IP電話とは?固定電話との違い、導入メリット・デメリットを解説
IP電話とは、インターネット回線を利用して音声通話ができるサービス。従来の電話と比較して基本料金や通話料を安く抑えられたり、スマートフォンで電話ができたりと、メリットはさまざまです。一方で、サービスによっては通話品質が不安定になる可能性もあり、導入時にはポイントを押さえておく必要があります。
本記事では、IP電話と固定電話の違いから、導入のメリット・デメリットを簡単に解説。さらに、導入時の確認ポイントや安定した通話品質が特徴のIP-PBXの紹介など、IP電話を導入する際に役立つ情報を網羅的に紹介しているので、導入検討中の担当者はぜひ参考にしてください。
- IP電話とは
- IP電話と固定電話の違いとは
- IP電話のメリット
- IP電話のデメリット
- IP電話の導入方法
- ビジネス利用はIP-PBXの導入がおすすめ
- IP電話の導入前に確認するべきポイント
- まとめ:IP電話のビジネス利用はメリットが多い!

IP電話とは

IP電話の「IP」とはInternet Protocol(インターネットプロトコル)の略称で、IP電話とはインターネット回線を利用して音声通話を行う電話サービスです。インターネットではパケットと呼ばれる通信技術を用いてデータを送信しており、IP電話(VoIP)でも同様の技術で音声をデジタル化し通話相手のもとに届けています。
IP電話は、固定電話に加え、PCやスマートフォンでも利用できるサービスが多く、利便性に優れています。また、従来の電話回線(アナログ電話)と比較して、初期費用・基本料金・通話料金が安く抑えられるため、ビジネスでも幅広く活用されています。
IP電話には種類があり、NTTが提供している「ひかり電話」が代表とされる「0AB-J型」と、「050型」「電話番号不要型」の3つに分けられます。ここからは、IP電話の3つの種類を簡単に解説します。
0AB-J型のIP電話(ひかり電話)
0AB-J型とは、「03」のように0から始まる市外局番を含めた、10桁の番号が割り当てられる電話番号です。東京における03-XXXX-XXXXのような一般電話と同様の番号を指し、総務省が定めた音声品質の基準を満たした通信事業者のみが取得可能です。
従来のアナログ電話と同等の通話品質が保たれ、遅延も起こりにくいよう厳しい規定が設定されているのが特徴で、NTTが提供する光回線を使った「ひかり電話」も、0AB-J型に該当します。
050型のIP電話
050型とは、「050」から始まる11桁の番号が割り当てられる電話番号です。0AB-J型とは異なり、どこから発信しても「050」から始まります。0AB-J型のように通話品質に関する厳しい規定はなく、通話環境によっては品質の低下、通話の遅延なども起こりえます。
加えて、050型はプロバイダーごとの番号指定となるため、プロバイダーの変更があれば電話番号を変更しなければならない点も特徴です。ビジネスにおけるIP電話として一般的なのは、この050型になります。
電話番号を利用しない通話アプリ
電話番号を利用しない電話番号不要型は、コミュニケーションツールとして一般的に広く普及している「LINE」「Skype」「カカオトーク」「WhatsApp」などの通話アプリがあげられます。特徴は、同じアプリを利用している同士でしか利用できないが、無料通話が可能なことです。
VoIP(Voice over IP)技術、およびデータ通信を利用した音声通話で、インターネット上にあるサーバーを仲介し、音声をデータに変換することによって通話ができます。ただし、インターネット環境によっては通話品質が安定しないこともあります。
IP電話と固定電話の違いとは
IP電話と固定電話の最大の違いは利用する回線と設置環境です。IP電話はインターネット回線を利用するため、利用場所や端末が柔軟に選択できます。一方で、固定電話は専用のアクセス回線を通じて接続され、設置場所が固定されるため、移動して利用することはできません。
その他の違いは以下の表にまとめました。
項目 | IP電話 | 固定電話 |
---|---|---|
回線の種類 | インターネット回線(共有回線) | アクセス回線(専用回線・電話用) |
音声データの伝送方法 | IP技術(パケット通信) | IP技術(パケット通信) |
回線の用途 | 音声通信 + データ通信(インターネットと共有) | 音声通信専用 |
設置場所の制約 | 柔軟(PC、スマホ、VoIP端末など) | 固定された場所で利用 |
通信品質の保証 | 変動あり(インターネット品質に依存) | 高い(専用回線で優先的に帯域を確保) |
料金体系 | インターネット料金+低価格の通話料 | 基本料金+通話料 |
ちなみに、番号ポータビリティサービスを利用すれば、固定電話で利用している電話番号をそのままIP電話に切り替えることが可能です。詳しい内容や条件については、以下の記事をご覧ください。
IP電話のメリット
IP電話は、通話料の安さや導入のスムーズさなどにメリットがあります。ここでは、IP電話の導入メリット5つを詳しく見ていきます。
- 電話番号の取得・電話機の導入がスムーズ
- 基本料金・通話料が安い
- システム連携ができる
- 外出先でも電話対応が可能になる
- 固定電話との併用も可能
電話番号の取得・電話機の導入がスムーズ
固定電話を導入する場合、電話加入権を購入しなければなりません。しかし、IP電話の導入においては電話加入権の購入は不要で、すぐに電話番号を割り当てられます。
現在使用している電話機が050型のIP電話にも対応している場合、既存の電話機を使用可能です。また、アプリがあるサービスなら、スマートフォンやパソコンにアプリを入れれば電話ができます。会社で新たに電話機を導入するとなると、数十万円、場合によっては数百万円規模になるため、持っている端末を使えることで初期費用を大幅に抑える効果もあります。
基本料金・通話料が安い
IP電話は、従来の固定電話と比較して基本料金・通話料がリーズナブルです。国内通話をする場合、一般的な固定電話だと9.35円/3分かかりますが、IP電話なら8円/3分でかけられます。また、050型のIP電話同士なら、通話料が無料になるケースも多いです。基本料金は、固定電話は3,000円ほどですが、IP電話は1ユーザー300円程度から利用できるサービスもあります。
株式会社インプレスR&Dが実施した「IP電話の利用者・予定者に聞いた、導入理由・期待する効果」の調査結果では、外線通話料の削減 66.7%、拠点間通話料金の削減 52.9%と、コスト削減に関する回答が多数となりました。

出典:株式会社インプレスR&D インターネット白書2024 ARCHIVES『第4部 企業別動向 IP電話』
上記統計データから、多くの企業が内線通話や外線通話のコスト削減を期待し、IP電話の導入効果を感じていることが分かります。コスト削減を図りたい企業にはIP電話は特におすすめです。
システム連携ができる
IP電話サービスの中には、顧客管理システム(CRM)と連携できるものもあります。顧客管理システム内にあるデータをIP電話に同期できるため、連絡先の管理や受発信履歴の管理に役立つでしょう。また、IP電話はPCとの連携も可能です。PCと連携することで、着信時に発信者情報をポップアップ表示できるだけでなく、受発信履歴の確認もよりスムーズになるでしょう。
外出先でも電話対応が可能になる
050型のIP電話の場合、固定電話機だけでなくスマートフォンとも併用することが可能。アプリをスマートフォンにダウンロードするだけで、外出先やテレワーク中であっても電話対応ができるようになります。
固定電話との併用も可能
「IP電話を導入すると決めたら、現在の固定電話は解約しなければならない?」と思われる方もいるかもしれませんが、すでに利用している固定電話を解約することなく、IP電話を導入できます。発着信を問わず、それぞれのシーンにおいて切り替えて使用できる点が心強いでしょう。
IP電話のデメリット
IP電話には多くのメリットがあり、何よりコストダウンに強みを持っていますが、デメリットもあります。IP電話導入の検討は、以下の4つのデメリットと対処法を確認した上で行いましょう。
- インターネット環境に通話品質が左右される
- 停電時に使えない
- 緊急通報番号やフリーダイヤルにかけられない
- 電話番号が変わる
インターネット環境に通話品質が左右される
インターネットを通じて通話するという特質上、従来の電話回線よりも安定性が低いのは事実です。回線が混雑してしまっている場合には、音声パケットを相手側に送れません。そのため、通話相手からすると何を言っているのかが分からない状況となってしまいます。
このような状況を避けるには、インターネット回線が混雑する時間帯(夜間等)の利用をなるべく避ける、大容量のファイルを送受信している時など、すでに回線に負荷がかかっている状況下では利用しない、電子レンジをはじめとする電磁波を発生させる機器のそばでは利用しない、などが対策としてあげられます。また、十分な回線容量や回線品質を確保することも有効です。
停電時に使えない
社内で停電が起き、インターネット回線が強制的に断ち切られた場合、インターネット回線を通じて通話しているIP電話は一切使えなくなります。これは、インターネット回線を供給するルーターやモデムが電源を失うためです。
対策として、電源のバックアップや非常用電源を用意することで、停電時でも通話ができる環境を整えることができます。
緊急通報番号やフリーダイヤルにかけられない
IP電話は、緊急通報用の電話番号(110番、119番など)にかけられません。そのため、最寄りの警察署や消防署の電話番号をスマートフォンに登録するなど、緊急時の対応を事前に定めておきましょう。
また、IP電話ではフリーダイヤル(0120)にもかけられないので、注意が必要です。例外として、一部のひかり電話では緊急通報用の番号やフリーダイヤルにも発信できます。
電話番号が変わる
IP電話の主流となっている050型のサービスは、050から始まる11桁の番号を割り当てられます。そのため、現在市外局番から始まる10桁の電話番号を利用していてもIP電話には引き継ぎできません。
ただし、IP電話の中でも一部のサービスは電話番号の引継ぎに対応しているので、サービスの選定時には引継ぎの可否も確認しておきましょう。
IP電話の導入方法
ここではIP電話の導入方法を解説します。IP電話の導入方法は大きく2つに分けられます。
- IP電話アプリを利用
- IP電話機を購入する
IP電話アプリを利用
050型や番号不要型のIP電話サービスを利用する場合には、スマートフォンにIP電話アプリをダウンロードするだけで通話可能。固定の電話機を用意するよりも手間や初期費用が大幅にカットできるため、なるべくスピーディにIP電話を導入したいという企業や、設備費にはあまり費用をかけられないという小規模事業者などにおすすめです。
しかし、スマートフォンを用いた通話は、通話環境によっては通信が安定しないこともあるため、通話品質に問題が生じることも覚えておきましょう。
IP電話機を購入する
IP電話機を別途購入することでも、IP電話を導入できます。電話機とVoIPアダプターを接続してIP電話を固定電話化することで、IP電話アプリを用いるよりも高品質で安定した通話ができる点が大きなメリット。
以下の記事で、固定電話におすすめのIP電話サービスを紹介していますので、合わせてご覧ください。
ビジネス利用はIP-PBXの導入がおすすめ
IP電話には多くのメリットがありますが、よりビジネスを円滑に進めるにはIP-PBXやクラウドPBXの導入もおすすめです。ここからは、各システムのメリットを紹介します。
IP-PBXのメリット
IP-PBXとは、インターネット回線を通じ、IP電話機への着信・転送を制御する役割を担った機器のこと。IP-PBXを利用することで、スマートフォンやPCで内線・外線・転送を利用でき、業務効率化に大いに役立ちます。カスタマイズ性も高いことから、コールセンター構築用に自動録音機能や着信振り分け機能などを搭載させることも可能。
インターネット回線を通じて利用するため、アナログ回線より低コストで利用できる点も大きなメリット。すでにインターネット環境が整っている場合には大がかりな工事は不要で、IP-PBXを導入するだけで利用可能です。
クラウドPBXのメリット
本体のハードウェアが必要となるIP-PBXとは異なり、インターネット上でPBXを利用できるのがクラウドPBXです。インターネット上ですべてが完結し、パソコンだけで電話業務をすべてカバー。電話機を用意する必要がないため、導入時にかかる初期費用を大幅にカットできる点が魅力。クラウドPBXを利用してスマートフォンを内線化すれば、外出中でも会社の電話番号で発着信が可能になり、保留や転送もできます。
クラウドサービスのため、定期的なメンテナンス費用や故障時の修理費用もかかりません。メンテナンスなどはすべてサービスの提供会社が行うので、運用リソースを割けないという場合でも安心です。
IP電話の導入前に確認するべきポイント
IP電話の導入を検討する際は、以下で説明する3つのポイントをチェックして、自社に最適なサービスを導入しましょう。
- インターネット回線の品質を確認する
- 複数サービスを比較する
- 万が一のトラブルへ対策をしておく
インターネット回線の品質を確認する
先にも説明した通り、IP電話はインターネットプロトコルを通信方式を採用しており、インターネットに接続しなければ通話ができません。そのため、通話品質はインターネット回線の品質に左右されます。通話品質を高く保つためにも、インターネット回線の安定性や回線速度など、品質を確認しておきましょう。
複数サービスを比較する
さまざまなIP電話サービスが提供されていますが、音声品質、搭載されている機能、これまでの導入実績などは異なります。「とにかくリーズナブルなIP電話がいい」「サービス名を聞いたことがあるから」という理由だけで、複数のサービスを比較することなく導入してしまうと、欲しい機能がついていなかったり、音声品質が良くなかったりと、予想外の失敗に陥るかもしれません。機能やサポート、導入実績、費用など多面的に比較し、自社にマッチしたものを選びましょう。
万が一のトラブルへ対策をしておく
050番号は固定電話との併用も可能なので、万が一災害が起こってしまった場合でも対応できるように、あわせて利用することを検討しましょう。また、停電時にも電源を用意できるように、UPS(無停電電源装置)を用意しておくという方法もあります。
まとめ:IP電話のビジネス利用はメリットが多い!
この記事では、IP電話と固定電話の違いや、導入するメリット・デメリットを紹介してきました。ビジネス利用を目的にIP電話を導入すれば、コストダウンや業務効率化などをまとめて叶えることが可能です。現在、通話料が悩みの種になっていたり、スマートフォンでも電話対応をしたいと考えていたりする場合は、ぜひIP電話の導入を検討してください。
しかし、IP電話は多数あり、どれを導入すべきか迷ってしまうでしょう。PRONIアイミツでは、ITツール受発注支援のプロとして、IP電話選びの相談を受け付けています。いくつかの質問に答えるだけで希望要件に合ったIP電話サービスが分かる診断(無料)もありますので、ぜひ一度お試しください。
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