印鑑を電子化する方法、メリットや法的効力を解説
社内での承認・申請や取引先との契約締結など、企業活動において必ず必要となるのが印鑑です。近年では、従来の印鑑に代わって電子印鑑を導入する企業が増えてきています。当記事では、電子印鑑の概要、導入するメリット・デメリット、無料で電子化する方法、おすすめの電子印鑑作成サービスまでを解説します。
別記事「電子署名サービスのおすすめ解説」では、紙契約から電子契約に移行したい人に向けておすすめサービスを紹介しています。最新の電子署名サービスをぜひご確認ください。
- 電子印鑑とは
- 電子印鑑の種類
- 電子印鑑の法的効力
- 印鑑を電子化する4つのメリット
- 印鑑を電子化するデメリット
- 無料で印鑑を電子化(電子印鑑)する4つの方法
- 印影データから電子印鑑を作るのが危険な理由
- セキュリティ性の高いおすすめの電子印鑑作成サービス
- まとめ
電子印鑑とは
電子印鑑とは、パソコンで作成した電子文書へ捺印するための印鑑データのことを言います。従来の紙に捺印する実際の印鑑とは異なりオンライン上で捺印を行うため、場所を選ばずスピーディーに印鑑業務を行えるのが大きな特徴。顧客との商取引や社内での申請・承認も効率的かつスムーズに行うことができます。もちろん、テレワーク環境下においても高い有用性を発揮することが可能です。
近年ではDX化・ペーパーレス化の一環として、電子印鑑を導入する企業が増えてきています。
電子印鑑の種類
電子印鑑は、ビジネスのデジタル化・DX推進に伴い普及が進んでおり、多くのサービスがリリースされています。しかし、一言に電子印鑑と言っても、大きく分けて2つの種類に分けられるため、それぞれの概要・特徴・違いを理解しておくことが重要。以下に解説していますので、ぜひご参考ください。
印影を画像化した電子印鑑
まず1つ目は、印影を画像化することで、視覚的にパソコン上で印鑑を再現したタイプの電子印鑑です。簡単に説明すると、印鑑に見える画像です。オフィスツール・画像処理ソフトなどを用いることで、パソコンで簡単に作成できる点がメリット。
一方で、誰でも同じ電子印鑑を利用できることから本人性が担保されないことがデメリットとなります。法的な効力は実際の印鑑よりも弱く、重要な契約書などの書類には活用できないケースもあります。
印影に情報が保存されている電子印鑑
2つ目は、印影に識別情報が保存されているタイプの電子印鑑です。単純に印影を画像化した電子印鑑とは異なり、識別情報により本人性・信頼性が担保されるのが大きなメリット。実際の印鑑と同じような法的効力を持たせることができます。
その反面、識別情報を持たせるためには有料の専用ソフト・サービスを利用しなければならないため、導入・運用にはコストが発生します。ビジネスへの実用性・セキュリティ面を考えると、コストを投じてでもこちらのタイプを利用するのがおすすめです。
電子印鑑の法的効力
電子印鑑は印鑑の代替として利用するためのサービスであるため、当然ながら法的な効力を持ちます。しかし、従来の印鑑と電子印鑑では、法的効力についての解釈が異なる部分もあるため、正しい知識を身に付けておくことが重要。以下に、把握しておくべき知識を解説していますので、ぜひご参考ください。
そもそも普通の印鑑の法的効力は?
電子印鑑と実際の印鑑の違いを把握するには、まずは後者の法的効力について理解しておくことが重要です。実は、印鑑の押印自体には法的効力はありません。契約書などの書類には押印を行うことが慣習となっていますが、実際には押印を行わなくても契約書の効力自体に影響は生じないとされています。
押印が示すところの意味は、「確認・承認を行った」という証拠を残すことにあります。民事訴訟法第228条4項においては、以下のように書類を本人が作成したと推定する根拠として押印が有効であると規定されています。
『私文書は、本人[中略]の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する』
出典:経済産業省「押印に関するQ&A」
電子印鑑が持つ法的効力
現在では、2001年より施行された電子署名法により、電子契約における電子署名についても、従来の印鑑と同じく法的効力が認められると解釈されます。
電磁的記録の真正な成立の推定
『本人による一定の電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する。』
出典:法務省「電子署名法の概要について」
ここで留意すべきは、電子署名とは電子証明書により本人性が証明されている電子印鑑を指しているという点です。単に印影を画像化した電子印鑑の捺印のみでは不十分と考えられます。そのため、電子印鑑を従来の印鑑と同じように運用するのであれば、法的効力を持たせるために、印影に電子証明書を付与できるソフト・サービスを利用することが必要となります。
電子契約と電子印鑑の違い
実際の業務で電子契約の締結を行う場合においての法的効力は、電子署名法により以下のように定められています。
第三条
『電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。』
出典:e-GOV法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律」
つまり、電子契約に紙の契約書と同じ法的効力を持たせるためには、本人性・非改ざん性の証明が必要であると解釈されます。電子契約システムにおいては、電子署名・タイムスタンプにより上記を証明できるため、法的効力を持つ電子契約を締結することが可能となっています。
→タイムスタンプ機能がある電子契約システム(別記事)
印鑑を電子化する4つのメリット
印鑑の電子化を推進する企業が増えていますが、その理由は企業活動において大きなメリットがあるためです。これから電子印鑑の導入を検討しているのであれば、具体的にどのようなメリットがあるのか把握しておくことも重要。以下に解説していますので、ぜひご参考ください。
業務効率がアップする
電子印鑑を導入する代表的なメリットは、印鑑業務の効率的な運用・管理を実現できることです。従来のアナログな書類業務のように、紙の書類を用意したり印鑑を押印したりといった作業が不要となり、保管や管理の場所や手間も不要。オンライン上で押印・送付・保管・管理・回覧などを完結することが可能となります。アナログな印鑑業務・書類業務に課題を抱えている場合においては、電子印鑑を導入することで大幅な業務改善・業務効率化を実現できるでしょう。
従来の印鑑でかかっていたコストを削減できる
電子印鑑は、従来の印鑑のように紙代・朱肉代・印刷代・郵送代といった印鑑を用いた業務に要するコストが必要無いため、コスト削減を図れることも大きなメリットです。また、電子印鑑の導入により契約業務を電子化すれば収入印紙が不要となるため、契約件数が多い場合や契約金額が大きい場合は、印紙代を大幅に削減することもできます。
リモートワークと相性が良い
電子印鑑を導入すれば、オンライン上で印鑑業務を完結することができるため、時間や場所に捉われずに業務を行うことが可能。そのため、リモートワーク環境下における書類業務・契約業務においても大きな有用性・効果性を発揮することが可能です。リモートワークなどのオフィス外のワークスタイルを推進したい場合には、導入のメリットは大きいでしょう。
DX化が促進される
DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用することで、人々の生活をより良い方向へ変革させていくという概念です。近年では生産性やワークライフバランスの向上のために、企業のDX化が強く推奨されています。DX化を推進するには、あらゆる業務のデジタル化を行っていくことが重要なポイント。
しかし、日本固有のハンコ文化はDX化の大きな阻害要因となっています。電子印鑑を導入すれば、押印を必要とする業務のデジタル化・ペーパーレスを実現することが可能・企業のDX化を促進できます。
印鑑を電子化するデメリット
印鑑の電子化は多くのメリットがありますが、以下のようにデメリットとなる面も存在します。
セキュリティリスクが高まる
複製が容易であるため、偽造・なりすましといったリスクが伴う。
コストがかかる
セキュアな電子印鑑を利用するには、専門のサービスを利用する必要があるためコストがかかる。
取引先の理解、協力が必要
社内で利用する分には問題無いが、取引先との契約などに利用する場合は相手方の理解・協力が必要。
書類により適用の可否が分かれる
現状では電子印鑑で対応可能な書類もあればそうではない書類もある。利用が認められない場合もある点に注意。
無料で印鑑を電子化(電子印鑑)する4つの方法
印鑑の電子化は、有料の電子印鑑作成サービスを利用するだけでなく、身近にあるツールを用いて行うことも可能です。コストをかけたくない場合や手軽に印鑑の電子化を行いたい場合にはおすすめ。以下に、無料で印鑑を電子化する主な方法について解説します。
ExcelやWordで電子化する
最も簡単に電子印鑑を作成する方法は、Word・Excelの図形描画やテキストボックスを用いる方法です。丸や四角と文字を組み合わせて印鑑の形を作り、色を朱色へ変更すると、印鑑らしい雰囲気の図形ができあがります。高度な知識やスキルは不要であり、コストも当然かかりません。見た目はややチープな電子印鑑となりますが、簡易的な印鑑を作成する場合や手軽に作成を行いたい場合にはおすすめです。
印影画像をスキャンして電子化する
実際の印影を電子印鑑に使用したい場合には、紙に押印した印影をカメラで撮影するか、スキャナで取り込んで画像化する方法もあります。取り込んだ画像データの不要な余白をトリミングして、JPEG・PNGなどの画像として保存しておけば、いつでも書類に貼り付けて利用が可能。画像編集ソフトで背景を透明化しておくと、より便利に利用できます。
画像編集ソフトで電子化する
デザインの美しさやリアルさを重視したい場合には、illustrator・Photoshopといった画像編集ソフトを活用して電子印鑑の作成を行う方法がおすすめです。WordやExcelよりも詳細な描画を行うことができるため、自由自在に印鑑のデザインを行うことが可能。スキャナで取り込んだ印鑑をトレースしてリアルな電子印鑑を作成することも可能です。やや手間と時間はかかりますが社内にデザイン用の画像編集ソフトがある場合にはこちらの方法がおすすめです。
無料のフリーソフトで電子化する
画像処理ソフトを所有していない場合や、操作が難しい場合は、電子印鑑作成用のフリーソフトを活用する方法がおすすめです。予め印鑑で多く用いられる苗字や適しているフォントが用意されていたり、印鑑の種類が選択可能であったりなど、電子印鑑作成に便利な機能が充実しているのが大きな特徴。自社の用途に合ったフリーソフトを導入することで、スムーズ電子印鑑を作成して業務に役立てることができます。
印影データから電子印鑑を作るのが危険な理由
無料で印鑑の電子化を行う方法についてご紹介してきましたが、これらの方法はコストをかけずに手軽に電子印鑑を作成できるのがメリットですが、簡単に複製可能であるという大きなリスクが伴います。
電子印鑑の捺印には法的効力が認められるため、印影データのみの電子印鑑を重要な書類に押印するのは厳禁。何かトラブルが起きた際には多大なダメージを受ける可能性があります。
社内用文書への押印といった用途であれば、印影データのみの電子印鑑でも効率性・利便性といったメリットを得ることができますが、重要な書類に押印する電子印鑑は先にご紹介した通り識別情報・電子証明書を付与できる電子印鑑作成サービスを利用するようにしましょう。
セキュリティ性の高いおすすめの電子印鑑作成サービス
電子印鑑は、セキュアな環境で利用できるサービスを選ぶことが非常に重要。ここでは、セキュリティ性に優れたおすすめの電子印鑑作成サービスをご紹介します。
Shachihata Cloud(シャチハタクラウド)
Shachihata Cloud(シャチハタクラウド)は、現在使用している印鑑を電子化できる電子印鑑作成サービスです。企業が使用している角印・丸印・個人印・ゴム印・サインまで、あらゆる印影をセキュアに電子化することが可能。従来の紙と印鑑によるワークフロー・契約といった業務を、運用方法を変更せずにそのままスムーズにデジタル化できるのが大きな特徴です。印鑑運用の一連のプロセスを一元管理することも可能。契約業務の電子化を検討している方には、非常におすすめのツールです。
とろろこんぶ電子印鑑 (tksk eSeal)
とろろこんぶ電子印鑑は、簡単な操作と便利な機能が特徴の、誰でも手軽に利用できる電子印鑑作成サービスです。ビットマップイメージを用いた承認はんこと、文字フォントで印影を表現する日付印ぺったんという2タイプの電子印鑑を作成することが可能。押印情報はログとして出力可能となっており、ログには改ざん防止ハッシュコードを付加。印鑑自体にも押印パスワードが設定可能であるなど、セキュリティ性にも優れたサービスです。扱いやすさ・利便性を重視して電子印鑑を導入したい方におすすめ。
My電子印鑑
My電子印鑑は、印影精度・セキュリティに優れた電子印鑑作成サービスです。ビットマップ画像ではなくベクトルデータによる印影描画を行うことで、美しく滑らかで精度の高い印影を実現。オリジナルフォントでオーダーメイドの印鑑を作成可能であり、印影には押印者名を埋め込むことができるため、不正コピーやなりすましを抑制したセキュアな電子印鑑を作成することができます。ユニーク性・セキュリティ性にこだわった電子印鑑を作成したい方にはおすすめです。
まとめ
電子印鑑には、業務効率化・コスト削減・利便性向上などさまざまなメリットがあることから、多くの企業で導入されている仕組みとなります。実際の印鑑と同じ法的効力を持たせるには、印影の画像化だけでなく電子証明書を付与することが重要なポイント。実務への有用性を考えると、電子印鑑作成サービスを導入して法的効力のある電子印鑑を運用するのがおすすめです。
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