ERPの導入にかかる費用や価格相場を徹底解説
ERPは、社会環境の変化に伴ってビジネスが複雑化し企業間競争がより激しさを増す現在においては、生産性を高めながら経営を効率化し、事業の優位性を保つためにも欠かせない要素になりつつあります。
その一方で、自社にERPを導入したいものの費用に懸念があり、決断に踏み切れていない担当者も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、ERPの導入にかかる費用や価格相場について詳しく解説します。ERP導入の流れや、導入後に考えたいポイントなどにも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
- ERPの種類
- ERPの導入にかかる費用
- クラウド型ERPの導入に必要な費用
- オンプレミス型ERPの導入に必要な費用
- ERP導入の流れ
- ERP導入後に考えること
- まとめ:ERPの費用・相場を把握してスムーズな導入をしよう
ERPの種類
ERP(Enterprise Resource Planning)は、ヒト・モノ・カネ・情報といった企業が保有する資源を一元管理の上、有効活用するための重要なシステムです。
ERPの導入にあたっては、まずその種類について理解することが大切です。ERPは、主に次の2種類に大別されます。
- オンプレミス型ERP
- クラウド型ERP
以下、それぞれについて順に解説します。
オンプレミス型ERP
オンプレミス(on-premises)には、「構内で」「敷地内で」といった意味があります。オンプレミス型ERPとは、サーバーを始めとする必要機器やネットワークなどを自ら調達の上、自社内に構築した環境の下で稼働させるERPのことです。
クラウド型ERPが登場する以前はオンプレミス型ERPが主流だったこともあり、現在でも数多くの企業で採用されています。自社で自由に環境を構築できるため、状況に応じてカスタマイズしやすく、既存システムとの連携も比較的容易であることがオンプレミス型ERPのメリットです。
一方で、サーバーなどの機器を始め、必要となるリソースをすべて自前で用意しなければならないため、導入コストが多くかかります。また、適切な環境を構築するには一定のスキルやノウハウが不可欠となることも注意したいポイントの1つです。
クラウド型ERP
クラウド型ERPは、インターネットを介してアクセスできるクラウド環境上にシステムを構築の上、稼働させる形態のERPです。オンプレミス型ERPと異なり、自社で必要機器やネットワークなどのリソースを調達する必要がないため導入コストが抑えられるほか、スピーディに運用が開始できるというメリットがあります。
環境構築の難易度も比較的低い傾向にある一方で、カスタマイズなどの自由度についてはオンプレミス型に一歩譲ります。また、機密情報を含めた自社のデータをインターネットを通じてやり取りすることになるため、ネットワーク上のセキュリティには注意しなければなりません。さらに、外部に公開されているクラウド環境であるため、サーバーが攻撃されてしまうというリスクに対しても、十分な対策を講じる必要があります。
ERPの種別だけではなく基本から知りたい方は、以下の記事もご覧ください。メリットやデメリット、基幹システムとの違いといったERPの基礎知識を網羅しています。
ERPの導入にかかる費用
ERPの導入にかかる費用は、主に次の2種類に大別されます。
- 初期費用
- ランニングコスト
以下、それぞれについて解説の上、上述したクラウド型ERPとオンプレミス型ERPにおける費用の違いについても説明します。
初期費用
初期費用には、主に次のようなものがあります。
- ライセンス費用
- 導入費用
- 開発費用
ライセンス費用は、ERPを使用するためのライセンスを購入する費用です。利用人数によって異なるなど、さまざまな料金体系があります。
導入費用は、サーバーなど必要機器の調達費用、環境構築費用など、ERPを導入するためにかかる費用です。スムーズな導入のためのサポートや、オペレーションの教育にかかる費用などが含まれることもあります。
開発費用は、主に要望に合わせてカスタマイズするための費用です。規模や内容によって金額は異なります。
ランニングコスト
ランニングコストには、主に次のようなものがあります。いずれも、月額料金として毎月発生することがほとんどです。
- システム利用料
- 運用・保守費用
システム利用料は、ERPを利用するための費用です。スムーズなオペレーションのための支援や、効果的な利用についての相談など、運用サポートに関する費用が含まれることもあります。
運用・保守費用は、システムのメンテナンスやトラブル時の対応など、ERPを正常に継続稼働させるための作業に関する費用です。
クラウド型ERPとオンプレミス型ERPの費用の違い
クラウド型ERPとオンプレミス型ERPでは、必要となる費用が異なるのが一般的です。
クラウド環境を利用するクラウド型ERPでは、サーバーやネットワークなどを自前で調達する必要がないため、導入費用を抑えられます。オンプレミス型ERPと比較してカスタマイズなどの自由度が低い分、開発費用も高額にはならないことがほとんどです。バージョンアップなどのメンテナンスもERP提供側で一括対応することになるため、運用・保守費用はかからない、もしくは比較的低額です。一方で、システム利用料は登録ユーザー数に比例することが多いため、ERPの使用状況によっては高額となることがあります。
一方、オンプレミス型ERPでは、サーバーやネットワークなど必要となるリソースを自社で用意する必要があるため、導入費用が大きくなります。カスタマイズが広範にわたる場合は開発費用も跳ね上がることに加え、追加機能や改修内容に合わせた個別のメンテナンスが必要となるため、運用・保守費用も高くなります。
形態の違いとともに、それぞれにかかる費用も理解した上で、自社に合ったERPを導入することが重要です。
クラウド型ERPの導入に必要な費用
まず、クラウド型ERPの導入に必要となる費用を、次の3種類に分けて解説します。
- ライセンスにかかる費用
- 初期導入費用
- 毎月の利用料
ライセンスにかかる費用
ライセンスにかかる費用は、登録ユーザー1人当たりについて設定されていることが多く、クラウド型ERPの場合は月額料金として継続的に支払うケースがほとんどです。その相場は概ね、数千~数万円程度となります。
また、ユーザー数が「10人まで」「100人まで」といった一定範囲に対する固定料金が設定されていることもあり、自社の利用人数に合わせた契約が必要です。さらに、ユーザーライセンスとは別に、利用する事業所ごとに数万~100万円程度の基本ライセンス料が発生することもあります。
なお、年間契約の上、一括払いにより割り引きされることもあるため、しっかりと確認しましょう。
初期導入費用
クラウド環境を利用するクラウド型ERPでは、サーバーやネットワークなどのリソースを自前で調達する必要がありません。そのため、導入費用の相場は高くても十数万円程度と、比較的抑えられることがほとんどです。場合によっては無料となるケースもあります。
ただし、スピーディに導入するためのサポートや、スムーズな運用のためのオペレーション教育などを依頼する場合は、その分の費用がかかるため注意が必要です。
毎月の利用料
クラウド型ERPは、サブスクリプションと呼ばれる料金形態であることが多く、毎月の利用料が発生します。ただしほとんどの場合、上述したライセンス費用に含まれている、もしくはそれと同義です。つまり、相場は概ね、登録ユーザー1人当たり数千~数万円程度となります。
一方、通常の利用とは別に運用・保守を依頼する場合には料金が発生することもありますが、個別に特別な対応を要望するケースでない限りは、それも利用料に含まれる、もしくは比較的低額であることが一般的です。
オンプレミス型ERPの導入に必要な費用
次に、オンプレミス型ERPの導入に必要となる費用を解説します。
- ライセンスにかかる費用
- 初期導入費
- 開発にかかる費用
- 運用・保守にかかる費用
ライセンスにかかる費用
オンプレミス型ERPのライセンス費用は、クラウド型ERPと同様、登録ユーザー1人当たりについて設定されていることがほとんどです。ただし多くの場合、クラウド型ERPのように月額料金として継続的に支払うのではなく、初期費用として導入時に1度支払えば完了となり、以後発生することはありません。
その分金額が大きくなる傾向にあり、相場としては概ね数百万~数千万円となります。もちろん、利用人数によって大きく変動する上、実際のデータ使用量によっても異なることがあるため注意が必要です。
初期導入費
オンプレミス型ERPにおいては、サーバーやネットワークなど必要となるリソースを自社で調達の上、適切な環境を構築しなければならないため、初期導入費は比較的高額になります。既存の資産を活用するか、あるいは新たに購入するかといった状況によっても変わってくるため、費用相場は概ね数十万~数千万円と、大きな幅があります。
また、導入のためのサポートや、オペレーション教育などを依頼する場合も費用がかかりますが、こちらはユーザー数によって変動するのが一般的です。相場は概ね数万~数千万円と、やはり状況によって大きく異なります。
開発にかかる費用
オンプレミス型ERPは、自社の状況に合わせて柔軟にカスタマイズができる自由度の高さが魅力です。その費用はカスタマイズの範囲や難易度によって大きく変動するため、相場にも幅があります。1つの機能を追加したり修正したりするのに、概ね数万~数百万円の開発費用がかかるものと考えておきましょう。
実際にカスタマイズを実施する際には、詳細な見積もりを取得した上で自社の予算と照らし合わせ、その範囲や内容について慎重に検討することをおすすめします。
運用・保守にかかる費用
運用・保守に大きな手間や費用がかからないクラウド型ERPと違い、オンプレミス型ERPではすべてを自社で賄う必要があるため、状況によっては高額な運用・保守費用が発生します。
バージョンアップをはじめとするシステムのメンテナンスやトラブル時の対応などを想定し、どの程度の人材リソースを充てるかによって大きく異なりますが、最低でも月額数万~数十万円の費用がランニングコストとして発生すると考えておきましょう。ERPサービスの提供会社にサポートを依頼することも可能ですが、同様に月額数万~数十万円程度の費用がかかります。
ERP導入の流れ
ERPを導入する際の基本的な流れは、次のとおりです。
- ERPを導入する目的の精査
- ERPの種類を選ぶ
- ERPの運用体制を構築する
- 導入の予定を立てる
以下、それぞれのプロセスについて順に解説します。
ERPを導入する目的の精査
ERPを導入する際には、まず自社における現状の課題を整理した上で、導入する目的を精査することが重要です。経営計画や事業戦略に鑑みながら自社が抱えている課題を洗い出し、優先順位を付与した上で、それらの解決に向けて目的を明確化しましょう。
導入する目的によって適切なERPの種類や製品が異なってくる上、導入後に効果を測るためには目的の達成度合いが重要な指標となります。また、そもそもの目的が明確になっていない場合、ERPの導入自体が目的となってしまい、期待した成果は決して得られません。そのため、このプロセスは時間をかけて慎重に行うことをおすすめします。
ERPの種類を選ぶ
ERPを導入する目的が明確化したら、次はそれに沿ってERPの種類を選びます。具体的な製品選定の前に、オンプレミス型にするか、クラウド型にするかをまず決めましょう。これまで見てきたとおり、オンプレミス型ERPとクラウド型ERPでは、導入方法や費用などにおいてそれぞれ異なる特徴があるため、慎重に比較検討する必要があります。
オンプレミス型ERPは、多くのカスタマイズが想定されるケースや、運用・保守の体制を自社で構築できる企業におすすめです。一方、クラウド型ERPは、初期導入費用を安く抑えたいケースや、運用・保守フェーズに十分なリソースを割けない企業に適しています。
種類が決まったら、具体的な製品選定に入ります。使いやすさ、機能の充実度、料金体系などを総合的に考慮しながら検討することが重要です。
ERPの運用体制を構築する
ERPの導入をスムーズに進め、効果的な運用を実現するためには、社内に適切な運用体制を構築しておくことも重要なポイントです。事前に体制を構築の上、各メンバーの責任や役割を明確にすることで、スピーディに導入が進められるだけではなく、問題が発生した際の対応や意思決定も迅速に行えます。
適切な体制の構築には、メインで導入を進める担当者、全体の管理を司る責任者など、さまざまな役割を担う人材が必要です。さらには、導入に伴って変化する業務プロセスやフローの周知・浸透を主導するメンバー、システムの操作方法について社内に教育を実施するメンバーなども忘れずに確保しておきましょう。
導入の予定を立てる
ERPをスムーズに導入するには、これまでに決定したERPの種類や運用体制を基に、綿密な予定を立てましょう。考慮したい内容は、具体的な導入スケジュール、実施するタスク、全体の進捗やコミュニケーションの管理方法などがあります。
特に、実施するタスクについては、抜け漏れのないよう洗い出した上で、優先度を考慮しながらスケジュールに落とし込むことが大切です。また、関係者による定期的な会議での意識合わせなど、全体を適切に管理する方法も明確にしておく必要があります。さらに、導入にあたって考えられるリスクまで考慮し、対策を検討しておくこともポイントです。予定が決まったら、関係者に共有の上、全員の認識を統一しておきましょう。
ERP導入後に考えること
ERPを導入したあとに考えたい主なポイントは、次のとおりです。
- 使用方法を社員に教育する
- ERPを導入した効果を測定する
使用方法を社員に教育する
ERP導入後、効果的に運用していくためには、適切な使用方法を社員に教育する必要があります。そのためにはオペレーションマニュアルの整備と的確な運用ルールの策定が必須です。ただし、運用ルールについては導入初期のトラブルなどを経てブラッシュアップされていくものでもあるため、まずはオペレーションマニュアルを準備しましょう。その上で、研修の開催などによって基本的な使用方法を周知することが大切です。
その際は、単に操作方法を伝えるだけではなく、ERP導入の経緯やその目的を併せて理解してもらう必要があります。さらに、操作上の課題や疑問を解消するための問い合わせ窓口を設置するなど、使用方法の習得を後押しする配慮も重要です。
ERPを導入した効果を測定する
ERPの導入後は、当初の目的がどの程度達成されたかが把握できるよう、定期的に効果測定する仕組みやフローを構築しましょう。また、測定した結果は、より高い効果を生み出すための検討材料とし、運用を改善していくことも重要です。
社内全体の事業プロセスがどれだけ効率化されたか、業務時間がどの程度削減されたかなど、導入効果を測る指標はさまざまですが、いずれにせよそれが当初の目的に沿っている必要があります。また、社員のさらなる協力や活用に対するモチベーションを喚起するために、効果測定の結果を社内で共有することもポイントです。
まとめ:ERPの費用・相場を把握してスムーズな導入をしよう
以上、ERP導入の流れや、導入後に考えたいポイントなどに触れながら、ERPの導入にかかる費用や価格相場について解説しました。本記事を参考に、自社に合った適切なERPを導入の上、ぜひビジネスの発展に向けた経営資源の有効活用を実現してください。
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