ナレッジマネジメントとは?わかりやすく解説
ナレッジマネジメントという言葉を聞いたことがあっても、具体的にはどのようなことをするのか、どのような効果があるのかは分からないという人は少なくありません。
しかし、企業におけるナレッジマネジメントの重要性は着実に伸びています。この記事をお読みの方も、ナレッジマネジメントを企業で取り入れていこうと検討されているのではないでしょうか。
そこでこの記事では、ナレッジマネジメントとは何なのか、その方法や実現できることをはじめ、実際の成功事例や失敗しないためのポイントを紹介していきます。
- ナレッジマネジメントとは?
- 注目される背景
- ナレッジマネジメントで実現できること
- ナレッジマネジメントで必要な知識
- ナレッジマネジメントの手法
- ナレッジマネジメントツール導入の成功事例
- ナレッジマネジメントで失敗しないためのポイント
- ナレッジマネジメントで生産性を高めよう
ナレッジマネジメントとは?
はじめに、ナレッジマネジメントとは何なのか、概要を確認していきましょう。
企業におけるナレッジマネジメントとは、社員が日々業務を遂行していくなかで得られたナレッジ=知識を、個人にとどめず社内全体やチームで共有していくことによって、社内全体の生産性を高めるという経営手法の1つ。日本語では、「知識管理」や「知識経営」と訳されます。
詳しくは後述しますが、ナレッジマネジメントを行うことによって期待される効果は以下の通りです。
・属人化を回避できる
・従業員への教育を効率化できる
・社内全体の生産性を向上できる
・新規事業の開発や既存事業の改善につながる
多くのメリットが期待できるナレッジマネジメントは、企業における情報システムを構築する上で必要不可欠。企業価値を高められるだけでなく人的コスト削減にもつながることから、世界の多国籍企業の内約8割がナレッジマネジメントを実施しています。
注目される背景
ナレッジマネジメントが注目されるようになったのには、どのような背景があるのでしょうか。
最初にナレッジマネジメントを提唱したのは、一橋大学大学院の野中郁次郎教授ら。1990年代に日本発の経営理論として発表されて以来、さまざまな研究や取り組みが行われてきました。
野中氏が指摘したのは、知識を用いた想像の重要性。ノウハウやスキル、顧客情報などをただ積み上げるだけでなく、そこから想像し新たに活用する重要性を説きました。
つまりナレッジマネジメントは、知識を個人で活用するだけでなく、組織にとって有効と思われる知識や情報を提供することで、新たな知識が生み出され活用されるシステムのことを指しているのです。
多くの企業に取り入れられるようになったのは、終身雇用が前提ではない、企業の在り方も変化したから。従業員のスキルを限られた時間のなかで向上させる重要性が増しただけでなく、顧客ニーズが多様化したこともあって、情報共有のフローを最適なしくみづくりから行うことが広まっていったのです。
ナレッジマネジメントで実現できること
ナレッジマネジメントとは何なのか、概要や成り立ち、注目されてきた背景まで分かったところで、ナレッジマネジメントではどのようなことを実現できるのかチェックしていきましょう。
属人化の回避
ナレッジマネジメントの実施によって実現できることの1つに、属人化の回避があげられます。
たとえばとあるベテラン社員がさまざまな業務をこなしていた場合、ナレッジの共有がされないままだと、その社員にしか分からないことが数多く残されてしまいます。そうなると、その社員が退職した際や異動となった際には、引き継ぎにおいて多くの手間がかかってしまいます。
しかしあらかじめナレッジを共有しておけば、ほかの従業員もノウハウや情報を随時吸収でき、業務の属人化を回避することが可能です。
教育の効率化
ナレッジマネジメントの実施によって実現できることとして、教育の効率化があげられます。
社員一人ひとりに対し教育を行っていくのは、簡単なことではありません。日々の業務をこなしながら育成も進めていかなければならず、時間が足りないと困ることもあるでしょう。
しかし、ナレッジマネジメントを実施しスキルやノウハウをストックしておけば、従業員が個人的にナレッジを活用できるため、教育にかかるコストをできる限り抑えることが可能です。
生産性の向上
ナレッジマネジメントの実施によって、生産性の向上も実現できます。
もしも業務中に不明点があったとき、ナレッジが共有されていないと、わざわざほかの従業員に聞かなければならず、場合によっては同じ質問を繰り返してしまうこともあるなど、業務の効率化を妨げてしまうかもしれません。
しかしナレッジマネジメントを実施し、マニュアルなどを用意しておくことによって、誰かに聞くことなく業務を進められます。全体の作業効率アップ、生産性の向上を期待できるでしょう。
事業の開発・改善
ナレッジマネジメントを実施することで、新規事業の開発や既存事業の改善も行えます。
社内でナレッジの共有・蓄積のしくみを構築すれば、蓄積したナレッジを応用するあるいはナレッジをもとに改善などして、新たなナレッジを生み出すことが可能です。新たなナレッジを生み出せることは、新規事業の開発にもつながるということ。もちろんナレッジを用いて既存事業をさらにプラッシュアップできるはずです。
▼ノウハウの共有に関してはこちらの記事でも解説しています。合わせご覧ください。
ノウハウ共有におすすめのツール│メリット・比較表も
ナレッジマネジメントで必要な知識
ナレッジマネジメントで実現できることを紹介してきましたが、ナレッジマネジメントで取り扱うナレッジ(=知識)には2種類あります。それぞれどのような内容なのかチェックしていきましょう。
2種類の知識タイプ
企業におけるナレッジマネジメントでは、「暗黙知」と「形式知」の2つの知識タイプを扱います。
暗黙知
暗黙知とは、個人がこれまでに蓄積してきた知識やノウハウのほか、ベテランだからこそ分かる「長年の勘」と言われるような知識のこと。個人のなかで蓄積されていくため、きちんと文章化などを行わないと知識として表面化されません。
暗黙知を具体的な知識に転換し共有することが重要であり、共有された知識を活用して新たな知識を創出することが、ナレッジマネジメントの基本的な在り方といえます。
形式知
一方形式知とは、言葉や文章などによって具体的に表現されている知識のこと。マニュアルやデータなどは形式知と言えるでしょう。企業内でナレッジマネジメントを行う際には、従業員の一人ひとりが抱えている暗黙知を形式知に変えていかなければなりません。知識を形式知に転換することによって、はじめて組織にて活用できます。
ナレッジワーカーの役割
企業においてナレッジマネジメントを行う際、非常に重要なのがナレッジワーカーという定義です。
ナレッジワーカーとは、知識の提供者であるナレッジコントリビューターとしての側面と、知識を利用するナレッジユーザーとして側面の2つの側面を持つ存在です。
企業においては、知識を利用するだけでなく供給する、あるいは知識を用いて貢献できることが重要といえます。そのため、従業員が皆ナレッジユーザーであるだけではなくナレッジコントリビューターでもあるという組織作りをしていかなければなりません。
そうでなければ、「自分だけノウハウを得られればいい」という利己的な考えが蔓延ってしまい、知識の蓄積や改善につながっていかないでしょう。
SECIモデル
ナレッジマネジメントを企業で進めていく際には、基本的な理論としてSECIモデルを取り入れ活用していく必要があります。
SECIモデルとは、暗黙知の発生から形式知化などをふまえた、知識の共有と発見のプロセスのこと。以下の4つから成り立つので1つずつチェックしていきましょう。
共同化(Socialization)
共同化は、業務をはじめとする何らかの経験を通じ、個人が抱えている暗黙知を他人へと伝えていくプロセスです。たとえば、パティシエ見習いの従業員が、先輩のパティシエが活用しているスキルや技能、さらには知識などを、日頃の製造業務をともにしていくなかで身に着けるようなことを指します。
この場合、細かくマニュアルなどで暗黙知を共有してもらっているわけではなく、共に働くことにより知識が移転していっているだけなので、暗黙知が形式知化に至っていないのが特徴です。
表出化(Externalization)
表出化とは、個人が所有する暗黙知を具体的な言葉として表出していくプロセスを指します。たとえば、ミーティング内で自身の暗黙知を述べる、仕事について報告するなどといった工程があてはまるでしょう。
共同化までは暗黙知は暗黙知のままとして伝えられていますが、表出化の段階においてやっと暗黙知の形式知化が行われ、組織内に知識を共有していくプロセスへと入っていきます。
連結化(Combination)
連結化とは、表出化プロセスを経て形式知化したナレッジに異なるナレッジを連結させる(=組み合わせていく)ことにより、新たなナレッジを生み出していくプロセスです。連結化ではなく結合化という場合もあります。
たとえばこれまでに自分が行ってきた業務フローに、新たなプロセス、あるいはシステムなどを追加することによって、業務の効率化につながるといった具合です。形式知と形式知を組み合わせ、新たな形式知を生む段階といえるでしょう。
内面化(Internalization)
内面化とは、新たに得た形式知化されたナレッジを、自分のものとしていくプロセスです。たとえば、最初はマニュアルを見ながらシステム操作を行っていたにも関わらず、いつの間にか参照せずとも操作できるようになっていた場合、形式知の内面化が行われています。
内面化されるということは、形式知が再び暗黙知へと転換されているということ。再び暗黙知化したナレッジは、個人のなかでさらに深堀が進んでいき、いつしかまた共同化へと移っていきます。SECIモデルの流れを繰り返していくことにより、組織における知識資産の増大が可能です。
ナレッジマネジメントの手法
ここまでナレッジマネジメントにおける重要なプロセスを説明してきましたが、具体的にはどのような方法でナレッジマネジメントを実施するべきなのでしょうか。ここからは、1つずつ具体的な方法をチェックしていきましょう。
Excelの活用
ナレッジマネジメントを行う手法としてもっとも身近なのが、Excelを活用するという方法です。
方法としては非常にシンプルで、Excelを用いて図や表、グラフなどを用いながらナレッジを残していくだけ。Excelの基本的な使い方さえ分かっていればすぐに始められますが、いざ共有されているナレッジを参照したいという場合に、わざわざそのExcelファイルを探し出さなければなりません。
管理や共有があまりスムーズではないので、できる限りExcelによるナレッジ共有は避けた方がいいでしょう。
ナレッジマネジメントツールの活用
おすすめなのが、ナレッジマネジメントツールを導入する方法です。ナレッジマネジメントツールを導入すれば、情報の共有はもちろん検索、参照までが非常にスムーズに行えるでしょう。
また、ナレッジマネジメントツールを言っても以下の4つに大きく分けられます。
グループウェア型
テキスト形式でナレッジを共有できるだけでなく、WordやExcelなどのファイルもあわせて共有し、チャット機能やメッセージ機能、ブログ機能なども併用しながらナレッジの共有を行えるのがグループウェア型のナレッジマネジメントツールです。
さまざまな機能を活用して情報共有を行いやすいため、全体への周知や個別の通知まで幅広く活用できます。社内におけるコミュニケーションツールとしても役立つ側面があるでしょう。
CRM型
CRMとは、「Customer Relationship Management」、つまりは顧客関係管理のこと。会社が抱える顧客情報を管理するためのツールを指します。
スキルやノウハウなどのナレッジではなく、顧客に関する情報やナレッジを管理できるしくみを構築したい場合、CRMは必須と言っても過言ではありません。顧客との商談スケジュールや商談内容、toCの場合にはこれまでの購買履歴なども確認でき、カスタマーサクセスの推進に貢献するでしょう。
知的情報検索ツール型
知的情報検索ツール型のナレッジマネジメントツールの場合、会社内のプライベートネットワークにて情報共有を行うイントラネット、さらに社外や提携先、取引先にまで範囲を拡張させたエクストラネット、社内情報検索に特化したエンタープライズサーチの3つに分けられます。
基本的には社内の知的情報検索に特化しているため、業務におけるちょっとした疑問を誰に尋ねたらいいのか分からない場合や、必要なファイルがどこに保存されているのか分からないなどという場合に役立つツールです。
ヘルプデスク型
ヘルプデスク型のナレッジマネジメントツールとは、従業員からの質問・問い合わせに対し、その疑問について知っている人が答えてくれるものを指します。
たとえば製品に関してや製品の製造工程に関してなどのほか、法律に関することなどはほかの従業員には分からないことが少なくありません。そのため、ヘルプデスク型のナレッジマネジメントツールを導入しておけば、答えられる人や該当する部署の人が質問に応じられるため、非常にスムーズに疑問が解決します。
ナレッジマネジメントツール導入の成功事例
ここからは、ナレッジマネジメントツールを実際に導入した企業が、どのように活用していったのかを紹介していきます。ナレッジマネジメントを成功させるにはどうするべきなのかお悩みの場合、ぜひ参考にしてください。
株式会社フルスピード
Qastの導入事例ページ(株式会社フルスピード https://qast.jp/archives/4921参照)によると、webマーケティング事業を中心に展開しているフルスピード社は、ナレッジマネジメントツールの「Qast」を利用しています。
Qastを導入する前は、情報の蓄積や共有はまったくできておらず、わざわざ「情報の共有」という件名でメールを送る、ナレッジサイトをわざわざ制作するなどといった方法を取ってきたもののすべて頓挫。さまざまな理由でうまく回らず、共有する際のルールが陳腐化されてしまい、なかなか課題が解決できなかったところでQastを導入しました。
Qastを導入した理由は、ナレッジシェアに特化したシンプルなUI。簡略的で使いやすにも関わらず必要な機能が揃っているというポイントが決め手でした。
導入後は、これまでに課題として残っていた情報の共有や蓄積が解消され、どの事業部であっても共通の情報をシェアできるようになりました。一人ひとりのナレッジシェアだけでなく事業間のナレッジシェアにも活躍しており、全体を通してナレッジのレベルも向上していっていると言います。
株式会社ぐいっと
web制作やグラフィックデザインなどの事業を展開しているぐいっと社。NotePMの導入事例ページ(株式会社ぐいっと https://notepm.jp/blog/1588参照)によると、チャットツールを用いてナレッジシェアを行っていたものの、重要な情報が流れてしまうため、蓄積していくためのツールを探していました。
また、社内のファイルサーバーにてファイルを管理していましたが、誰がいつ更新したかも分からず、検索性も低いために悩んでいたと言います。
そんなときに導入を決めたのが「NotePM」でした。NotePMを導入した理由は、誰でも簡単に使いこなせるような分かりやすさと、スマートフォンを使って外出中にも閲覧・記入ができるということ。
導入してからは社員教育にかける時間を短縮でき、これまでにはファイルの所在や新しい情報の検索に手間取っていたものの、NotePMのおかげで「ここを見ればわかるという場所」の構築に成功しました。情報の集約化に成功したことにより、情報のばらつきがなくなったことも大きなメリットと語っています。
株式会社セカツク
戦略的アウトソーシングカンパニーとして、営業支援事業を中心に展開しているセカツク社。flouuの導入事例ページ(株式会社セカツク https://flouu.work/case-study/12OI0oISwv7BU0p6NFZMJL参照)によると、ナレッジマネジメントツールとしても活用できる「flouu」を導入しています。flouuを導入するきっかけは、プライズ社(flouu開発・提供)が新たなサービスを開発したとのことで、試しに使ってみようと思ったから。すると、それまでにナレッジ共有で課題と感じていなかったものたちが、業務の効率化を妨げていたのだと気づいたのです。
それまでは、1日のスケジュールを共有する会議を行う際、その会議で使用する日報の作成時に、メモ帳やWordなどを利用してチャットツールで送るというやり方を採用していましたが、flouuの導入後は一変。1つのドキュメントを共同で編集しながらコミュニケーションを取り、共有しあってそれで終了というシンプルさに変貌を遂げました。アウトプットを出すまでの時間が大幅に短縮されたと言います。
チームでだけでなく個人でタスク管理ツールとしても用いることができるなど、さまざまなシーンで活用できているようです。
ナレッジマネジメントで失敗しないためのポイント
最後に、ナレッジマネジメントを行う際に失敗しないためのポイントをチェックしていきましょう。
ナレッジリーダーの存在
ナレッジマネジメントを実施する際には、ナレッジリーダーの存在が不可欠です。
SECIプロセスを誰もが踏めるよう主導・促進し、組織におけるナレッジシェアを活性化できる人材をアサインしましょう。スピード感をもってナレッジの共有、さらには活用までできる人材であれば安心です。
しかし、ナレッジ共有は1人で行えるものではありません。誰もがナレッジリーダーであるがごとく意識を持ち、ナレッジシェアの環境を盛り上げていくことが重要でしょう。
情報提供と閲覧を分ける
ナレッジマネジメントを行う際には、2段階データベース法を用いたナレッジマネジメントツールを活用するのがおすすめです。
ナレッジシェアにおいて最大の課題と言っていいのが、情報提供と共有が面倒ということ。情報提供の方法が面倒で悩まされている一方、情報利用者は情報を探すのに一苦労してしまうなど、負の連鎖がナレッジシェアを衰退させてしまいます。
情報を簡単に共有したい、共有された情報を簡単に検索・閲覧したいというニーズに応えられるのが、2段階データベース法を用いたナレッジマネジメントツール。データベースを分けることによって、それぞれの要望に応えられます。
ナレッジ共有のしくみづくり
ナレッジマネジメントを成功させる場合には、ナレッジを共有するしくみをきちんと作っておかなければなりません。
従業員のなかには、自分がコツコツと築いてきたノウハウや知識を、周囲にシェアするメリットを感じない人もいるかもしれません。そのため、いつでもシェアしやすいよう社用スマートフォンやタブレットを配布する、ナレッジシェアを行ってくれる人をきちんと評価できるよう人事評価制度を見直すなど、対策を取りましょう。
誰もが簡単に情報共有・情報閲覧を行えるように、操作性が高く分かりやすいナレッジマネジメントツールを導入するのも非常に重要です。
ナレッジマネジメントで生産性を高めよう
この記事では、ナレッジマネジメントとは一体何なのか、実現できることや実際の成功事例、ナレッジマネジメントを行う際の注意点などを紹介してきました。
社内全体の生産性を高めるためには、ナレッジマネジメントが非常に効果的です。業務の属人化防止をはじめ、社員教育の効率化、事業の開発や改善などまで行えるため、ナレッジマネジメントを行わない手はないでしょう。
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