建設業の電子契約の注意点・法律・おすすめシステムを徹底解説
コスト削減や業務効率化など、紙による契約にはなかった新たなメリットを生み出す電子契約は、昨今あらゆる業界で導入が進んでいます。今回は「建設業×電子契約」をテーマに、知って得する情報やよくある疑問についてわかりやすく解説しました。ぜひ参考にしてください。
- 建設業でも電子契約は可能?
- 建設業の契約で電子契約可能なもの
- あいまいな部分もスッキリ!グレーゾーン解消制度とは
- 建設業で利用できる電子契約システム
- 建設業で電子契約を利用するメリット
- まとめ:建設業も電子契約を活用して効率化を目指そう
建設業でも電子契約は可能?
結論から述べると、建設業でも電子契約は可能です。建設業界では従来、建設業法の中で「書面による契約」が義務付けられていため、契約にはすべて紙を用いるとともに、署名もしくは押印が必要でした。
しかし、2001年の建設業法改正によって、従来の書面による手続きに加え、電子契約も許容されました。電子契約サービスの導入をお考えの建築業者は「電子契約サービスの選び方・おすすめシステム解説」をご覧ください。
建設業法が改正されるまで
建設業界ではもともと、建設業法第19条において「あらゆる請負契約の内容を書面で執り行うこと」を当事者に対して義務付けていました。
しかしながら、建設工事ではひとつのプロジェクトに対して複数の専門工事会社がかかわるケースが多いため、会社間で交わされる請負契約の数も比例して多くなる傾向にあります。もちろん、それらの契約はすべて書面で行う必要があり、手間や負担、コスト面で大きな課題を抱えていました。
そんな中、2001年4月に建設業法が改正。第19条3項にて「政令で定める相手方の承諾」「国土交通省令で定める措置」の2点をクリアしている場合は、電子契約が認められることとなったのです。これにより、「紙のみ」だった契約を電子契約に移行することで、従来の課題が解決されるという期待が高まりました。
建設業の契約で電子契約可能なもの
建築業においては現在、定期借地契約・定期建物賃貸借契約などの一部契約を除き、ほとんどの契約で電子契約を用いることが可能です。ここでは、建築業界で用いられることの多い契約・書類の概要や電子契約化の可否について解説します。
発注書・発注請書
発注書・発注請書はいずれも電子契約が可能です。これらの契約書を紙で作成した場合は「印紙税法で定められた課税文書」として収入印紙を貼らなくてはいけないケースがありますが、電子契約の場合は印紙税そのものが不要となります。電子契約は、法律における「課税物件に掲げる文書」ではないからです。発注書・発注請書を電子契約に切り替えることによって、収入印紙代を節約できるだけでなく、貼り忘れによる税の未納付防止にも役立ちます。
請負契約
改正された建設業法19条の中で認められた電子契約に関する項目の中では、「建設工事の請負契約の当事者」と明記されており、請負契約は電子契約が可能であることを示しています。建設工事の分野では、複数の元請け・下請けがかかわっているケースが多いため、請負契約を電子契約に切り替えることで、各社の負担を軽減できるだけでなく、郵送料や収入印紙代の削減も可能です。
売買契約
建設工事においては、資材や設備の売買に際して売買契約を締結するケースが多く見受けられます。そして、これらも電子契約が可能です。土地・建物の売買契約に関しては、宅地建物取引業法内で「重要事項説明の対面取引」「書面の交付」が義務付けられている影響で、電子契約化が難しいと言われていました。
しかしながら、2021年5月12日に成立したデジタル改革関連法では「押印義務の廃止・書面の電子化」が認められることとなり、現在では電子契約化に向けた国土交通省の運用実験も進むなど、電子契約化実現への期待が高まっています。
賃貸借契約
建設工事の世界では、重機の貸し借りなどに際して賃貸借契約が結ばれるケースがありますが、一部の契約を除いて賃貸借契約も電子契約が可能です。ただし、不動産の不動産賃貸借契約については、宅地建物取引業法にて書面での発行が義務付けられています。2017年から国土交通省が電子契約化実現に向けた運用実験を進めていますが、現状では基本的に電子化できないため注意が必要です。
保証契約
保証契約とは、「債務者が債務の支払をしない場合に、債務者に代わって支払をする義務を負う約束をする契約」のことで、銀行融資や土地の賃貸などの際に締結されるものです。保証契約は、民法第446条第2項で「書面でしなければ、その効力を生じない」と定められている一方で、次項第3項では「電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する」と定められており、電子契約が可能です。
あいまいな部分もスッキリ!グレーゾーン解消制度とは
グレーゾーン解消制度とは、現行の法・規制の適用範囲が不明確な場合に、具体的な事業計画に対してあらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度です。新たな事業や取り組みをはじめる前に、現行の法・規制に抵触していないかを省庁に照会して確認することで、「あいまいな部分を解消できる」のが最大のメリットです。電子契約をはじめ、各種規制には解釈が難しいものも多いため、事業者の不安解消や新たな取り組みの推進を目的に、行政主導のもとで創設されました。
建設業ではどのような点がグレーゾーンだったのか
建設業における電子契約の可否や条件は、建設業法で示されていますが、具体的に「どんなシステムが基準に適合するのか?」が明示されておらず、この点がグレーゾーンでした。そこで、グレーゾーン解消制度を用いることでシステムの基準・適合について確認したのが「クラウドサイン」「WAN-Sign」という2つのシステムです。両者はそれぞれ2018年と2019年に「技術的に適合する」という判断のもと、建設業請負契約に有効な電子契約システムであることが確認されました。
建設業で利用できる電子契約システム
建設業で利用できる電子契約システムについて、実際にグレーゾーン解消制度を用いて「技術的に適合する」と判断し得るだけの結果を得た2つのシステムをご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
クラウドサイン
-
料金
月10,000円 -
初期費用
なし
-
最低利用期間
なし
-
最低利用人数
1人
クラウドサインは、弁護士監修のもと、日本の法律に特化した電子契約サービスとして大手上場企業からベンチャー企業にいたるまで、延べ30万社以上に導入されてきた実績を持っています。
いずれもユーザー数・送信件数無制限のプランが3種類用意されており、料金は月額1万円(税抜)から。サービス全体を弁護士が監修するだけでなく、法務省・デジタル庁から「電子署名」に該当することを認められており、建設業界での導入実績も豊富です。
また、暗号化通信、日本国内2ヵ所のデータセンターでのデータ保管など、多角的なセキュリティを施すことで、金融機関や官公庁といった要求水準が高い現場でも運用されています。
- 契約書のアクセスコード設定機能
- 本人確認書類による認証
- タイムスタンプ機能
- 電子サイン機能(立会人型)
- 契約書の一括送付
- 電子文書の送付承認設定機能
- 契約ステータスの管理機能
- 契約進捗のリマインド機能
- 契約期限のアラート機能
- 文書管理用フォルダの作成機能
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料金
お問い合わせ -
初期費用
なし
-
最低利用期間
なし
-
最低利用人数
なし
WAN-Signは、官公庁や金融機関、医療機関をはじめとする厳格なセキュリティ基準に応える中でノウハウを培ってきた日本通運グループと、グループ内に電子認証局を持つGMOインターネットグループが共同開発した電子契約サービスです。
契約管理や内部統制機能、セキュリティ管理機能といったすべての機能が標準搭載されている上、初期費用、基本サポートが無料。さらに、ユーザーID数や書面契約登録の追加などによる料金は一切かかりません。
建設業法における適法性はもちろん、次世代住宅エコポイント申請の対応、本人性についての技術要件確認など、グレーゾーン解消制度を随時活用することで建設業での幅広い電子契約化の実現に取り組んでいます。
- 契約書のアクセスコード設定機能
- 本人確認書類による認証
- タイムスタンプ機能
- 電子署名機能(当事者型)
- 電子サイン機能(立会人型)
- 契約書の一括送付
- 電子文書の送付承認設定機能
- 契約ステータスの管理機能
- 契約進捗のリマインド機能
- 契約期限のアラート機能
以上、機能比較や料金比較でおすすめの建設業で利用できる電子契約システムを詳しく解説しました。不動産業界におすすめのサービスをチェックしたい担当者は下記記事をぜひご覧ください。
建設業で電子契約を利用するメリット
建設業法の改正を皮切りに、従来は書面による契約が義務付けられていた建設業でもさまざまな契約の電子化が可能となりました。ここでは、電子契約の導入による具体的なメリットを3つご紹介します。
- コストダウンできる
- 手続きがスピーディーになる
- コンプライアンスを強化できる
コストダウンできる
紙を用いた書面による契約では、書類作成の際に発生する人件費や印刷代、郵送料、収入印紙代、書類の保管費(ファイルや棚などが必要なため)など、さまざまなコストがかかっていました。
電子契約に切り替えることによって、これらのコストを劇的に削減できます。郵送・印刷の工程がなくなるだけでなく、電子契約では収入印紙が不要となるため、大半のコストはかからなくなります。
書類作成にかかっていた人件費がカットできるのはもちろん、これまで書類作成にあたっていた従業員の負担も軽減されるため、コア業務にもより多くの時間を割くことができるでしょう。売り上げや顧客獲得といった成果に直結する働きにも期待できるようになります。
手続きがスピーディーになる
契約にまつわる手続きがスピーディーになる点も、建設業で電子契約を利用する大きなメリットです。書面による契約の場合、対面では「平日や日中のみ」などの制約があるだけでなく、郵送の往復にも時間がかかります。ミスが発生すれば、修正にも多くの時間を費やすことになってしまうでしょう。
一方で電子契約では、電子データのやりとりだけで契約が完了するため、スケジュール調整や郵送にかかる時間を丸ごとカットできます。もちろん曜日や時間に制限されることもありません。記入の手間自体も少ないことを考えると、電子契約は契約を結ぶ両者にとって負担が少なく、手続き時間も大幅に短縮できるメリットがあるのです。電子契約ではワークフロー機能を活用し承認を効率化できる点も、手続きがスピーディーになる理由のひとつ。電子文書のワークフロー機能があるサービスをチェックしたい担当者は下記記事も参考ください。
コンプライアンスを強化できる
そもそも契約書には「契約内容の確認」「契約の証拠」「紛争予防」などの目的があります。契約書は訴訟において重要な証拠となるため「言った、言わない」というトラブルの予防に役立つだけでなく、内容を明記することで「契約内容を確認し、取引するか否かを検討できる」役割も担っているのです。
そのため、適切な契約を取り交わす際には法令に則った手続きが必須となりますが、電子契約では重要なポイントとなる「誰が・何を契約したかを証明する」電子署名に加え、「いつ契約したか」を証明するタイムスタンプを組み合わせることで契約が存在していた事実と、改ざんされていない事実を立証できます。つまり、完全性と証拠力の両方を担保できるため、電子契約にはコンプライアンス強化に役立つという側面もあるのです。
→タイムスタンプ機能がある電子契約システム(別記事)
まとめ:建設業も電子契約を活用して効率化を目指そう
現在、建設業で用いられる契約の多くは電子契約も可能となっています。紙から電子契約に切り替えることによって、コスト削減や業務効率化などのさまざまなメリットを得られる点は見逃せません。
PRONIアイミツでは、さまざまな条件で電子契約システムを比較できます。導入実績のある業界・企業規模・使いたい機能などで絞り込み、あなたの会社に最適なサービスを探してみてください。→電子契約システムの最新ランキングはこちら
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