MAツール(マーケティングオートメーション)とは?メリット・デメリット、選び方を解説
MAツール(マーケティングオートメーション)とは、企業のマーケティング活動を自動化するツールのことです。MAツールを導入することで、これまで担当者が手動で行なっていた見込み顧客情報の獲得・管理などのマーケティング活動を効率化することができます。
この記事では、マーケティングオートメーションとは何か、メリットやデメリットをわかりやすく解説しています。「マーケティング業務の工数を軽減したい」「効率よく見込み顧客情報を獲得したい」とお悩みの担当者は必見です。
- MAツール(マーケティングオートメーション)とは
- 企業がMAツールを導入する目的・背景
- MAツールの主な機能
- MAとSFA・CRMの違い
- MAツール導入によるメリット
- MAツール導入におけるデメリット
- 自社に合うMAツールの選び方
- まとめ:自社に合うMAツールの導入で、マーケティング活動を効率化しよう
MAツール(マーケティングオートメーション)とは
MAツール(マーケティングオートメーション)とは、マーケティングに関する活動の効率化および、見込み顧客醸成を目的としたツールのことを指します。MAツールを導入することで、日々発生する煩雑なマーケティングに関する一連の業務を自動化し、営業・マーケティング担当者の負担を軽減することができます。
見込み顧客の獲得・育成は、企業の成長を支える上で欠かすことのできない要素です。見込み顧客数を増やすことが商談の機会の増加に繋がり、結果として売上や利益の増加が期待できます。つまり自社のマーケティング戦略として、見込み顧客へのアプローチを十分に検討し、実践していくことが求められます。
ただ社内に散らばった顧客情報の一元管理や、Webサイトに訪れた顧客の細かな動きの分析、顧客に対する適切なタイミングでのアプローチなど、多岐にわたる業務が発生します。それらを担当者が手動で行うとなると、「人材・スキル不足」「最適なツールやリソースの選定が難しい」「コストの制約」など様々な課題に直面します。MAツールを導入することでこれらの業務を自動化・効率化することが可能です。
企業がMAツールを導入する目的・背景
近年、企業がMAツールを導入するようになった背景、それはインターネットやスマートフォン、デジタル技術の進化に伴って市場環境が変化し、消費者の行動や購買傾向も変化したことと大きく関係しています。消費者は製品やサービスを購入する前に、自らインターネットで商品情報や口コミの確認といった情報収集をします。企業はこのような消費者の行動を把握した上で、最適なタイミングで自社製品・サービスをアプローチする必要があります。
さらに下記統計データによると、コロナ禍の第一回緊急事態宣言(2020年4月)をきっかけに企業のMAツールの導入が急速に進みました。半年ごとに10%以上の伸張率で増加し、現在は3年前と比較すると導入企業数は2倍に増えたことが読み取れます。
出典:2023年5月国内63万社のMAツール実装調査を報告 ~コロナ前と比較して導入企業数は2倍~ | Nexal
デジタル化が急速に進展したコロナ禍において、オンラインでの見込み顧客獲得や購買へのアプローチが企業にとってより重要となったことが、近年、企業がMAツールを導入するようになった背景と言えます。
MAツールの主な機能
MAツール(マーケティングオートメーション)は、企業がマーケティング活動を効率的に行うために役立つ機能が多く備わっています。ここでは、MAツールでできることを解説します。
見込み顧客の管理(リード管理)
マーケティング業務において、獲得した見込み顧客情報を管理・活用することは最も重要なことの1つと言えます。MAツールを使うと、簡単に顧客情報のデータを整理できます。例えば社内の複数の担当者が、同一の取引先と名刺を交換して情報が重複したとしても、CRMやSFAといったシステムと連携して、重複データの削除・更新を自動的に行うことが可能です。これにより、同じ顧客に何度もアプローチをしてしまったり、顧客の放置による取りこぼしを防ぐことができます。また顧客を特定の基準でセグメント分けできるため、メール配信の際はその顧客のニーズにあった内容を提供することも可能です。
この機能を使ってできること
- 営業担当ごとの属人的な管理によって社内共有されていなかった顧客情報を、会社全体で管理・共有
- セミナーに参加してくれた顧客にメールを送るため、該当顧客を洗い出し
見込み顧客の抽出・スコアリング(リードクオリフィケーション)
リードクオリフィケーションとは、顧客が購買に至るまでの過程での行動やデータを分析し、その情報を活用して最適な営業アプローチを行うことです。営業部門と連携し、より成約確度の高い見込み顧客を獲得することが目的です。
MAツールを利用することで、製品ページへの訪問回数やダウンロードした資料をもとに、見込み顧客の購買意欲や営業成功の可能性を評価。成約確度の高い顧客リストを営業担当と共有することで、効果的なアプローチを実現できます。最適なリードクオリフィケーションを実現するために、営業と連携を密に行い、見込み顧客獲得や既存顧客とのコミュニケーションを強化していくことが求められます。
この機能を使ってできること
- 資料請求や無料トライアルを経験した顧客を見込み客として抽出
見込み顧客への適切なアプローチ(リードナーチャリング)
企業が自社の製品・サービスに興味を持つ見込み顧客を効果的に育成し、購買に至るまでのプロセスを最適化する取り組みを「リードナーチャリング」と言います。MAツールを使用すると、顧客のweb上での行動履歴の収集や顧客のセグメント分けなどの機能をもとに、定期的なメール配信だけでなく、個々の顧客の興味・関心に合わせたタイミングでメールを送ることができます。また他にも、顧客にとって必要な情報が載った企業が作成した資料(ホワイトペーパー)の提供や、セミナーの開催の連絡など、ニーズのある顧客に一斉に届けることができます。
顧客にとって最適なコンテンツを、適切なタイミングで提供することで、顧客の疑問や不安を解消し、興味を抱いている見込み顧客を最後の受注に繋げることが期待できると言えます。リードナーチャリングのポイントとしては、顧客とのコミュニケーションを継続的に行い、次の段階のアプローチに繋げることです。
この機能を使ってできること
- 見込み顧客に対してメールマガジンの配信やセミナー開催などを行う
- セミナーに来てくれた客にだけメルマガ配信を行う
マーケティング業務の自動化(オートメーション)
見込み顧客へのアプローチやマーケティング業務を自動化する機能は、最も皆さんがMAツールに対してイメージする特徴でしょう。MAツールなら、見込み顧客全体に対して月に1度メールを配信し、その後自社Webサイトに訪れた人だけを抽出してサービス案内のメールを送るなどといった設定を自動化できます。その他にもフォームから申し込みがあった場合に、完了メールなどの配信業務を自動化することも可能です。
MAとSFA・CRMの違い
MAのツールについて調べていると、よく目にするのがSFAやCRMといったツール。どれも「企業のマーケティングや営業活動を効果的にサポートするツール」ではありますが、MA、SFA、CRMはそれぞれ異なる機能を持ちます。これらの違いと目的について、以下で解説します。
MA(Marketing Automation)
- 目的:マーケティング活動の効率化・効果向上
- 機能:メール配信、Webサイト分析、リング内訳データ管理など
- 適用:BtoB, BtoC 共通
- 顧客の興味や購買履歴に基づく適切なコンテンツの提供や、施策の自動化・セグメント化を実現。最適なタイミングでリードを営業に獲得することが可能
SFA (Sales Force Automation)
- 目的:営業活動の効率化・見込み顧客の管理
- 機能:商談管理、顧客情報管理、営業KPI分析など
- 適用:BtoB
- 営業担当者が顧客情報を一元管理することで、提案やフォローアップの効率化が図れる。また、営業リソースの最適化に役立つ
CRM (Customer Relationship Management)
- 目的:顧客との長期的な良好な関係の構築・維持
- 機能:顧客データベースの管理、コミュニケーション履歴の追跡など
- 適用:BtoB, BtoC 共通
- 顧客のニーズに合わせたサービスや製品を提供し、リアルタイムで顧客の反響や状況を把握することができる
それぞれのツールは目的や機能が異なりますが、連携して使用することで、企業のマーケティングや営業活動をより効果的に行うことができます。自社の課題や目的に合わせて、最適なツールを選定・活用しましょう。
MAツール導入によるメリット
MAツール(マーケティングオートメーション)導入により企業は効率的な営業活動を実現できます。具体的なメリットは以下の通りです。
マーケティング業務の工数軽減
従来担当者によって手作業で行われていた様々な業務が自動化することで、企業はより効率的にマーケティング活動に取り組むことが可能となります。担当者の工数削減により、自社の製品やサービスの最適化、新たな顧客獲得への取り組みに集中できるようになります。
属人化を防ぐ営業組織づくり
従来の営業担当者が見込み顧客に直接訪問・開拓していくスタイルは、成果が担当者によって大きく変化するため、顧客へのアプローチの質・効果が一定ではありません。また社内での情報共有も不十分だと、営業担当者が退職をした場合、その知識や経験が失われるリスクが高くなります。
一方MAツール導入により、事前に成約確度の高い見込み顧客を抽出し、営業担当者に共有できれば手腕の違いが生まれにくく、営業の質を一定にすることが可能です。また、アフターフォローや商談の進め方を共有し、全体の顧客対応力やサポート力を向上させることも可能です。こうした取り組みを継続的に行うことで企業は営業の属人化を克服し、時代に適応した効果的な営業活動を展開できるようになります。そうすることで、企業の成長と発展の貢献につながります。
見込み顧客の取りこぼしを防ぐ
「見込み顧客へのアプローチが適切なタイミングでできていない」「顧客の興味・潜在ニーズを満たせていない」などが理由で、見込み顧客の取りこぼしが発生することがあります。MAツールを導入することで、顧客情報を整理し、最適なタイミングでメールを配信したり、顧客データや購買履歴をもとに個別のニーズに沿ったコンテンツを提供することが可能です。
高度な分析でより確度の高い顧客を抽出
MAツールでは次のような手順を踏むことで、顧客にとってより適切なタイミングでアプローチが可能となります。
- Webサイトへのアクセスやメールの開封率など、顧客の行動履歴をリアルタイムで把握
- 顧客の興味や関心度合いを数値化し、見込み度を評価するスコアを設定
- スコアに応じた適切なアプローチやコンテンツを提供し、シナリオに沿った効果的なコミュニケーションを実現
効果的なマーケティング活動や営業プロセスを実現するために、これらの手法をうまく活用しましょう。
MAツール導入におけるデメリット
MAツールはメリットが多いですが、一方で以下のようなデメリットも存在します。メリットだけでなくデメリットも把握した上で、導入を検討することが大切です。
効果が出るまでに時間・費用がかかる
デメリットの一つは、効果が出るまでに時間や費用がかかることです。まずは様々な機能や設定を熟知し、自社に最適な方法で運用する必要があります。そのため、導入に至るまでの検討や準備に時間をかけなければなりません。また、MAツールをうまく活用するためには、十分な見込み顧客のデータが必要であり、その収集や分析にも時間を要します。
顧客に提供するコンテンツ準備も手間がかかる作業です。顧客の興味やニーズに合わせたコンテンツを制作するために、その策定にも時間や費用がかかることがあります。短期的な効果を期待するのではなく、中長期的な計画を立ててMAツール導入を検討しましょう。
運用する人材の確保が必要
MAツールの適切な設定や活用方法を理解するためには、専門的な知識とスキルが求められます。例えばマーケティング部門と営業部門の連携が密であること、事例やデータ分析に基づいた施策を選定する能力があること。他にもBtoBやBtoCそれぞれの業界で最適なアプローチ方法やマーケティング戦略が異なるため、業界特有の課題やニーズに応える必要もあります。
MAツールの導入後も、システムのアップデートや機能追加が定期的に行われるため常に最新の情報にアップデートしなければなりません。したがって、自社内で運用できる適切なスキルを持った人材の確保が重要です。サポートが充実しているMAツールもありますが、それでも運用するためには一定のスキルが必要です。自社に運用担当者がいれば、より効果的にマーケティングオートメーションツールを活用し、企業の目標達成に繋げることができるでしょう。
全てを自動化できるわけではない
MAツール(マーケティングオートメーション)にも自動化できないことがあります。まず一つは、戦略立案です。自社にとって必要なマーケティング戦略を構築する際には、様々な情報やデータを比較検討し、課題を把握し、最適なアプローチを選定することが重要ですが、これらは担当者の知識や経験に頼って行うものです。
またマーケティング活動は社内だけでなく、外部のリソースや専門家のサポートが必要なケースもあります。その際のコミュニケーションは、MAツールを通して自動化できるものではありません。その他にも、MAツールで自動化できないことの一つに、結果の分析や評価も含まれます。各施策の効果測定やKPIの確認、データ分析を通じた改善点の抽出など、これらはMAツールを活用しつつも人間が主体となって分析し、次のアプローチに繋げていく必要があります。MAツールで自動化が難しい部分としては、その他以下が例として挙げられます。
- 自社のマーケターや部門間のコミュニケーション
- 新たなマーケティングリソースの探索や導入
- 運用体制や人員の調整
- 知識や技術の習得
- 緊急時対応やトラブルシューティング
いずれもスキルや判断力が問われるような部分であり、手動で対応することが求められます。MAツールは企業のマーケティング活動を効率化する強力なツールであるものの、全てを自動化することはできないという点に注意が必要です。適切な運用と共に、人間の役割を見失わないようにすることが求められるでしょう。
自社に合うMAツールの選び方
MAツール(マーケティングオートメーション)のメリットデメリットを踏まえて、マーケティングオートメーションツールを選ぶポイントを解説します。
機能が自社に合うか(BtoB向けかBtoC向けか)
一概にMAツールといっても、BtoB向けとBtoC向けの機能は大きく異なる点があり、それぞれには特徴的な機能が存在します。
BtoB向け機能
BtoBの取引額は高額で、意思決定者も多く、商談成立まで時間がかかるため、顧客を長くフォローできる機能が役立ちます。
- 見込み顧客の獲得と管理
- メールやWebサイトの活用による営業活動の効率化
- CRMとの連携による顧客情報の一元管理
- 見込み客の興味や行動履歴に基づくリードスコアの設定
- 商談や案件の進捗状況を把握するためのダッシュボード表示
BtoC向け機能
一方、BtoCの取引では取引額が比較的少ない一方で想定顧客数は多いため、販売促進に強いMAツールがおすすめです。
- 顧客の購買履歴や行動データをもとにした個別化されたコンテンツ配信
- 様々なチャネル(Email、SNS、広告など)を通じた広範なリーチ
- セグメント別のマーケティング施策の効果分析や最適化
自社のマーケティング活動や戦略に合った最適なツールを導入することが、成果を上げるための重要なポイントになります。
自社のリソース・コストに合うか
MAツールは、必ずしも高価なものが自社にとって良いものとは限りません。リソース面とコスト面の両方を考慮して、自社の予算や業務構造に適したMAツールを選ぶことが大切です。まず、リソース面を考慮することが重要です。具体的には以下の点が挙げられます。
- 自社のマーケティング部門のスタッフ数やスキル
- ツールを運用・管理するための担当者の人数
- 必要な機能や設計したシナリオが実現可能か
コスト面では初期導入費用や月額費用だけでなく、機能追加や拡張に伴う追加費用、他のシステムとの連携やカスタマイズにかかる費用も確認しましょう。ツール選定の初期段階で、MAツールの提供企業(ベンダー)やコンサルティング業者と相談することもおすすめです。さらに、無料で提供される資料やセミナーが多数存在するため、事例や機能を把握し、導入を検討しましょう。
サポート体制の有無
サポート体制とは、ベンダーが顧客に対し、導入から運用までの様々な問題や課題を解決するための支援を行っているかどうかを指します。問題が発生した際に、迅速かつ適切に対応してくれる「問い合わせ対応」や、 ツールの最適な活用方法や最新情報の提供「運用支援」があります。サポート体制が十分に整っているかを確認することで、導入後に想定外の問題に直面した際も、安心して臨むことができます。また、自社の運用スタイルやリソースに合わせたツール選びが可能になります。したがって、導入前に「サポート体制の有無」を確認することは重要な項目となります。
既存のツールと連携可能か
導入を検討しているMAツールが、自社で既に使用している様々なシステムやツールと効果的に連携できるかを確認しましょう。例えば、下記のような連携が重要となります。
- CRMシステムやSFAツールとの連携
- Web解析ツールとの連携
- 広告プラットフォームとの連携
- メール配信ツールとの連携
それぞれの連携は、顧客データの管理や業務の効率化、機能の活用に直結しています。例えば、CRMやSFAツールとMAツールが連携している場合、顧客情報や営業活動のデータを一元的に管理し、適切なコミュニケーションを行うことが可能となります。また、Web解析ツールや広告プラットフォームとの連携によって、効果的なマーケティング施策の運用が実現できます。
導入前に、既存のツールとの連携が確認できるか検討することで、自社に最適なMAツールを選ぶことができるでしょう。この点をよく理解し、デジタルマーケティングの効率化を実現するMAツール選定において、成功へのアプローチを目指しましょう。
自社と同規模・同業種の導入実績はあるか
同規模・同業種の導入実績があるMAツールを選ぶことで、自社の業務プロセスやシステムとの連携がスムーズに行われる可能性が高くなります。また、同業種であれば、シナリオ設計やリードスコアリングに必要なデータが共通している場合が多く、導入後の運用や機能活用が容易になるでしょう。
まとめ:自社に合うMAツールの導入で、マーケティング活動を効率化しよう
マーケティングオートメーションツールとは、企業が行うさまざまなマーケティング活動を効率化し、顧客とのコミュニケーションを自動化するためのツールです。最適なMAツールを選定するためには、自社のニーズや業務内容を十分に検討した上で、比較検討を行うことが重要です。また、導入後は、定期的な運用方法の見直しや効果測定を行い、改善を進めることが成功への鍵となります。
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