サステナビリティとは?SDGsとの違いや取り組み事例をわかりやすく解説
「サステナビリティとはどのような意味なのだろう」と疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。もともとサステナビリティは、環境問題関連の用語として用いられることが多い言葉でした。環境問題への関心が高まるにつれて、企業にも浸透していきました。この記事では、サステナビリティとはどのような概念なのかを解説していきます。
- サステナビリティとは
- サステナビリティとSDGsの違い
- 【解説】サステナビリティと関連する用語
- 企業がサステナビリティに取り組む3つのメリット
- サステナビリティを測る指標は?
- 企業の取り組み事例
- まとめ
サステナビリティとは
サステナビリティは、直訳すると持続可能性という意味です。サステナビリティとは、社会や環境、経済への影響に配慮して企業活動を行うという概念です。サステナビリティの考え方や注目される背景を解説します。
サステナビリティの意味と考え方
サステナビリティとは、社会や組織を取り巻くあらゆる環境・資源を良好な状態に保ちながら、長期的に経済活動を継続できる状態を維持することを指します。環境問題に関する用語として用いられていましたが、近年では、さまざまな分野で用いられています。サステナビリティは、CSR(企業の社会的責任)のひとつとして捉えられるようになり、ビジネスの分野でも頻繁に用いられるようになってきました。
例えば、企業による工場やプラントなどへの太陽光発電の導入は、CO2排出量の削減を目的とするサステナビリティを実現するための取り組みです。現在ではさまざまな企業で、サステナビリティが推進されています。
サステナビリティが注目される背景
サステナビリティが現在のように注目されるようになったきっかけは、2015年の国連サミットです。サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で、先進国・発展途上国の両方が取り組むべき課題が示されました。
アジェンダの採択以降、環境問題への関心の高まりを受けたESG投資が活発化しています。ESG投資とは、企業を環境と社会、企業統治の3つの側面を考慮して投資する手法です。近年、ESGは企業の評価指標として用いられています。
サステナビリティに関する取り組みは、投資家に評価されるため、環境問題や社会問題、不正防止に取り組む企業が増加しているのです。
サステナビリティとSDGsの違い
SDGsとは、持続可能な開発目標のことです。前述のアジェンダに記載されている17のゴールと169のターゲットを指します。17のゴールは以下のとおりです。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
これら17のゴールと169のターゲットはサステナビリティの考え方をより具体化したものになります。SDGsはサステナビリティという大きな枠を明確化した考え方になります。
【解説】サステナビリティと関連する用語
サステナビリティへの関心が高まったことで、関連するサステナビリティ・トランスフォーメーションやサステナビリティ・リンク・ローンも注目されるようになってきました。サステナビリティと関連する用語について解説します。
トリプルボトムライン
トリプルボトムラインとは、企業の財務的な側面だけではなく、環境的側面や社会的側面、経済的側面も評価することです。トリプルボトムラインは、国際的なCSRガイドライン「GRIガイドライン」にも採用されていました。
GRIガイドラインでは、社会や環境を改善するための取り組みを評価する基準を標準化しています。そのため、企業ごとのトリプルボトムラインの比較が可能です。企業によっては、ボトムラインの達成度を評価するために、サステナビリティ指標を作成していることもあります。
サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)
サステナビリティ・トランスフォーメーションとは、ESGと企業の稼ぐ力の両立を目指す戦略指針になります。ESG投資への関心の高まりからもわかるように、近年では企業の社会に対する貢献度も注目されるようになってきました。利益を上げることだけを優先する企業は、評価されにくくなってきています。社会貢献度の低い企業には資金が集まらず、競争力が低下してしまう可能性もあります。
サステナビリティ・リンク・ローン原則
サステナビリティ・リンク・ローンとは、借り手のサステナビリティ目標の達成度に応じて、インセンティブを与えるローンを指します。環境問題や社会問題の解決を目指す事業に特化したローンです。サステナビリティ・リンク・ローン原則とは、サステナビリティ・リンク・ローン商品の基準を定めた国際的なガイドラインです。2020年には、国内向けに「グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン2020年版」が策定されました。
サステナビリティ経営
サステナビリティ経営とは、環境的側面と社会的側面、経済的側面のすべてにおいて、持続可能な経営を指します。以前は、企業の社会的責任と経営は切り離して考えるのが一般的でした。SDGsの考え方が広まるにつれて、企業が長期的に事業を継続するには、サステナビリティの推進が不可欠という考え方が浸透しつつあります。そのため、サステナビリティ経営を重視する企業が増えているのです。
企業がサステナビリティに取り組む3つのメリット
企業がサステナビリティに取り組むメリットとして、ブランド力や従業員満足度の向上などが挙げられます。
ブランド力の向上に繋がる
先に解説したように、最近ではサステナビリティを推進する企業が評価されるようになってきました。サステナビリティに配慮した商品やサービスを購入したいという消費者も増えています。サステナビリティを重視する消費者向けに、自社の社会問題や環境問題への取り組みをアピールすればブランド力の向上が期待できます。また、顧客以外のステークホルダーからの評価も高められるでしょう。
従業員満足度の向上に繋がる
サステナビリティへの取り組みは、対外的なものばかりではありません。従業員が長期的に働ける環境の整備もサステナビリティに含まれます。公平な評価や従業員が働きやすい環境を整えることで、従業員満足度の向上も期待できるのです。従業員満足度が向上すれば、従業員は主体的に業務に取り組むようになるでしょう。サステナビリティの推進には、離職率の低下や生産性の向上につながるメリットもあります。
採用の強化に繋がる
企業のブランド力は、採用活動にも大きな影響を与えます。ブランド力が高ければ、多くの求職者を集められます。サステナビリティを推進し、ブランド力を高めておけば、優秀な人材を獲得しやすくなるでしょう。また、ブランド力や知名度を高めることで、求人広告にコストをかけなくても求職者を集められる可能性が高まります。サステナビリティの推進は採用の強化だけではなく、採用コストの削減にもつながるのです。
サステナビリティを測る指標は?
サステナビリティを測る指標としてよく用いられるのが、GRIスタンダードとDJSIです。GRIスタンダードは先に解説したGRIガイドラインを改良した指標、DJSIはESGを評価するための株式指標です。
GRIスタンダード
GRIスタンダードとは、GRIガイドラインに代わる新しい国際的なCSRの評価基準です。GRIガイドラインは、ESGに関する情報開示に関する枠組みを示すものでしたが、GRIガイドラインでは報告主体が環境と社会、経済に与えるポジティブ・ネガティブな影響を説明するための枠組みが示されています。
DJSI
DJSI(ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス)は、サステナビリティ株式指標です。全世界の企業を対象とするDJSI Worldでは、世界の2,500社の中からESGの持続可能性を評価し、上位10%の銘柄がDJSIの算出に用いられます。企業のサステナビリティを評価する指標として用いられています。
企業の取り組み事例
先述のとおり、サステナビリティへの取り組みは、企業を評価するひとつの指標として定着しつつあります。企業に対する社会的な評価や信頼を獲得する上で、サステナビリティの重要性が高まっているのです。そのため、サステナビリティを推進する企業も増えています。企業におけるサステナビリティの事例をご紹介しましょう。
食品製造:キッコーマン株式会社
キッコーマンでは、「自然のいとなみを尊重し、環境と調和のとれた企業活動を通して、ゆとりある社会の実現に貢献します」という環境憲章を定めています。
※自然環境に極力負担をかけない生産・流通手段を用いて、企業活動に取り組むことや個人を尊重し、精神的な豊かさを目指すことが示されています。
また、長期環境ビジョンとして、2030年度までにCO2削減や水の使用量削減、食品ロスの削減など、サステナビリティを意識した目標も設定しています。
出典①:https://www.kikkoman.com/jp/csr/environment/charter.html
出典②:https://www.kikkoman.com/jp/csr/environment/longterm.html
食品製造:サントリーグループ
サントリーグループでは、水や原料、容器など、7つのテーマでサステナビリティを推進。飲料品メーカーということもあり、水のサステナビリティの実現を最上位の基本方針として定めています。
森林が水を蓄える水源涵養機能を向上させる取り組みを進めており、工場でくみ上げる地下水の2倍以上の水を涵養。水源の保護に取り組んでいます。
2021年度には2015年度と比較して、水の使用量を約20%削減。水の節約も進めています。
出典:https://www.suntory.co.jp/company/csr/
総合ガス企業:エア・ウォーター
エア・ウォーターでは、サステナブル経営を実現するために、2050年までに達成すべき目標として、7つのゴールを設定しています。
気候変動への対応や環境影響物質の抑制といった環境問題への取り組みのほか、働く人びとのWell‐being(幸福・健康)の実現といった従業員を対象とするサステナビリティも推進。従業員が心身ともにすこやかで安心して働ける環境の整備に取り組んでいます。
出典:https://www.awi.co.jp/ja/sustainability/sustainable_vision/sustainable_vision.html
総合化学メーカー:旭化成株式会社
旭化成では、サステナビリティの基本方針として、持続可能な社会への貢献による価値創出と責任ある事業活動、従業員の活躍の促進の3つを掲げています。多様性と変革力を活かした価値の創出を目指すとしています。
また、責任ある事業活動の一環として、GRIスタンダード対照表をホームページで公開。サステナビリティへの取り組み状況を発信しています。従業員の活躍を促進するために、多様性や各メンバーの価値観を認め合う環境の構築も推進しています。
出典:https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/management/
ITサービス:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
伊藤忠テクノソリューションズでは、サステナビリティを推進するために、環境と社会、内部統治の3つの分野でさまざまな活動を展開。環境問題への取り組みとして、エネルギー使用量の削減や資源の有効活用に取り組んでいます。社会との関わりを重視し、東日本大震災の被災地の復興活動支援や小学生向けにIT教室も開催。内部統治では、リスク管理体制の強化や情報セキュリティの強化を進めています。
出典:https://www.ctc-g.co.jp/company/sustainability/
精密機器製造:株式会社島津製作所
島津製作所では、サステナビリティを実現するために、SDGsに取り組んでいます。SDGsを推進するにあたって、各ゴールに対する評価を分布図にまとめて、社外・社内の認識のずれを視覚化。将来的に企業として目指すべき方向性を明確化しています。SDGsの中でも事業との関わりの深い「すべての人に健康と福祉を」「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「産業と技術革新の基盤をつくろう」に関する取り組みを進めるとしています。
出典:https://www.shimadzu.co.jp/sustainability/common_value/sdgs.html
消費財化学メーカー:花王株式会社
花王では、消費者の持続可能なライフスタイルをサポートするために、Kirei Lifestyle Planを策定。快適な暮らしのサポートや思いやりのある選択、環境への取り組みを推進するとしています。具体的なアクションとして、2030年までに10億人のQOLの向上を目指すことや原材料調達に責任を持つこと、脱炭素などを掲げています。また、ユニバーサルデザインの方針も設定。分かりやすさや安全性、誰もが使いやすい商品デザインを目指すとしています。
出典:https://www.kao.com/jp/corporate/sustainability/klp/
出典:https://www.kao.com/content/dam/sites/kao/www-kao-com/jp/ja/corporate/sustainability/pdf/universal-design-guidelines.pdf
まとめ
サステナビリティの考え方やSDGsとの違いなどを解説しました。企業が社会的な信頼を獲得する上で、サステナビリティの重要度は今後も高まっていくと考えられます。一方で、サステナビリティの推進は、従業員の負担を増大させる可能性も。サステナビリティへの取り組みを進めるには、並行して業務の効率化に取り組む必要があります。
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