その一環として、テレワークを導入する企業も増えました。一方で、テレワークでは人事評価の難しさが課題となっています。そのため、テレワークを導入する際には、人事評価制度を事前に整備しておくことが重要だと言えるでしょう。
本記事ではテレワークの導入を検討している方のために、人事評価の進め方や評価時のポイントについて解説していきます。ぜひご覧ください。
- テレワークのメリット・デメリット
- テレワークで発生する評価制度に関する課題
- なぜテレワーク下での評価制度を考える必要があるのか
- テレワークにおける成果主義の導入には注意が必要
- テレワークにおける評価制度の在り方
- テレワークにおける人事評価の成功事例
- 人事評価を行う際のポイント
- まとめ
テレワークのメリット・デメリット
テレワークを導入する際には、そのメリットとデメリットの両方を理解しておかなければなりません。社員が状況に合わせて働き方を選択できる一方で、そのマネジメントが難しくなるという面があります。以下で詳しく見ていきましょう。
テレワークのメリット
テレワークを導入すれば、社員に柔軟な職場環境を提供できます。個人の事情に合わせた働き方を選択できるため、離職率の低減にも期待できるでしょう。
また、居住地にとらわれずに働けることで、企業にとっても人材を確保しやすくなるというメリットがあります。毎日出社する必要がなくなるため、交通費や通勤時間の削減も可能です。
加えて、災害などで社屋が被害を受けた場合も、テレワークであれば業務を継続できます。テレワークはBCP対策としても有効です。
テレワークのデメリット
テレワークは、出社して仕事する場合と比較すると、どうしてもコミュニケーションが不足しやすいという点がデメリットでしょう。
テレワークでは、チャットや電話、オンライン会議ツールなどを活用しながらコミュニケーションを取らざるを得ません。実際に会って働く場合と比べると、社員同士がコミュニケーションをとる頻度が低下しやすいのは事実です。
また、会社の外で業務データを扱うため、情報漏えいなどのセキュリティリスクもあります。従来の方法では、労務管理や人事評価が難しくなる点もデメリットだと言えるでしょう。
テレワークで発生する評価制度に関する課題
テレワークを導入するには、人事評価に関連する課題も解決しなければなりません。テレワークにおける人事評価の課題としては、勤務プロセスの評価の難しさや、人事プロセスの遅延、評価方法のばらつきなどが挙げられます。以下で詳しく見ていきましょう。
勤務プロセスの評価が困難
出社して働く場合は、管理者が部下の働きぶりを直接見て評価できますが、テレワークでは従来の方法で勤務プロセスを評価することが難しいです。
人事評価では、成果だけではなく、積極性などの仕事に対する姿勢も考慮される場合がほとんどでしょう。しかし、テレワーク環境下では、部下の仕事の進め方や勤務態度をチェックするのは容易ではありません。
場合によっては、成果物や実績だけで部下を評価しなければならない可能性もあります。
人事プロセスの遅延
人事プロセスの遅延もテレワークの課題として挙げられます。社員同士が直接顔を合わせて働く場合であれば、口頭伝達で済む簡単な連絡でも、テレワークではチャットや電話を使用しなければなりません。
また、人事評価のプロセスには管理職だけでなく、人事担当者など複数の社員がかかわってきます。テレワーク下では、従来と比べると担当者同士がスムーズに連携を取れなくなる可能性も。
結果として、人事プロセスが遅延してしまう恐れがあると言えます。
評価方法のばらつき
テレワークでは、人事評価方法がばらついてしまう可能性があります。
先に解説したとおり、テレワーク中の社員の勤務態度を確認するのは困難です。評価方法をきちんと定めないままテレワークを導入すると、成果のみで部下を評価する管理者と、ビデオ会議やチャットなどを通して勤務態度を判断しようとする管理者に分かれてしまう場合もあるようです。
このように、人事評価の公平性が失われてしまう可能性がある点もテレワークの課題だと言えます。
なぜテレワーク下での評価制度を考える必要があるのか
テレワークをはじめて導入する企業では、社員が出社して働くことを前提に評価制度が設けられているケースが多いと言えます。
しかし、従来の人事評価制度をそのままテレワーク下で運用しても、社員を適切に評価できません。たとえば、営業部門などの数値目標を設定しやすい部署であれば、成果を重視する評価方法の導入も可能かもしれません。一方で、管理部門などの単純な数値の比較だけでは評価が難しい部署では、成果を重視する人事評価は適さないでしょう。
テレワークを導入するのであれば、人事評価制度の見直しも必要です。評価者のスキルアップを図るほか、適切に目標を設定し、成果報告できる仕組みの整備も欠かせません。企業によっては、評価制度の大幅な見直しが必要になる場合もあるでしょう。
テレワークにおける成果主義の導入には注意が必要
テレワークにおける成果主義の導入には注意が必要です。厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000690830.pdf 参照)では、テレワーク勤務の社員と出社して働く社員で評価方法を分ける場合は、テレワークの希望者に対し、評価方法について説明するのが望ましいとされています。
また、成果に重点を置く評価方法を取り入れる場合は、テレワーク勤務の社員と出社して働く社員を同じ方法で評価できるとも記されています。
しかし、いずれにせよテレワークを導入する際は、人事評価に対する社員の不安を払拭しなければなりません。あらかじめ、評価制度や賃金制度について明示する必要があります。
もちろん、成果主義を導入するのであれば、「働きぶりを確認できない」などの理由によってテレワーク勤務の社員が不当な評価を受けないように注意しなければなりません。
テレワークにおける評価制度の在り方
テレワークの環境下で公平な人事評価を実施するためには、テレワークに合わせた人事評価制度の整備が必須です。評価項目の見直しや目標管理制度の導入、評価方法の統一など、評価制度を整備しておきましょう。以下で解説していきます。
テレワークに合わせた評価項目を設定する
テレワークでは部下の働きぶりを直接確認するのが難しいため、成果が重視されやすい傾向にあります。とはいえ、人事評価における成果の比重が大きくなりすぎるのは問題です。事前にテレワークに合わせた評価項目を設定しなければなりません。
テレワークを導入するのであれば、定期的にビデオ会議ツールを使用した面談を実施し、業務への取り組み方や進捗などについてヒアリングを行うとよいでしょう。
成果だけでなくプロセスも評価対象にする
テレワークを導入する際には成果だけでなく、プロセスもきちんと評価できる体制を整えましょう。
極端な成果主義は、社員のモチベーションを低下させてしまう可能性があるだけでなく、業務によっては成果のみでは適切に評価できない場合もあります。
テレワークを導入している企業の中には、成果だけではなくKPIの達成度を評価項目に取り入れることによって、プロセスを評価している会社もあります。
目標管理制度を導入する
目標管理制度とは、社員自身が目標を設定し、達成度に応じて評価する方法です。個人目標は、経営目標とリンクさせるように設定します。個人の目標が達成されれば、経営目標の達成にも近づくというのが目標管理制度の考え方です。
テレワーク下で適切な人事評価を実施するには、適切な評価項目の設定と評価方法の統一が欠かせません。目標管理制度を導入すれば、両方の課題をクリアできるでしょう。
評価方法を統一する
人事評価の方法が不明瞭な状態でテレワークを導入してしまうと、管理者によって評価方法がばらついてしまう可能性があります。
評価方法を統一しなければ、公平に社員を評価できません。適切な評価を受けられなければ、社員が不満を感じるのも当然です。
テレワークを導入する前には、必ず評価方法を統一しておきましょう。もちろん、テレワーク環境で適切に部下を評価するためには、管理者のスキルアップも欠かせません。
業務プロセス評価と成果主義をバランス良く採用する
テレワークでの人事評価では、業務プロセス評価と成果主義のバランスが重要です。
人事評価の比重が成果に偏りすぎてしまうと、社員が疲弊してしまう恐れがあります。一方で、プロセスのみを評価し、成果が人事評価に反映されなければ、実際に成果を上げている社員は不満を感じるでしょう。また、プロセスばかりを評価していては、組織としての目標を達成できない可能性もあります。
自社の状況に合わせて、業務プロセスへの評価と、成果主義のバランスを整えましょう。
裁量労働を可視化できる仕組みづくりを行う
テレワークでは、業務プロセスの確認が難しいため、裁量労働制を採用する企業も少なくありません。
裁量労働制とはみなし労働時間制の一種で、業務の進め方や時間配分を管理者が具体的に指示することが難しい場合に認められている労働形態です。働く社員としては、業務にかける時間や取り組み方を自分で決められるのがメリットです。
しかし、裁量労働では特定の社員に業務負担が偏ってしまう恐れがあるため、可視化する仕組みづくりが欠かせません。
テレワークにおける人事評価の成功事例
あしたの人事の事例紹介ページ(株式会社あしたのチーム https://www.ashita-team.com/jinji-online/evaluation/9936#i-7 参照)によると、半導体や電子機器部品の受託シミュレーションサービスを提供するSiM24では、シミュレーション業務を自宅で実施できる環境を整備した上でテレワークを導入したそうです。
人事評価では、勤務時間に見合った成果物ができているかどうかを評価しています。テレワークの導入によって、さまざまな事情で出勤が難しい高スキル人材の活用を目指しているとのこと。
また、菓子・食品メーカーのカルビーでは、ライフワークバランスと成果主義の両立を目指し、段階的にテレワークを導入。働き方改革への取り組みが評価され、厚生労働大臣賞(輝くテレワーク賞)を受賞しました。
人事評価を行う際のポイント
テレワークで適切に人事評価を行うためには、いくつかのポイントを押さる必要があります。また、面談を実施し、社員が自身の成果をPRできる機会を設けることも大切です。ここからは、テレワーク勤務で人事評価を行う際のポイントについて解説しましょう。
部下が自己PRできる機会を設ける
テレワークを導入する場合、社員が自身の成果や仕事への取り組みをPRできる機会を設けることが大切です。
直接上司にアピールできる機会があることで、人事評価に対する不安を軽減できます。必要に応じて助言を与えるなど、部下をサポートするようにしましょう。
また、業務への取り組み方を振り返れば、社員自身の意識向上にもつながります。勤務状況を把握するためにも、定期的に面談を実施すべきです。
評価とフィードバックは必ずセットで行う
評価とフィードバックは必ずセットで実施しましょう。人事評価は、給与などの待遇を決めるためだけの仕組みではありません。評価をもとにフィードバックを行うことによって、社員の成長を促すという目的もあります。
評価のみを行い、フィードバックが何もないとなると、社員も何に力を入れればよいのかわからなくなるでしょう。現状の課題と本人が持つ強みなど、しっかりとフィードバックを行うようにしましょう。
また、フィードバックを行うことで、自社が社員に何を求めているのかを明確化することもできます。
評価項目を明確にする
テレワークを導入する際は、評価項目を明確にしておくことも重要です。成果を評価する項目はもちろん、プロセスを評価するための項目も設けておく必要があります。
業務プロセスを評価するには、目標を設定しなければなりません。どの業務をいつまでに完了させるなど、具体的な期限や内容を決めます。さらに、目標どおりに業務を遂行できているか、仕事の速さはどうか、などの評価項目を明確化しておきましょう。
ITツールを導入する
社員を適切に評価するためにも、ITツールの活用がおすすめです。出社を前提とした評価方法では、テレワークで勤務している社員の働きぶりを可視化するのは難しいと言えます。テレワークでも適切に社員を評価するには、人事評価システムの活用が欠かせません。
クラウド型の人事評価システムであれば、テレワークでもスムーズに人事評価を実施できます。さらに、勤怠管理機能を備えていれば、勤務状況なども簡単に把握することが可能です。
まとめ
テレワークにおける人事評価の進め方や対策方法について解説しました。
テレワーク勤務の社員を適切に評価するには、テレワークに対応した人事評価制度の整備が不可欠です。適切かつ効率的に社員を評価するためにも、人事評価システムを活用しましょう。
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