人材開発支援助成金とは何か?変更内容も詳しく解説
企業が雇用している労働者に、厚生労働省が規定している職業訓練を行うと人材開発支援助成金を受給できます。この記事では、人材開発支援助成金とは何かを明らかにして、各コースの概要や支給要件、助成額について解説します。なお、人材開発支援助成金は2022年10月1日に見直しが行われており、本記事を読むことで最新の変更点についても理解できるでしょう。
1.人材開発支援助成金とは何か?
人材開発支援助成金とは、雇用している労働者に職業訓練を実施した企業に助成金を支給する制度です。人材の育成と教育が目的で、キャリアアップに繋がります。人材開発支援助成金は以下の8種類のコースがあり、2022年(令和4年)4月には「人への投資促進コース」が新設されました。
・特定訓練コース
・一般訓練コース
・教育訓練休暇付与コース
・特別育成訓練コース
・建設労働者認定訓練コース
・建設労働者技能実習コース
・障害者職業能力開発コース
・人への投資促進コース(2022年4月新設)
以下では、人材開発支援助成金の8つのコースについて解説します。
1‐1.特定訓練コース
人材開発支援助成金の特定訓練コースとは、雇用している正社員に対して、生産性向上に繋がる訓練を実施した企業に助成金が支給されるコースです。対象となる訓練は以下のものがあります。
・労働生産性向上訓練
・若年人材育成訓練
・熟練技能育成・承継訓練
・認定実習併用職業訓練
かつては、「グローバル人材育成訓練」というものもありましたが、2022年度の改正で廃止されています。また、かつて存在した「特定分野認定実習併用訓練」は、認定実習併用職業訓練に統廃合されました。
労働生産性向上訓練と若年人材育成訓練、熟練技能育成・承継訓練は、職場の業務から離れるOFF-JT(職場外訓練)で、実訓練時間が10時間以上になることなどが支給の基本要件です。認定実習併用職業訓練は、事前に実習併用職業訓練を行い、ジョブ・カードで職業能力の評価を行った場合の助成メニューです。OFF-JTとOJT(職場内訓練)を効果的に組み合わせて実施します。
特定訓練コースの助成額・助成率は、OFF-JTとOJT、中小企業と大企業で異なります。OFF-JTの助成額・助成率は、経費助成は45%、賃金助成は1人1時間あたり760円です。生産性要件を満たす場合は助成額・助成率がアップして、経費助成は60%、賃金助成は1人1時間あたり960円にアップします。なお、大企業の場合は、経費助成は30%(生産性要件を満たす場合は45%)、賃金助成は1人1時間あたり380円(生産性要件を満たす場合は480円)と低くなります。
OJTの助成額は1訓練あたり20万円が支給され、大企業は11万円が支給されます。助成額は、2022年度の見直しで「定額制」に変更になっているため注意してください。
1‐2.一般訓練コース
人材開発支援助成金の一般訓練コースとは、正社員として雇用している労働者に対して実施される職業訓練で、特定訓練コース以外のものを指します。一般訓練コースを実施すると、訓練経費や訓練中の賃金が助成されます。一般訓練コースはOFF-JT訓練であり、実訓練時間が20時間以上であることが基本要件です。また、定期的にキャリアコンサルティングを受けることを就業規則に明記しなければならず、「定期的なキャリアコンサルティング要件」も支給要件に加わります。ただし、キャリアコンサルティングに関する経費は助成されません。
一般訓練コースの助成額・助成率は、経費助成は30%、賃金助成は1人1時間あたり380円です。生産性要件を満たす場合は、経費助成は45%、賃金助成は1人1時間あたり480円にアップします。なお、一般訓練コースは中小企業と大企業で助成額・助成率に違いはなく、企業規模に関係なく同額・同率です。
なお、eラーニングなど通信制で実施する訓練は、原則として人材開発支援助成金の対象にはなりませんが、通信制の一般教育訓練給付指定講座については、企業が全額負担すると助成の対象になります。この場合の助成限度額は中小企業・大企業とも20万円で、経費助成のみ受けられます。なお、通信制で実施する訓練が人材開発支援助成金の対象になるか否かは、所轄の労働局に問い合わせてください。
一般訓練コースだけでなく先に説明した特定訓練コースも、通信制の専門実践教育訓練または特定一般教育訓練給付指定講座であれば、経費助成を受けることが可能です。この場合の助成限度額は、中小企業が50万円で大企業は30万円です。
1‐3.教育訓練休暇付与コース
人材開発支援助成金の教育訓練休暇付与コースとは、労働者が休暇を取得して職業訓練を受けた場合に、訓練経費や訓練中の賃金が助成される制度です。教育訓練休暇制度と長期教育訓練休暇制度があり、要件や助成額などが異なります。
教育訓練休暇制度は労働者に有給休暇を与え、労働者が有給休暇を利用して職業訓練を受けると経費助成として助成金が支給されます。助成金が支給されるのは経費助成のみで、賃金助成の助成金は支給されません。
長期教育訓練休暇制度は労働者に長期間の有給・無給の休暇を与え、休暇を利用して職業訓練を受けると助成金が支給される制度です。教育訓練休暇制度とは異なり、経費助成と賃金助成の両方の助成金が支給されますが、無給の休暇取得については賃金助成の対象から外れるため注意しましょう。
いずれの制度も導入前に就業規則に明記しなければならず、所轄の労働基準監督署に届け出を行うことが必要です。
教育訓練休暇付与コースの教育訓練休暇制度は、経費助成として30万円の助成金が支給されます。生産性要件を満たす場合は助成額が36万円にアップします。長期教育訓練休暇制度の助成額は、賃金助成が1人1日あたり6,000円で、経費助成は20万円です。生産性要件を満たす場合は、賃金助成は1人1日あたり7,200円、経費助成は24万円にアップします。
1‐4.特別育成訓練コース
人材開発支援助成金の特別育成訓練コースとは、パートやアルバイトなどの非正規雇用労働者に職業訓練などを実施した場合に、助成金が支給される制度です。職業訓練などを通じて、非正規雇用労働者のキャリアアップや処遇改善に繋げることを目的とします。特定訓練コースや一般訓練コースは正規雇用労働者を対象としますが、特別育成訓練コースは非正規雇用労働者を対象とするのが特徴です。
特別育成訓練コースのうち、OFF-JT分の一般職業訓練と有期実習型訓練、OJT分の有期実習型訓練が助成金の支給対象になります。OFF-JT分の支給額は賃金助成が1人1時間あたり760円、生産性要件を満たす場合は960円です。大企業の場合は、1人1時間あたり475円で生産性要件を満たす場合は600円が支給されます。経費助成は非正規雇用労働者を正社員化した場合の助成率は70%で、生産性要件を満たす場合の助成率は100%です。正社員化せず非正規雇用を維持する場合の助成率は60%で、生産性要件を満たす場合は75%になります。OJT分の支給額は2022年度に見直しが行われ、中小企業は1訓練あたり10万円、大企業は1訓練あたり9万円です。
1‐5.建設労働者認定訓練コース
人材開発支援助成金の建設労働者認定訓練コースとは、建設関連の職業訓練を実施したり認定訓練を受講させたりした場合に、経費と賃金の一部が助成される制度です。以前の雇用管理制度助成コース(建設分野)は2022年3月31日に廃止され、2022年4月1日に建設労働者認定訓練コースが新設されました。建設関連の職業訓練を実施した場合は経費助成として、対象となる経費の6分の1が助成されます。認定訓練を受講させた場合は賃金の一部が助成され、助成額は1人1日あたり3,800円です。生産性要件を満たした場合は、1人1日あたり1,000円増額されます。
1‐6.建設労働者技能実習コース
人材開発支援助成金の建設労働者技能実習コースは、若年の建設労働者の育成や熟練技能の維持と向上を図ることを目的とする技能実習を行った場合に、助成金が支給される制度です。助成金は中小建設事業主に支給され、雇用保険被保険者数が20人以下の場合は、経費の4分の3が助成されます。賃金助成は1人1日あたり8,550円です。生産性要件を満たした場合は、経費助成は20分の3、賃金助成は1人1日あたり2,000円が増額されます。雇用保険被保険者数が20人以上の場合は、経費助成は10分の7(生産性要件を満たした場合は20分の3増額)、賃金助成は1人1日あたり7,600円(生産性要件を満たした場合は1,750円増額)です。
1‐7.障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発コースは、障害者に職業訓練を実施すると助成金が支給される制度です。また、職業訓練を行う施設を設置・整備・更新するのにかかった費用の一部も助成されます。障害者職業能力開発コースの助成額の計算は複雑なため、助成金の申請手続きは社会保険労務士に依頼することをおすすめします。一例として職業訓練を行う施設を設置した場合は、設置費用の4分の3が助成されます。
1‐8.人への投資促進コース
人材開発支援助成金の人への投資促進コースは、2022年4月より新設された助成金の制度です。雇用保険被保険者が対象になり職業訓練の費用が助成されます。経費と賃金の一部が助成金として支給され、助成額や助成率は訓練の種類によって異なります。対象となる訓練メニューには高度デジタル人材訓練や成長分野等人材訓練などがあり、情報技術分野認定実習併用職業訓練を除く訓練は非正規雇用労働者も対象になります。高度デジタル人材訓練の助成額・助成率は、中小企業の場合、経費助成率は75%、賃金助成額は1時間あたり960円です。大企業の場合、経費助成率は60%で賃金助成額は1時間あたり480円が支給されます。なお、人への投資促進コースは、すべての訓練メニューでeラーニングによる訓練も助成金の支給対象になります。eラーニングだと訓練施設に通わなくても職業訓練ができ、助成金も支給されるためおすすめです。
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2.人材開発支援助成金が加算される生産性要件とは何か?
人材開発支援助成金の制度の特徴として、生産性要件を満たす場合は助成額・助成率がアップすることが挙げられます。例えば特定訓練コースの場合だと、OFF-JTの経費助成率は45%(中小企業)ですが、生産性要件を満たすと経費助成率は60%にアップします。より多くの助成金を受給するには、生産性要件を満たすことがポイントです。生産性要件を満たすことを証明するには、生産性要件算定シートを用いて計算することが必要になってきます。生産性要件を満たすには、生産性を向上させることが重要です。生産性を向上させるために、アイミツSaaSではさまざまなソリューションを提供しています。例えば勤怠管理システムやCRMなどの導入がおすすめです。勤怠管理システムやCRMを導入すると、労働者の就業時間を正確に把握でき、生産性を阻害する原因を突き止められます。原因がわかると解決案を策定でき、PDCAサイクルを回すことで生産性向上に繋がります。
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3.令和4年(2022年)9月 人材開発支援助成金の最新の変更点
人材開発支援助成金は頻繁に見直しが行われており、令和4年(2022年)10月にも改正が実施されました。令和4年度は数回の見直しが行われており、最新の変更点を把握しておくことが必要です。令和4年10月1日には、人への投資促進コース・特定訓練コース・一般訓練コース・特別育成訓練コースの内容の一部が変更されました。これら4つのコースに共通する変更点として「提出書類の省略」が挙げられます。これにより、助成金の申請手続きが簡略化しています。例えばこれまで一般教育訓練を実施する際には「一般教育訓練等の経費負担額に関する申立書」の提出が必要でしたが、令和4年10月1日からは提出が不要になりました。人への投資促進コースは「定額制訓練の要件変更及び提出書類の簡略化」「高度デジタル人材訓練の要件変更」「情報技術分野認定実習併用職業訓練の要件変更及び提出書類の省略」の見直しが行われています。また、特定訓練コースも「認定実習併用職業訓練の提出書類の省略」の見直しが行われました。
4.まとめ
人材開発支援助成金とは、雇用している労働者に職業訓練を実施した企業に助成金を支給する制度です。8つのコースがあり、2022年4月には「人への投資促進コース」が新設されました。助成金を受給するには専門的な知識・ノウハウが必要であり頻繁に内容が変更されるため、専門家に相談することをおすすめします。また、従業員を育成する方法としてe-ラーニングの活用がおすすめです。e-ラーニングの活用については以下の記事をご覧ください。
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