不動産契約の流れや注意点、必要なものをまとめて解説
不動産の売買を行う際には、買手と売手の間で売買契約を締結する必要があります。しかし、不動産売買は大きな買い物であることから、経験したことがある人は少ないのが現状。本記事では、売手と買手それぞれが事前に準備すべき書類等や気を付けることについて、詳しく紹介します。
不動産売買における契約とは
不動産売買における契約とは、売主と買主の間で、不動産の所有権移転に関する約束を行うことです。民法上は、不動産の売買契約は口約束だけで成立します。しかしながら、不動産の売買は高額になることが多いため、不動産業者が介入し、契約書を作成するのが一般的です。売買契約が成立した場合、売主は不動産を引き渡すとともに、登記や許可書の作成、登録などに協力する義務を負うことになります。
一方、買主には代金の支払い義務が発生します。不動産売買の成立は、基本的には契約書にサインしたときと考えるのが一般的ですが、上記でも紹介したように、不動産の売買契約は口約束でも成り立つため、商談は慎重に行う必要があります。
不動産売買契約の簡単な流れ
今回は、マンションの売買を行うと仮定し、不動産売買の基本的な流れについて説明します。不動産の売買は以下のように進みます。
- 購入者が条件を設定する
- いい物件を見つけたら「買い付け証明」を提出する
- 手付金の支払い後実際に契約する
- 決算と引き渡しを行う
購入者が条件を設定する
まず購入者が、購入したいマンションの条件を設定します。購入者が検討する主な条件は以下の通りです。
- マンション購入の予算
- マンションの立地
- マンションのサイズ
- 必要書類の準備
- 信頼できる不動産探し
- 購入後の用途
どのようなマンションを買いたいのかは、購入者によって様々です。そのため売主は、マンションの詳細がよくわかる資料や写真、動画などを準備して必要があります。
いい物件を見つけたら「買い付け証明」を提出する
気になるマンションが見つかったら内観を行います。内観とは、実際の物件を確認し、購入を検討する工程です。内観の際には以下の情報についても確認するとよいでしょう。
- 建物住所や築年数
- 不動産価格
- 周辺環境や管理者情報
- ハザードマップ
- 建物住所や築年数
- 建物謄本
不動産が条件にマッチしており、購入する意思がある場合には、不動産会社を通し「買い付け証明書」を提出します。買い付け証明書とは、買手が不動産購入の意思があることを示す書類です。不動産会社によっては「購入申込書」と呼ぶこともあります。買い付け証明書はあくまでも、買手が購入したいという一方向の意思表示であるため、ここで売買契約が成立するわけではありません。
手付金の支払い後、実際に契約する
お互いの条件がマッチした場合、手付金の支払いを行います。手付金とは、契約時に、買主が売主に預けるお金です。この手付金を支払うことで、購入に関する強い意思があることを示し、契約に進めます。契約の際には、売主(不動産会社が代行する場合がほとんど)が契約書を準備し、そこにサインすることで契約が成立します。契約は個人でも可能ですが、大きな買い物になるため、不動産会社や司法書士に仲介に入ってもらうのが一般的です。買主は契約書の内容を熟読するとともに、もし不明点がある場合には契約前に確認するようにしましょう。
決済・引き渡しを行う
契約が完了したら、売買価格から手付金を引いたお金を支払います。銀行でローンを組み、支払い完了前に不動産の引き渡しを行う場合もあります。決済後、売主は買主に対して不動産を引き渡す義務があるため、いつでも引き渡せるように準備を進めておきましょう。
買主は物件の受け取り後、不動産に問題がないかを確認するとともに、所有権移転手続きを行います。所有権移転手続きは、不動産の所有権を得たのち、1ヵ月以内に実施する必要があるため、忘れずに行いましょう。
不動産の売主が契約時に必要となるもの
不動産を売りたい場合、売主は以下の書類等を準備する必要があります。いざという時に焦らなくてもよいように、事前に準備しておきましょう。
実印
不動産売買契約書に押印する場合には、実印を利用するのが一般的です。不動産が共有名義になっている場合には、それぞれの実印が必要となるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。ただし、不動産会社によっては実印でなくても対応してくれる場合があります。これは依頼する不動産会社によって異なるため、事前に対応してくれる不動産会社に確認するとよいでしょう。
印鑑証明書
実印の信頼性を担保するために、印鑑証明書も同時に提出します。印鑑証明書の有効期限は一般的に3ヵ月といわれているため、3か月以内に発行された印鑑証明書を準備しましょう。共有名義の場合には、印鑑証明書も人数分準備します。印鑑証明書は、所轄の役所もしくはコンビニエンスストア(マイナンバーを所有している場合)で取得できます。
本人確認書類
本人確認書類が必要になります。売主が個人か法人かによって利用できる本人確認書類が異なるため注意してください。個人の場合には、写真入りの本人確認書類を準備する必要があります。
- 売主が個人の場合:運転免許証やパスポートなど
- 売主が法人の場合:登記事項証明書や印鑑証明書など
収入印紙
不動産の売買金額に応じた収入印紙を準備します。不動産価格別の印紙代は以下の通りです。
不動産売買金額 | 印紙代 |
---|---|
500〜1,000万円 | 5,000円 |
1,000〜5,000万円 | 10,000円 |
5,000万~1億円 | 30,000円 |
1~5億円 | 60,000円 |
収入印紙は郵便局で購入できます。不動産会社によっては収入印紙の購入を代行してくれる場合もあるため、事前に確認するとよいでしょう。
参考:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
仲介手数料の半金
不動産会社などに仲介を依頼した場合には、仲介手数料として一定の金額を支払います。売買契約が成立した際に半金、残代金決済時に半金を支払うのが一般的です。買主から受け取る手付金や不動産購入費用から差し引くこともできるため、タイミングによっては仲介手数料の準備は必要がない場合もあります。不動産会社によって仲介手数料の支払いタイミングや流れが異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
登記済証あるいは登記識別情報通知
不動産の所有者は「登記済証(権利証)」もしくは「登記識別情報通知」を買手に対して示す必要があります。登記済証は、不動産の登記が完了した際に所有者に送られる権利証です。これにより、不動産が自身の所有物であると証明できます。
しかしながら、平成17年3月の不動産登記法の改正によって登記済証が廃止され、登記識別情報通知が交付されるようになりました。そのため、どちらか一方を準備し、買手に示す必要があります。
固定資産税納税通知書
固定資産税納税通知書は、税の納付時期や税額などを知らせる文書です。固定資産税納税通知書には、税額の算定基準となった不動産の評価額や支払うべき額が示されています。所有者が移った場合、買手側が代わりに納税を行う必要があるため、不動産売買時に共有する重要書類の1つとして認識されています。ただし、必須書類ではないため、不動産会社によっては必要ないといわれることもあります。事前に確認しておくとよいでしょう。
不動産の買主が契約時に必要となるもの
不動産の買主が契約時に必要になるものについて紹介します。まず、売主と同じように、本人確認書類と実印は、本人であることを明確に示すために必要です。不動産の売買は大きな金額を扱うため、なりすましや詐欺などを予防するのに利用されます。そのほかに必要な書類等(ローンを申請する場合に必要な書類も含む)は以下の通りです。詳しく説明します。
- 収入証明書類
- 住民票
- 印鑑証明書
- 物件に関する書類
収入証明書類
収入証明書類は、銀行でローンを組む場合や特殊な支払い条件を組む場合などに要求される場合があります。買手に十分な収入がない場合には、不動産の売買がキャンセルされたり、ローンの審査が通らなかったりすることもあります。もし要求された場合には提出できるように、事前に準備しておくとよいでしょう。
住民票
銀行でローンを組む場合には、住民票が要求される場合があります。住民票の有効期限は一般的には3ヵ月といわれるため、3ヵ月以内の住民票を準備しておくと安心です。同居家族全員の氏名や続柄が記載されているものを申請しましょう。
印鑑証明書
同様に銀行でローンを組む場合には、印鑑証明書を要求されます。不動産契約時にも印鑑証明書を準備しているはずなので、その際に複数の印鑑証明を取得しておけばローン申請もスムーズに進められるでしょう。
物件に関する書類
銀行にローンを依頼するためには、不動産売買に関する各種書類を提出する必要があります。具体的には以下のような書類を要求されることがあります。
- 売買契約書の写し
- 重要事項説明書の写し
- 建築確認済証
- 登記事項証明書
- 物件概要書 など
基本的には売主とのやり取りの中で確認できる書類のため、関連書類については余分にコピーをもらっておくなどの対策を図ることで、ローン申請で必要な書類をスムーズに集められるでしょう。
不動産契約の注意点
不動産の売買は非常に高額な取引となることから、慎重に進める必要があります。特に以下の2点については、しっかりと確認したうえで契約に進んでください。
簡単にキャンセルできない
不動産の売買契約を済ませた場合、一方の都合でキャンセルすることは非常に難しくなります。そのため、契約を完了する前に、問題ないかをよく検討しておく必要があります。
昨今では途中キャンセルの違約金についても契約書に書かれていることが多く、不動産売買代金の10~20%が課せられる場合もあります。例えば、2,000万円の不動産売買を行った場合、途中キャンセルの場合には違約金だけで200~400万円が発生することになります。
ただし、買主がローンを組んで購入する予定だったところ、ローンの審査に落ちてしまい、購入できない場合もあると思います。その場合には、契約時に「ローン特約」を組み込んでもらうことで、ローン審査に落ちた場合に契約を白紙に戻せます。契約後にトラブルに巻き込まれないように、不動産売買については慎重に行うようにしてください。
契約不適合責任についても把握しておく
不動産の売買を行う際には「契約不適合責任」についても理解しておくとよいでしょう。契約不適合責任とは、不動産に予期せぬ不具合が生じた場合に、売主が買主に対して負う責任のことをいいます。
例えば、内観の時には問題なかった設備が壊れていた場合、契約を済ませた時点とは異なる状態になっているといえます。そのような場合に買主が売主に対し補修を依頼したり、場合によっては代金減額や損害賠償を求めたりできるのが契約不適合責任です。
しかしながら、不動産の契約から受け渡しまでに期間があった場合、予期せぬトラブルも当然発生します。そのため、契約書にできる限り詳しく条件を記載したり、不動産会社や司法書士などに仲介に入ってもらい客観的にみて問題ない契約書を作るなど、契約書作成には力をいれるとよいでしょう。
まとめ
本記事では、不動産契約の流れや必要なもの、注意点などについて、買手と売手双方の立場から詳しく説明しました。不動産売買は非常に大きな金額となるため、契約手続きは慎重に行いたいところ。特に契約書の内容については、専門家の力も借りつつ丁寧に進めるとよいでしょう。
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