育児・介護休業法を徹底解説!2025年の改正ポイントも分かりやすく解説
近年注目を集めている育児・介護休暇ですが、改正もあり概要を把握できていない方も少なくありません。イクメンという言葉が広く浸透した現状を踏まえると、男性が育児をする上でも押さえておきたい法律です。
今回は、育児・介護休暇について分かりやすく解説するとともに、産後パパ育休や法改正で変わった点にも触れていきます。
育児・介護休業法とは何か?
育児・介護休業法の正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」と呼ばれており、1991年(平成3年)5月15日に公布、1992年(平成4年)4月1日に施行されました。
そのあと2021年(令和3年)に法改正が行われ、2022年(令和4年)4月1日から段階に沿って施行されています。
育児・介護休業法という名のとおり、育児と介護にまつわる法律であり仕事との両立を支援する制度です。まずは、育児・介護それぞれの休業制度について概要を詳しく解説します。
育児休業制度とは?
育児・介護休業法のうち、育児に関連する制度が「育児休業制度」です。育児休業とは、1歳未満の子どもを養育するために取得する休みのことを指します。似たような休業として「育児休暇」が挙げられますが、こちらは未就学児を養育するための休暇で、園の行事や看病などをする際に活用されるケースが一般的です。
育児休業は、原則として1人の子どもにつき1回の取得が認められています。基本的には1歳未満の子どもが対象ですが、今回の改正で、一定の条件を満たした場合には1歳2ヶ月まで、保育園に入所できなかった場合は最長で2歳まで休業できるようになりました。
就業している人であれば男女問わず活用できる制度であり、男性の育児休業が注目される昨今は、パパ育休の促進を図る企業も増えています。ただし、勤続年数が1年に満たない場合や育休の申し出をしたあと1年以内に雇用関係が終了する場合などは、適用除外になるため注意が必要です。
介護休業制度とは?
介護休業制度とは、介護を要する家族をサポートすることを目的とした休業を取る制度です。対象となる家族1人につき、通算で土日・祝日を含めた93日までの休業が可能で、最大3分割することができます。
家族の対象となるのは配偶者や両親、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の両親です。ただし、子に関しては、法律上で親子関係がない場合は該当しません。
また、介護を要する状態としては負傷や疾病、身体もしくは精神の障害によって2週間以上にわたってサポートが必要であることを指します。介護休業が取得できるのは日雇い労働者以外の就業者ですが、介護休業を取得した日を起点として、93日を経過する日から半年までの間に契約が満了する場合は対象になりません。
介護休業とよく似た制度で、介護休暇があります。介護休暇は一般的に家族の介護を目的として、1日もしくは半日程度の休みを取得する制度です。
改正された育児・介護休業法の内容とスケジュール
近年、SDGsに関する考え方が注目されており、誰もが暮らしやすく持続可能な社会を実現させることは、日本においても大きな課題となっています。こうした背景もあり、育児・介護休業法は令和3年6月に改正されました。施行は一気に行われるのではなく令和4年4月から、令和4年6月、10月と3段階に分けて実施されています。施行スケジュールは、以下の表のとおりです。
施行のタイミング | 改正内容 |
---|---|
2022年4月1日以降 | ・育児休業を取得しやすい雇用環境の整備・妊娠 ・出産を申し出た労働者に育児休業の制度を周知、意向確認のための措置を義務化 ・有期雇用労働者の育児 ・介護休業取得の要件緩和による取得対象者の拡大 |
2022年10月1日以降 | ・新たに創設された産後パパ育休(出生時育児休業) ・育児休業を分割で取得可能 |
2023年4月1日以降 | ・育児休業の取得状況の公表を義務化 |
段階ごとに施行内容が異なるため、続いての章で詳しく解説していきます。
育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
育児・介護休業法の改正後、2022年4月に施行されたのが育児休業を取得しやすい環境の整備です。いくら法律で育児休業の取得が認められていても、企業側の受け入れる体勢が整っていなければ、従業員が育児休業を取得する際に戸惑ってしまいます。
誰もが遠慮せずに育児休業を取得しやすい環境を整えるために、まずは企業が率先して雇用環境の改善をしなければなりません。例えば、育児休業や産後パパ育休にまつわる研修や育児休業について相談できる窓口の開設などは、すぐにでも実施できます。
また、普段から他社が行っている育児休業の事例や課題などにアンテナを張って情報収集しておけば、いざ従業員から相談された際でも円滑に対応できるでしょう。
対象者に育児休業の制度を周知し意向確認を義務化
雇用環境の整備と合わせて2022年4月に施行されたのが、育児休業の周知・取得意向の確認を義務化です。従業員本人もしくは配偶者が妊娠・出産し申し出があった場合は、以下の事項について周知しなければなりません。
・育児休業・産後パパ育休の制度について
・育児休業・産後パパ育休の申出先
・育児休業給付の概要について
・育児休業および産後パパ育休期間の負担すべき社会保険料の取り扱いについて
また、これらに関して取得の意向があるかどうかを、個別に確認することも義務付けられました。いざというときに困らないように、企業側は周知するべき内容を事前にまとめておくことが大切です。周知方法としては「面談(オンライン面談を含む)」「書面交付」「FAX」「電子メール」が挙げられます。
取得対象者の拡大
従来の育児・介護休業法では、休業を取得するにあたって引き続き1年以上の雇用期間があることが条件となっていました。しかし、2022年4月1日からはこれらの条件がなくなり、取得対象者が拡大されています。
改正後の法律では、子どもが1歳6ヶ月までの間に契約が満了することが明確になっていない場合や、介護休業の開始予定から93日が経過したタイミングで、その後半年で契約が満了することが明確になっていない場合は、有期雇用労働者も休業の取得が可能です。
つまり、企業側は有期雇用労働者の休業取得も念頭に置いて対応準備をしておかなければなりません。見落としなく勤怠管理を行うためには、データベース構築をするのもおすすめです。以下のページで詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:勤怠管理と給与計算を効率化!クラウド型システムが注目される理由
新たに創設された産後パパ育休(出生時育児休業)
2022年10月からは、今回の法改正において新たに創設された「産後パパ育休制度」が施行されています。
従来の法律でも、子どもの生後8週間以内に父親が育児休業を取得すると、特別な事情がない場合でも子どもが1歳になるまでの間に2度目の休業が取得できる「パパ休暇」制度がありました。一方、今回創設された「産後パパ育休」は別の制度です。とはいえ、いわゆる「パパ休暇」と呼ばれる従来の育休制度も残っており、両方を組み合わせて取得することもできます。
「産後パパ育休」の目的は、男性の育児休業取得を推進することです。従来の育休では休業の1ヶ月前に申請をしなければなりませんでしたが、「産後パパ育休」では休業2週間前までの申請でも取得可能になり、出産予定日合わせて柔軟に設定できるようになりました。
育児休業の分割取得が可能
「産後パパ育休」の施行と同じタイミングで、2022年10月1日から育児休業の分割取得も可能となりました。従来の法律では「パパ休暇」以外で分割取得は認められていませんでしたが、今回の改正によりそのほかの育児休暇に関しても、2回に分けて取得できるようになっています。
分割取得は「産後パパ育休」にも対応しているため、男性の場合は従来の「パパ休暇」と組み合わせて取得することで、子どもが1歳になるまでに合計4回の育児休暇が取得可能です。
また、従来は保育所に入所できなかった場合に、2歳まで育児休暇取得が延長できましたが、延長のタイミングが「1歳から」「1歳半から」と限定されていたため、夫婦が交代で休業を取得するのが困難でした。しかし、法改正により延長のタイミングが柔軟化されたため、配偶者が仕事復帰する際に合わせて「産後パパ育休」を取ることも可能となり、夫婦それぞれのワーク・ライフ・バランスが取りやすくなっています。
育児休業の取得状況の公表を義務化
2023年4月以降は、育児休業の取得状況を公表することが義務化されます。対象となるのは従業員数が1,000人を超える企業で、年に1回公表しなければなりません。公表する直前の事業年度の情報が求められるため、2022年度の状況も把握しておく必要があります。
公表が義務付けられているのは、男性の「育児休業等の取得割合」と「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。「常時雇用する労働者」を対象としており、雇用契約の形態に関わらず、事実上雇用期間が決まっていない従業員に関して取得状況を調査する必要があります。これらの情報は、公式ページやその他の適切な手段を使って、誰もが閲覧できる状態にしておかなければなりません。
育児・介護休業法が改正された理由と背景
育児・介護休業法が改正された背景には、仕事と生活の両立に関する状況があります。特に、女性は出産や育児を理由として約半数が退職しているのが現状です。
その理由として、両立することの難しさや勤務先の支援体制が整っていなかった点を挙げる人が多く見られます。
また、育児休暇の取得率を見ても断然女性の方が多く、一気に伸びた平成2年度でも12.65%にすぎませんでした。育児休業に関しては、こうした背景を踏まえて仕事と育児の両立を目的として、法改正が行われました。
介護休業では、全国的に懸念されている少子高齢化が影響しています。高齢者が増加傾向になる中で、親や親族の介護は誰もが直面する問題です。
しかし、従来の法律では、介護をしながら働けるような柔軟な体制が取りづらい面がありました。企業側から見ても法改正がなされたことにより、育児や介護による離職が避けられ、安定した雇用維持に繋がっています。
企業が育児・介護休業法を促進するメリット
育児・介護休業法の改正は、労働者が生活と仕事の両立をする上で支えになる法律の1つです。実は、育児・介護休業法を促進することは、労働者だけではなく企業側のメリットにも繋がります。
どのようなメリットがあるかを把握しておくと、より誰もが働きやすい環境づくりをする上で参考になるでしょう。続いては、育児・介護休業法を促進するメリットを2つ解説します。これから導入する方も、ぜひ参考にしてください。
人材を確保しやすく離職率の低下が期待できる
近年、企業の雇用環境は誰もが注目していることの1つです。特に、転職や就職を希望する人の多くは、業務内容や年収面だけでなく働きやすい環境が整っているかどうかも、企業を選ぶポイントとしています。
特に、育児休業制度に取り組む姿勢を重視している就職希望者は多く、積極的に取り組んでいる企業の噂は社内外に広まるため、男女問わず優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。
例えば、中途採用時に育児関連の制度の説明を行えば、共感を得やすくなります。
また、就職後もしっかりと制度が整っていれば、妊娠や出産、介護の不安を抱える必要がありません。安心して働けるため離職率が下がり、従業員が定着しやすくなる点もメリットです。
働きやすい職場環境の整備で業績向上も期待できる
近年、ワーク・ライフ・バランスを重視する人が増えており、育児と仕事の両立を希望する傾向が高まっています。
育児・介護休業が促進され、働きやすい環境が整っている企業であれば、育児休業や介護休業も取りやすく不安がありません。必要なときにしっかりと休める状況があるため、従業員のモチベーションも高まるでしょう。また、モチベーションが上がれば自ずと業績アップにも繋がり、結果的に企業全体の生産性を向上させることになります。
このように、従業員が自分のスキルを存分に発揮するためには、企業側の環境づくりが大切です。従来の考え方からシフトし、現代に合った概念を導入することで、優秀な人材の定着にも繋がるでしょう。
育児・介護休業法の改正に向けて企業が行うべきこと
改正された育児・介護休業法は、従来の法律とは大きく変わる上に3回に分けて段階的に施行されるため、見落としなくしっかりと把握することが大切です。
厚生労働省では、公式ページにおいて法改正に伴う情報を公表しています。まずは、これらの資料を活用して、企業側や人事労務担当者が法改正の内容を確認するようにしましょう。その上で自社の就業規則と照合し、変更すべき点を洗い出す必要があります。
また、従業員にも改正内容が伝わるように、従来の法律との違いを明確にまとめることも大切です。いくら制度が整ったとしても、従業員に対する周知を怠れば意味がありません。
近年は育児休業にまつわる「マタハラ」「パタハラ」などのハラスメントも問題視されており、社会的な観点から見ても育児・介護休業の取得促進を行うべきです。
雇用環境を整備して、誰もが気兼ねなく休業を取得できるように、取得事例の発信や事前説明も丁寧に行いましょう。
まとめ
育児・介護休業法の改正により、雇用環境を改善することは従業員からはもちろん社会的にも求められています。段階ごとに施行が進められる中で、しっかりと改正された法律の内容を把握していく必要があります。
また、休業が取得できる従業員の対象も緩和されているため、勤怠管理や給与計算などの社内システムの構築も進めなければなりません。下記の記事では、勤怠管理システム・給与計算システムを比較しておすすめシステムを解説しています。あわせてご覧ください。
関連記事:勤怠管理システムを徹底比較
関連記事:給与計算ソフトを徹底比較
探すのに時間がかかる
相場がわからない
複数を比較しづらい
プロが代わりに探して紹介します!