勤怠管理システムとは?メリットと事例を具体的に解説
勤怠管理システムを導入すると、具体的にはどのような変化があるのでしょうか。実際に導入している企業の事例を交えながら、勤怠管理システムのメリット・デメリットを解説していきます。
勤怠管理システムとは?
勤怠管理システムとは、文字どおり従業員の勤怠実績を適正かつ効率的に管理するための業務用システムのこと。一般的にスマートフォン・ICカードによる打刻、勤怠データの自動集計といった機能を備えており、製品によっては給与計算や残業・休暇の申請・承認ができるワークフローまでカバーしています。勤怠管理システムが国内で広く普及するきっかけとなったのは、2001年4月に厚生労働省が発令した「基発339号」。企業に従業員の労働時間をを客観的な記録として把握することが義務づけられ、それまでは手書きのタイムカードや自己申告によって勤怠管理を行っていた多くの企業がシステムの導入に踏み切りました。さらに、2010年に時間外労働の割増賃金などを定めた改正労基法が施行されると、クラウド環境の整備とあいまって勤怠管理システムを導入する企業がさらに増加。人事評価システムや給与計算ソフトとあわせて、業務管理に欠かせないツールの1つとなりました。現在も勤怠管理システム市場は右肩上がりの成長を続けており、トップクラスのシェアを誇るサービスは累計で2万4,000以上の企業に導入されています。
勤怠管理システムで利用できる機能
勤怠管理システムがどのようなツールなのかわかりましたが、具体的にはどのような機能を利用できるのか確認していきましょう。
打刻機能
勤怠管理システムでは、出退勤における打刻機能を利用することができます。PCを用いたWebブラウザ打刻や、ICカードを使用するICカード打刻、スマホアプリからのGPS打刻、不正を防ぐ生体認証打刻など、どのような打刻方法に対応しているのかはそれぞれの勤怠管理システムによってバラバラなので、どういった打刻方法を利用したいのかは導入前に決めておきましょう。
ワークフロー機能
勤怠管理システムでは、従業員からの残業申請・休暇申請や管理者による申請への承認、打刻ミスへの修正申請ならびに承認などといった、ワークフロー機能も利用することができます。ワークフロー機能があることにより、もしも打刻漏れがあった場合にはアラートを通知することができる、残業申請がなければ打刻時にエラーが出るように設定できるなどといった効果も。紙の書類で申請する手間が省けるのもポイントです。
集計機能
勤怠管理システムには、各種集計機能も搭載されています。勤務時間をリアルタイムに集計できるだけでなく、日々の出退勤データをまとめて管理し、自動で集計することも可能です。それぞれの従業員がどれほど勤務しているか、残業時間はどれくらいかなどを一目で把握できるほか、システムによってはプロジェクトごとの集計も確認できるでしょう。集計された各種データに関しては、CSVファイルやPDFファイルとして出力できるのが一般的です。
スケジュール・シフト管理機能
勤怠管理システムでは、従業員のスケジュールやシフトについてもまとめて管理できるものが少なくありません。スケジュール管理やシフト管理が可能な勤怠管理システムであれば、従業員からシフトの希望を送ってもらい、データや必要人員にあわせてシフト表を自動作成することが可能です。
従業員の雇用形態が幅広い、働いているスタッフ数が多くシフト作成に時間がかかるなどといった場合には非常に便利でしょう。
外部システムとの連携機能
勤怠管理システムは、もちろんシステム単体で使用しても非常に便利ですが、外部システムと連携できることが少なくありません。どのようなシステムと連携できるのかは勤怠管理システムによってさまざまですが、給与計算システムや人事管理システムなどと連携できるものが多いでしょう。
もしも給与計算システムと連携できるものであれば、正確な勤怠データをもとに給与計算を行えるため、データの反映ミスによる未払いリスクを抑えることができるのが心強いポイントです。
それぞれの勤怠管理システムでどのような機能が搭載されているのか詳しく知りたいという方は、こちらの記事をあわせてチェックしてみてください。
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勤怠管理システム導入のメリット
続いては、勤怠管理システムを入することで得られるメリットを5つに分けて具体的に解説していきます。
場所を問わずスピーディーに打刻できる
昨今ではクラウド型を中心に勤怠管理システムの大半がSuica、PASMOといった交通系ICカードやスマートフォンによる打刻に対応しています。スマートフォンからはアプリ内のボタンタップ、ICカードは専用の端末にかざすだけでスピーディーに打刻が完了するので、出勤や外出、退社のたびにタイムカードの列に並ぶ必要はありません。直行直帰が多い営業部門の従業員や、関連会社や取引先への出向者も常駐先から直接出退勤データを記録することができます。
労働時間を正確に把握できる
紙のタイムカードで勤怠管理を行う際に懸念されるのが、なりすまし(他人による代替打刻)をはじめとする不正行為です。遅刻した際に意図的に打刻せず、後から手書きで虚偽の申請をするといった悪質なケースもあり、頭を悩ませている人事・総務担当者も多いのではないでしょうか?勤怠管理システムを導入すれば、そうした不正行為の高確率での防止が可能です。スマートフォンや社員証ICカードなどを用いて打刻を行うため、他人による打刻が起こりにくく、さらにGPS機能を使えば不正打刻も防ぐことができます。さらに、指紋認証や静脈認証といった生体認証に対応している勤怠管理システムを選べば、本人以外の打刻が不可能となります。不正をシャットアウトした上で、実態に即した正確な労働時間の把握が叶うでしょう。
休職・離職の防止につながる
労働時間を正確に把握できるということは、従業員1人ひとりのケアがしやすくなるということです。蓄積された勤怠データを確認すれば、長時間労働が続いている社員や遅刻・欠勤の多い社員が一目瞭然。上司を交えた面談など、早めの対策につなげることで休職や離職が未然に防げるのではないでしょうか。また、昨今では有給休暇の取得状況に対するアラートが搭載された勤怠管理システムが増加傾向にあり、ワークライフバランスの改善や働きやすい環境づくりの一環として導入する企業も少なくないようです。
紙のコストがかからない
ペーパーレス化が進められるのも勤怠管理システムの導入で得られるメリットの1つです。スマートフォンやICカードによる打刻に切り替えれば紙のタイムカードが不要になるので、用紙代の削減が可能。従業員の出退勤時刻や残業時間もデータとしてシステム上に蓄積されていくので、手書きの出勤簿作成や、Excelで作成した出勤簿を印刷する必要もなくなります。出勤簿を印刷している場合は、用紙代・印刷代の双方の削減が実現するでしょう。
給与計算の効率がアップ
勤怠管理システムの大半には、打刻情報にもとづいて従業員1人ひとりの勤務実績や残業時間を自動集計する機能が搭載されています。集計済みのデータはCSVファイルとしてエクスポートでき、そのまま給与計算システムへ取り込めるので、手作業によるタイムカードの計算や複数のシステムに同じデータを入力する手間もかかりません。おのずと経理部門の生産性が大幅に向上し、残業代だけでなく、場合によっては税理士への記帳代行のアウトソーシング費用も抑えられるのではないでしょうか。
勤怠管理システム導入のデメリット
勤怠管理システムには、不正防止やコスト削減などさまざまなメリットがありますが、自社の業務体制や課題を鑑みずに安易に導入を進めてしまうとデメリットをもたらすこともあるので注意が必要です。
初期費用・ランニングコストが負担になる
「アイミツ」による調査の結果では、勤怠管理システムの平均利用料金は従業員1人あたり月額100円~500円前後。クラウド型の勤怠管理システムはほかのクラウド型業務用システムと同様に低価格化が進んではいるものの、仮に従業員100名規模の企業が1人あたり月額300円の勤怠管理システムを導入した場合の年間コストは36万円。製品によっては初期費用やコンサルティング費用が必要となることもあります。また、セキュリティの観点などからオンプレミス型(自社サーバーにインストールして導入する形式)を希望する場合は、メンテナンス費用や法改正に対応するためのアップデート費用も必要です。こうした費用が大きな負担になるという企業には、より低コストで利用できる打刻機能に特化したスマートフォンアプリも選択肢の1つになるのではないでしょうか。
勤務体系にマッチしないことも
働き方改革やテレワークの推進の流れから、フレックスタイム制や裁量労働制を導入する企業も増加傾向にありますが、すべての勤怠管理システムがそれらの勤務体系に対応しているわけではありません。アルバイトの多い飲食店や小売店では、「せっかく勤怠管理システムを導入しても、流動的なシフトに集計機能が対応できず、労働時間や給与の計算は手作業が必要になる」ということもあるようです。そういった点では、まずは自社の勤務体系や就業規則に合った製品を選ぶことが重要。その上でカスタマイズも含めて対応が困難という場合には、制度やルールの見直しも視野に入れて検討してみてもいいかもしれません。
社内の稟議が通りにくい
こちらもデメリットというよりは注意点ですが、ほかの業務用システムと比べると、勤怠管理システムは導入の稟議が通りにくい傾向にあります。勤怠管理システムは販売管理システムやSFA(営業支援システム)のように基幹業務の生産性を向上させ、ダイレクトに利益を生むものではないというのが理由です。上司や経営陣の納得が得られない場合は、現状の業務課題や社員の声、システムの導入によって見込める効果などを資料にまとめ、できるだけ数値化しながら費用対効果を説明する必要があるでしょう。すでに勤怠管理システムの導入で業務効率化やコスト削減に成功している事例を資料に盛り込めば、説得力がぐっと増すはずです。
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勤怠管理システムの導入を成功させるポイント
上記の事例を見てもわかるように、勤怠管理システムのメリットを最大限活かすためには、システムの特徴を正しく理解した上で自社に合った製品を選ぶことが大切です。最後は、導入にあたって注意したい3つのポイントを紹介します。
2つのタイプを把握しよう
各社から提供されている勤怠管理システムは「クラウド型」と「オンプレミス型」の大きく2つに分かれます。それぞれにどのような特徴があるのかを解説していきます。
クラウド型
クラウド型とは、webサーバー上で稼働するシステム・ツールを指すものです。利用企業側でサーバーや周辺機器を用意する必要がなく、インターネット環境とPC・スマートフォンといった端末があれば、場所を問わず使用することができます。おのずと初期費用が抑えられ、料金体系も幅広いためニーズに応じて選択が可能。稼働後のメンテナンスやアップデートも開発側が無償で対応するため、利用者側は法改正の際も作業や追加料金の支払いが不要です。また、複数の拠点がある場合であっても従業員の勤怠データが一元管理できるほか、なかには契約即日に運用が開始できるものもあるようです。「できるだけ費用をかけずに、いち早く勤怠管理システムを導入したい」という場合には、クラウド型の製品から優先的に検討するとよいでしょう。
オンプレミス型
オンプレミス型は、自社で用意したサーバーにインストールして使用するタイプのシステムを指すものです。買い切り型での契約が主流となっており、利用規模や業務体制などに合わせてカスタマイズが可能。クラウド型と比較するとセキュリティ面がより強固とされていることから、あえてオンプレミス型を選ぶ企業も少なくないようです。その反面、導入費用が高額になるため導入ハードルが高いのも事実。製品によってはライセンス費が100万円を超える上に、メンテナンスや法改正時のアップデートもすべて自社で対応する必要があります。
導入目的を整理しよう
導入の目的をしっかり見定めるのも大事なポイントの1つです。たとえば、不正打刻に課題を抱えているのならアラート機能や静脈認証機能が付いた製品、総務・人事とあわせて経理スタッフの業務効率を上げたいのなら給与計算ソフトと連携する製品といったように、業務課題を整理した上で目的に合っている製品を選びましょう。ただし、1つの目的にとらわれ過ぎると思わぬ落とし穴に陥ることがあるので、その点は忘れずに。利用者側(打刻する従業員側)、管理者側(総務・経理など)それぞれにヒアリングを行い、要件を洗い出しておくことで「こんなはずじゃなかった」という事態が回避できるのではないでしょうか。
スムーズに運用できるか確認しよう
システムを導入して総務や経理の業務コストを削減しても、毎月の利用料金がそれを上回ってしまうようでは意味がありません。勤怠管理システムは決して安い買い物ではないので、限られた予算内で無理なく運用できるよう、事業規模に見合った料金の製品を選ぶようにしましょう。また、「システムに不慣れな人でも使えるか」「操作に迷ってしまうことはないか」など、使い勝手の面に目を向けるのも大切なポイント。不安要素がある場合は、アフターサポートの充実した勤怠管理システムを選ぶのがおすすめです。
まとめ
本記事では、勤怠管理システムの導入メリットやデメリット、実際に導入している企業の事例にくわえて、導入の際のポイントを解説してきました。勤怠管理システムは業務効率化だけでなく、コスト削減や従業員の意識改革にも有効なツールです。しかし、昨今では各社からさまざまなシステムが提供されており、そのなかから自社に合ったものを選ぶには時間と労力が必要となります。「アイミツ」では、厳選した勤怠管理システムを比較した記事も公開しているので、「複数の勤怠管理システムを比較した上で検討したい」という方は、ぜひこちらもあわせてご覧ください。



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