給与計算ミスを防止するためのチェックリスト
「残業代や保険料などの計算ミスが発生している」「給与計算ミスを防止する方法を知りたい」という人事・経理担当者は多いのではないでしょうか。給与計算ミスを防止するには、給与計算チェックリストの活用が有効です。
そこで本記事では、給与計算業務でたびたび発生するミス・トラブルとその対応策、注意したいポイントを、チェックリスト付きでわかりやすく解説。給与計算ミス防止におすすめのソフトについても解説していますので、給与計算ミスを防止したい担当者はぜひ参考にしてください。
- 給与計算でよくあるミス3つ
- 給与計算のミスが発生してしまう原因
- 給与計算のミスを防止するチェックリスト
- 給与計算ミスを防ぐために注意しておきたいポイント
- 給与計算のミス防止にはソフトの導入がおすすめ
- まとめ:給与計算ソフトを活用し業務効率化を図ろう
給与計算でよくあるミス3つ
まずは給与計算で起こりがちな3つのミスについて見ていきましょう。
- 従業員データの変更漏れ
- 有給休暇や残業代の計算ミス
- 日割計算のミス
従業員データの変更漏れ
1つめは従業員データの変更漏れ。引っ越しや転勤によって住所が変わったり、結婚して扶養家族が増えたりしているにもかかわらず、通勤交通費や家族手当の金額を変更することなく、誤った給与額を算出してしまうケースです。
住所や家族構成の変更は本人からの申し出がないと気付きにくいため、100%人事や経理の責任とは言えないものの、こうしたミスが起きると、発覚のタイミングによっては年末調整のやり直しなど、多大な業務コストが発生してしまいます。
有給休暇や残業代の計算ミス
有給休暇や残業代の計算間違いも、給与計算で起こりがちなミスの1つです。とりわけ残業代については労働基準法で割増賃金(月60時間を超える法定外残業は通常の1.5倍、22:00~翌日5:00までの深夜残業は1.25倍など)が細かく定められているため計算が複雑になり、シフト勤務制のオフィスや深夜業務の多い店舗では頻繁にミスが発生します。
フレックスタイム制の場合、残業時間を日単位で計算できません。そのためやはり残業代の計算が複雑になり、頭を悩ませる人事・経理担当者が少なくないようです。
日割計算のミス
月の途中から入社した社員の給与は、入社日から締め日までの勤務日数を算出した上で、適用する手当を含めて日割計算する必要があります。社会保険料の控除については、月末時点で会社に在籍していたかどうかが基準となるため、月の途中で退職した社員については割り引く必要がありません。
日割り計算の点に給与計算の担当者が気付かず、ほかの社員の給与と同様に手当を含めて一律計算してしまったり、本来必要のない控除をしてしまったりすると、給与額の間違いにつながります。
給与計算のミスが発生してしまう原因
上記のような給与計算のミスは、どういった原因で起こり得るのでしょうか?大きく3つに分けてご紹介します。
- 担当者の知識・スキル不足
- 過密な業務スケジュール
- 複数名で分担しているがゆえの抜け漏れ
担当者の知識・スキル不足
ここまで見てきてわかるとおり、給与計算は労働基準法をはじめとする法律と密接にかかわる業務であり、法制度や税制はたびたび変わります。給与計算の担当者がそうした変更・改正をきちんとキャッチアップしていないと、前述のような残業代や社会保険料にまつわるミスが発生しやすくなるでしょう。
給与計算には法律に加え、自社の就業ルールや給与規定、勤務体系への理解が欠かせません。その上で何十人、何百人分の給与計算を滞りなく進めるためには、ソフトウェアの操作スキルや集中力も求められます。
経営者や管理職がこうした点を正しく理解せず、給与計算をただのルーチンワークと見なして、社歴や実務経験の浅い社員に任せてしまうことで、ミスやトラブルにつながるケースもあるようです。
過密な業務スケジュール
多くの企業では、「毎月25日締め・翌日10日払い」、「月末締め・翌月25日払い」といったスケジュールを引いて給与計算を行っていますが、給与計算の作業期間が短くなり過ぎると経理・人事スタッフの負担が増し、ミスの温床となります。
十分な期間が確保されていたとしても、年末や5月初旬、お盆などは大型連休を挟むため、担当者の対応時間が削られます。期間内に給与計算を終わらせようと焦るあまり、チェックがおざなりになって数字の食い違いなどが起こることがあるようです。
従業員の数に対して経理・人事スタッフの数が少ない会社、前述のようなミスが頻発している会社は、締め日の変更も視野に入れて改善策を講じましょう。
複数名で分担しているがゆえの抜け漏れ
従業員の数が増えてくると給与計算の負担は増すため、経理・人事を中心に複数のメンバーで対応せざるを得ない場合が増えてきます。その際、メンバーそれぞれの業務分掌を明確にしておかないと、お互い任せたつもりになり、作業の抜け漏れが発生しやすくなります。
自分の役割・責任を果たそうとして目の前の作業にフォーカスし過ぎるあまり、全体へ目が届きにくくなることも。その結果として、全員の作業が済んだ後でクリティカルなミスが見つかるといったケースが起こり得ます。
給与計算のミスを防止するチェックリスト
ここからは、給与計算を実際に行う際にチェックしておきたいポイントについて解説していきます。給与計算を行う前から、給与計算中、給与計算が終わった後のことまで解説するので、参考にしてください。
給与計算前にチェックしておきたいこと
給与計算を実際に進めていく前には、タイムカードなどをはじめとする給与計算に必要なものが揃っているのかどうかも重要ですが、従業員のデータについて確認しておくことが大切です。
【給与計算前】チェックリスト
- 入社した社員はいるか
- 昇給、あるいは昇格となった社員はいるか
- 住所変更、交通費変更のあった社員はいるか
- 扶養親族に変更にあった社員はいるか
- 退職する社員はいるか
上記を必ずチェックしておくほか、社会保険料率が改定されるタイミングではないかどうかも確認しておくと安心でしょう。
給与計算中にチェックしておきたいこと
従業員情報について確認が済んだら、実際に給与計算を進めていきましょう。給与計算中には、以下のポイントについてチェックしておくことが重要です。
【給与計算中】チェックリスト
- 今は何月分の給与について処理しているのか
- 給与計算が未処理の従業員がいないか
- 従業員1人ひとりの振込先に誤りはないか
- 有給休暇の消化、あるいは付与に関して誤りはないか
- 扶養手当や交通費をはじめとする各種手当がきちんと反映されているか
給与計算後にチェックしておきたいこと
給与計算が終わった際には、これまでに紹介したチェックリストについて改めて確認するとともに、以下のポイントについてもあわせて確認しておきましょう。
【給与計算後】チェックリスト
- 住民税の納付、あるいは納付準備は済んでいるか
- 退職者がいる場合、退職金は用意されているか
- 給与の期日までの振り込み、あるいは振り込み予約は済んでいるか
- 給与明細書の印刷、あるいはデータによる発行は済んでいるか
- 賃金台帳の印刷、あるいはデータによる作成は済んでいるか
給与計算ミスを防ぐために注意しておきたいポイント
続いて、前述のようなトラブル、ミスの要因を防ぐための5つのチェックポイントをご紹介します。具体的にどんな点に注意すべきなのでしょうか?
- 業務体制は整っているか
- 勤怠データを管理できているか
- スケジュールが過密になっていないか
- 従業員データを把握できているか
- 最新の法律・税制に対応しているか
業務体制は整っているか
まずは給与計算を行うにあたって十分な業務体制が整っているか、人手は足りているか見定めましょう。創業して間もないベンチャー企業やスタートアップの場合、人材を採用するのが難しい部分もありますが、給与計算は大きな負担をともなう業務。担当者の欠勤などイレギュラーな事態が起きた際に備え、できれば複数名確保しておきましょう。複数人で給与計算を行う場合は、前述のような抜け漏れが起こらないよう、全体の責任者、チェック担当者を置くのも忘れずに。
一方で担当者はいるものの、スキル・知識に不安があるといった場合は、外部の力を借りるのも1つ。人事労務のエキスパートである社会保険労務士や、人事労務分野に特化したコンサルティング会社にセミナーや講習会を依頼すれば、実践的なノウハウを身につけられるでしょう。最近では労務人事分野のeラーニングサービスや学習アプリも数多くリリースされているので、それらを利用するのもいいかもしれません。
勤怠データを管理できているか
言うまでもなく、従業員の給与額のベースとなるのは残業時間、欠勤日数といった勤怠実績。給与計算を行うにあたって業務体制を整え、どんなに慎重に作業を進めても、出退勤時間の打刻漏れや、数字が間違っているようでは意味がありません。勤怠データをきちんと把握・管理できるしくみを整えるのも、大事なポイントの1つです。
具体的な対応策としては、クラウド型の勤怠管理システムを導入するのがおすすめ。クラウド型勤怠管理システムのほとんどはスマートフォンやタブレット対応しており、場所を問わず打刻できます。おのずと打刻漏れは減り、実態に合った勤怠実績を把握できるようになるはずです。
スケジュールが過密になっていないか
前述のとおり、過密なスケジュールは給与計算ミスの大きな原因となります。給与の支払い日が近づくにつれて経理・人事スタッフの深夜残業が増えていたり、体調を崩すメンバーが出てきたりするのは危険信号です。
メンバー一人ひとりときちんと向き合った上で、現状の業務プロセスに問題はないか、負担が大きすぎないかヒアリングし、必要な場合は速やかにスケジュールを引き直しましょう。
従業員データを把握できているか
交通費や保険料の計算ミスを防ぐためには、従業員のデータ(入社日、年齢、住所、家族構成など)を正確に把握し、常に最新の状態に保っておくことが欠かせません。従業員からの申請漏れが頻繁に起きている場合は、メールや社内報で周知徹底すること。その上で前述の勤怠管理システムの多くに搭載されているワークフロー機能などを活用するのがおすすめです。
最新の法律・税制に対応しているか
給与計算のミスを防ぐためには、最新の法律・税制についてきちんと理解しておくのも大切なポイントの1つ。社会保険料の変更や残業代の枠組みの見直しについては基本的に厚生労働省からアナウンスされるものの、行政のホームページにはわかりにくい部分もあるため、業務の合間を見つけて人事労務メディア(HRpro、日本の人事部など)に定期的に目を通しておくのも得策かと思います。
給与計算のミス防止にはソフトの導入がおすすめ
給与計算のミスを防ぐためには、給与計算代行サービスを利用するのも1つの手段です。しかし、アウトソーシングを依頼するのにはそれなりにコストがかかるだけでなく、給与計算に関するノウハウやスキルや社内で蓄積されていかないというデメリットは見逃せません。
しかし、給与計算ソフトを導入すれば、給与計算業務を効率化しヒューマンエラーを防ぎながらも、ノウハウを社内に貯めていくことが可能です。クラウドソフトであれば、毎月の利用料金もリーズナブルでしょう。
給与計算ソフトとは、従業員の勤怠データをもとに給与や手当を自動的に計算するシステムです。一人ひとりの雇用形態に合った給与計算を行える上、社会保険料や税金、控除などの計算も自動で行える機能があり、一連の給与計算業務を効率化。給与明細や源泉徴収票の作成・送信にも対応しています。
まとめ:給与計算ソフトを活用し業務効率化を図ろう
今回は給与計算で起こりがちなミスと原因、給与計算を行うにあたって注意したいポイントを解説しました。経理や人事担当の方の参考になれば幸いです。
また、人的ミスを軽減したい場合にはシステム化もおすすめ。PRONIアイミツでは、さまざまな条件で給与計算システムを比較できます。導入実績のある業界・企業規模・使いたい機能などで絞り込み、あなたの会社に最適なサービスを探してみてください。
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