下請法とは?対象や内容、違反した場合を解説
下請法とは、下請事業者の利益を保護し、公正な取引や健全な経済発展を目的に制定された法律です。一定以上の資本金の事業者には、下請法に定められた義務が課されます。下請法に違反した場合は、ペナルティが課されるため注意が必要です。
この記事では下請法とは、どのような法律なのかを解説。親事業者の義務や禁止行為なども解説していきます。
下請法とは
下請法の正式名称は、下請代金支払遅延等防止法です。下請法は、下請取引の公正性の確保や下請事業者の利益保護、経済の健全な発展を目的に制定された法律です。
下請法に関する業務は、公正取引委員会が担当しています。公正取引委員会が必要と判断すれば、事業者に対して立入検査や行政指導が実施されることも。下請法では、親事業者の義務や禁止行為、立入検査などに関する事項が定められています。
また、罰則も定められているため違反した場合、ペナルティが課されることも。勧告を受けた事業者や違反内容は、公正取引委員会のWebサイトなどで公開されるため、社会的な信用を失う可能性もあります。気づかずに違反してしまっているケースもあるため、下請法についてしっかりと理解しておくことが重要です。
下請法が必要とされている理由
仕事を発注する親事業者は、下請事業者よりも経済的に優位な地位にあると考えられています。親事業者による不当な行為があっても、下請事業者は仕事を失うことを恐れて適切に対応できない可能性も。令和3年度の指導件数は7,922件にも及び、公正取引委員会では取引実態の調査を進めています。※1
下請法は、経済的に優位な地位を利用した親事業者による買いたたきや報復措置など、下請事業者の利益を損ねるような行為を抑制するために必要な法律なのです。
※1 参考文献:公正取引委員会「令和3年度における下請法の運用状況及び中小事業者等の取引公正化に向けた取組」
親事業者と下請事業者とは
下請法では、資本金をもとに親事業者と下請事業者を定義しています。委託する業務によって資本金の条件は異なりますが、業務を発注した側の資本金1,000万円以上の事業者が親事業者です。一方、下請事業者とは、仕事を受注した資本金1,000万円未満の事業者を指します。下請事業者の資本金の条件も受注する業務内容によって変化します。
下請法と対象となる取引
下請法では、対象となる4種類の取引が定められています。
- 製造委託
- 役務提供委託
- 情報成果物作成委託
- 修理委託
また、事業者の資本金によって対象となるかどうかも変化します。それぞれの取引の詳細や具体例を解説します。
製造委託
製造委託は、下請法の対象となる取引です。物品を製造・販売している事業者が、ほかの事業者に対して、規格や形状、デザインなどを指定して、物品の製造や加工を依頼する取引が製造委託に該当します。製造委託の例は以下のとおりです。
- 食品メーカーが原料の加工をほかの事業者に依頼する
- 家電メーカーが自社製品に使用する部品の製造をほかの事業者に依頼する
上記のケースでは、食品メーカーと家電メーカーが親事業者です。下請法の製造委託における物品とは、動産を指しています。そのため、建物の建設工事などは、製造委託取引には該当しません。
役務提供委託
役務提供委託とは、施設の管理やコールセンター運営、配送などのサービスを提供している事業者が、請け負った役務の全部・一部をほかの事業者へ委託することです。以下のようなケースが、役務提供委託に該当します。
- 運送会社が請け負った配送業務の一部をほかの運送会社へ依頼する
- 工業機械メーカーが自社製品の定期メンテナンスをほかの事業者へ依頼する
上記のケースでは、配送業務の一部を依頼した運送会社、工業機械メーカーが親事業者で、下請け事業者に対する義務が発生します。
情報成果物作成委託
情報成果物作成委託とは、デザインやプログラム、映像などを作成している事業者が、制作作業をほかの事業者に委託することです。以下のようなケースが情報成果物作成委託に該当します。
- システム開発会社がプログラム開発の一部をほかの事業者へ依頼する
- 自社開発、使用しているシステムの開発をほかの事業者へ依頼する
- 映像制作を受注した事業者が制作業務をほかの事業者へ依頼する
上記のケースでは、システム開発会社やシステムを使用している会社、映像制作を受注した事業者が親事業者です。プログラムや映像以外にも、音声データや設計なども情報成果物に該当します。
修理委託
修理委託とは、普段は自社で修理・使用している物品の修理をほかの事業者へ依頼したり、請け負った物品の修理をほかの事業者へ依頼したりすることを指します。修理委託の例は以下のとおりです。
- パソコンメーカーが商品の修理をほかの事業者へ依頼する
- 修理を内製化している工業機械の修理をほかの事業者へ依頼する
上記のケースでは、パソコンメーカーと修理を外注した会社が親事業者、修理の依頼を受けた事業者が下請事業者です。あくまでも修理を依頼する場合が修理委託で、定期点検などは役務提供委託に該当します。
資本金区についても要注意
下請法における親事業者と下請事業者は、それぞれの資本金と取引内容によって定義されています。製造委託や修理委託取引を行う場合、以下の資本金条件のどちらかを満たすと下請法が適用されます。
- 親事業者の資本金が1,000万~3億円以下で、下請事業者の資本金が1,000万円以下
- 親事業者の資本金が3億円超で、下請事業者の資本金が3億円以下
役務提携委託や情報成果物作成委託の取引では、製造委託や修理委託取引とは異なる資本金条件が設定されています。
- 親事業者の資本金が1,000万~5,000万円以下で、下請事業者の資本金が1,000万円以下
- 親事業者の資本金が5,000万円超で、下請事業者の資本金が5,000万円以下
上記のいずれかに当てはまる場合は、下請法が適用されます。急激な事業の成長などによって、資本金が増加した際は注意が必要です。
親事業者に課せられている義務
親事業者には、書面の交付や取引記録の保管などの記録に関する義務が課されます。また、支払いが遅延した場合、利息を支払うなど、支払い期日に関する義務も課されます。義務を怠ると、罰則が適用されるので注意しましょう。
発注の際には書面を交付する
下請法では、親事業者は下請事業者に製造委託などを行った場合、直ちに必要事項を記載した書面を交付することが義務付けられています。書面には以下の事項を記載しなければなません。
- 発注当事者、発注日
- 給付の内容
- 代金の支払い額、期日など
上記の事項に加えて、親事業者が下請事業者に、有償で原材料を提供する場合は、材料の品名や数量なども記載しなければなりません。給付の内容とは、物品・成果物の内容や納品日、納品場所などを指します。下請法の適用対象となる取引では、取引内容を必ず書面で残しておかなければなりません。
給付や下請代金の支払・受領について書類で作成・管理する
行政機関が迅速に取引内容を精査できるように親事業者は、給付や下請代金の支払・受領に関する書類を作成・保管しなければなりません。親事業者は、下請法の対象となる取引を行った場合、一定の事項を記載した記録を残しておく必要があります。一定の事項とは、以下の4つの項目です。
- 発注内容や納期
- 実際の納品日
- 下請代金の実際の支払い額
- 実際の支払い方法
- 遅延利息額
親事業者は、下請取引に関する記録を2年間は保存しなければなりません。紙での記録だけではなく、データとして保管することも認められています。
下請代金の支払期日を決める
下請法では親事業者の義務として、下請代金の支払期日を決めることも定められています。親事業者は、下請代金の支払い期日を物品や成果物の受領後60日以内に設定しなければなりません。また、支払い期日は物品の受領日から可能な限り短い期間に設定することとされています。
例えば、月末締めの翌月10日払いの場合は、60日以内なので問題ありません。しかし、10月1日に物品が納品され、12月10日に下請代金を支払った場合は、60日を超えるためルール違反です。支払期日を定めていない場合、下請法では納品日が期日とみなされるので、必ず支払期日を設定しましょう。
遅延利息を支払う
支払い期日までに下請代金が支払われなかった場合、親事業者には遅延金利の支払い義務が生じます。遅延とみなされる期間は、納品日から起算して60日経過した日から実際に下請代金が支払われた日までです。
下請法第4条の2では、『当該未払金額に公正取引委員会規則で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。※2』と定められています。公正取引委員会規則では、遅延利息を年率14.6%と定めています。親事業者は、支払いが遅延した日数に応じて、未払いの下請代金に対し、年率14.6%の利息を支払わなければなりません。
※2 参考文献:公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法」
親事業者が禁止されている行為
下請法では、親事業者の禁止行為として11項目が定められています。
- 受領拒否
- 下請代金の支払遅延
- 下請代金の減額
- 返品
- 買いたたき
- 購入・利用強制
- 報復措置
- 有償支給原材料等の対価の早期決済
- 割引困難な手形の交付
- 不当な経済上の利益の提供
- 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し
親事業者の不正行為などを行政機関に知らせた下請事業者に対して、取引停止や取引量を削減するなどの報復措置をとることは禁止されています。有償支給原材料等の対価の早期決済とは、有償で提供した原材料費などを、下請代金の支払いよりも早い時期に相殺・支払わせることです。
また、割引困難な手形とは、その業界の商慣行、親事業者と下請事業者との取引関係、その時の金融情勢等を総合的に勘案して、ほぼ妥当と認められる手形期間を超える長期の手形※3とされています。
上記の事項は、下請事業者の了解を得ている場合でも、ルール違反となるため注意が必要です。
※3 参考文献:公正取引委員会「親事業者の禁止行為」
もしも下請法に違反してしまった場合
下請法では罰則も定められています。書面の交付や保管義務を怠った場合、親事業者の代表者や代理人、使用人などに50万円以下の罰金が課されます。下請法の第9条では、公正取引委員会は必要と認められる場合、親事業者や下請事業者の事業所へ立ち入り、帳簿類を検査できることや事業者に報告を求められることが定められています。※4
前述の禁止行為だけではなく、第9条に定められている検査や報告を拒んだ場合や、虚偽の報告を行った場合も罰則が適用されます。
※4 参考文献:公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法」
下請法におけるミスを防ぐためには
先述のとおり、下請法では書面の交付や保管義務が定められています。電磁的記録での保管も認められているので、電子契約サービスや受発注システムを活用して、書類を交付・保管することも可能です。
紙で書類を作成・管理する場合、手作業が多くなるため、人的なミスのリスクも高まります。意図的ではなくても、書類や記録に不備があれば、違反とみなされる可能性も。
電子契約サービスでは、下請法に沿った書式が用意されているケースも多いです。下請法対応のサービスであれば、必要事項が抜けてしまう心配もありません。加えて、書類の郵送や押印など、物理的な書類のやり取りを省けるため、取引先との受発注業務を効率化できるメリットもあります。
まとめ
電子契約サービスや受発注システムを活用すれば、契約や受発注をスムーズに進められます。しかし、最近では電子契約サービス・受発注システムの種類が増え、候補を絞り込むだけでも時間がかかってしまう場合も。
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