OJT教育とは何?目的やメリット、失敗しないためのポイントについて解説
新入社員の教育方法として、OJT教育を採用している企業は多いでしょう。OJT教育とは、業務を通して主に実践的なスキルを身につけさせる教育方法です。
今回は、OJT教育の概要やOFF-JTとの違いを詳しく解説します。また、OJT教育を実施することで新入社員や既存の社員が得られるメリットや、教育目的を達成するためのポイントなども紹介します。
OJT教育の概要
新入社員の教育方法として、多くの企業がOJT教育を取り入れています。OJT教育は、新入社員が集合研修で学んだことを業務で生かし、会社の戦力になってもらうための教育方法です。
OJT教育の効果を高めるためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。ここでは、OJT教育の概要とOFF-JTとの違いを解説します。
OJT教育とは
OJTとは「On the Job Training」の略で、実際の業務を進める中でトレーニングを受ける方法をOJT教育と呼びます。具体的には、新入社員1人に対して1人または複数の先輩社員がトレーナーとなり、日々の業務を一緒に取り組みながら必要な知識やノウハウを教えていく形式が一般的です。
OJT教育は約3ヵ月から1年程度行われることが多く、トレーナーは新入社員に対して手順を説明したり間違いを指摘したりしながら一人前になれるよう手助けします。新入社員は必要に応じて丁寧なフィードバックを受けながら、独り立ちを目指すのが特徴です。
OFF-JTとの違い
OJTと対になる人材育成方法が、OFF-JT(Off the Job Training)です。OJTが実際の業務の中で行われるのに対して、OFF-JTは業務外での教育を指します。OFF-JTの具体例として、企業が新入社員に対して行う集合研修が挙げられます。
研修の目的が会社全体の事業内容や情報セキュリティ、コンプライアンスなど、社員として知っておくべき事柄を身につけることであれば、OJTよりもOFF-JTが適しているケースが多いでしょう。
また、OJT教育は社内の先輩社員や上司がトレーナーになるのに対して、OFF-JTは外部の講師が行うことが多い点にも違いがあります。研修の目的に合わせて、より高い効果が期待できる人材育成方法を採用しましょう。
OJT教育を実施する目的
OJT教育は主に新入社員に対して行われることが多いですが、異動してきたばかりの社員に対してOJT教育を実施する場合もあります。人材育成方法にはさまざまな種類があるため、目的に合った方法を選択することが大切です。
ここでは、OJT教育を実施する目的を3つ紹介します。
実践レベルのスキルを養うため
OJT教育の目的の1つが、実践レベルのスキルを養うことです。聞くだけ・見るだけの座学研修とは違い、実践形式で動いて学ぶOJT教育は、より業務に必要な知識を理解しやすい教育方法です。座学研修とOJT教育を組み合わせることで、学んだ知識を現場で活用できるレベルに引き上げられるでしょう。
また、OJT教育では新入社員とトレーナーのコミュニケーションが密である点も、実践レベルのスキルを養うのに適している理由です。新入社員は分からないことをトレーナーに気軽に質問できるため、スムーズに業務知識に対する理解を深められます。そのほか、失敗や間違いに対してもトレーナーからフィードバックを受けられ、座学研修よりもスピーディーにスキルを身につけられるでしょう。
業務に対する不安を和らげるため
新入社員の多くが、不安を抱えた状態で配属されてきます。まだ社内での人間関係が構築できていない新入社員は悩みや疑問、トラブルがあっても誰に相談すればよいか分かりません。
業務内容はもちろん、社内外の人間関係やビジネスマナーにも不安を感じている新入社員にとって、特定のトレーナーが指導してくれるOJT教育は安心感を与えてくれるでしょう。
OJT教育の場合、トレーナーの指導のもとで業務を行うため不安を取り除けます。何か問題があればトレーナーに報告し、適切な対処法を教えてもらうことが可能です。その過程で周囲との人間関係も自然に構築できるため、OJT教育が終わったあともスムーズに業務を進めやすくなります。
早期離職を防ぐため
新入社員の早期離職を防ぐ目的でもOJT教育は有効です。かつて「仕事は先輩の背中を見て盗め」という考え方のもと、新入社員の成長を自主性に任せる現場が多かった時代もありました。この方法でうまくいくケースもあるものの、具体的にどうすればよいのか分からずに辞めてしまう人も少なからずいるのが事実です。
OJT教育では各自の特性に合った指導が可能になるため、新入社員が新しい環境になじめずに戸惑ったり孤独を感じたりすることを防げます。OJT教育を通して新入社員が業務や職場環境に慣れるのを助けることで、早期離職の防止が可能です。また、トレーナーがそばで指導をすることで、会社は新入社員を大切にしているというアピールにも繋がるでしょう。
OJT教育を実施するメリット3つ
OJT教育を実施することは、新入社員はもちろん既存の社員にとってもメリットがあります。特に新入社員のトレーナーとなる社員を中心として、社内や部署内のコミュニケーションが活性化することは会社全体にとってのメリットともいえるでしょう。
続いては、OJT教育を実施することで得られるメリットを3つ紹介します。
座学研修より実践的な学びを提供できる
OJT教育のメリットの1つが、座学研修より実践的な学びを提供できることです。実際に日々の業務に携わっている先輩社員から直接指導を受けられることで、経験やノウハウを共有してもらえます。座学研修では伝えきれない細かなニュアンスも、OJT教育で実際の業務を体験することで理解しやすくなるでしょう。
また、新入社員を教育する立場であるトレーナーにとっても、OJT教育には自身の業務を棚卸しするよい機会です。教えながら業務を客観的に見つめ直すことで、トレーナー自身の業務知識への理解を深めたり、より効率のよい方法を考えたりするきっかけになる効果が期待できます。
OJT教育は新入社員とトレーナーの双方にとって、実践的な学びの機会となるでしょう。
同僚とコミュニケーションを取る機会が生まれる
新入社員にとってOJT教育のメリットは、同僚とコミュニケーションを取る機会が生まれることです。OJT教育では必然的にトレーナーが仲介の存在になるため、新入社員と同僚のコミュニケーションを活性化させます。入社したばかりの社員にとって不安要素の1つである人間関係問題の解消に貢献できるでしょう。
新入社員を迎える側にとっても、コミュニケーションが活性化することで全体の生産性が上がるなどの効果が期待できます。
また、OJT教育で学べるのは業務に関するスキルだけではありません。ビジネスマナーに自信がない新入社員はトレーナーとのやり取りを通して先輩や上司、社外の人とのコミュニケーションについて学べるでしょう。
一人ひとりに合った教育ができる
OJT教育は1対1の指導が基本のため、各自の特徴や強み、理解度に合わせた教育ができるのもメリットの1つです。OJT教育のためのマニュアルがある場合でも、新入社員の状況に合わせて可能な範囲で教育内容を自由にカスタマイズしましょう。難しい課題に挑戦することでモチベーションが上がるタイプや行動する前にしっかりと理解することを優先するタイプなど、新入社員の特性はさまざまです。OJT教育は各自の特徴や理解度に合わせて進められるため、新入社員も自分の成長を実感しやすくモチベーション維持に繋がります。
また、フィードバックの方法も、一人ひとりの特徴に合わせて変えてみることが大切です。それぞれのタイプに合わせた指導方法で、新入社員の力を引き出しましょう。
OJT教育が失敗する原因
OJT教育は基本的には効果が高い教育方法ですが、万能ではありません。OJT教育が失敗し新入社員が十分な戦力になれない原因には、教育するトレーナー側の問題と教育を受ける新入社員側の問題の2パターンがあります。
ここでは、企業側でコントロールできるポイントとして、トレーナーとなる社員が原因でOJT教育が失敗するパターンを紹介します。
教育にかける時間が少ない
OJT教育のトレーナーとなる社員は、基本的に自身の業務と並行して新入社員の指導を行います。本来、OJT教育で効果を上げるには多くの時間がかかります。しかし、通常業務が忙しくトレーナーが教育のための時間を十分に取れないことは、よく見られる光景です。結果的に新入社員が放置されてしまったり、トレーナーに遠慮して疑問点を質問できなかったりする状況が生まれるでしょう。
教育に時間がかけられないと、新入社員は教えられた内容を十分に理解しないまま実践に進むことになってしまいます。実践レベルに達していない状態で独り立ちすることになるため、本人はもちろん周囲にとっても負担がかかることが懸念されます。
教育に関する意識が低い
トレーナー側の教育に関する意識が低いと、OJT教育は失敗する可能性が高くなります。OJT教育は、新入社員が会社の戦力となる上で重要なプロセスです。しかし、教育に関する意識が低いトレーナーでは教育を後回しにしてしまうため、新入社員は必要な知識やスキルを教えてもらう機会を逃してしまいます。
トレーナーの教育に関する意識の低さには、上司を含めた周囲の態度や人事制度などが関係している可能性があります。「OJT教育をしても自分の評価には影響せず、業務量だけが増えてしまう」とトレーナーが感じている場合、教育に関する意識は低下する一方でしょう。
トレーナーの意識によってOJT教育の効果が変動するのを避けたい場合は、eラーニングを活用するのも1つの方法です。OJT教育にも活用できるeラーニングについては、別記事「2025年最新のおすすめeラーニングサービス」で紹介していますので合わせてご覧ください。
OJT教育を失敗しないためのポイント
OJT教育でトレーナーに選ばれた社員は、日々の業務と並行して新入社員の指導を行うため大きな負荷がかかります。また、すべてのトレーナーが高い教育スキルを持っているわけではありません。そのため、OJT教育を失敗しないためには事前準備が大切です。次に紹介する3つのポイントを押さえることで、OJT教育は成功に近付くでしょう。
ゴールを明確にして計画的に進めること
OJT教育を成功させるためには、ゴールを明確にして計画的に進めることが大切です。むやみに進めたり内容が偏ってしまったりしないよう、ゴールとする目標やスケジュールを明確に決めて取り組みましょう。
1対1で行われることが多いOJT教育は、現場によって教育内容がバラバラになってしまうことがあります。また計画性のないOJT教育は、トレーナーへの依存度が高くなります。負担が大きくなりすぎることで、トレーナーの教育への意欲を削いでしまうことにもなりかねません。
OJT教育を行う場合は、あらかじめ新入社員の育成計画を策定しておきましょう。さらに、トレーナーと上司の間で計画や進捗状況を共有しておけば、効率よくOJT教育を進められます。
属人化を防ぐ
OJT教育は新入社員とトレーナーが1対1で行うのが原則であるため、トレーナーの指導力や教育に関する意識によって効果が左右されてしまうことがあります。
OJT教育の効果を均一にするには、役割を分担して属人化を防ぐ仕組みが大切です。そうすることで、トレーナー次第で新入社員の業務スキルに大きな違いが出ることを防げます。
しかし、実際にはOJT教育を1人の社員に任せきりにしてしまうケースが多く、教育スキルにバラつきが出ることは少なくありません。その場合は、OJT教育に加えてeラーニングも活用し、属人化を防ぐ工夫をしてみましょう。
経験豊富な教育係が実践してみせること
OJT教育においては業務の手順や流れをしっかりと理解している社員がトレーナーを担うことが大切です。経験豊富な社員が手本となって、自ら業務を実践してみせましょう。
そのあとに新入社員に同じようにやらせてみて、気付いた点があればフィードバックする流れで進めていくのが適切です。
トレーナーが業務をやってみせることで、新入社員は全体像を理解できます。業務を見せながら、各作業が仕事全体の流れの中でどのような意味を持つのかを説明すると、より理解が深まるでしょう。
また、フィードバックだけではなくうまくできた点も伝えることで、新入社員のモチベーションを高めることもできます。
まとめ
OJT教育をすることで、新入社員がより早く実践レベルのスキルを身につけられるだけでなく、早期離職防止の効果が期待できます。しかし、原則としてトレーナーと新入社員の1対1で行われるOJT教育は、トレーナーの教育スキルや意識によって効果が変わることがあるため、注意が必要です。
解決策として、OJT教育にeラーニングを取り入れることで、トレーナーによる教育効果のバラつきを防ぎ、トレーナー自身の負担も削減できます。PRONIアイミツでは、eラーニングシステムを多数紹介しています。eラーニングシステム選びでお困りの際は、ぜひ以下の記事もご覧ください。
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