名刺管理とは?目的・デジタル化の必要性・ツールの機能やメリットを解説
名刺管理は、従来のアナログ手法では手間や非効率が多く、せっかくの顧客情報が十分に活かせないという課題がありました。そこで近年、多くの企業で注目されているのが「名刺管理ツール」の導入です。名刺をデジタル化し、社内で一元管理・共有することで、営業活動の効率化や情報資産の活用が進みます。
本記事では、名刺管理の基本から最新のツール活用法、導入メリットや注意点、実際の課題とその解決策まで、企業の名刺管理を見直すためのポイントを詳しく解説します。
名刺管理とは
名刺管理とは、名刺に記載されている情報と付随する情報を記録し、最新情報を継続的に反映し、目的にあった形で整理して、活用することです。名刺情報の活用には、連絡先を調べて連絡を取る、過去の面談記録を確認する、どの企業や組織に営業を行ったかを調べる、などがあります。
名刺の歴史
そもそも名刺はいつから、何のために使われていたのでしょうか。名刺の発祥には諸説あるようですが、古代中国からというのが有力です。後漢(25〜220年)の頃、士大夫(豪族)階級の訪問の際に、門前の箱に「刺」と呼ばれる姓名と身分を書いた札を投じて取次を頼んだ習慣からとされています。
日本では江戸時代に使われていたことがわかっています。たとえば、根室に来航したロシア帝国の通称公証人に、松前藩士が渡した名刺がロシア国立古文書館に残っているとのこと。古代中国では竹が使われていた名刺も、江戸時代の日本では和紙が使われていました。明治以降は、さらに名刺の使用が広がりました。日本に印刷技術が伝えられたことから、名刺も手書きでなく印刷されたものが使われるようになりました。
中国や日本など名刺はアジア圏特有のもの、という印象があるかもしれません。しかし、欧米でも古くから名刺は使われていました。16世紀ドイツでは、訪問先が留守の際に名前を書いた紙を残していました。印刷技術が進歩すると、美しさを競う名刺も登場します。18世紀にヨーロッパからアメリカに名刺は伝わり、まずは社交界で使われるようになります。20世紀になると名刺はビジネスの場面で使われるようになり、現在の形に至ります。
名刺管理の方法
名刺管理の方法には、アナログ管理とデジタル管理があります。アナログ管理は、名刺ファイルや名刺ボックスなどで名刺を保管する昔ながらの方法です。後で名刺を探しやすいよう、企業名の五十音順やアルファベット順、時系列で整理するのが一般的でしょう。
名刺の枚数が少ないうちはアナログ管理でも十分ですが、名刺が増えるとファイルが複数冊になったり、ボックスに収まりきらなくなったりして、管理や検索に手間がかかるようになります。保管場所の確保も課題です。
このような課題を解消するため、PCやスマホの普及にともない、デジタル管理も広がっています。デジタル管理では、名刺情報をExcelに入力したり、スキャナーやOCRで読み込んだりしてデータ化する方法が一般的です。
名刺管理ツール導入の必要性
名刺のデジタル管理によって名刺情報は取り扱いやすくなりましたが、実際には名刺の取り込みや情報修正などに手間がかかり、管理が後回しになることも少なくありません。その結果、せっかくの名刺情報が十分に活用されなくなってしまいます。
こうした課題を解決するために登場したのが名刺管理ツールです。名刺管理ツールは、名刺管理を効率化し、名刺情報を有効活用するための多彩な機能を備えています。人手によるアナログ管理や単純なデジタル管理では難しかった名刺の一元管理や活用を実現するため、いまや多くの企業にとって欠かせない存在となっています。
名刺管理ツールの主な機能
名刺管理ツールの機能は種類によってさまざまです。特に企業向けの名刺管理ツールには、個人向けの名刺管理アプリの機能に付随して企業として名刺情報を活用するための機能が加えられています。ここでは、企業向け名刺管理ツールに一般的に求められる5つの機能について解説します。
- 名刺管理:取込・更新・活用
- 名刺情報の社内共有
- 顧客管理・案件管理
- メール・メッセージ機能
- セキュリティ
名刺管理:取込・更新・活用
名刺情報を「取り込み・更新・活用」できることは、名刺管理ツールに欠かせない基本機能です。特に「取り込み」の方法はツールによってさまざまで、それぞれの特徴や使いやすさに違いがあります。
- 1.名刺自体をツール提供会社に送付し、会社側でデータ化してもらう方法
- 2.スマホで撮影した名刺の写真をアプリにアップロードし、提供会社側がデータ化けする方法
- 3. スマホで撮影した名刺の写真をアプリでアップロードするだけで、自動的にデータ化が完了する方法
- 4. スキャナーを使い、名刺を一括で取込む方法
1と2はツール提供会社が名刺情報をデータ化する方法、3と4は自分で名刺情報をデータ化する方法です。
名刺情報の取り込みでは、効率や正確さが重要です。ただし、名刺管理ツールによって得意な分野は異なります。例えば「大量の名刺をスピーディーに取り込みたい」のか、「より正確に情報を登録したい」のか、重視するポイントによって選ぶべきツールも変わってきます。
また、取り込んだ名刺情報を「更新」する機能も重要です。名刺交換相手が異動や昇進、転職をした場合、情報の更新が必要になるため、名刺管理ツールには新しい名刺をもらった際に簡単に最新情報へ更新できる仕組みが求められます。さらに、取り込んだ名刺情報を「活用」するためには、名刺データを分類・検索・加工できる機能も欠かせません。
- インデックスがつけられる
- グルーピングのためのタグがつけられる
- 他のツールでのデータ加工のためにCSV形式で出力できるなど
名刺情報活用のための機能はツールによって多様です。名刺の多さや活用の目的に合った機能を持つ名刺管理ツールを選ぶのがよいでしょう。
名刺情報の社内共有
名刺は本来、個人間で交換されるものなので、管理も個人レベルから始まることが一般的です。しかし、名刺に記載された情報は重要な顧客データであり、企業にとっては大切な資産ともいえます。
例えば、前任者が面識のある取引先と後任者が会う場合、個人同士は「はじめまして」でも、企業としては継続した関係性があります。このような場合、過去のやりとりや面談の内容を社内で引き継げると、顧客対応の質も高まります。名刺情報を社内で共有できれば、取引先ごとの経緯や接点がすぐに把握でき、顧客情報の一元管理にも役立ちます。
顧客管理・案件管理
顧客管理や案件管理は、名刺管理ツールが持つより発展的な機能です。ツールによっては、名刺情報を企業や組織ごとに分類し、面談のメモや案件ごとの情報も一緒に記録できます。また、名刺データは顧客や案件ごとに検索できるため、顧客管理や案件管理にも役立ちます。
このように名刺管理ツールは、名刺情報をもとに顧客や案件のデータベースを作成できるのが特長です。特に、専用の顧客データベースや案件管理システムがまだない中小企業やスタートアップでは、名刺管理ツールを導入することで手軽に顧客・案件管理を始められます。
メール・メッセージ機能
名刺を探す理由のひとつに、「名刺交換した相手と連絡を取りたい」という場面があります。名刺管理ツールで相手の名刺情報をすぐに検索でき、そのままメールやメッセージを送れる機能があれば、スムーズなコミュニケーションが可能です。
例えば、次回訪問する相手の名刺をツールで検索した際、社内の同僚がすでにその相手と知り合いだとわかった場合、「このお客様を紹介してほしい」とすぐに同僚へメッセージを送ることができます。メッセージ機能があることで、名刺管理ツールは新たなビジネスチャンスの発掘にも役立つようになります。
セキュリティ
名刺は重要な顧客情報を含むため、管理やセキュリティには十分な注意が必要です。自社で名刺情報を取り扱う際だけでなく、名刺をツール提供会社に送ってデータ化してもらうサービスや、クラウド上で名刺情報を管理するサービスを利用する場合も、高いセキュリティ基準が求められます。
- 名刺情報をオンラインで送受信する際、暗号化できる環境か
- スキャナーで名刺を読み取った後の画像データはきちんと削除しているか
- クラウドシステムでセキュリティが考慮された設計になっているか
こうした点は、名刺管理ツールを選ぶ際にぜひチェックしておきたいポイントです。運営会社がプライバシーマークや情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)などの認証を取得していれば、安心して利用できる材料となります。
名刺管理の課題とツールによる解決策
従来の名刺管理方法が抱える課題の多くを、名刺管理ツールが解決してくれます。ここでは、名刺管理ツールがどのような課題を解決するのかを解説します。
- 大量の名刺整理に時間がかかる
- パソコンへの入力に手間がかかる
- 複数枚ある名刺のどれが最新かわからない
- 社内での情報共有がないため、重複営業をしてしまった
- 外出先から連絡先を確認できない
- 名刺が企業ではなく、担当者個人の資産となってしまっている
大量の名刺整理に時間がかかる
名刺の枚数が増えてくると、手作業で名刺を整理するのは時間も手間もかかって大変です。名刺ファイルや名刺ボックスに一旦入れても、後から増えてくる名刺が多いと、並び直しやインデックスの作り直しに時間も手間もかかってしまいます。
名刺管理ツールの機能を使えば、氏名や企業名を五十音順やアルファベット順に並べることができます。名刺を企業や組織ごとに分類するのも簡単です。名刺管理ツールが最初に発揮する課題解決は、大量の名刺整理に時間がかかることについてだといえるでしょう。
パソコンへの入力に手間がかかる
名刺をデジタル管理する場合でも、名刺情報をツールに手入力するのは手間がかかります。一度入力してしまえば分類や検索はしやすくなりますが、入力作業が多いと効率化の意味が薄れてしまうこともあるでしょう。
名刺管理ツールを活用すれば、運営会社によるデータ入力代行や、名刺の写真を使った自動取り込み、スキャナーでの一括入力などが可能です。ツールごとにさまざまな取り込み方法が用意されており、入力の手間を大幅に減らすことができます。どれだけ手間が削減できるかは、名刺の量やツールの機能によって異なるため、複数のツールを比較して自社に合ったものを選ぶのがおすすめです。
複数枚ある名刺のどれが最新かわからない
名刺交換相手の異動・昇進・転職によって名刺情報は変わります。そのため、同じ相手の名刺が複数枚あると、どれが最新の名刺がわからなくなってしまうことがあります。
その際も名刺管理ツールに名刺をもらった順番に取り込んでおけば、最新がどれかはすぐにわかります。さらに名刺管理ツールによっては、名刺交換相手とインターネット越しにつながって、相手の最新の名刺情報をオンラインでこちらに自動反映してくれる機能もあります。
社内での情報共有がないため、重複営業をしてしまった
「この間、別の営業の方が来ていましたよ」と訪問先で言われ、気まずい思いをした経験がある方も多いのではないでしょうか。名刺管理ツールを導入すれば、社内で過去の名刺情報を顧客や企業ごとに共有・参照できるため、こうした重複営業を防ぐことができます。情報を一元管理することで、無駄な営業活動の削減にもつながります。
外出先から連絡先を確認できない
名刺を社内で共有していても、名刺ファイルが事務所に保管されている場合、外出先では名刺情報を確認できません。名刺を持ち歩いていないと、必要なときに連絡先が分からず、ビジネスチャンスを逃してしまうこともあります。
クラウド型の名刺管理ツールを使えば、社内はもちろん、外出先からでも名刺情報をすぐに確認できます。スマホやタブレット対応のツールであれば、より手軽に連絡先の検索・確認が可能です。
名刺が企業ではなく、担当者個人の資産となってしまっている
名刺を常に持ち歩いていても、名刺入れの中に入ったままでは、個人しか利用できない情報になってしまいます。以前は、営業担当者が自分だけの人脈として名刺情報を抱え、同じ会社の同僚にも共有しないことも珍しくありませんでした。
しかし、本来営業活動で築いた人脈は会社の大切な資産。名刺管理ツールで名刺情報を社内に共有すれば、これまで担当者個人の資産だった情報や人脈を、会社全体で活用できる資産へと変えることができます。
名刺管理ツール導入のメリット・デメリット
ここでは、名刺管理ツールを企業に導入する際のメリットだけでなく、デメリットについても確認しておきましょう。メリットがデメリットを大きく上回ると判断できれば、導入する価値があるといえます。
- メリット① 名刺を探す時間を削減できる
- メリット② 外出先から名刺情報にアクセスできる
- メリット③ 社内で名刺情報を共有できる
- メリット④ 名刺情報を活用して仕事のチャンスを増やせる
- デメリット① 名刺を登録して活用できるまでに時間がかかる
- デメリット② 顧客管理ツールとの二重管理になる可能性がある
- デメリット③ コストがかかる
メリット① 名刺を探す時間を削減できる
まず名刺管理ツールなら、一箇所に名刺を集められます。名刺ファイルや名刺ボックスでのアナログ管理でも名刺を一箇所にまとめておくことはできますが、名刺が大量になってくると、名刺ファイルや名刺ボックスが複数必要となり、必要な名刺を探し出すのに手間がかかってしまいます。
さらに名刺管理ツールなら、名刺情報にインデックスやラベルを付けられるので、探したい名刺にすぐアクセスが可能です。検索機能がある名刺管理ツールなら、膨大な名刺の中からでも即座に必要な名刺にたどり着けるでしょう。名刺の枚数が多くなればなるほど、名刺管理ツールを使えば、名刺を探しまわる無駄な時間をなくすメリットが大きくなります。
メリット② 外出先から名刺情報にアクセスできる
一般的な企業向け名刺管理ツールは、インターネット経由でどこからでもアクセスできます。アナログ管理の場合は名刺は社内に保管して持ち運びしないため、通常外出先では参照できません。
特にクラウドタイプの名刺管理ツールや、オンプレミスでもインターネット経由でアクセスできる名刺管理ツールならば、社内・外出先問わずどこからでも名刺情報を参照できます。
さらに名刺管理ツールの多くはマルチデバイス対応しています。つまり、PCに加えてスマホやタブレットからでも名刺情報を参照できます。外出先で名刺が必要となったとき、即座にスマホやタブレットからアクセスできれば、仕事の効率化に加えて、スピードが問われるビジネスのチャンスを逃すことはありません。
メリット③ 社内で名刺情報を共有できる
名刺管理ツールで、社内の同僚が持っている名刺もアクセスできるようになると、営業の手法も変えることができます。
名刺管理ツールを活用することで同じ相手への無駄な営業活動を回避するだけでなく、過去の経緯や情報を同僚に確認してから顧客訪問することができるようになります。名刺管理ツールに会社として蓄積してきた情報を有効活用することは、営業活動の質を高めることにもつながるでしょう。
メリット④ 名刺情報を活用して仕事のチャンスを増やせる
名刺管理ツールで広がる社内外のつながりを活用することで、仕事のチャンスを増やすこともできます。名刺管理ツールの中で、名刺情報が社内のデータベースとなり、縦横無尽に分類・検索できることによって得られるメリットといえるでしょう。これは名刺管理ツール活用の最終目的ともいえるかもしれません。
デメリット① 名刺を登録して活用できるまでに時間がかかる
名刺管理ツールは活用できるまでに時間がかかる場合があります。登録した名刺情報を効果的に使うためには、グルーピングやインデックスの設定が重要。ですが、使い方が社内に浸透していなければ、その機能を十分に活かせません。
単にツールを導入するだけでなく、どのように名刺情報を活用したいのか目的を明確にし、設定や運用方法を整えることが大切です。使いやすいツール選びや社内研修も、スムーズな活用には欠かせません。
デメリット② 顧客管理ツールとの二重管理になる可能性がある
すでに顧客管理ツールを導入している企業では、新たに名刺管理ツールを導入すると、顧客情報が二重管理になってしまうケースがあります。二重管理は手間が増えるだけでなく、データの整合性にも問題が生じやすくなります。そのため、名刺管理ツールは最新情報の登録や一次管理に使い、名刺情報を既存の顧客データベースに連携するなど、全社最適の運用ルールを設計することが重要です。
デメリット③ コストがかかる
企業向けの名刺管理ツールは有料が一般的で、導入や利用にコストがかかります。そのため費用が導入の障壁になることもあります。しかし、名刺管理ツールを活用することで従来必要だった手間や時間、保管スペースが削減され、名刺情報の有効活用によるビジネスチャンスの拡大も期待できます。コスト以上の価値を引き出すためには、単なるデジタル保存だけでなく、積極的な名刺情報活用がポイントになります。
まとめ:企業の名刺管理はデジタル化とツール活用がカギ
企業の名刺管理は、紙やExcelによるアナログ管理では手間や情報の活用に限界があります。名刺管理ツールを導入すれば、名刺情報のデータ化や社内共有、検索の効率化が進み、営業活動や顧客対応の質も向上します。
さらに、外出先からもスマホやPCで名刺情報にアクセスでき、ビジネスチャンスの拡大にもつながります。課題だった重複営業や情報の属人化も防げるため、企業の資産として名刺情報を有効に活用できるようになります。自社に合った名刺管理ツールの導入で、名刺管理の効率化と情報資産の最大活用を目指しましょう。
しかし、名刺管理ソフトは多数あり、どれを導入すべきか迷ってしまうでしょう。PRONIアイミツでは、ITツール受発注支援のプロとして、名刺管理ソフト選びについての相談を受け付けています。いくつかの質問に答えるだけで希望要件に合った名刺管理ソフトが分かる診断(無料)もありますので、ぜひ一度お試しください。
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