IP電話は遅延する?タイプ別比較と導入時に確認すべきポイント
基本料金や通話料金がリーズナブル、スマートフォンでも気軽に使えて便利などといったさまざまなメリットがあることで、多くの企業で利用されているのがIP電話です。
確かにIP電話は、基本料金の相場は500円ほど、通話料金は一般的な電話回線の3分の1近くにまで抑えられるなど費用面で助かるだけでなく、アプリケーションを利用すればスマートフォンでも使うことができるため、導入ハードルが非常に低いもの。しかし、インターネット回線を使用した通話であることから、音声の遅延があるのでは?と心配で導入に踏み切れない場合も多いでしょう。
そこでこの記事では、IP電話のタイプ別に通話品質や遅延などについて解説していきます。IP電話の導入を検討しているという場合には、ぜひ参考になさってください。
- IP電話のタイプは3種類
- 最も通話品質が高いのは「0AB-J型」
- IP電話の品質を向上させる方法
- IP電話の導入を考えている人必見!確認すべきポイント
- まとめ:自社に合ったIP電話を導入してコストパフォーマンスを上げよう
IP電話のタイプは3種類
IP電話とは、インターネットプロトコルを活用して音声データのやりとりを行える通話方式のことを言います。
従来の固定電話は、交換機によって伝送路が結ばれており、各地に中継点を経由して音声が送り届けられるという仕組みですが、IP電話の場合にはインターネット上でデータが送り届けられるだけ。音声データをパケット化(細かなデータに分割化)してからインターネット上に送り出され、再び復元された着信先へと届けられます。
しかし、IP電話と一口に言ってもその種類は1つではありません。大きく0AB-J型・050型・電話番号不要型の3つに分けられるため、それぞれの特徴を確認しておきましょう。
0AB-J型
0AB-J型とは、光回線を通じて通話することのできるひかり電話などに代表されるIP電話です。
一般的にIP電話と言われると、050から始まる11桁の電話番号を割り当てられると想定する人が多いと思われますが、0AB-J型の場合はそうではありません。03などの市外局番のついた10桁の番号をそのまま使用できるため、IP電話を導入する際に電話番号を変える必要がないのが大きなメリットです。
また、詳しくは後述しますが、050型や電話番号不要型より通話品質が高いのもメリットの1つ。通話品質に関する規定が厳しく定められているため、音質の高さやどれだけ遅延が少ないかなどを重視して選ぶなら0AB-J型を選ぶべきでしょう。
050型
050型は、一般的なIP電話として知られています。050から始まる11桁の電話番号が割り当てられ、基本的には固定電話機で使う0AB-J型とは異なり、スマートフォンなどのモバイルデバイスであっても利用することが可能です。
スマートフォンが一台あるだけでプライベート用とビジネス用との2つの電話番号を使うことができるため、わざわざ別途ビジネスフォンなどを用意する必要がありません。導入時にかかる費用を抑えたい、スマートフォンで手軽に利用できるIP電話サービスを探しているというのであれば、050型は非常におすすめでしょう。
しかし、光回線を用いた0AB-J型のように通話品質に関して厳しい規定が設けられているわけではないことから、0AB-J型よりも通話品質が劣る可能性も少なくありません。最近では050型であってもアナログ回線と変わりないクオリティで通話することができますが、インターネット回線の利用状況などに大きく左右されるでしょう。
電話番号不要型
電話番号不要型とは、名前の通り電話番号の割り当てられないIP電話です。LINEやカカオトーク、Facebookメッセンジャー、Skypeなどを例に挙げると分かりやすいでしょう。
0AB-J型や050型とは異なり、利用することで電話番号が割り当てられるというわけではないため、発信・着信できる範囲が非常に限られているのが特徴の1つ。例えばLINEであればLINEのユーザー同士でなければ通話することはできません。
そのため、会社の複数拠点間における通話料を無料にしたいという場合などには役立つ可能性もありますが、基本的にはプライベートでの利用がメインのIP電話です。
その他のIP電話と同様に、インターネット回線の利用状況によっては電話がつながらない、音が途切れてしまう、遅延してしまうなどといったトラブルが多いとされています。
最も通話品質が高いのは「0AB-J型」
先ほどにも簡単に説明している通り、0AB-J型・050型・電話番号不要型の中で最も通話品質が高いのは0AB-J型です。
0AB-J型のIP電話に関しては、一般的な固定電話の番号と見た目が変わらず、IP電話なのか通常の電話回線なのかがわからないという背景もあり、総務省によって厳格な品質基準が設けられています。
総合伝送品質率や遅延値(エンドトゥエンド遅延 )、呼損率(持続品質)などの評価軸を持って通話品質が評価されますが、0AB-J型に求められるのはアナログ回線と同等のレベル。つまり、一般的なIP電話の通話品質ではNGということです。
音質や遅延の少なさなどがアナログ回線と同等であるということから、0AB-J型の場合はIP電話であっても音声の乱れや遅延がほとんどないと言っても過言ではありません。
IP電話の品質を向上させる方法
ここからは、IP電話を利用する際に通話品質を向上させる方法について紹介していきます。
通話中は大容量の通信を避ける
IP電話を利用する際に通話品質を向上させるためには、通話中に大容量の通信を行うのは避けるべきです。
IP電話はインターネット回線を利用して音声データを送る通話方式のため、使用しているインターネット回線に負荷がかかってしまうと悪影響です。
例えば、取引先とIP電話で通話しながら、大容量のファイルを受信あるいは送信してしまった場合、受送信をしている間だけ通信回線が不安定になってしまうかもしれません。
音声が途切れ途切れになってしまう、いきなり切れてしまうなどといったことになってしまえば相手に迷惑をかけてしまうため、IP電話を利用して通話している際には、大容量の通信を意識的に控えましょう。
回線が混雑する時間帯の利用を避ける
IP電話を利用する際に通話品質を向上させるためには、回線が混雑してしまう時間帯に利用を避けるようにしましょう。
インターネット回線を利用する際には、混み合っている時間帯とそうではない時間帯の2つに分けられます。混み合っている時間帯ではなかなかページが表示されない、ファイルを読み込めないなどといった不便に見舞われますが、混雑していない場合には特段問題なく、比較的大容量である動画の再生やWebミーティングなどであってもサクサク行えるでしょう。
インターネット回線の混雑・非混雑の影響はIP電話においても例外ではなく、混雑している場合には音声が乱れやすく、混雑していない場合にはスムーズに会話できます。
基本的に、午後6時以降の夜間にはインターネット回線が混み合う傾向にあります。IP電話で連絡を取り合う場合には、この時間帯を避けておくと安心でしょう。
インターネット環境を見直す
IP電話を利用する際に通話品質を向上させるためには、インターネット環境を見直してみるのも1つの手段です。
例えば、ネット環境が整った職場では問題なく使えているが、自宅でのテレワーク中はポケットWi-Fiを用いているため、スマートフォンを使って通話しようと思ってもなかなか通信が安定しない……なんてことも少なくありません。一方で、職場のネット回線は重く、IP電話を使うには不便だということもあるでしょう。
そのような場合、インターネット環境を根本的に見直さなければIP電話の通話品質は改善されないため、ポケットWi-Fiやホームルーターなどを使っている場合には据え置き型のWiFiルーターに切り替える、ルーターの配置位置を変えるなどさまざまな点を変えてみましょう。
IP電話の導入を考えている人必見!確認すべきポイント
最後に、IP電話の導入を検討しているという人に向け、導入する前にきちんと確認しておくべきポイントを紹介します。
IP電話のタイプ
IP電話を導入する際には、どのタイプがマッチしているのかをきちんと確認しておきましょう。
先に説明したように、IP電話には0AB-J型・050型・電話番号不要型の3つがあります。アナログ回線と同じほどの通話品質を求める場合には0AB-J型、スマートフォン一台でプライベート用の電話番号とビジネス用の電話番号を使い分けたい場合には050型、基本的に通話相手が社内の人間などに限られているという場合には電話番号不要型で問題ありません。
また、これまではスマートフォンで使用したいなら050型か電話番号不要型の二択でしたが、IP-PBXやクラウドPBXなどといった新たな技術の登場により、0AB-J型のIP電話であってもスマートフォンで利用できることも増えているようです。
通話品質(R値・MOS値・遅延値)
IP電話を導入する際には、通話品質についてもきちんと確認しておかなければなりません。
通話品質は、R値・MOS値・遅延値の3つの軸に分けられて評価されます。R値とは、別名「総合音声伝送品質率」のこと。最高値を100とし、80〜100であればクラスA、70〜79であればクラスB、50〜69であればクラスCとされます。
一方MOS値は、音声品質がどれだけ優れているかを測定する値です。最高値は5で、4以上の場合クラスA、3.1以上の場合クラスB、2.6以上でクラスCとなります。
遅延値は、通話中にどれだけ音声が遅れてしまうのかを数値化したものです。100ms以下でクラスA、150ms以下でクラスB、400ms以下でクラスCとなります。
クラスAであればアナログ回線と同じ品質、クラスBであれば携帯電話と同じ品質、クラスCの場合は一般的なIP電話の品質となるため、通話品質を重視したい場合にはクラスAを獲得しているものを選びましょう。
料金体系
IP電話を導入する際には、料金体系に関しても注意しなければなりません。
IP電話を利用する場合、アナログ回線を利用しているよりもリーズナブルに利用できるのはもちろんですが、基本料金や通話料金はそれぞれのサービスによって異なります。基本料金の相場としては月額500円ほどですが、中には月額基本料金が無料というものも。通話品質や使いやすさなども踏まえた上で、コストパフォーマンスに優れたものを導入しましょう。
まとめ:自社に合ったIP電話を導入してコストパフォーマンスを上げよう
今回は、IP電話のタイプ別に通話品質や遅延などについて解説してきました。
IP電話を導入することで、これまでよりも月額基本料や通話料金を大幅にカットすることができます。しかしその反面、通話品質が下がってしまう可能性もゼロとは言えません。
通話品質に問題なく利用できるかどうかは、どのIP電話サービスを使うのかというポイントも重要ですが、IP電話を使用する環境も非常に大切です。
ネット環境が整っている、サクサク使うことができるという場合にはIP電話も問題なく利用できるため、安心してIP電話を導入できるでしょう。
もしもIP電話サービスをお探しなら、ぜひ「IP電話サービス11選を厳選比較」もあわせてご覧ください。
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