これだけは押さえておきたい。Excelで顧客管理する際の3つのステップ&注意点
氏名や電話番号、メールアドレスなどといった顧客情報は、専用のCRM(顧客管理システム)で管理するのが一般的です。また、CRMを利用することによって、複数人の同時編集や、システム上から直接メルマガを配信することが可能になります。
しかし、新たなシステムを導入するとなると、気になるのがコストの問題。比較的安価なクラウド型CRMでも、人数やデータ容量によっては月額数万円の利用料が発生する上、初期費用やサポート費用がかかる製品も珍しくありません。
そこで、日ごろ使い慣れたExcelを活用するのも選択肢の1つ。本記事では、Excelで顧客データを管理するには何が必要なのか、どんな点に気をつけるべきなのかについて詳しく解説していきます。
- Excelによる顧客データベースのつくり方
- Excelで顧客データベースを作成・運用する際の注意点
- 顧客管理に役立つExcelの基本機能5選
- Excelで顧客管理するメリット
- Excelで顧客管理するデメリット
- データが増えてきたらCRMへの切り替えを
- まとめ
Excelによる顧客データベースのつくり方
Exceで顧客管理を行う上で基盤となるのがデータベース。データベースとは、書式・形式を整えることによって、検索や編集が簡単にできるデータの集まりのことです。ここでは、Excelを使用した顧客データベースのつくり方について、3つのステップに分けてご紹介します。
1.項目を決める
まずは顧客情報をどのように使うのか、何に役立てるのかを念頭に置き、データベースの項目を決めましょう。例えば、テレアポとメールマーケティングに力を入れている企業なら、顧客の社名・担当者名と電話番号、メールアドレスを必須項目とし、その他の情報については任意項目とするのもいいかもしれません。
いずれにせよ大切なのは、むやみに項目を増やし過ぎないこと。データが多ければ、メルマガのセグメント配信など実施できる施策が増える反面、入力・管理に手間がかかり、ミスが起こりやすくなるからです。加えて、万が一社外に情報が流出してしまった際に被るダメージもより大きくなるでしょう。
Excelによる顧客管理がはじめての場合、項目数の目安としては6項目から10項目ほど。以下の範囲内に留めておくのがおすすめです。
・6つの基本項目
名刺に記載された社名、役職、氏名、所在地、電話番号、メールアドレス
・法人顧客の場合
基本項目+業種や会社の売り上げ規模
・個人顧客の場合
基本項目+年齢・性別、SNSのアカウント
これにメモ程度の備考欄を加えても構いませんが、Excelの場合はデータ容量が限られるため、CRMにあるような商談履歴や成約確度、請求ステータスといった項目については、業務上差し支えがないのであれば省くのがいいでしょう。
2.データを入力する
必要な項目を洗い出したら、Excelシートの横軸(列)に項目を並べ、項目に沿って縦軸(行)にデータ(氏名、電話番号、メールアドレスなど)を入力していきます。入力作業にあたっては、何よりも正確性が大事。大量の顧客情報を持っていても、データ自体が間違っていては意味がありません。社名や電話番号、メールアドレスに誤りがあると、間違い電話やメルマガの誤送信につながり、顧客からの信頼を失ってしまいます。
フォントの大きさやセルの幅、表示形式などはあとからいくらでも調整できるため、この時点では文字・数字・スペルに抜け漏れがないか1字1字チェックし、とにかく正確に入力していきましょう。データ化された顧客情報(会計ソフトの伝票データなど)がある場合はコピー&ペーストを基本とし、できるだけ手入力を省くのがおすすめ。やむを得ず手入力が必要な場合は、後述するフォーム機能などを使いながらダブルチェック体制で進めるのがいいでしょう。
3.書式・表示形式を整える
データの入力・確認が済んだあとは、データベースとしての形を整えるために、書式や表示形式を調整していきます。まずはデータの区切り位置を明確にするために全体を罫線で囲み、「セルの書式設定」から列ごとに書式と横位置・縦位置を統一しましょう。これだけでデータを入力しただけの状態からぐっと見やすく、使いやすくなるはずです。
さらに項目名を太字にし、項目ごとにセルの背景色を色分けすれば、追加入力や編集時の入力ミスも防ぎやすくなります。実際にExcleで顧客情報を管理している企業のなかには、1行ごとに番号を振り、2色の背景色を1行ごと交互に使い分けるなどの工夫を行うことで、データの視認性を高めているところも多いようです。また、やや専門的な知識が必要になるものの、Excelの関数を使えば「条件付き書式」からセルの背景色や顧客名のフリガナを自動で振り分けることも可能です。
Excelで顧客データベースを作成・運用する際の注意点
さて、視認性のよい、使いやすいデータベースを作成し、正確かつ効率的に顧客管理していくには、どんな点に気を配るべきでしょう?ここからはExcel運用の注意点を確認していきます。
「1セル・1データ」が大原則
Excelはセルをデータの最小単位とし、縦軸(行)に並べられた情報を同じ属性のデータとして認識・処理する表計算ソフトです。そのため、1つのセルに複数のデータを入力してしまうと、フィルターや並び替えといった機能が働かず、データを閲覧・集計する際に大きな支障をきたします。
これは顧客管理に限らず、Excelの基礎知識ではありますが、入力の際は「1セル・1データ」が大原則です。1つのセルのなかに属性の異なる情報を混在させないようにしましょう。やむを得ずデータに注釈テキストなどを加える必要がある場合も、別項目として備考欄を設け、そこに入力するのが鉄則です。
項目は横軸、データは縦軸に入力
上記のとおり、Excelは縦軸に並んだデータを同じ属性として扱うソフト。後述するフィルターやドロップダウンリストといった機能・ツールもすべてこの仕組みにもとづいて動作します。こちらも基本的なことではありますが、「Excelによる顧客データベースのつくり方」でご紹介した内容と逆の配列はNG。つまり縦軸に項目、横軸にデータを置いては機能しないということです。
行間・空白セルをつくらない
データベースを見やすくするために、1行ごとに行間を設け、ブランクの列を挟みたいという方もいるかもしれません。しかし、そういったレイアウトは入力ミス(入力箇所のズレ)が起きやすくなる上、関数による集計も空白部分で止まってしまいます。
また、Excelにはコントロールキー+方向キーによる頭出し機能(データの上下左右端にカーソルを移動させる機能)が付いており、データを閲覧・編集する際にとても便利です。
しかし、空白部分を設けてしまうと、やはりそこでカーソル移動が停止してしまい、うまく動作しません。任意項目などで当てはまるデータがない場合は、ブランクではなく「-(ハイフン)」などを入力しておきましょう。
唯一の例外は、シート上部にデータベースのタイトル(「顧客データ一覧」、「会員情報」など)を記載する場合。こういったケースでは、逆にブランクがないとタイトル部分とデータベース部分の境目が認識されず、フィルタリングや集計ができなくなるため、タイトルの下に1行ブランクを入れておくべきだと言えます。
セルを結合しない
セルの結合は、Excel初心者がもっとも陥りやすい失敗です。データベースのレイアウトを整えようと複数のセルを結合してしまうと、行間や空白セルを入れた場合と同様にExcelの機能を妨げます。集計やフィルタリングができないデータベースはただの羅列された情報であり、データベースとは呼べません。「Excelにおけるデータの最小単位はセル」であるという点をきちんと理解し、結合は極力避けるようにしてください。
関数・数式の入っているセルは必要なとき以外触らない
こちらもExcelの操作に慣れてない人がやってしまいがちなNG操作の1つ。VLOOKUP、SUMIFといった関数・数式が入っているセルを不用意に触ると、数字の誤入力や参照範囲を変えてしまうことがあります。そうすると、計算式が正しく機能せず、集計結果のエラーやミスリードの原因に。
複雑な複合関数になると、つくった本人以外による修正が難しいケースもあるため、関数・数式が入力されているセルには必要なとき以外、カーソルを合わせないように心がけましょう。
定期的にクリーンアップする
Excelで顧客情報を管理していると、データが重複して登録されてしまうことや、異動や転勤によるデータの齟齬が生じてしまうことも起こり得ます。CRM製品の多くにはいわゆる名寄せ機能(重複データを自動的に検知・統合する機能)や、データの自動アップデート機能が搭載されていますが、Excelにはそうした機能が付いていません。
少なくとも半年に一度、できれば3ヵ月ごとを目安にクリーンアップを施し、データを最新の状態に保っておくのも大切なポイントです。
顧客管理に役立つExcelの基本機能5選
続けて、顧客管理に役立つExcelの5つの基本機能についてご紹介します。これらの機能をうまく活用すれば、顧客データを正確・効率的に管理することが可能。さらに、テレアポ、メルマガ配信といった施策にもスムーズにつなげられるようになります。
フィルター
シートに入力されたデータのなかから、指定条件に合うものだけを絞り込んで表示する機能です。顧客データベースから特定の1社にまつわる情報だけを抽出したい際などに役立ちます。
設定方法はシンプルで、絞り込み表示したい列を選択し、画面上部の「データ」タブをクリック。続けて「フィルター」をクリックするだけ。列の最上部にプルダウンのアイコン(▼マーク)が表示されたら完了です。
アイコンをクリックすると、列に含まれるデータがリスト形式で表示されるため、参照したいデータにチェックボックスを付けて絞り込みましょう。フィルターを外したい場合は、上記と同じ手順でフィルターのアイコンをクリックすれば解除できます。
フォーム
Excelにおけるフォームとは、横軸(列)に並んだ情報をカード形式で一覧表示する機能のこと。カーソルを移動させることなく1つの会社に紐づく担当者名や電話番号を速やかに確認できるほか、カード上で直接データを編集・追加できるため、入力箇所のズレなどミス防止にも効果を発揮します。フィルタと比べると使い方がやや複雑なので、順を追って見ていきましょう。
まずシート最上部にある「クイックアクセスツールバーのユーザー設定」を開き、下から2番目の「その他のコマンド」をクリック。続けて表示される画面上部の「コマンドの選択」から「すべてのコマンド」を選びます。
次にコマンド一覧のリストから「フォーム」(リストの真ん中あたり)を選び、「追加」→「OK」の順にクリックすれば設定は完了です。
最初に開いた「クイックアクセスツールバーのユーザー設定」の左側に「フォーム」のアイコンが追加され、このアイコンをクリックすることでカード形式の情報を表示できるようになります。
ドロップダウンリスト
データ登録時に、あらかじめ設定しておいた候補のなかからプルダウンで対象を選び、セルに入力できるようにする機能です。うまく活用すればキーボード入力の手間が省け、誤字脱字の防止にもつながります。顧客データベースでは取引先の業種や担当者の役職、売上規模(年商〇〇円~〇〇円など)などをプルダウンの候補として登録しておくと、入力作業が捗るでしょう。
登録にあたってはまず、対象となる項目の入力欄(項目名を除いたすべての行)を選択し、シート上部のメニューから「データ」→「データの入力規則」をクリック。次の画面左端に表示される「設定」タブから「入力値の種類」を選択し、「元の値」の欄に、プルダウンの候補を「,」(カンマ)で区切って入力します(例:項目が業種なら「IT,不動産,小売」など)。入力後に「OK」をクリックすれば、対象の行にプルダウンのリストが表示されます。
重複の削除・チェック
先述したとおり、ExcelにはCRM製品に見られるような重複を自動検出・自動統合する機能は付いていません。しかし、手動で対象範囲を選択し、条件を指定することで重複データを削除・チェックすることは可能です。
重複を削除したい場合はまず対象範囲を選び、「データ」→「重複の削除」をクリックしましょう。次の画面で対象の項目にチェックを入れて「OK」を選択すれば、重複データが削除されます。
一方で、重複をチェックしたいけどすぐに削除はできない、どれか1つを残したいという場合は、COUNTIF関数((=COUNTIF(範囲,検索条件))を利用するのがおすすめです。いずれも前述のフィルター機能とあわせて使用することで、手間のかかるクリーンアップ作業をスムーズに進められるようになります。
ウィンドウ枠の固定
こちらは日ごろExcelを使っている方にはおなじみの機能です。固定表示させたい行の1つ下の行を全選択し、シート上部の「表示」→「ウィンドウ枠の固定」の順に選択することで、画面を下方向にスクロールした際に項目名を残して表示させられます。
管理する顧客情報が増え、データベースが縦長になってくると自分がどの項目(列)にカーソルを合わせているのかわかりにくくなり、入力箇所がズレてしまうことも多々ありますが、ウィンドウ枠を固定すればそうしたミスを防ぐことが可能です。
Excelで顧客管理するメリット
ここまでExcelにおけるデータベースのつくり方と注意点について解説してきましたが、Excelで顧客管理を行うと具体的にどういったメリットがあるのでしょうか?
コストを抑えられる
1つめのメリットはコストを大幅に抑えられる点です。現在市販されている業務用PC端末の多くには最初からExcelがインストールされており、CRMのように初期費用や月額利用料を支払うことなく利用できます。もちろん、運用・保守費用も一切かかりません。
操作しやすい
Excelは表計算ソフトの代名詞存在として、あらゆる企業で使われています。スキルの差こそあれ、少なくとも営業やバックオフィス系の業務を担当したことがある方なら、「Excelに一度も触ったことがない」という方はほとんどいないはずです。導入研修や操作マニュアルの用意を行う必要なく、日ごろ使い慣れたツールで顧客情報を管理できるのも、Excelならではの大きなメリットでしょう。
表示形式や集計ツールが豊富
Excelには前述した5種類の機能に加え、円グラフ、棒グラフ、ピボットテーブルなど多彩な表示フォーマット、集計ツールが用意されています。さらに、データベース関数を活用すれば、顧客満足度調査の偏差といった複雑な指標を数値化することも可能です。こうした機能をうまく利用することで、顧客情報の管理に加え、マーケティング戦略の立案や営業資料の作成にも大いに役立つでしょう。
Excelで顧客管理するデメリット
一方で、デメリットとしてはどんな点が挙げられるのでしょうか?
データが増えると動作が重くなる
Excelは縦方向に約104万行、横方向に約1万6,000列のデータを入力できますが、データの件数(行数)が10万を超えるとファイルを開く際に時間がかかり、集計やフィルタリングの動作が重くなることがあります。筆者自身の経験としても、約30万件の顧客データ2種類をVLOOKUPで突き合わせチェックしようとしたところ、計算の途中でPCがフリーズしてしまい、メールソフトやWebブラウザまで一切使えなくなったことがありました。
複数人で同時編集できない
同時編集ができないのもExcelのデメリットです。ほかのユーザーが操作している行やセルは変更を加えられないため、作業の順番待ちが生じ、結果的に入力漏れなどにつながってしまう可能性があります。加えて、スマートフォン・タブレット端末からの操作性も今ひとつ。訪問先で得た情報をいち早くデータベースに登録したい際などは、ストレスを感じてしまうこともあるでしょう。
ファイルが混在・先祖返りする可能性がある
Excelはファイル自体をマウス操作やショートカットキーでコピーできる上、簡単にバックアップがとれます。反面、複数の顧客データベースが混在しやすく、先祖返り(※)が起きるリスクを孕んでいます。こうしたトラブルを防ぐためには、ローカル環境へのファイル保存を禁止する、アクセス権限やファイルの命名規則を定めるといった業務体制・ルールの整備が欠かせません。
※データが修正や調整を施す前の古い状態に戻ってしまうこと
データが増えてきたらCRMへの切り替えを
ここまで見てきてわかるように、Excelは低コストで使え、操作しやすい反面、大容量の顧客データ管理にはあまり向いているとは言えません。また、CRMのように開発元による運用サポートも基本的に受けられないため、セキュリティ対策などもすべて自社で行う必要があります。
事業の拡大にともない顧客情報が増え、Excelのメリットよりもデメリットの方が大きく感じられるようになってきたら、CRMへの切り替えを視野に入れて検討しましょう。
関連記事:CRMとは?仕組みから使い方・CRM施策までわかりやすく解説
まとめ
今回は、Excelによる顧客管理を行う際の3つのステップと注意点をご紹介しました。予算をかけず、日ごろ使い慣れたツールで顧客データを管理したいという方は、ぜひ今回の内容を参考にしていただければと思います。
一方で、大量の顧客情報の取り扱いに悩んでいる方や、「Excelでの作業はもう限界」と感じている方は、ぜひCRM(顧客管理システム)の導入を検討ください。CRMについては下記の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
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