人事ポリシーとは?メリットや作り方、有名企業の事例を紹介
企業の成長を支える「人事ポリシー」は、人事制度の設計や運用の基盤となる重要な要素です。適切な人事ポリシーを策定することで企業の価値観や求める人材像が明確になるため、採用ミスマッチを防止できます。しかし、人事ポリシーをどのように策定すれば良いか分からない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、人事ポリシーとは何か、策定の目的やメリット、作り方を解説。有名企業の人事ポリシー例も紹介しています。人事制度の基盤を整え、社員のモチベーション向上や組織の生産性向上を目指す方はぜひ参考にしてください。
- 人事ポリシーとは
- 人事ポリシーを策定する目的
- 人事ポリシーの内容
- 人事ポリシーを策定するメリット
- 人事ポリシーの作り方
- 人事ポリシーを作成するポイント・注意点
- 【事例紹介】有名企業の人事ポリシー
- まとめ
人事ポリシーとは
人事ポリシーとは、会社や経営者の「人材」に対する考え方を表したものです。具体的には、企業が目標達成のために社員に何を求めるか、何が評価や昇給につながるかを明らかにしたものです。人事制度の核となるルールに当たり、人事制度設計の土台となります。
人事ポリシーを策定する目的
人事ポリシー策定の目的は以下の3つです。
求職者へのアピール
人事ポリシーを策定することで、どのような人材を求めているか求職者に対して明らかにできます。求職者は人事ポリシーを見て自身の価値観と照らし合わせて応募を決めるでしょう。求職者のミスマッチを防ぐのに役立ちます。
世間やステークホルダーへのアピール
人事ポリシーを明示することで、その会社がどんな理念を持つかアピールできます。会社のイメージに関わる部分で、顧客の意思決定に影響を与えます。
人事制度の指針
人事制度を決めるうえでの指針となります。人事制度と人事ポリシーを照らし合わせることで、一貫性のある制度設計が実現します。
人事ポリシーの内容
人事ポリシーの主な内容は次の4つです。
人事ポリシー | 解説 |
---|---|
人材に対する考え方 | 企業文化やビジョンに合致する人材の定義を明確にし、採用・配置・育成の方針を統一する。 |
人材育成の方向性 | 企業の成長戦略に沿ったスキルやキャリア形成をサポートする。 |
評価基準 | 公平・公正な評価基準を設定し、成果主義・能力主義・行動評価などのバランスを取る。 |
報酬に対する考え方 | 成果や貢献に応じた報酬体系を構築し、従業員のモチベーション向上につなげる。 |
以上の要件を柱として人事ポリシーを策定し、それを土台として人事制度設計を行います。人事制度が法律とすれば、人事ポリシーは憲法に当たります。全体整合性という観点からも、人事ポリシーは人事制度の根幹となるため時間をかけて策定することが大切です。
人事ポリシーを策定するメリット
ここで、人事ポリシーを策定するメリットをまとめます。具体的にどの様なことに役立つのでしょうか?
- 人事制度や社内教育の指針が明確になる
- ステークホルダーに対し会社の指針を示せる
- 求める人材を確保できる
人事制度や社内教育の指針が明確になる
人事ポリシーを策定することで、人事制度や社内教育の指針が明確になります。人事ポリシーがないと、一貫性のある評価基準が確立できず、適正な人事評価制度の構築が困難になります。
また、社員にどのような行動や能力を求めるかはっきりするため、社員教育や採用の方向性を打ち出すことが可能です。社員にとっては、会社が求める能力・行動が明確になることで、評価を得るための努力をしやすくなります。その取り組みがキャリアアップや昇給につながり、更なるモチベーションの向上、生産性向上が期待できるでしょう。
ステークホルダーに対し会社の指針を示せる
人事ポリシーを策定することで、ステークホルダーに対し会社の指針を示すことが可能になります。ステークホルダーとは企業のあらゆる利害関係者のことで、経営者、株主、金融機関含む取引先、競合企業、行政、地域社会などあらゆる関係が含まれます。利害関係のあるステークホルダーに会社の指針を明確に示すことで、会社のイメージを形成されます。
例えば、グローバルな人材を受け入れる方針を打ち出せば、国際的な視野を持った会社という評価を得られます。企業が持つ理念は従業員の仕事への取組みの柱となるため、顧客の意思決定に大きな影響を与える要素です。
求める人材を確保できる
人事ポリシーを策定することで、採用担当者や求職者に対してどの様な人材を求めているか明らかにできます。採用担当者は会社がどの様な人材を求めているか明確になることで求める人材を確保できます。求職者は応募先企業が従業員をどのように扱うか、またどのような理念を基に人事評価をするのかは気にするポイントです。採用担当者も求職者も人事ポリシーである程度は適正を判断できるため、採用のミスマッチを防げます。HPに掲載しておけば採用担当者も求職者も閲覧できるため、採用に力を入れる場合は掲載しておくことをおすすめします。
人事ポリシーの作り方
人事ポリシーは会社の「人」に関する指針をステークホルダーに示すものです。採用から取引に至るまで重要なポイントとなるため、内容は十分練る必要があります。また、人事ポリシーの作成には一定の手順があります。ここでは人事ポリシーの作り方の流れを解説します。
- 企業理念や組織のあり方を定める
- 会社が求める人物像を明確にする
- 社員を評価する際の基準を決める
1.企業理念や組織のあり方を定める
人事ポリシーは人に関する会社の考え方であり、その前提には会社の理念や組織のあり方があります。会社は何を目指しているのかを明らかにすることは、人事ポリシー策定の最初の一歩です。
2.会社が求める人物像を明確にする
企業理念が明確になったら、会社が求める人物像を明らかにします。会社が求める人物として欠かせない要素をピックアップするのがポイントです。
3.社員を評価する際の基準を決める
会社が従業員に対してどの様な行動・能力を期待するか明確にします。やるべきことが明確になることで従業員の行動に主体性が生まれます。
人事ポリシーを作成するポイント・注意点
人事ポリシーを作成するポイント・注意点を解説します。
簡潔に分かりやすく記載する
人事ポリシーはホームページに掲載するものなので、最後まで読んでもらえるよう、できるだけ簡潔に分かりやすく記載しましょう。
将来を見据えたポリシーを策定する
従業員数の規模に見合わない人事ポリシーを策定すると、ミスマッチが生じやすくなります。将来的にどのくらいの社員数になるか、将来を見越したうえで人事ポリシーを策定しましょう。
多言語に対応する
グローバル人材を雇用する場合は、多言語対応にすることも大切です。ステークホルダーに対しても、標準的にグローバル対応していることを示すことは大切なことです。
評価・報酬についても記載する
社員に求めるだけでなく、評価・報酬についても記載しましょう。求職者が注目をするポイントとなります。
【事例紹介】有名企業の人事ポリシー
ここまで、人事ポリシーの作成の仕方をご紹介しましたが、具体的にどのように作成すれば良いのか分からない方も多いと思います。その場合、実際の企業の事例を参考にするのが成功への早道です。ここからは人事担当者の方に向けて、有名企業の人事ポリシーを紹介します。
- リクルート
- メルカリ
- ユニクロ
- ソフトバンク
- 楽天
- みずほフィナンシャルグループ
- 伊藤忠商事
- ニトリホールディングス
- サイボウズ
リクルート
株式会社リクルートが個人に求めるのは、自律的に動き、個人もチームも進化を遂げることです。多様性のある人々にいかんなく能力を発揮してもらうべく、会社が提供するものとして次の3つの人事ポリシーを掲げています。
1. 能力開発・チャレンジできる機会拡充
個人の強みを活かすため、より多く出来ることを増やす能力開発や、日々の職務を超え、自律的に新しい仕事にチャレンジするための機会を拡充します。
2. 安心安全を前提により柔軟に、よりクリエイティビティ高く個々人の働き方を選択しやすい環境へ
どんな多様性も受け入れていくために、より柔軟に自律的に選択しやすい、新しい働き方の推進を目指します。
3. Pay For Performance
期待する役割や成果に対してきちんと報酬で報いることができる仕組みを推進します。
メルカリ
株式会社メルカリは、個人と組織の成長を最大化するため、社員一人一人が自己成長にオーナーシップを持つことを重視し、主体的に学び、挑戦できる環境を提供しています。そのために、以下の3つの軸で人材開発を推進しています。
業務を通じた経験
メルカリでは、社員が自身の成長につながる役割やプロジェクトに積極的に手を挙げ、機会を活用することを奨励しています。とくに、新入社員向けのオンボーディングプログラムでは、入社3ヶ月以内に企業文化やビジョンを理解し、パフォーマンスを最大限に発揮できるようサポートします。これには、3日間のオリエンテーションや、メンター制度が含まれます。
周りとの関わり(フィードバック)
メルカリでは、成長には他者との対話が不可欠と考え、1on1ミーティングを定期的に実施。これにより、チームや職種の垣根を超えたコミュニケーションを促進し、相互理解を深めます。また、新入社員とメンターの関係構築を目的とした メンターランチの費用補助制度を導入し、対話の機会を増やす工夫をしています。
学習支援
社員がスキルを高めるための 外部研修やセミナー参加、書籍購入補助制度 を整備。これにより、個々の専門性の向上とキャリア形成を支援しています。
これらの施策を通じて、メルカリは 社員が自ら成長をデザインし、組織と共に進化し続ける環境 を目指しています。
出典:株式会社メルカリ「Talent Development」
ユニクロ
日本を代表するファストファッションブランド「ユニクロ」を手がける株式会社ファーストリテイリングは、社員一人ひとりが自己実現を果たしながら、企業のビジョンと共に成長できる環境を提供することを目指し、以下の3つの要素を軸に人材育成を推進しています。
完全実力主義と評価制度
社員の成長を促すために、目標管理制度(MBO)を導入し、各自が達成目標や実行プロセスを明確に設定できる仕組みを整えています。単なる結果だけでなく、課題へのアプローチやチームへの貢献も重視し、評価が社員の成長につながるよう設計されています。また、3カ月ごとの上司との面談を通じて、個々の取り組みについてフィードバックを受ける機会を提供し、成長をサポートしています。
キャリア開発の支援
社員が自らのキャリアを主体的に形成できるよう、社内公募制度(キャリアチャレンジプログラム)を設けており、半年ごとに希望する部署やプロジェクトへ挑戦できる機会を提供しています。さらに、個別育成計画(Individual Development Plan)を通じて、キャリア目標を明確にし、必要なスキルや経験を計画的に積み重ねる仕組みを構築しています。加えて、自己申告制度により、社員が自身のキャリアイメージや希望する働き方を会社に伝えることができ、組織と個人の成長を両立させる環境を整えています。
教育・研修プログラムの充実
業務に必要な知識やスキルを効果的に習得できるよう、店舗・本部の両方で研修制度を整備しています。集合研修(Off-JT)による体系的な学習と、現場での実践を重視したOJTの両軸で成長を促進し、社員一人一人が即戦力として活躍できるよう支援しています。
これらの取り組みにより、ファーストリテイリングは社員が主体的にキャリアを築き、個人と組織が共に成長し続ける環境を提供しています。
ソフトバンク
ソフトバンクはベンチャーマインドを持ち続け、一人一人が変化を楽しみ、勝ち続ける組織を目指しています。そのため、挑戦する人にチャンスを与え、成果に正しく報いる人事ポリシーを策定しているのが特徴。人事ポリシーとして、以下の5つを掲げています。
- 「進化し続ける組織」の実現
- 「挑戦と成長」を後押し
- 「実力と成果」に正しく応える
- 「多様な人材がイキイキ働く」環境作り
また、ソフトバンクグループでは、「300年成長し続ける企業」になるために、「No.1」「挑戦」「逆算」「スピード」「執念」という5つのソフトバンクバリューを掲げています。
楽天
楽天グループ株式会社は、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」ことを目指し、社員にさまざまな研修機会を提供しています。人事ポリシーに当たるキャリア開発は以下の3つで構成されます。
キャリア開発 | 内容 |
---|---|
PROFESSIONAL GROWTH | 1on1ミーティングによるフィードバック 社内オープンポジション制度(楽天のキャリアパスプログラム) |
PERFORMANCE CYCLE | 「コンピテンシー評価」と「パフォーマンス評価」の2つの人事評価制度 |
TRAINING PROGRAMS | 階層別研修やグローバルリーダーシップ開発研修など |
みずほフィナンシャルグループ
みずほフィナンシャルグループはみずほの企業理念を踏まえた「〈みずほ〉の人事フィロソフィー」を掲げています。
〈みずほ〉は、
・社員一人ひとりの挑戦と成長を支えます
・バリューを実践する社員を尊重し、報います
・誰もが自分らしく活躍できるインクルーシブなカルチャーを促進します
伊藤忠商事
伊藤忠商事は企業理念の「三方よし」を継承し、企業行動基準である「ひとりの商人、無数の使命」を体現できる人材を求めています。「業務から得るOJT」「評価・フィードバックによる成長意欲の醸成」「知識・スキルの業務への活用」の3つを通じたグローバルマネジメント人材の育成を掲げています。リーダーの行動要件を整備し、タレントマネジメントプロセスの仕組みを構築すると共に、創業以来掲げる自社の価値観に合う人材育成を目指しています。
ニトリホールディングス
ニトリホールディングスは、人材育成・処遇の方針として「教育こそ、最大の福利厚生」を掲げ、ニトリグループの教育体系「ニトリ大学」を運営しています。教育の機会は全社員を対象としており、配転教育、知識教育、自己育成の3つの制度を完備。また、キャリアアップを支援する階層別研修、アメリカセミナー、グローバル人材育成プログラム、自己育成支援制度、社内資格制度など様々な機会を通じて社員の成長を支援。教育への投資は上場企業平均の5倍の金額で、人材育成には特に力を入れています。また、賃金のベースアップも毎年行い従業員のモチベーション向上に寄与しています。
サイボウズ
サイボウズは離職率の高さを改善すべく、2005年以降、人事ポリシーに相当するワークスタイルの変革に着手。「多様な個性を重視する、公明正大である、議論を大事にする、そんな風土があってこそ、多様な働き方が実現できる」とし、多様な働き方を構築するために、育児・介護休暇や働き方宣言制度、在宅勤務制度、育自分休暇制度など多様な制度を導入。また、社員が議論を重ねる人事制度策定プロセスや、個人の意思や能力を適正に反映した給与評価を導入しています。
まとめ
人事ポリシーは求める人材を確保し、人事評価制度に一貫性を持たせるために必要不可欠です。しかし、人事ポリシーや人事評価制度の構築には専門的な知見が必要です。
もし、人事管理に困ったら、システムやツールを利用するのもおすすめです。とくに、労務管理システムや人事管理システムは、客観的な人事評価を自動的にできると好評です。
しかし、労務管理システム・人事管理システムは多数あり、どれを導入すべきか迷ってしまうでしょう。PRONIアイミツ(当サイト)では、ITツール受発注支援のプロとして、システム選びについての相談を受け付けています。いくつかの質問に答えるだけで希望要件に合ったシステムが分かる診断(無料)もありますので、以下のボタンからぜひ一度お試しください。
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