会計システムにおけるタイムスタンプとは?電子帳簿保存法も解説
従来の業務を電子化することによって、大幅な効率化が可能です。そして、電子化を進める上で重要になるのがタイムスタンプ。電子帳簿保存法に遵守するためには、タイムスタンプ機能が搭載されている会計システムを導入する必要があります。
今回は、タイムスタンプが会計システムでどのような役割を持つのか、その意味について解説していきます。
- 会計ソフトと電子帳簿保存法の関係性
- 電子帳簿保存法におけるタイムスタンプとは
- 電子帳簿保存法で改正されるタイムスタンプの要件
- タイムスタンプの利用方法
- タイムスタンプにかかる費用と仕組み
- タイムスタンプの必要性
- タイムスタンプが付与できるシステムの種類
- まとめ
会計ソフトと電子帳簿保存法の関係性
会計ソフトは、バックオフィス業務の要でもある会計業務を効率化できる便利なツールです。会計ソフトを利用することによって、会計業務の電子化・効率化を進めることができます。
しかし、そこで無視できないのが電子帳簿保存法の存在。ここでは、会計ソフトと電子帳簿保存法の関係性について確認しておきましょう。法改正によって、会計ソフトの役割やできること、必要な手続きも少しずつ変化しています。
最大限のパフォーマンスを得るためにも、情報をアップデートしておきましょう。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、取引の際に発生する帳簿書類を電子データで保管する際に「どのような要件をクリアすれば法的な証拠として保存できるか」といった内容について取り決めたものです。
たとえば、Wordで作成しただけのものをそのままの状態で保存したとします。この場合は簡単に改ざんできてしまうため、取引内容によっては正式に証拠としては認められません。電子データも紙の書類と同様の信頼性を持つ証拠として扱えるよう、適切な保存方法や署名方法について定められているのが電子帳簿保存法だというわけです。もちろん、企業はその内容を遵守する必要があります。
逆に言うと、電子データでも要件を満たせば紙と同等の証拠として扱えるということ。電子帳簿保存法に遵守することで、紙でなくとも業務を遂行できるようになります。
電子帳簿保存法の改正と規制緩和
電子帳簿保存法は、時代に合わせて改正され続けています。2021年にもDXの全国的な普及に伴い、制度の抜本的な見直しが行われました。
経理業務を電子化したことによる生産性の向上や、クラウド会計ソフト等の活用による記帳水準の向上、テレワークの推進などによって、従来では紙による保存が義務づけられていた税務関係の帳簿書類の電子化も可能に。スキャナ保存のための内部統制要件の抜本的見直しも図られました。
後者についてはタイムスタンプの要件に関する改正が行われており、スタンプ付与の日数期限が3日以内であったのが、最長2ヵ月以内と緩和されています。また、事務処理についても確認作業はこれまで2名だったのが、改正によって1名でも認められるようになりました。
会計ソフトと電子帳簿保存法の関係性とは?
会計ソフトは、電子帳簿法と法改正による影響を大きく受けるツールです。なぜなら、会計業務全般を取り扱うため、税務に関する情報を常時取り扱うこととなるからです、当然、スキャナ保存も頻繁に発生します。
そのため、電子帳簿保存法が改正されると、従来の運用フローも大幅に見直さなければなりません。一方で、業務効率を大きく改善できる可能性も出てきます。
近年リリースされている会計ソフトの多くでは、電子帳簿保存法の改正に対応しているため、古い会計ソフトを使用している場合は、これを機に最新のサービスへ乗り換えるのもおすすめです。今後も不定期に改正が行われる可能性があるため、早いうちから対応を進めていく必要があります。
電子帳簿保存法におけるタイムスタンプとは
続いては、先ほども少し触れた電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの存在についてです。これまでは、紙と比べると改ざんが容易であることが電子データの難点でした。しかし、タイムスタンプをデータに付与することによって、改ざんを困難にさせるとともに、データの信頼性を高めることができます。
以下でタイムスタンプの詳細について掘り下げていきましょう。
タイムスタンプとは
タイムスタンプは、電子化された書類の信頼性や客観性を担保するために、日時情報などを付与することによって証明する技術です。一般的な電子データの場合、作成が容易なのはもちろん、複製や改ざんも簡単に行えます。そのため、対面で内容を確認した上で判子を押す紙の契約書のような信頼性を担保することは難しいとされてきました。
しかしタイムスタンプが付与された電子データであれば、電子帳簿保存法でも認められているように、一定の客観性を証明することができます。
タイムスタンプの役割
タイムスタンプの役割は、前述したように、付与されたデータの信頼性を確保することです。紙の契約書の場合は、捺印や署名、紙の劣化具合などの多角的な点から契約書の信頼性を確保できます。一方の電子データでは同じことができない代わりに、タイムスタンプを付与することによって、付与前に記載されていたことと、付与後に修正された内容を明らかにすることが可能です。
この技術によって、そのデータに改ざんがあったかどうか、そして契約前に発行されたものかどうかを証明できます。
タイムスタンプの付与の仕組み
タイムスタンプの信憑性を確かなものにするには、会計ソフトなどの客観性があるツールを利用しなければなりません。付与の仕組みとしては、まず時刻認証局を経由した時刻情報が発行されます。さらに、ハッシュ関数をもとにした固定長データであるハッシュ値を追加。このハッシュ値が付与されることで、スタンプの改ざんを不可能にし、タイムスタンプそのものの信憑性を高めています。
電子帳簿保存法で改正されるタイムスタンプの要件
続いては、最新の電子帳簿法によって改正されるタイムスタンプの要件についてご紹介します。要件緩和の背景、そして保存に関する要件の変化はどのようなものなのか、確認していきましょう。
要件が緩和される背景
近年のDX推進に伴い、電子帳簿保存法の改正頻度も高まりつつあります。2021年に改正があったことはすでに述べましたが、実は2020年にも改正が実施されています。業務上電子取引が頻繁に行われるようになったことや、電子マネーなどの決済システムが拡充したこと、さらには2023年のインボイス制度の開始などが要因として考えられます。
いずれにせよ、以前よりも電子文書の取扱量や運用機会がさまざまな企業間で増えているということが、要件緩和の大きな理由だと言えます。
書類のスキャナ保存制度に関する改正内容
書類のスキャナ保存は、ペーパーレス化には欠かせない作業です。そして前述したように、その保存要件として求められるタイムスタンプの付与期間が延長されています。
スタンプ付与の日数期限は従来では3日以内でしたが、改正後は最長2ヵ月以内と緩和されており、付与に余裕を持たせられています。また、以前までは送り主と受領側の両方でタイムスタンプが求められていましたが、現在は受領側のスタンプが不要となっています。
電子取引のデータ保存規程に関する改正内容
2022年1月から施行される電子取引に伴うデータの保存規程も、緩和の傾向にあります。まず、画像データの修正や削除履歴が残るシステムを利用している場合は、タイムスタンプが不要になりました。逐一タイムスタンプを付与するのは面倒ですが、改正によって運用効率を高められる内容に。
また、検索要件としては「取引年月日」「取引金額」「取引先名称」の3つさえ満たしていれば、それ以外の項目を用意する必要もなくなりました。
タイムスタンプの利用方法
タイムスタンプを利用するには、客観性を確保できるツールが必要ですが、自社で構築するのは現実的ではありません。会計ソフトや給与計算システムを利用するのが一般的です。最新の会計システムの多くにはタイムスタンプ機能が搭載されているため、新たにカスタマイズして実装するなどの手間もかかりません。
タイムスタンプ付与の流れ
タイムスタンプを付与する際には、まずスタンプの付与が必要な領収書などの書類を用意します。紙媒体の場合はそれをスキャンし、電子データに変換。アプリなど専用のツールでデータをシステムに読み込ませると、自動的にタイムスタンプの認証事業者による処理が行われ、タイムスタンプの付与が完了します。あとはデータを指定のファイルなどに保存することで、必要に応じて管理・利用することが可能です。
タイムスタンプにかかる費用と仕組み
タイムスタンプはペーパーレス化や業務効率化を推進する上で活用したい技術ですが、懸念点となるのが運用にかかる費用です。費用の内訳としては、主に初期費用と発行費用、そして運用のためのランニング費用。サービスによって料金設定が異なるため、相場を理解しておくことが大事です。
タイムスタンプにかかる費用の仕組み
タイムスタンプの利用に当たっては、事業者ごとに料金設定が異なるため、それぞれの料金形態について把握できるよう、まずは仕組みを理解しておかなければなりません。
大きく分けると、必要な費用は主に以下のとおりです。
- システム導入のための初期費用
- 書類にタイムスタンプを発行するごとに発生する発行手数料
- システムを長期的に利用するためのランニングコスト
また、アカウントごとに料金が発生するケースでは、担当者が増えれば増えるほど、運用コストが増す点には注意しましょう。
初期導入費用
タイムスタンプの利用環境を整えるには導入費用が発生します。とはいえ、初期費用の金額はサービスによって異なり、無料だというケースも少なくありません。利用に必要なアカウント発行料は大体1万円前後が一般的です。1ユーザーごとに費用が発生するため、利用するユーザー数分の料金がかかります。
タイムスタンプの発行にかかる費用
システムを導入し、実際にタイムスタンプを発行する際にも費用がかかります。
タイムスタンプをひとつ付与するごとに費用が発生する仕組みで、料金は1発行あたり10円前後です。事前に利用チケットを購入するタイプのサービスや、固定の月額費を支払うことで利用できるサービスもあります。
実際に運用する際には、自社が毎月発行する書類の量などによって最適なサービスが異なるため、事前に条件を洗い出して複数のシステムを比較検討しなければなりません。
ランニング費用
ランニング費用は、システムの維持管理に伴う負担を事業者が請け負ってくれる代わりに支払うコストです。サーバーの維持やメンテナンス、何らかのトラブルが発生した際の修復負担も含まれています。
ランニング費用は、クラウドサービスを利用する場合には避けては通れないものです。その分、別のコストが安く抑えられていることもあるため、機能面やほかの費用にも注目することが大切です。
タイムスタンプの必要性
タイムスタンプの運用にはある程度の導入費用やランニングコストが発生するため、一度利用を開始すると継続的な負担増加が見込まれるケースも少なくありません。しかしながら、タイムスタンプの付与が行えるようになれば、安心して電子データを取り扱えるようになるため、手続きの電子化による大幅な業務効率化やコスト削減効果に期待できます。
取引先との円滑なコミュニケーション、および新規ビジネスチャンスの創出にもつながるため、積極的に活用したいところです。初期費用が導入時のネックとなる場合は、クラウドサービスをはじめとする初期費用を安く抑えられるサービスを優先的に検討しましょう。
タイムスタンプが付与できるシステムの種類
タイムスタンプが付与できるシステムには、主にオンプレミス型とクラウド型の二種類が存在します。
オンプレミス型は従来のように自社サーバーやコンピューターに直接ソフトをインストールするタイプの製品で、インストールしたハードがある場所でのみ利用することが可能です。カスタマイズ性に優れていますが、自宅や出張先では利用できないため、リモートワークなどで働き方改革を推進したい場合には不向きだと言えます。
一方でクラウド型の場合は、Web経由でサービスを利用するため、インストールする必要がありません。インターネット環境さえあればどこからでも利用できる点がメリットです。従業員の好みに合わせた働き方を提供できるだけでなく、外出先でも重要な書類を発行できるため、スピーディーな意思決定が必要とされる場でも役に立つでしょう。
まとめ
今回は、会計業務の効率化には欠かせないタイムスタンプの運用方法についてご紹介しました。会計業務には多くの書類が発生するため、業務負担の削減には電子化が不可欠。とはいえ、電子化を推進する場合、書類はすべて電子帳簿保存法をクリアしなければなりません。信頼性の高い書類として発行・保管するにはタイムスタンプの付与が必要となります。
タイムスタンプを付与するには専用のツールが必要ですが、導入コストを上回る効果が期待できるため、積極的に運用するとよいでしょう。以下のページでは、会計ソフトを網羅的にまとめ、それぞれの性能についても比較しています。ぜひ本記事とあわせて参考にしてみてください。
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