キャリアアップ助成金って何?正社員化コースや申請の流れを解説
キャリアアップ助成金とは、非正規雇用の労働者を正社員化させたり待遇を改善したりすると受け取れる助成金です。数百万円程度の助成金を受給できることもありますが、審査は厳しくなっています。今回は、キャリアアップ助成金における正社員化コースを中心に、概要・種類・条件・手続きの流れなどを解説します。
- キャリアアップ助成金とは何か?
- 非正規雇用労働者を正社員化した場合のキャリアアップ助成金
- 非正規雇用労働者の待遇を改善した場合のキャリアアップ助成金
- 人材開発支援助成金を活用して正社員化コースの助成金額を加算!
- キャリアアップ助成金の申請手続きの流れ
- キャリアアップ助成金を申請する際の注意点
- まとめ
キャリアアップ助成金とは何か?
キャリアアップ助成金制度とは、非正規雇用の労働者の正社員化(キャリアアップ)や処遇改善の促進を図ることを目的に創設された助成制度です。非正規雇用労働者の身分や収入が安定することで、モチベーションアップに繋がり生産性向上への寄与が期待できます。事業主は、場合によっては数百万円程度の助成金を受け取れるため、労使双方にとってメリットのある制度です。なお、キャリアアップ助成金は「正社員化支援」と「処遇改善支援」の2種類に大別できます。
非正規雇用労働者を正社員化した場合のキャリアアップ助成金
「正社員化支援」のキャリアアップ助成金とは、非正規雇用の労働者を正社員として直接雇用・転換した際に支給される助成金です。 「正社員化コース」「障害者正社員化コース」の2コースがあり、支給対象者や支給条件、支給額などが異なります。支給額は中小企業と大企業によって異なり、中小企業の方が優遇されます。正社員化コースは加算措置制度もあり、内容を正確に理解することが大切です。以下では、正社員化コースと障害者正社員化コースの詳細について解説します。
正社員化コースの詳細
キャリアアップ助成金における正社員化コースは、有期雇用非正規労働者と無期雇用非正規労働者が支給対象になります。有期雇用非正規労働者とは、契約社員や派遣社員、パート、アルバイトなど雇用契約期間の定めのある非正規労働者を指します。無期雇用非正規労働者とは、無期転換申込権を行使するなどして、期間の定めのない労働契約を締結している非正規労働者のことです。有期雇用非正規労働者を正社員化すると、中小企業だと1人あたり57万円の助成金が支給されます。大企業の支給額は1人あたり42万7,500円です。一方、無期雇用非正規労働者を正社員化した際の支給額は、有期雇用非正規労働者よりも低くなり、中小企業だと1人あたり28万5,000円が支給されます。大企業の支給額は21万3,750円です。なお、正社員化することで生産性向上が認められる場合は支給額がアップします。有期雇用の場合の支給額は中小企業では1人あたり72万円で、大企業では1人あたり54万円です。無期雇用の場合、中小企業では1人あたり36万円で、大企業では1人あたり27万円が支給されます。さらに、労働者が母子家庭の母もしくは父子家庭の父の場合は、最大で12万円の加算措置が受けられます。
障害者正社員化コースの詳細
キャリアアップ助成金における障害者正社員化コースは、重度身体障害者や重度知的障害者、精神障害者、高次脳機能障害と診断された労働者などが支給対象になります。支給対象の障害者を正社員化すると、障害の程度に応じて助成金が支給されます。中小企業の場合、重度身体障害者などの重度障害者を正社員化したときの支給額は最大120万円です。大企業の場合は、最大90万円が支給されます。なお、重度以外の身体障害者や発達障害者、難病患者などを正社員化した場合も助成金が支給されますが、支給額は低くなります。中小企業の場合の支給額は最大90万円で、大企業の場合は最大67万5,000円です。
キャリアアップ助成金を受給するには、正社員化を円滑に進めることが重要なポイントになってきます。正社員化を円滑に進めるには、従業員の評価業務を的確に行える人事評価システムの導入をおすすめします。人事評価システムの機能やメリットについて知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
人事管理システム(HCM)を導入するメリデメとは?【徹底解説】
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非正規雇用労働者の待遇を改善した場合のキャリアアップ助成金
「処遇改善支援」のキャリアアップ助成金とは、非正規雇用の労働者の処遇を改善するための取り組みを行った企業に支給される助成金です。「賃金規定等改定コース」「賃金規定等共通化コース」「賞与・退職金制度導入コース」「選択的適用拡大導入時処遇改善コース」「短時間労働者労働時間延長コース」の5コースがあり、各コースで支給金額などが異なります。続いては、処遇改善支援を目的とするキャリアアップ助成金の5つのコースについて解説します。
賃金規定等改定コースの詳細
賃金規定等改定コースは、非正規雇用労働者の基本給の賃金規定を改定し、2%以上の増額をした際に支給される助成金です。支給額は支給対象となる非正規雇用労働者の人数によって異なります。中小企業の場合、対象労働者数が1~5人だと1人あたり3万2,000円で、6人以上だと1人あたり2万8,500円が支給されます。大企業における支給額は、1~5人だと1人あたり2万1,000円で、6人以上だと1人あたり1万9,000円です。なお、賃金規定を改定したことで生産性向上が認められる場合は支給額がアップします。中小企業の場合、対象労働者数が1~5人だと1人あたり4万円で、6人以上だと1人あたり3万6,000円が支給されます。大企業における支給額は、1~5人だと1人あたり2万6,250円で、6人以上だと1人あたり2万4,000円です。さらに中小企業の場合は、3%以上5%未満の増額をすると1人あたり最大1万8,000円が加算され、5%以上の増額をすると1人あたり最大3万円が加算されます。また、職務評価の手法を活用して賃金規定を改定した場合も加算措置が受けられます。
賃金規定等共通化コースの詳細
賃金規定等共通化コースは、非正規雇用労働者と正規雇用労働者が共通の業務を行う場合の賃金規定を新たに作成し、適用した際に支給される助成金です。支給額は、中小企業だと1事業所あたり57万円で、大企業だと1事業所あたり42万7,500円が支給されます。賃金規定等改定コースと同様に、賃金規定を新たに作成・適用したことで生産性向上が認められる場合は支給額がアップします。生産性向上が認められる場合の支給額は、中小企業だと1事業所あたり72万円で、大企業だと1事業所あたり54万円です。なお、賃金規定等共通化コースを利用できるのは、1事業所あたり1回のみに限られます。2回目からは利用できないため注意が必要です。
賞与・退職金制度導入コースの詳細
賞与・退職金制度導入コースは、賞与・退職金制度を非正規雇用労働者に対して導入した場合に助成金が支給される制度です。賞与や退職金を積み立てたり、支給したりしたときに助成されます。支給金額は中小企業の場合は1事業所あたり38万円で、大企業の場合は1事業所あたり28万5,000円が支給されます。賞与制度か退職金制度のいずれかを導入することで生産性向上が認められる場合は支給額がアップし、中小企業における支給額は1事業所あたり48万円です。大企業の場合は1事業所あたり36万円が支給されます。なお、賞与制度と退職金制度を同時に導入する場合は加算措置が受けられ、さらに支給額がアップします。加算措置が受けられる場合の加算額は、中小企業の場合は1事業所あたり16万円で、大企業は1事業所あたり12万円です。生産性向上が認められる場合の加算額は、中小企業は1事業所あたり19万2,000円で、大企業は1事業所あたり14万4,000円になります。賞与・退職金制度導入コースを利用できるのは1回だけで、2回目からは利用できません。
選択的適用拡大導入時処遇改善コースの詳細
選択的適用拡大導入時処遇改善コースは2022年9月30日までの時限措置であり、現在は廃止されていますが参考のために解説します。選択的適用拡大導入時処遇改善コースは、働き方を見直すために労使双方が社会保険の適用拡大を合意し、これまで社会保険制度の対象外であった非正規雇用労働者を社会保険の被保険者にしたときに助成金が支給される制度です。中小企業における支給額は1事業所あたり19万円で、大企業の場合は1事業所あたり14万2,500円が支給されます。非正規雇用労働者が社会保険の被保険者になったことで生産性向上が認められる場合は、さらに支給額がアップします。生産性向上が認められる場合の支給額は、中小企業だと1事業所あたり24万円で、大企業だと1事業所あたり18万円です。なお、非正規雇用労働者を社会保険の被保険者にするだけでなく、基本給を増額する場合には加算措置が受けられます。加算額は基本給の増額率によって異なり、増額率が高くなるほど加算額も増大します。中小企業の場合、加算額は1人あたり最大16万6,000円で、大企業は1人あたり最大12万5,000円です。
短時間労働者労働時間延長コースの詳細
短時間労働者労働時間延長コースは、短時間労働者の労働時間を延長させて処遇を改善するとともに、社会保険の被保険者にしたときに助成金が支給される制度です。1週間の所定労働時間を3時間以上延長し、社会保険の被保険者にした場合、中小企業だと1人あたり22万5,000円で、大企業だと1人あたり16万9,000円が支給されます。生産性向上が認められる場合は、中小企業だと1人あたり28万4,000円で、大企業だと1人あたり21万3,000円にアップします。なお、支給される金額は2024年9月30日までになっていることに注意が必要です。また、1週間の所定労働時間を1時間以上2時間未満、2時間以上3時間未満延長した場合も、2024年9月30日までは暫定的に助成金が支給されます。延長時間が1時間以上2時間未満の場合、中小企業だと1人あたり5万5,000円が支給され、生産性向上が認められる場合は1人あたり7万円にアップします。大企業の支給額は1人あたり4万1,000円で、生産性向上が認められる場合の支給額は5万2,000円です。
人材開発支援助成金を活用して正社員化コースの助成金額を加算!
キャリアアップ助成金における正社員化コースは、人材開発支援助成金を活用すると助成金額がさらに加算されます。人材開発支援助成金とは、雇用している労働者に対して、職務に関連する訓練を行った場合に受講料や賃金の一部が助成される制度です。1人あたりの加算額は、有期雇用労働者は9万5,000円、無期雇用労働者は4万7,500円で1人あたりの加算額は、有期雇用の労働者は9万5,000円で、無期雇用の労働者は4万7,500円になり、大企業と中小企業による違いはありません。例えば中小企業に勤務する有期雇用非正規労働者が、人材開発支援助成金による訓練を受けたあとに正社員化すると、合わせて66万5,000円が支給されます。
57万円(正社員化コース)+ 9万5,000円(人材開発支援助成金)= 66万5,000円
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キャリアアップ助成金の申請手続きの流れ
キャリアアップ助成金の申請手続きは計画的に行うことが必要です。「正社員化支援」と「処遇改善支援」の両コースとも基本的な流れは同じであり、正社員化・処遇改善を実施する前日までに「キャリアアップ計画」を作成し、所管の労働局に提出します。そのあと、正社員化支援の場合は就業規則を改定した上で正社員への転換を行い、6ヵ月間継続的に雇用し賃金を支払います。賃金は3%以上増加していることが必要です。6ヵ月間の賃金の支払いが終われば支給申請を行い、審査に通過すれば助成金が支給されます。処遇改善支援も同様で処遇改善の取り組みを実施し、6ヵ月間の賃金の支払いが終われば支給申請を行い、審査に通れば助成金が支給されます。
正社員化して助成金を受給するには、従業員の評価業務を推進しなければならず、勤怠管理の徹底が重要です。そのためには、勤怠管理システムが大変役立ちます。勤怠管理システムの導入メリットを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
勤怠管理システムとは?メリットと事例を具体的に解説【2022最新版】
キャリアアップ助成金を申請する際の注意点
キャリアアップ助成金を申請する際には、正社員化や処遇改善をする前日までにキャリアアップ計画を作成し提出しなければなりません。正社員化や処遇改善をしてからではなく、実施前に作成・提出しなければならない点に注意しましょう。また、正社員化や処遇改善をするには就業規則を改定して明記しなければならず、実施するだけでは助成金は支給されません。なお、正社員化支援の支給申請手続きは、6ヵ月間の賃金の支払いが終わった日の翌日から起算して2ヵ月以内に行うことが必要です。期限後に申請しても受理されないため注意しましょう。支給申請後は審査が行われますが、キャリアアップ助成金は不正受給が増えていることもあり、審査は非常に厳しくなっています。審査は数ヵ月程度要することもあり、支給申請してもすぐに助成金は支給されません。お金を受け取るまでには時間がかかることを知っておきましょう。
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まとめ
キャリアアップ助成金は「正社員化支援」「処遇改善支援」があり、正社員化支援は「正社員化コース」「障害者正社員化コース」があります。正社員化・処遇改善をスムーズに推進するためには、従業員の評価業務を適正に行わなければなりません。そこでおすすめするのが、勤怠管理ができる人事管理・人事労務管理システムの導入です。人事関連業務の効率化を図り、キャリアアップ助成金の受給にも役立つシステムについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。



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