人手不足に悩む中小企業はどうすればいい？解決策6つを解説

目次
• 中小企業における人手不足の現状
• 中小企業が人手不足に陥る社会的背景
• 人手不足の中小企業で働く従業員の不満
• 人手不足が中小企業に及ぼす影響
• どうすればいい？中小企業における人手不足の解決策
• まとめ：人手不足の解消にはDX化もおすすめ

中小企業における人手不足の現状

「人手不足」とは、企業が労働力を十分に確保できていない状態のことです。現在日本では、少子高齢化や生産年齢人口の減少により、人手不足が深刻化しています。とくに中小企業では、労働力確保が難しく、経営に大きな影響を及ぼしています。

東京商工リサーチの調査によると、「人手不足」関連の倒産は2021年から2024年にかけて右肩上がりに増加。直近の2024年1月から10月の「人手不足」関連倒産は244件で、前年同期比で90.6％増加し、年間300件に迫る勢いです。とくにサービス業や建設業、運輸業での倒産が顕著で、求人難や人件費の高騰、従業員の退職などが主な要因とされています。

出典：株式会社東京商工リサーチ「2024年（1-10月）の「人手不足」関連倒産」

人手不足は企業の生産性やサービス品質の低下を招き、ひいては日本経済全体にも影響を及ぼす懸念があります。そのため、労働環境の改善や生産性向上の取り組みといった「人手不足対策」が急務とされています。

中小企業が人手不足に陥る社会的背景

こうした人手不足関連の倒産が増加している現状には、どのような外部要因があるのでしょうか。ここでは、中小企業が人手不足に陥る社会的背景を解説します。

日本の総人口が減少する中、生産年齢人口（※生産活動を支える15〜64歳の人口）も減少しています。内閣府のデータによると、2023年の生産年齢人口は7,395万人で、総人口に占める割合は59.4%まで低下。2070年には4,535万人まで減少し、総人口に占める割合は52.1%まで低下すると予想しています。

出典：内閣府「令和6年版高齢社会白書」

そもそも採用可能な人材の母数が限られていることから、人手不足解消に向けた求人活動が一層難航している現状が浮き彫りとなっています。  

近年では、求職者がWebサービスを利用して企業の口コミを簡単に検索できる環境が整っています。ホームページや求人情報ではわからない具体的な口コミを読むことで、入社後のミスマッチを防止できる点がメリットです。

一方で、企業側には職場環境や待遇に関するネガティブな情報が広まってしまうリスクがあります。とくに中小企業は大企業と比較されやすく、「給与が低い」「成長機会が少ない」などのネガティブなイメージが形成されると、優秀な人材獲得の機会を逃してしまう可能性もあるでしょう。

近年、日本の転職市場は再び拡大しています。株式会社日本総合研究所によると、とくに2021年以降の伸びが顕著であり、2024年1～3月期には過去1年間で転職を経験した人が313万人に到達。これは、コロナ禍前のピークに迫る勢いです。

参照：株式会社日本総合研究所「活性化する転職市場の現状と経済への影響」

また同調査の中で、転職市場拡大の背景には以下の要因があると指摘されています。

転職市場の拡大は人材を集めやすい一方で、採用競争が激化して中小企業の採用活動を一層困難にする要因ともいえるでしょう。

人手不足の中小企業で働く従業員の不満

このような社会的背景がある一方で、人手不足の中小企業で働く従業員はどのような不満があるのでしょうか。

中小企業では、評価制度が不透明だったり、個人の成果が正しく評価されなかったりすることが原因で、従業員のモチベーション低下を招く場合があります。とくに年功序列を重視する企業文化が根強い場合、若手社員の成果が十分に評価されず、離職の引き金となることが多いです。このような不公平感は、従業員の不満や競争意識の欠如を生み出し、全体的な生産性の低下を引き起こします。

多くの中小企業では、紙やExcelベースの業務が非効率の原因となっています。紙の書類は管理や検索が困難で、手作業による入力や確認に多大な時間がかかります。また、Excelでの管理もデータが分散しやすく、複雑な計算や複数人での作業ではミスが増える傾向があります。結果、一つの業務にかかる時間が増え、処理しきれない業務が人手不足の問題をさらに深刻化させます。

離職する社員が増えることで、企業はさらに人手不足に陥ります。このような状況では、残された社員が「人手不足なのになぜ雇わない？」といった不満を募らせ、さらなる離職を引き起こすでしょう。とくに中小企業では、コストや労力を理由に人員補充が遅れる場合が多いため、この悪循環が顕著に現れます。人材確保を優先課題として取り組まなければ、企業全体の生産性や士気が低下し、競争力を失うリスクが高まります。

人手不足が中小企業に及ぼす影響

では、人手不足は中小企業にどのような影響を及ぼすのでしょうか。以下では、その具体的な影響について解説します。

人手不足が深刻化する中、一人あたりの業務量が増加することで業務効率が低下する問題が顕著です。限られた人員で多くのタスクを処理する必要があるため、ミスや遅延が発生しやすくなり、従業員のストレスや疲労の原因となります。このような状況が続くと、士気が低下し、さらなる離職を招く悪循環が生まれるでしょう。業務効率の低下は中小企業の生産性や競争力を損なう要因となります。

人手不足の企業は新規事業の拡大を進めるためのリソースが不足し、成長が停滞する事態に直面しています。とくに中小企業では、限られた人員で既存業務を維持することが優先されるため、新規プロジェクトや長期的な戦略への投資が後回しにされがちです。この結果、ビジネスチャンスを逃すリスクが高まります。さらに、採用の遅れやスキル不足により変化の激しい市場環境に対応できず、他社との差が広がる可能性もあるでしょう。

採用活動が長期化すれば、求人広告費や研修費用などの採用コストが増大します。とくに離職率が高い企業では、常に新たな人材を確保する必要があり、採用コストが慢性的に発生する可能性も。また、採用を急ぐあまりミスマッチが増えると、採用コストはさらに増大するでしょう。こうした状況を放置すれば、採用にかかるコストと労力が増し、組織の安定性が損なわれる恐れがあります。

どうすればいい？中小企業における人手不足の解決策

中小企業における人手不足は、どのような解決策があるのでしょうか。ここでは、具体的な解決策を提案します。

市場相場に応じた賃金設定は、優秀な人材を確保するために不可欠です。キャリアバイブルの調査によると、転職者の多くが給与水準を重視しており、適切な賃金を提示できない企業は競争力を失うリスクがあります。

出典：キャリアバイブル：【転職経験者500人に調査】転職先に求めること1位は「給料が今よりも高い」

また、賃金見直しは既存従業員のモチベーション向上や離職防止にも貢献します。さらに給与体系を整えることは、中小企業の採用ブランディング強化にもつながります。賃金の見直しは短期的なコストではなく、長期的な投資として捉えるとよいでしょう。

快適で労働環境を改善することは、人材を定着させるだけでなく、求職者にとって魅力的な企業となるための重要な要素です。たとえば、従業員の残業時間の規制や有給休暇の取得促進など、法律に則った勤怠管理も快適な労働環境づくりの一つです。職場環境が良好な企業は、従業員の満足度やエンゲージメントが高い傾向があります。

また、フレックスタイム制の導入やテレワーク環境の整備、公平な人事評価制度といった職場環境の整備は、ポジティブな口コミを生み出し、採用力の向上にもつながります。長期的な視点で職場環境の改善に取り組むことが、中小企業の持続可能な成長の鍵となります。

福利厚生の充実は、従業員の満足度・定着率向上に大きく貢献します。キャリアバイブルの同調査では、転職者の約半数が「福利厚生や待遇が魅力的」な転職先を求めています。福利厚生を充実させることは採用ブランディングにもつながることがわかります。

採用フローの改善は、優秀な人材を効率的に確保するために欠かせない施策です。とくに中小企業では、応募書類の郵送やオフラインでの面接を行うなど、非効率な手順が時間やコストの浪費を招くケースが少なくありません。

一つの解決策としてあげられるのが、採用活動のDX化です。電子メールやオンライン面接を導入すれば、採用プロセスを大幅に効率化することが可能。人手不足の中小企業でも採用活動の負担を軽減できます。さらに、応募者にとっても手間や移動の負担が軽減され応募しやすい環境が整うため、満足度や応募意欲の向上につながります。

人手不足の解決には、優秀な人材の確保と定着が不可欠です。そのためには、人事評価制度を見直し、従業員のモチベーションを高める仕組みを整えることが重要です。たとえば、成果だけでなくプロセスや努力を評価する制度を導入することで、社員の成長意欲を引き出せます。また、評価基準を明確にし公平性を担保することで、離職率の低下にもつながるでしょう。

とくに、人手不足の中小企業では限られた人材を最大限に活用する必要があるため、スキルアップをサポートする仕組みと連動させることで、社員のスキル向上と企業成長の両立が可能になります。

上記で紹介した人手不足の解決策に取り組む際には、システム導入（DX化）を並行して行うのもおすすめです。とくにバックオフィス系の定型業務（勤怠管理、給与計算、労務管理）はシステム化が進んでおり、「人」を「システム」に置き換えることが可能。中小企業の人手不足解消に役立ちます。ただし、システム導入にはコストがかかるため、複数の製品を比較検討することが重要です。

まとめ：人手不足の解消にはDX化もおすすめ

DX化は中小企業の人手不足を解消するおすすめの方法です。業務をデジタル化することで従業員の負担を軽減し、効率的かつ柔軟な働き方を実現できます。また、働きやすい職場環境を提供することで、優秀な人材の確保や定着率の向上にもつながります。人手不足に悩む中小企業はDX化を検討し、長期的な成長を目指しましょう。