経費精算システムとは?導入メリット・デメリット、選び方を解説
経費精算は経理担当者や従業員にとって手間と時間のかかる業務です。現在、紙やエクセルで経費申請を行っていて、業務効率化に向け経費精算システムの導入を検討する企業は多いのではないでしょうか。経費精算システムにはさまざまな種類があり、搭載される機能も異なります。その中から最適な製品を選ぶには、事前に経費精算システムを理解することが重要です。
本記事では、経費精算システムに搭載される機能や導入によるメリット・デメリット、選び方について解説します。経費精算の効率化を進めたい企業の担当者はぜひご覧ください。
SaaSの導入・運用支援のプロ
杉野 愼
株式会社TECO Designにて800社へのツール導入支援を行い、中小企業のDX化をサポートしている。以前は大手の社会保険労務士事務所にて、給与 …続きを見る
株式会社TECO Designにて800社へのツール導入支援を行い、中小企業のDX化をサポートしている。以前は大手の社会保険労務士事務所にて、給与計算業務などに従事し、顧問先担当企業のIPO、M&Aも経験。同時にIT推進室室長として、社内のマニュアル整備、IT推進などに注力した。 株式会社TECO Design 代表取締役社長
※監修者はSaaSの「選び方」についてのみ監修をおこなっており、掲載している企業・サービスは監修者が選定したものではありません。掲載企業・サービスの調査・情報収集・選定はPRONIアイミツ編集部が独自に行っております。
- 経費精算システムとは
- 経費精算システムを導入するメリット
- 経費精算システム導入にあたっての注意点・デメリット
- 経費精算システムの選び方
- まとめ:経費精算ソフトを使えば、申請から承認までスムーズに完了!
経費精算システムとは
経費精算システムとは、精算業務に関わる一連の作業を効率化できるシステムです。交通費・出張旅費・物品購入費・交際費などの経費申請から承認までシステム内で完結するため、従業員や経理担当者の負担を軽減することができます。
経費申請の際は、これまで紙やエクセルで行っていた手作業が不要になり、全てPCやスマートフォンから操作が可能です。スマートフォンで領収書を撮影するだけで申請内容が自動入力される機能(OCR機能)もあり、そのまま送信すれば経費申請が完了します。
承認者や経理担当者側でも、送られた申請書をスマートフォンやPCで確認できるため、書類の受け渡しや電話連絡は必要なくなります。入力ミスによる差戻しも全てシステム上で行え、一連のやりとりにかかる工数を削減可能です。
便利な経費精算システムは、経理DX・ペーパーレス化・電子帳簿保存法対応を背景に、多くの企業で導入されています。株式会社矢野経済研究所の調査によると、2020年度の経費精算ソリューションの市場規模は前年度比130.2%の154億4,500万円に拡大。今後も「経理のペーパーレス化を推進するため」「電子帳簿保存法対応のため」に、経費精算ソリューションを導入する企業が増加すると見込んでいます。
出典:株式会社矢野経済研究所「経費精算ソリューション市場に関する調査(2021年)」(2022年2月28日発表)
経費精算システムと会計ソフトの違い
経費精算システムと会計ソフトの違いは、簡単に言えば「目的」が違います。経費精算システムは精算業務に関わる全社員の効率化を目的としていますが、会計ソフトは仕訳処理の効率化・会社の資金繰りの適切な管理を目的としています。
会計ソフトでは、経費精算をはじめとする企業内の資金の動きを、仕訳処理によって計上する必要があります。従来、日々の仕訳データ作成については経理担当者が行っていましたが、経費精算システムを導入することで仕訳データの自動作成が可能に。経理担当者の入力負担を軽減できます。
多くの経費精算システムには会計ソフトとの連携機能があり、経費精算データから自動仕訳が可能となることで、経理業務全体の効率化が実現します。
経費精算システムを導入するメリット
現在、紙やエクセルで経費精算業務を行っている企業が経費精算システムを導入すると、手間の削減など多くのメリットがあります。以下、具体的なメリットを確認しましょう。
- 経費申請にかかる手間を大幅に削減できる
- データ自動読み取り機能により、計算ミスを軽減できる
- 会計ソフトへのデータ連携により経理業務の効率化を図れる
経費申請にかかる手間を大幅に削減できる
経費精算システムを導入する最大のメリットが、経費申請にかかる手間を大幅に削減できることです。従業員が経費申請をする際は、紙・エクセルによる作業は不要となり、全てPCやスマートフォンから行えます。
領収書もわざわざ転記入力する必要がなく、OCR機能を使えばスマホカメラの撮影で自動読み取りが可能です。複雑な経路を伴う交通費申請でも、乗り換え案内サービスとの連携によって自動計算され、経費申請者の負担を大幅に軽減できます。
また経費精算システムの導入は、時間の有効活用という点から見ても効果的です。スマートフォン1つでいつでもどこでも申請・承認できるため、忙しい営業社員も外出・移動の隙間時間を利用して対応できるようになります。
データ自動読み取り機能により、計算ミスを軽減できる
経費精算システムの導入によって、計算ミスを軽減できる点もメリットです。たとえば、領収書の自動読み取り(OCR)機能を使えば、日付・金額・取引先を読み取って自動入力されるため、手作業で起きていたような転記ミスや入力ミスが発生しません。ICカード・クレジットカード連携も同様で、そのままデータが自動反映されるため手作業での対応が不要です。
交通費申請では、乗り換え案内サービスと連携して定期区間の自動控除が行われ、計算ミスを発生させることなく経費申請を行えます。また、経費精算システムでは、ミスがあるかどうかの自動チェックも可能です。あらかじめ社内規定を設定することで、経費申請時に警告表示や申請ブロックでミスを防ぐことができます。
会計ソフトへのデータ連携により経理業務の効率化を図れる
会計ソフトへのデータ連携により、経理業務の効率化を図れることも大きなメリットです。多くの経費精算システムでは、CSVもしくはAPIによって会計ソフトにデータ連携が可能です。
経費申請の種類ごとにあらかじめ勘定科目・税区分を設定しておけば、ルールに沿った自動仕訳が可能です。手作業による仕訳入力の場合、人に依存した勘定科目の揺らぎが発生してしまいますが、経費精算システムを使えば統一された内容で仕訳を作成することができます。
また、会計データ連携は「ミスを削減できる」点においても有効です。経費申請書を確認しながらの転記作業では、日付・金額・取引先などの転記ミスが発生しやすくなります。自動で反映されれば、確実に正しい仕訳処理が可能です。
「経費精算システムの導入事例を紹介!実際に工数削減できた企業は?」では、経費精算システムを導入した企業がどのような恩恵を受けているかを紹介。システムを導入するメリットを具体的にイメージすることができます。
経費精算システムを導入した企業様からは、「経費申請の手続きや内訳を整理できた」「会計処理の仕訳がラクになった」「レシートの写真だけで情報が取り込めて簡単」と、喜びの声が多く聞かれます。
経費精算システム導入にあたっての注意点・デメリット
経費精算システム選び・導入を失敗しないためには、事前に注意点やデメリットを確認して準備する必要があります。以下、具体的なデメリットをご確認ください。
- システム導入にコストがかかる
- 社内の運用方法を変更する必要がある
- 従業員がシステムを使い慣れるまで時間がかかる
システム導入にコストがかかる
まず確認すべきでデメリットは、経費精算システム導入にコストがかかる点です。一般的な経費精算システムの場合、初期費用と月額料金が発生します。初期費用は無料となるケースもありますが、月額料金は固定・従量制の2パターンがあるため注意が必要です。具体的な料金相場は以下の通りです。
費用項目 | 初期費用の相場 | 月額料金の相場 |
---|---|---|
月額料金が固定のタイプ | 無料~30万円 | 5,000円~3万円 |
月額料金が従量制のタイプ | 無料 | 200円~600円/1ユーザー |
たとえば、従業員数1,000人規模の大企業で従量制の経費精算システムを導入した場合、月額料金は20〜60万円程です。経費精算システムを選ぶ際は、費用対効果を考えながら最適なプランを見つけるのがおすすめです。
社内の運用方法を変更する必要がある
新しいシステムを導入する際に、避けて通れないのが運用方法の変更です。経費精算システムを使えば効率化できるとはいえ、これまで机の上で紙に書いていたものが全て画面上になると、違和感を覚える従業員も少なくないでしょう。領収書を電子保存した後にどのタイミングで原本廃棄するのかなど、新たなルール作りも必要です。
また、承認ルートが複雑で変則的な企業の場合、経費精算システム上で承認ルートを再現できない可能性があるため注意が必要です。社内運用方法に変更が生じるなら、事前に説明会を行うなど周知を徹底しましょう。
SaaSの導入・運用支援のプロ
杉野 愼のコメント
導入担当者のモチベーションが低ければ、従業員にも影響を与え、導入が進まないことにもなりかねません。システム提供会社のサポートや外部のコンサルタントを利用して適切な支援を受ければ、導入を円滑に進められます。
従業員がシステムを使い慣れるまで時間がかかる
紙やエクセルから経費精算システムでの運用に切り替える場合、従業員が使い慣れるまでに時間がかかることもデメリット。操作方法が分からず戸惑ったり、慣れない操作で時間がかかり余計にミスが発生したりすることも考えられます。
また、事前のシステム設定が不十分だった場合に、承認フローの途中で混乱を招くこともあるでしょう。全ての従業員に浸透できるまでしっかりサポートする必要があります。
SaaSの導入・運用支援のプロ
杉野 愼のコメント
月次決算が早く締まり会社の意思決定が正しくなる確率が上がれば、会社に利益が出て、ひいては従業員にも利益が出ます。そのため、経費精算が遅れることのデメリットも伝え、遅れない意識を持たせることも大切です。
経費精算システムの選び方
経費精算システムの導入を成功させるためには、ポイントを抑えた比較検討が重要です。以下、経費精算システムの選び方を解説します。
- 自社の規定に沿った申請・承認フローを設定できるか
- 交通費や旅費の精算を効率化する機能があるか
- 電子帳簿保存法・インボイス制度に対応しているか
- 初期費用・月額料金を比較する
自社の規定に沿った申請・承認フローを設定できるか
全ての経費精算システムに申請・承認フローの設定機能は備わっていますが、その対応範囲は異なります。たとえば、パターン数や承認の段階数に上限が設けられていたり、複雑なルートは設定できなかったりなどがあります。
逆に、自由度の高いものだと、代理承認や金額・内容による自動分岐などの細かな設定が可能です。「自社の規定に沿った申請・承認フローを設定できるか」を事前に確認することをおすすめします。
SaaSの導入・運用支援のプロ
杉野 愼のコメント
使い勝手の良い経費精算システムを選ぶことで、心理的ハードルを下げ、スムーズな申請が実現します。
交通費や旅費の精算を効率化する機能があるか
経費精算システムの中には、交通費精算に特化した機能を持つ製品があります。たとえば、交通系ICカード・クレジットカードから利用履歴を自動で読み取ったり、乗換案内サービスと連携して定期区間を控除した運賃を計算したりなどが可能です。事前に社内規定を設定すれば、上限を考慮した日当・宿泊費の反映も行えるため、ミスなくスピーディに交通費精算が行えます。
また、経費精算システムによっては、システム上から航空券や宿泊の予約を行い、そのまま会社請求にできるといった機能もあります。立替金が必要なくなるため、経理担当者の負担軽減につながることでしょう。
電子帳簿保存法・インボイス制度に対応しているか
電子帳簿保存法・インボイス制度への対応も重要な比較ポイントです。電子帳簿保存法とは、国税関係の帳簿・書類の電子保存を認める法律のことで、紙の領収書や請求書のスキャナ保存については細かな要件が定められています。電子帳簿保存法に対応した経費精算システムなら要件に沿った電子データ化が可能で、領収書の紙保管が不要になります。ペーパーレス化を実現するためにも、電子帳簿保存法に対応した経費精算システムがおすすめです。→電子帳簿保存法に対応したおすすめシステム(別記事)
また、インボイス対応も経理担当者の効率化に大きく影響します。なぜなら、今後は受け取った領収書の内容によって仕訳入力の方法が変わるためです。経費精算システムがインボイスに対応できていなければ、会計ソフトへのデータ連携後に仕訳の修正が必要となります。経理担当者の負担を削減するためにも、インボイスに対応した経費精算システムを選定しましょう。→インボイス制度に対応したおすすめソフト(別記事)
初期費用・月額料金を比較する
多くの経費精算システムは「初期費用+月額料金」という料金体系となっています。総合的な費用を比較するには、必ず双方を考慮する必要があります。
とくに注意が必要なのが月額料金です。月額料金が安いプランは機能が絞られていることがあります。場合によってはオプション料金が発生することも。また、最低利用人数が50ユーザーと設定され、小規模企業や中小企業には合わない料金プランの場合もあります。経費精算システムを選ぶ際は、利用人数や必要機能をもとに、複数社の相見積もりを取ることがおすすめです。
SaaSの導入・運用支援のプロ
杉野 愼のコメント
月額料金は、固定制であっても利用人数で割れば従量課金制と同程度になることが多いですが、人数が少ない企業やチームでは割高になることもあります。
まとめ:経費精算ソフトを使えば、申請から承認までスムーズに完了!
経費精算は従業員や経理担当者にとって手間のかかる業務です。経費精算ソフトを使えば申請から承認までをスムーズに完了させることができます。スマートフォンによる申請・承認やOCR機能、クレジットカード連携、会計ソフト連携などを活用すれば、従業員や経理担当者の負担を大幅に削減できるでしょう。
とはいえ、多数の経費精算ソフトを比較して1社を選ぶのは難しいもの。PRONIアイミツはITツール受発注のプロとして、経費精算ソフト選びについての相談を受け付けています。いくつかの質問に答えるだけで希望要件にあった経費精算ソフトを提案する診断(無料)もありますので、ぜひ一度お試しください。
プロが代わりに探して紹介します!
SaaSの導入・運用支援のプロ
杉野 愼
株式会社TECO Design 代表取締役社長
株式会社TECO Designにて800社へのツール導入支援を行い、中小企業のDX化をサポートしている。以前は大手の社会保険労務士事務所にて、給与計算業務などに従事し、顧問先担当企業のIPO、M&Aも経験。同時にIT推進室室長として、社内のマニュアル整備、IT推進などに注力した。
SaaSの導入・運用支援のプロ
杉野 愼のコメント