給与計算をエクセルで行う方法とは?関数やテンプレート活用のメリットを解説
給与計算業務は定期的に発生する上、多くの時間を割かれてしまうのが最大の懸念点。そんな際に有効活用したいのが、表計算ソフトのエクセルです。あらかじめフォーマットを用意しておけば、以降の給与計算はいとも簡単に実施できるようになります。経理の負担を大幅に軽減できるため、人件費の削減や他業務へのリソース配分を実現することが可能です。
本記事では、エクセルによる給与計算の自動化に必要なノウハウや、エクセルを運用するメリットなどについてご紹介します。世界でもっとも普及している表計算ソフトを活用し、コストパフォーマンス良くシステムを構築しましょう。
- エクセルで給与計算を自動化するための方法・手順
- 給与計算はテンプレートが便利
- エクセルで給与計算する際に使用する関数
- エクセルで給与計算を成功させるためのポイント
- 給与計算におけるエクセルと給与計算ソフトの主な違い
- 給与計算をエクセルで行うメリット
- 給与計算をエクセルで行うデメリット
- 給与計算にエクセルを活用するコツ
- 【まとめ】給与計算システム選びならアイミツへ
エクセルで給与計算を自動化するための方法・手順
まずは、エクセルで給与計算を自動化する方法についてご紹介します。主な手順は、書類の準備、表作成、給与データ入力という3ステップです。順に見ていきましょう。
1.必要書類を準備する
まずは、給与計算に必要な書類を集めましょう。
給与計算をエクセルで行う場合でも、基本的に必要なものは通常と変わりません。社員データやこれまでの給与情報を手元に置いてから作業をはじめましょう。 というのも、従来のフォーマットをある程度踏襲しないと混乱を招いてしまうリスクがあるからです。これまでの給与計算方法やフォーマットに問題を抱えている場合は、改善しながら作成していきましょう。
2.エクセルに情報を入力して表を作成する
続いては、従業員の情報などを入力しながら、表の作成を進めていきます。
なお、表作成の方法は主に2つ。1つ目は自分ではじめから表を作成する方法です。給与計算が特殊で複雑な場合に適していると言えます。2つ目はテンプレートを活用して作成する方法で、手軽でとっつきやすい点がメリット。一般的な給与計算なら十分に対応できるでしょう。
3.エクセルに給与データを入力する
最後に給与データの入力です。 これまでと同様の数値入力をエクセル上で行いましょう。基本給や家賃補助、交通費、福利厚生など給与に関するデータは何かと多いため、漏れがないように転記していきます。あらかじめ数式を組み込んでおくことで指定された給与率に基づいて自動で計算が行われるため、電卓などを用意する必要はありません。時間外労働や出張など、別途手当の支給が必要な場合には合わせて入力しましょう。
給与計算はテンプレートが便利
前述した通り、エクセルで給与計算を行う方法として、テンプレートを使用するというやり方があります。テンプレートの利用はさまざまな面から見て便利です。以下からは、メリットやテンプレートの入手方法をご紹介します。
エクセルでの給与計算でテンプレートを活用するメリット
エクセルでの給与計算でテンプレートを活用する主なメリットは、以下の3つです。
- あらかじめ関数や数式が入っているため初心者でも扱いやすい
- 給与計算に必要な基本項目が入力されている
- 無料で公開されているものも多いためコストを抑えながら効率化を図れる
テンプレートを利用する場合、給与計算に必要な関数や数式が初めから組みこまれているため、エクセルや給与計算に詳しくない初心者でも安心して利用することができるでしょう。また、無料で公開されているものも多く、コストをかけず利用することができるのも魅力。費用をかけず業務の効率化をはかることができます。
テンプレートを利用する際の注意点
テンプレートの利用にはメリットが多い一方で、注意点すべき点もいくつかあります。注意すべき点は以下の2点です。
- 数式を壊さないように注意が必要
- 自社の基準に合わせブラッシュアップが必要
まずは、数式を崩さないようにするというのが注意すべきポイントの一つ目です。テンプレートが便利だからと言って、仕組みや数式を理解しないまま利用を開始してしまうのはリスクがあります。公開されているテンプレートは優れているものが多いものの、ひとたび数式を消してしまえば水の泡。すぐに気が付き修正ができれば問題ありませんが、エクセルに知識がない場合やいつエクセルが壊れたかわからないといった場合には修正に苦戦するでしょう。「初めから入力しなおした方が早い」という事態に陥らないためにも注意しましょう。
また、エクセルでスムーズな給与計算を実現するためには、テンプレートを自社の基準に合わせブラッシュアップする必要もあります。一度導入したら長く同じ形状のものを利用していくのがベストであるため、使い勝手の良さも含め見直しを行うのが理想です。
テンプレートの入手方法
テンプレートはネット上の検索でも簡単に見つかります。自社に適したデザインやフォーマットのものをダウンロードしましょう。エクセルの提供元であるMicrosoftが公開しているテンプレートであれば、画像付きでわかりやすく解説された「使い方」もセットとなっているため、安心して利用できるでしょう。
参考:Microsoft公式サイト 給与管理表(明細書付き)
エクセルで給与計算する際に使用する関数
ここからは、エクセルで給与計算を行う際に活用されることの多い関数をご紹介します。テンプレートを使用して給与計算を行う場合でも、主要な関数についての理解は重要です。事前に確認しておくことで、トラブルにも柔軟に対応できるでしょう。
「COUNT関数」で勤務日数を計算する
まず、勤務日数の計算にはCOUNT関数が用いられます。COUNT関数は、あらかじめ指定した条件のセルを計算する関数です。始業時間と就業時間がそれぞれきちんと入力されているかどうかも確認できます。入力漏れがある場合は算出できません。空白にするとエラーが出てしまうため、記入する内容がなくても「0」と数を入れておく必要があります。
「IF関数」で就業時間・所定外労働時間(時間外)を計算する
就業時間・所定外労働時間の計算にはIF関数を用います。IF関数は、COUNT関数とセットで使用されることが多い点が特徴です。特定の条件下においてのみアクションし、条件に当てはまらない際はこう処理する、などといった指示を送ることができます。プログラムに柔軟性を持たせたい場合には最適です。始業時間と就業時間が入力されていたら休憩時間を計算し、されていなければ計算しないなど、ツリー状に計算活動をコントロールできます。
「CEILING関数」「FLOOR関数」「MROUD関数」で勤務時間の端数処理を行う
勤務時間の端数処理には、CEILING関数、FLOOR関数、MROUD関数といった計算式が活用できます。 1時間あたりの賃金額に割り増しなどが加えられた場合、端数0.5円未満は切り捨て、それ以上は1円としてカウントすることが可能です。時間単位ではなく分単位で勤務時間を管理したい場合は、このような端数が発生しやすくなるため、以上のような関数の組み込みが必要です。
日付に対応する曜日を数字で表示する「WEEKDAY関数」
WEEKDAY関数は、日付に対応する曜日を数字で表示できる関数です。カレンダーを見ながら毎回手動でフォーマットを作成する必要がなくなるため、大幅に効率化できます。シリアル値と戻り値の種類を数値で指定する週の基準を入力することによって、自動的に変換。日付を文字列として入力するとエラーの原因となるため、DATE関数を用いた入力が安全です。
エクセルで給与計算を成功させるためのポイント
エクセルで給与計算をスムーズに行うためは、いくつかのポイントに気をつける必要があります。ここでは主な3つのポイントについて見ていきましょう。
1.保険料率・税率の改正を確認する
1つ目のポイントは、保険料率と税率の改正に注意することです。保険料率と税率は不定期ながらも頻繁に変更が行われるため、定期的な確認が欠かせません。これらの反映が遅れると、給与の未払いや過払いといった問題が慢性化してしまう恐れがあります。
確認作業を毎年のルーティンとして組み込み、変更があった場合には迅速に反映し、漏れがないよう気をつけましょう。
2.定期的にデータのバックアップをとる
2つ目のポイントは、データのバックアップ作成です。エクセルデータには高い汎用性がありますが、一方でデータが消えてしまうとせっかく作成した計算シートはもちろんのこと、これまで記録してきた給与情報も丸ごと消えてしまうというリスクを孕んでいます。
計算が終わった際にはバックアップを行い、データが破損しても運用可能な体制を整備しておきましょう。クラウドストレージを活用するなど、バックアップしたデータそのものが消えてしまわない工夫も重要です。
3.給与計算用のテンプレートを活用する
ここまでにも解説しましたが、給与計算シートを作成する場合、基本的にはテンプレートを利用するのがもっとも効果的です。近年は数多くのテンプレートをネット上から探すことができるため、自社にあった給与計算シートを見つけることはそう難しくはありません。
ほとんどの企業では給与計算業務の内容に大差はないため、よっぽど特殊な業種でない限り、ベーシックなシートで十分に対応できるはずです。大幅な改変が難しい場合でも、アレンジを自分なりに加えるなど、使いやすいように改良しながら運用しましょう。
給与計算におけるエクセルと給与計算ソフトの主な違い
給与計算はエクセルでも十分に行えますが、給与計算に特化したソフトを使用することで、より高いパフォーマンスを得られます。エクセルと給与計算ソフトの違いとしてまず挙げられるのはコストパフォーマンスでしょう。
エクセルは基本的に無料で利用できる一方、給与計算ソフトは購入が必要。ある程度の支出は免れません。とはいえ、新しい税率への自動対応や、必要なフォーマットの提供、セキュリティ対策の充実など、有償だからこそ得られるメリットも数多くあります。また、給与計算ソフトには独自の便利な機能や連携できるサービスも多いため、予算に余裕がある場合はソフトを購入するのがベストでしょう。
給与計算をエクセルで行うメリット
給与計算をエクセルで行う場合、主なメリットは扱いやすいこと、コストパフォーマンスに優れること、カスタマイズ性に優れることの3つです。以下で順に解説します。
扱いやすい
エクセルはWindowsに標準搭載されているということもあり、世界でもっとも利用されているソフトの1つです。そのため、誰かにシートを共有したい際にも互換性を鑑みる必要がなく、スムーズに運用を進められます。さらに、表計算ソフトとして給与計算以外の用途にも活用できるため、エクセルの知識をほかの分野でも活かせるのもメリット。関数さえ覚えてしまえばさまざまなことができるので、覚えておいて損はないでしょう。
コストを抑えられる
エクセルはWindowsに搭載されているソフトで、インストールしてあれば完全無料で利用できます。ワードやパワーポイントと共に、多くのビジネスシーンで活用されているため、コストを抑えたい場合には、積極的に活用したいところです。 一方で、給与計算ソフトには導入費用や月額料金が必要。個人事業など小規模なビジネスを展開している場合は、エクセルで十分なケースも少なくありません。コストを極力抑えたいなら、まずはエクセルで管理をはじめるのが良いでしょう。
カスタマイズしやすい
3つ目のメリットは、カスタマイズ性です。ネット上に公開されている給与計算のフォーマットを自由に扱えるだけでなく、自分でカスタマイズして使いやすいように書き換えることができます。項目に過不足がある場合には修正を行い、独自の関数を組み込めるなど、特定のフレームワークに振り回されないのがうれしいポイント。常に改善を続けながら、オリジナルの給与計算システムを組み上げられます。
給与計算をエクセルで行うデメリット
エクセルの運用には魅力がある一方で、懸念点もあるのが事実。ここからはエクセル運用の手間や難易度、連携機能などに関するデメリットを確認しておきましょう。
税率や保険料の変更などに対応するのに手間がかかる
エクセルを給与計算に使用する場合、税率や保険料の変更対応に手間がかかるのが難点です。毎年の発表を自分で確認し、数値設定を変更しなければならないため、面倒な作業が年度ごとに発生します。
確認漏れがあるとそのまま間違った計算式で給与が支払われてしまい、不要なトラブルの原因となりかねません。給与計算ソフトを利用している場合は、こういったトラブルを避けられます。
給与計算を正確に行うのが難しい
給与計算を自動化できるとはいえ、エクセルは手動の枠を出ることができません。どうしてもある程度の手間はついて回ることになります。手動入力では、数値の入力ミスなどのヒューマンエラーによるリスクは避けられません。また、先にも述べたように数式によっては、軽い入力ミスでも修正が困難になる場合もあります。
給与計算ソフトなら、勤怠管理システムなどと連携することによって自動反映できるため、人的ミスのリスクを回避することが可能です。
他ツールとの連携が難しい
エクセルは汎用性が高いため、独自にフォーマットを進化させられます。しかし、使い勝手が良くなるほど、ほかのツールとは連携が難しくなってしまうのも事実です。勤怠管理システムや、人事評価システムなどは給与計算にも大きく影響します。しかし、エクセルによる運用では、これらのシステムから連携効果を得にくいものです。
一方で主要の給与計算システムは簡単に他システムとも連携できるため、業務を大幅に効率化できるという強みもあります。
関連記事:給与計算ソフトを徹底比較!2025年最新のおすすめ解説
給与計算にエクセルを活用するコツ
給与計算をすべてエクセルで行うにはある程度のスキルが求められるため、意外と運用は難しいと言えます。しかし、要点を絞り、適切な管理体制を整えることで、十分なパフォーマンスを得ることは可能です。 例えば、テンプレートを活用することで、計算ミスを最小限に抑えることができます。環境構築を迅速に行うためにも欠かせないアプローチです。また、一度ベーシックなエクセルの計算シートを使用することで、給与計算のメカニズムを理解できるというメリットもあります。学びを得る上でも重要なステップとなるでしょう。少人数の組織であればエクセルによる管理でも十分な場合があります。まずはエクセルで運用し、不便を感じたら給与計算システムの導入を検討してみるのも良いでしょう。
【まとめ】給与計算システム選びならアイミツへ
今回は、エクセルで給与計算を自動化するための方法や、その仕組みについてご紹介しました。エクセルの汎用性は計算ソフトのなかでも随一であるため、Windowsユーザーはできるだけ無料で使えるというメリットを活かしたいところ。給与計算ソフトの導入を検討している場合も、自動化の仕組みを理解する上での重要な視座を得られるため、テンプレートで一度は自分で計算シートを組み上げてみることをおすすめします。
また、税率への対応が面倒な点やケアレスミスのリスクがあるなど、エクセルの運用には限界があるのも事実ですが、実際に不便な点を確認することによって、自社が給与計算システムに求めている条件もわかるようになるはずです。ぜひ本記事を参考に、エクセルを活用してみてください。
別記事「給与計算システムとは?メリット・デメリットを解説」では、給与計算システムの基本を解説していますので、システムを検討したい方はぜひ確認ください。
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