小規模事業者持続化補助金とは?申請方法をわかりやすく解説
小規模事業者持続化補助金は、小規模な事業者が安定した経営を行うために提供される財政支援制度です。この補助金は、事業の持続性を高めるために必要な経費の一部を補助し、事業の成長や発展を促進する目的で創設されました。
本記事では、小規模事業者持続化補助金の概要から申請方法、条件、スケジュールまで、その詳細をわかりやすく解説します。各種補助枠の内容や対象者、また新設された「災害支援枠」の情報も含め、申請に必要な情報を網羅的に提供します。
- 小規模事業者持続化補助金とは
- 各メニューの対象者と補助内容
- 「災害支援枠(令和6年能登半島地震)」の新設
- 小規模事業者持続化補助金の対象経費
- 小規模事業者持続化補助金の申請スケジュール
- 小規模事業者持続化補助金とIT導入補助金は併用可能
- 小規模事業者持続化補助金の注意点
- まとめ:補助金を活用して企業DXを!
小規模事業者持続化補助金とは
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が競争力を高め、持続可能な経営を実現するための財政支援制度です。主に小規模事業者の販路開拓・業務効率化を支援することを目的とし、広告宣伝費や設備購入費など、事業拡大に必要な経費の一部が補助されます。
本補助金は中小企業庁が管轄しており、各地の商工会議所や商工会が申請の窓口となります。特に地域経済の活性化を図るため、小規模な事業者が地域に根ざして持続的に成長することを支援しています。
各メニューの対象者と補助内容
次に、小規模事業者持続化補助金の対象者と補助内容について、それぞれ解説します。
対象事業者の要件
下記の要件を満たす小規模事業者が対象です。
業種 | 要件 |
---|---|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 常時使用する従業員が5人以下 |
宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員が20人以下 |
製造業その他 | 常時使用する従業員が20人以下 |
また、以下の要件をすべて満たす必要があります。
①資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%株式保有されていないこと(法人のみ)
②直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
③商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいること
④持続化補助金(一般型、コロナ特別対応型、低感染リスク型ビジネス枠)で採択を受けて、補助事業を実施した場合、各事業の交付規程で定める様式第14「小規模事業者持続化補助金に係る事業効果及び賃金引上げ等状況報告書」を、原則本補助金の申請までに受領されたものであること。
⑤ 「卒業枠」で採択され事業を実施した事業者ではないこと。
通常枠
通常枠の要件と補助内容は以下の通りです。
補助要件 | 上限額・補助率 |
---|---|
経営計画を策定し、計画に基づいて販路開拓や業務効率化の施策を進める必要がある。事業実施時には、商工会・商工会議所からのアドバイスやサポートをもらう必要がある。 | 上限額50万円 補助率2/3以内 |
通常枠では、商工会・商工会議所からのアドバイスやサポートを元に、販路開拓や業務効率化を進める施策を実施することが要件です。
賃金引き上げ枠
賃金引上げ枠では、以下のように賃上げの取り組みを進めることが要件です。
補助要件 | 上限額・補助率 |
---|---|
販路開拓の取り組みに加え、事業の終了時点で最低賃金が地域別最低賃金より50円以上高いこと | 上限額200万円 補助率2/3以内 (ただし、赤字事業者の補助率は3/4) |
なお、最低賃金がすでに地域別最低賃金より50円以上高い事業場では、現在支給している最低賃金よりさらに50円以上増とする必要があります。
卒業枠
卒業枠は、小規模事業者のうち事業拡大を目指す事業者を支援するメニューで、期間中に従業員を増やすこと、小規模事業者以上に事業規模を拡大することが要件となっています。
補助要件 | 上限額・補助率 |
---|---|
販路開拓の取り組みに加え、雇用を増やし小規模事業者の従業員数を超えて事業規模を拡大すること | 上限額200万円 補助率2/3以内 |
後継者支援枠
補助要件 | 上限額・補助率 |
---|---|
販路開拓の取り組みに加え、「アトツギ甲子園」のファイナリストか準ファイナリストになった事業者であること | 上限額200万円 補助率2/3以内 |
「アトツギ甲子園」とは、中小企業庁が開催しているイベントで、全国各地の中小企業・小規模事業者の後継者が、既存の経営資源を活かして新規事業アイデアを競うピッチイベントです。
創業枠
補助要件 | 上限額・補助率 |
---|---|
販路開拓に取り組む小規模事業者であること。ただし、「認定市区町村」等が実施する特定の創業支援事業を受けた日および開業日が、公募締切日から数えて過去3年以内である必要がある。 | 上限額200万円 補助率2/3以内 |
このメニューは、創業した事業者に対して支援するために、上記のような要件を満たす新しい事業者を対象としています。
「災害支援枠(令和6年能登半島地震)」の新設
小規模事業者持続化補助金では、令和6年能登半島地震への対応として「災害支援枠(令和6年能登半島地震)」が新設されました。
補助対象者は「被災区域」に所在する、令和6年能登半島地震の被害を受けた事業者です。そのほか、常時使用する従業員の数20人以下(商業・サービス業の場合は5人以下)の小規模事業者であるなど、いくつか要件があります。
補助対象事業は、事業再建のための取り組みで、商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であることが求められます。詳しくは、災害支援枠公式ページの公募要領を確認してください。
小規模事業者持続化補助金の対象経費
小規模事業者持続化補助金の対象経費を解説します。
小規模事業者持続化補助金の対象になる経費
小規模事業者持続化補助金の対象経費は以下の通りです。
対象となる経費 | 詳細 |
---|---|
①機械装置等費 | 補助事業の遂行に必要な製造装置の購入等 |
②広報費 | 新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置等 |
③ウェブサイト関連費 | ウェブサイトやECサイト等の開発、構築、更新、改修、運用に係る経費 |
④展示会等出展費 | 展示会・商談会の出展料等 |
⑤旅費 | 販路開拓(展示会等の会場との往復を含む)等を行うための旅費 |
⑥開発費 | 新商品の試作品開発等に伴う経費 |
⑦資料購入費 | 補助事業に関連する資料・図書等 |
⑨借料 | 機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの) |
⑩設備処分費 | 新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分等 |
⑪委託・外注費 | 店舗改装など自社では実施困難な業務を第三者に依頼(契約必須) |
小規模事業者持続化補助金の対象にならない経費
一部、小規模事業者持続化補助金の対象にならない経費があります。詳細については最新の公募要領を確認してください。→第15回公募(2024年2月)についてはこちら
小規模事業者持続化補助金の申請スケジュール
次に、小規模事業者持続化補助金の申請スケジュールを確認しておきましょう。ここでは、申請の流れと必要書類について解説します。
なお第15回の申請は2024年3月14日に締切られました。公募要領の公開から最終締切までには、およそ2ヶ月程度の期間があります。次回以降の公募については、過去の内容を確認しながら準備しておくと良いでしょう。
小規模事業者持続化補助金の申請の流れ
申請の流れは以下の通りです。
- 事前準備
商工会などへの相談、事業計画の策定 - 公募開始~交付候補者決定
事業計画査定、採択者決定 - 交付決定~補助事業実施
交付申請・決定、補助事業開始、実績報告、入金 - 補助期間終了後~
事業化状況報告
出典:中小企業庁
小規模事業者持続化補助金の必要書類
全申請者が必須の提出書類は以下の表の通りです。
書類 | 法人 | 個人 | NPO | 種別 |
---|---|---|---|---|
以下の書類はシステムにて入力します ・小規模事業者持続化補助金事業に係る申請書(様式1) ・経営計画書兼補助事業計画書①(様式2) ・補助事業計画書②(様式3) ・補助金交付申請書(様式5) ・宣誓・同意書(様式6) |
〇 | 〇 | 〇 | - |
事業支援計画(様式4) | 〇 | 〇 | 〇 | - |
貸借対照表および損益計算書(直近1期分) | 〇 | - | - | 写し |
株主名簿(該当者のみ) | 〇 | - | - | 写し |
直近の確定申告書【第一表及び第二表及び収支内訳書(1・2面)または、第一表及び第二表及び所得税青色申告決算書(1~4面)】 | - | 〇 | - | 写し |
貸借対照表および活動計算書(直近1期分) | - | - | 〇 | 写し |
現在事項全部証明書または履歴事項全部証明書 | - | - | 〇 | 原本 |
法人税確定申告書(別表一(受付印のある用紙)および別表四(所得の簡易計算))(直近1期分) | - | - | 〇 | 写し |
他に、希望する枠・特例により追加的に必要となる書類や、希望する加点により追加的に必要となる書類などがあります。詳しくは、最新の公募要項を確認してください。
小規模事業者持続化補助金とIT導入補助金は併用可能
小規模事業者持続化補助金は、IT導入補助金との併用が可能です。ここでは、両補助金を併用する際のポイントについて解説します。
IT導入補助と併用する際の使い分け
小規模事業者持続化補助金とIT導入補助金を併用することは可能ですが、同じ経費について申請することはできないため、2つの補助金で使い分ける必要があります。
IT導入補助金とは、情報技術(IT)を導入する際の費用を支援するための制度です。ソフトウェアの購入費用やシステム導入に伴う費用が補助の対象となり、たとえば会計ソフト、勤怠管理システムなどの導入費用が補助されます。
補助金名 | 概要 | 補助対象 |
---|---|---|
小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者の販路開拓・業務効率化を支援。 | 広告宣伝費や設備購入費など |
IT導入補助金 | 情報技術(IT)を導入する際の費用を支援。 | ソフトウェア購入費用、システム導入費用 |
2つの補助金の使い分けとしては、ITツールの導入費用にIT導入補助金を活用し、マーケティング施策にかかる費用に持続化補助金を活用する、というケースが考えられます。小規模事業者持続化補助金は「販促を進めること」も補助要件となっているため、マーケティングと絡めて考えることがポイントです。
IT導入補助はSaaSも対象になる
小規模事業者持続化補助金は、ITツールやSaaSツールを導入しただけで補助を受けられる制度にはなっておらず、DXを進めている企業には使いづらいと感じるかもしれません。そのような企業には、企業のDX化を目的としたIT導入補助金がおすすめです。IT導入補助金であれば、多様なSaaSツールが補助対象になっており、IT導入支援事業者もこうした実績を一部公開しています。
下記の記事では、具体的に対象となるSaaS・ITツール、補助金の内容、申請の流れについて解説していますので、併せてご覧ください。
小規模事業者持続化補助金の注意点
最後に、小規模事業者持続化補助金の注意点についてお伝えします。これらの注意点をよく理解し、申請ミスや審査落ちを防ぎましょう。
再度申請できる
小規模事業者持続化補助金は、過去に採択されていない場合、再度申請可能です。過去に不採択となった事業でも、内容が少し変われば採択されるチャンスがあります。
また、過去に採択された実績のある事業者であっても、過去と異なる補助事業で新たに申請する場合は、同じ補助金を申請できます。
ただし、過去に採択された事業者が同じ補助金を申請する際は、補助事業の実施回数に応じて減点調整されることがあるため、申請の際は加点項目を意識する必要があります。
商工会議所・商工会を窓口に申請する
同補助金の申請窓口は商工会議所か商工会のどちらかになります。商工会議所地区の事業者は商工会議所地区、商工会地区の事業者は商工会地区の窓口で申請することになります。申請は、商工会・商工会議所の会員でなくても可能です。
同補助金は、商工会・商工会議所以外のルートでの申請は受け付けていません。
採択結果・採択率を確認する
補助金は種類によって採択結果や採択率が異なるため、採択がどの程度現実的か、申請前に確認しておくことが重要です。
過去1年間(2023年)の小規模事業者持続化補助金の採択結果・採択率は以下の通りです。
開催回 | 申請者数 | 採択者数 | 採択率 |
---|---|---|---|
第11回 | 11,030 | 6,498 | 58.9% |
第12回 | 13,373 | 7,438 | 55.6% |
第13回 | 15,308 | 8,729 | 57.0% |
第14回 | 13,597 | 8,497 | 62.5% |
採択率は本補助金制度が始まってから大きく変わっておらず、おおよそ6割ほどとなっています。事業が採択されなかった場合のプランも用意しておくのが現実的です。
まとめ:補助金を活用して企業DXを!
小規模事業者持続化補助金は、事業の拡張や強化を目的とした財政支援です。通常枠や賃金引き上げ枠など複数の補助メニューがあり、新たに災害支援枠も設けられました。いつでも申請できるよう、補助対象経費や申請の流れ、必要書類について把握しておきましょう。また、ITツールの導入時は、IT導入補助金の利用もおすすめです。
「業務効率化に役立つITツールが知りたい」「自社にどのようなITツールが必要か知りたい」とお考えの担当者は、ぜひPRONIアイミツ(当社)にご相談ください。企業DXをサポートするコンシェルジュが、貴社の課題に合わせておすすめのツールをご案内します。
探すのに時間がかかる
相場がわからない
複数を比較しづらい
プロが代わりに探して紹介します!