人事評価制度の作り方を具体的な事例と共に解説!【項目サンプル有】
納得のいく人事評価制度を作らないと、社員のモチベーションは下がり、やがて企業全体の生産性も低下してしまうでしょう。本記事では、人事評価制度の作り方を実際の事例、目的とともに詳しく解説します。
- そもそも人事評価制度とは
- 人事評価制度を作る目的
- 人事評価における3つの領域
- 人事評価制度を整備するメリット・デメリット
- 人事評価制度の作り方
- 忘れずに申請しておきたい「人事評価改善等助成金」とは
- 人事評価制度の導入事例
- 人事評価に用いる項目サンプル
- まとめ
人事評価制度の作り方を具体的な事例と共に解説!
公平でわかりやすい人事評価制度を作らないままでは、社員はやりがいを感じられず、企業全体の生産性も低下してしまいます。労働人口の減少が喫緊の課題である日本において、適切な人事評価制度を作ることの必要性はこれまでよりずっと高いです。
しかし、どうやって人事評価制度を作ればいいかわからないという方もいるでしょう。そこで、本記事では人事評価制度の作り方を具体例とともに解説します。
そもそも人事評価制度とは
人事評価制度とは、従業員の能力や会社への貢献度、職務に対する姿勢などを評価する制度で、企業は評価の結果によって次年度の給与や賞与を決めます。評価基準は、企業によってさまざまですが、客観的で公平な基準であることが業種や業界を問わず、すべての企業に求められます。
人事評価制度は、評価制度、等級制度、報酬制度の3つの制度から成り立つものです。それぞれの制度は、独立したものではなく、関連しあう関係性にあります。
評価制度
評価制度とは、従業員の働きを評価するときの基準や方法、評価項目などを定めた制度です。評価制度を定めないと、たとえば上長が恣意的な基準で従業員を評価することも可能になってしまうでしょう。評価の結果によって、次期の等級や給与・賞与が決まります。評価項目は等級や役職ごとに変化するのが一般的です。
等級制度
等級制度とは、等級ごとに求められる職務や役割、付与する権限などを定めた制度です。企業は制度で定められた基準に基づいて従業員を評価し、等級を決めていきます。
誰がリーダーになるかによって、部署や事業所内の雰囲気や生産性は大きく変わります。そのため、等級制度は企業にとって非常に重要な制度です。
報酬制度
報酬制度とは、従業員の給与や賞与を定める制度です。報酬制度があいまいだと、せっかく評価制度や等級制度を定めても、その評価を従業員に給与や賞与として適切な形で反映できません。従業員はモチベーションを上げにくく、ひいては会社全体の生産性も低下してしまうでしょう。公平かつ客観的な報酬制度を定める必要があります。
人事評価制度を作る目的
ここからは、人事評価制度を作る目的を解説していきます。具体的な目的を理解して、最大限に活用できる人事評価制度を作っていきましょう。
人材育成
人事評価制度によって人材育成につながるという目的があります。人材の評価を明確にすることで、評価する側の人材だけでなく、評価される人材も自分の能力を客観的に把握することが可能です。その結果、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
人員配置
続いて、人事評価制度によって適した人材配置をすることも目的です。人事評価制度によって、それぞれの人材の特性や経験、能力を確認できます。その結果、根拠のある人材配置につながるでしょう。
経営理念の共有
続いて、会社の経営理念やビジョン、方針の共有につなげることも目的です。人事評価制度で、定期的に評価と課題を把握できるため、必要な能力や求められていることを可視化できます。結果として、会社の求める特性やビジョン、経営理念を理解した人材の育成につながるでしょう。
人事評価における3つの領域
人事評価は、業績評価、能力評価、情意評価の3つの基準に基づいて行われます。これらの評価基準があいまいだと、制度を定めても、恣意的な人事評価が行われてしまう可能性があるでしょう。それぞれの評価について、以下から解説します。
業績評価
業績評価とは、従業員が一定期間内に上げた業績を評価する項目です。売り上げや契約数、目標達成度などが主な評価対象になります。特に高く評価する項目をはっきりと明示しておくことで、従業員のモチベーションを上げられるでしょう。
しかし、長期的なプロジェクトに携わっている従業員の場合は、一定期間内で業績に変化が現れないということも十分考えられます。また、経理や総務といったバックヤード業務など業務内容によっては、成果が示しづらい部署も少なくありません。そういった場合、部署内のメンバーからよくヒアリングをしたうえで、評価項目を決めましょう。
能力評価
能力評価とは、従業員の能力やスキルを評価する項目です。同じ会社であっても、業務内容によって、求められるスキルや能力は異なります。たとえば、営業を担当する部署であれば、コミュニケーション能力や商談をまとめ上げる能力、ストレス耐性能力も必要です。一方、製品を製造する部署では、作業の正確性、製品や製造方法に関する幅広い知識が必要です。
保有する免許が多ければ、幅広い業務を行えるため、保有免許に応じた評価も行う必要もあるでしょう。従業員の能力を公正に評価するためには、部署ごとや役割ごとの細かく評価項目を設定する必要があります。
情意評価
情意評価の情意には、「感情と意思」という意味があります。情意評価とは、従業員の仕事に対する姿勢や取った行動などを評価するもので、「行動評価」とも言われています。情意評価の主な内容には、業務に対す積極性や任された仕事を投げ出さない責任感、周りの従業員と協力して業務を行える協調性などがあります。
なお有給休暇の取得率が高いことで、従業員の情意評価を低くすることは違法なので、注意してください。また情意評価はほかの評価項目より、数字化できない項目が多いため、上長が恣意的な評価を行わないようにとくに注意しなければなりません。
人事評価制度を整備するメリット・デメリット
正しい作り方において人事評価制度を整備することは、企業に数多くのメリットをもたらします。一方実は、人事評価制度を整備することにはデメリットもあります。適切な作り方で人事評価制度を作り、メリットを享受しつつデメリットを最小限に抑えることが重要です。
メリット
人事評価制度を整備することの最大のメリットは、従業員のモチベーション向上が図れる点です。従業員は、自分の頑張りや残した結果が正当に評価されればモチベーションが上がり、「さらに頑張ろう」と思うでしょう。結果的に、会社全体の生産性の向上も期待できます。
また正しい作り方で作られた評価項目は、従業員の成長も促すものです。会社が重視する評価項目で高評価を得るために、多くの従業員は自発的に努力するでしょう。
さらに、人事評価制度はより良い組織づくりにも役立ちます。社歴や職歴によらず、従業員の能力や働きに対して人事評価ができるようになるため、リーダーとすべき従業員は誰かなどが客観的に判断できます。
デメリット
人事評価制度を整備することには数多くのメリットがありますが、デメリットがあることも事実です。一番のデメリットは、正しい作り方や運用方法を取らないと、組織が機能不全になる可能性があることです。
従業員の成長を促せる点に、人事評価制度を整備することのメリットがあります。しかし、評価されることだけが目的となると、「失敗のリスクはあるものの挑戦する価値のある」仕事を避けたがる従業員も出てくるでしょう。
またどんなに客観的かつ公平な人事評価制度を作っても、すべての従業員が納得するとは限りません。評価されなかった従業員のなかから、モチベーションを落としてしまう人や離職してしまう人も出てくることも考えられます。
人事評価制度の作り方
適切な作り方で人事評価制度を作れば、企業は数多くのメリットを受けられます。しかし、誤った作り方や運用方法では、逆効果になってしまう恐れもあります。ここでは、人事評価制度の適切な作り方を解説します。
評価基準を決めよう
業績評価、能力評価、情意評価の3つの評価項目を軸に、評価基準を決めていきます。同じ会社でも業務内容によって、評価すべき項目が全く異なるので、部署ごとに細かく評価基準を決めてください。とはいえ、評価基準を決めるのに難しさを感じる方も多いのではないでしょうか。一般的によく用いられる方法に「360度評価」、「MBO」があります。
360度評価とは、上長だけではなくその従業員の同僚や部下、先輩社員などの評価も含める方法です。上長だけの評価より、公平性を高められます。MBOとは、日本語では「目標管理制度」と言われる評価方法です。部署や個人で立てた目標に対する達成度を評価します。目標達成だけではなく、そのプロセスも評価対象としており、従業員の成長を促す際に向いている方法です。
このほかにも、評価基準を決める方法はさまざまあります。自社の業務内容や目的に応じて、最適な方法で評価基準を決めましょう。
誰が評価を担当するのか決めよう
評価基準が定まったら、次に評価担当者を決めます。従業員を適切に評価するためはもちろん、正しく運用していくためにも評価担当者は重要な役割を果たします。たとえば、評価担当者が評価基準や人事評価制度をよく理解していなかったら、評価される側の従業員はどう思うでしょうか。人事評価制度自体に不信感を持ってしまう可能性もあります。
また担当者であるにも関わらず、人事評価制度を無視して恣意的な評価を行った場合、制度は破綻してしまいます。人事評価の担当者を任命する経営層は、そういった点も注意しながら、ふさわしい人を任命しなければなりません。その上で、担当者には人事評価担当者向けの研修や勉強会に参加させましょう。
人事評価制度を導入するまでのスケジュールを組もう
人事評価制度の導入にあたってのスケジュールを決めていきます。このときに大切なのは、余裕を持ったスケジュールを組むことです。「今度の人事評価までに導入したい」、「次のボーナスに反映できるように」といったように、導入期日ありきのスケジュールでは、必要な評価項目を盛り込み忘れや、制度の意図が従業員に正しく伝わらないことが生じてしまいます。
人事評価制度を上手く運用していくには、評価される側の従業員の納得感がカギとなります。従業員の納得感がないまま制度の導入が決まってしまうと、会社に不信感を抱く従業員も出てくるでしょう。少なくとも、半年から1年ほどの周知期間、準備期間を設けて人事評価制度を導入してください。
導入後はフィードバックを忘れずに行おう
人事評価制度は導入したらそれで終わりというものではありません。人事評価制度を導入するのはあくまで手段で、スタートに過ぎません。適切な作り方で作り、適切に運用してはじめて効果が出るものです。
適切な運用という点において、欠かせないのが評価結果のフィードバックです。人事評価をただ通知するのではなく、人事評価担当者が一人ひとりの従業員に対してフィードバックを行い、社員のさらなる成長を促していく必要があります。
従業員から人事評価に対する質問を受けたときには、担当者は客観的で根拠がある回答をしなければなりません。モチベーションを下げずに成長につなげていくには、従業員が納得できない評価を受けたときのフィードバックはとくに重要です。
忘れずに申請しておきたい「人事評価改善等助成金」とは
人事評価制度に限らず、会社の制度を整備する際にはお金がかかるケースもあります。お金がかかることを理由に、人事評価制度を整備していないという方もいるのではないでしょうか。そういった方には、「人事評価改善等助成金」の活用をおすすめします。
人事評価改善等助成金とは、厚生労働省が行う助成金制度です。雇用保険の適用事業主であることなど、一定の要件を満たした事業者が人事評価制度を整備する際に利用できます。人事評価制度を整備することによって、生産性の向上や離職率の低下を図りたい企業を支援することが目的です。
助成金は、2段階に分けて支給され、まず制度を整備し実施した場合に50万円支給。さらに、生産性の向上や離職率低下に関するすべての目標を達成した場合にさらに80万円が支給されます。
人事評価制度の導入事例
「人事評価制度を導入して本当に効果があるの?」と思う方もいると思います。そこでここでは、実際に新たな人事評価制度を導入し、成功した企業の事例を紹介します。
株式会社ディー・エヌ・エー
Mobageなどのゲーム事業をはじめ、SNS運営やECサービスを行うディー・エヌ・エーが導入した人事制度が「フルスイング」という制度。制度の特徴の1つが、「360°フィードバック」です。
360°フィードバックとは、従業員同士で評価をしあう人事評価方法で、記名式で行われます。「誰にどういったことを指摘されたのか」といったことがダイレクトに伝わるため、自分の課題や改善すべき点が明確になる点がメリットです。
また、チームメンバーがお互いの長所や短所を書きだし、ホワイトボードに貼って議論を行う「2S2B(2ストライク2ボール)」という取り組みも行っています。
アドビシステムズ株式会社
PhotoshopやIllustratorといったソフトウェアの開発・運用で知られるアドビシステムズ。2012年にそれまでの人事評価制度を全廃し、新たな人事評価制度「Check-in」を導入しました。
Check-inには2つの特徴があります。1つ目が、四半期に一度、上司と部下が業績目標について話し合う点です。2つ目の特徴が、予算を与えられたマネージャー自身の判断で、チームメンバーを構成でき、メンバーの昇給を決定できる点です。
Check-inの導入後、会社全体で人事査定にかかる時間の8万時間を削減ができ、離職率の低下も実現したといいます。
GMOインターネット株式会社
インターネット関連ビジネスを手広く展開するGMOインターネットが導入する人事評価基準が、360度評価です。「ガラス張りの経営」の経営方針に沿った評価基準として導入しています。スタッフ一人ひとりが役割を全うしているかどうかをあらゆる角度から評価するしくみです。
「役割等級」を導入している点も特徴的です。等級は1~6の6段階に分かれており、さらに各等級を複数のランクに分けされています。その上で、すべての従業員の等級やランク、給与を開示。給与を開示することにより、「仕事に対する責任感が生まれた」という従業員も多くなったと言います。
人事評価に用いる項目サンプル
最後に、人事評価に用いる項目について解説します。職種別に、評価項目に含まれるべき能力やスキル、定義のサンプルも紹介するので、人事評価制度を作るときの参考にしてください。
管理職の場合
管理職に求められる役割は、部署全体を適切にマネジメントし、部下に実績を挙げてもらうことです。一般の従業員より経営層に近い存在なので、経営方針や部署ごとの方針への理解や促進が求められます。管理職への人事評価項目としては以下のような項目と定義が考えられます。
・リーダーシップ:全社的な課題の解決に部署のリーダーとしてリーダーシップは発揮できていたか
・経営方針や部門方針の理解・促進:経営方針や部門方針を理解し、部下に浸透を図ったか
・部下の育成・指導:部下の育成方針を立案し、それに沿った指導が行えていたか
・クレーム・トラブル対応:クレームやトラブルに対して適切な対応が取れたか、また再発防止策を立案・実行できたか
営業職の場合
営業職は数値化しやすい項目が多いため、どのような人事評価制度を用意すればいいかイメージがついている方も多いのではないでしょうか。売上高や粗利高といった項目は必須ですが、より正確に従業員を評価するためには、以下のように顧客との関係構築やセールススキルといった数字にしづらい項目も設定する必要があります。
・チーム売上高・粗利高の目標達成率:チームでの売上高や粗利高の目標はどれくらい達成できたか
・個人売上高・粗利高の目標達成率:個人での売上高や粗利高の目標はどれくらい達成できたか
・顧客との関係構築:顧客と良好な関係を構築できたか
・セールススキル:顧客に対する交渉力や提案力は十分備わっているか
技術職の場合
技術職は営業と比べると数値化しづらい目標が多いため、人事評価項目を設定するのに難しさを覚える方も多いでしょう。技術職は以下のサンプルのように、職務プロセスに関する項目を厚く設けることをおすすめします。
・新製品提案:積極的に新商品の提案を行っていたか
・自己啓発・知識向上意欲:業務に関連する知識や技術を高める意欲を持ち、実践できたか
・クレーム・トラブル対応:クレームやトラブルが発生したときに、迅速に上司に報告できたか
・営業支援:積極的に営業支援ができたか
このほか、技術職の場合は従事する職務によって業務内容はまったく異なります。そのため、部門や各人に合わせた目標を設定し、達成度を測るという方法が有効です。
まとめ
この記事では、人事評価制度の作り方を具体的な事例、目的と共に解説してきました。人事評価制度によって従業員のモチベーションが向上し、結果的に、売上向上にも期待できます。
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