ものづくり補助金とは?要件や対象者についてわかりやすく解説【2024年最新版】
中小企業や小規模事業者においては、「新商品・サービスの開発や設備投資の資金確保が難しい」という課題がともないます。補助金や助成金はこうした事業者への資金面の支援を通じて事業の成長・発展を推進する制度です。
この記事では補助金の1つである「ものづくり補助金」の概要や要件、対象者、費用別などについて詳しく解説します。「ものづくり補助金」の活用を希望する方はぜひ参考にしてください。
- ものづくり補助金とは?
- ものづくり補助金の対象者
- ものづくり補助金の対象外となる事業者
- ものづくり補助金の対象となる経費
- ものづくり補助金の応募申請方法
- ものづくり補助金の申請に必要な書類
- ものづくり補助金の採択事例
- 【まとめ】補助金で導入するシステムの比較検討はPRONIアイミツで
ものづくり補助金とは?
「ものづくり補助金」とは、中小企業や小規模事業者の革新的サービス開発や試作品の開発、生産プロセス改善に取り組むための設備投資支援を目的とした補助金制度です。中小企業庁と中小企業基盤整備機構によって実施されています。
名称から製造業向けの制度のような印象を受けますが、実際は幅広い業種が対象となっており、生産性の向上が見込める設備投資などを目的とする場合は申請することができます。充実の内容と活用のしやすさを兼ね備えているため、中小企業・小規模事業者は積極的に利用すべき制度だと言えます。
ものづくり補助金の基本要件
ものづくり補助金の申請にあたっては事業計画書の提出が必要となりますが、その際は以下の基本要件を満たしていることが求められます。
(1)営業利益と人件費、減価償却費からなる「付加価値額」が年率平均で3%以上増加すること
(2)従業員への給与支給総額が年率平均で1.5%増加すること
(3)「事業場内最低賃金」を地域別最低賃金より30円以上の水準とすること
そのほかにも、すでに創業している事業者であることや業種別の資本金・従業員数の条件を満たしていること、賃金引き上げ計画を従業員に向けて表明済みであることが条件となっています。
通常枠
「通常枠」は、中小企業・小規模事業者が革新的なサービス開発や試作品の開発、生産プロセス・提供方法改善を図るための設備投資を支援するものです。ものづくり補助金における基本的な申請枠となります。
補助金額 | 従業員数5名以下:100万〜750万円 従業員数6〜20名:100万〜1,000万円 従業員数21名以上:100万〜1,250万円 |
補助率 | 1/2(小規模企業社・小規模事業者・再生事業者は2/3) |
設備投資 | 税抜き単価50万円以上 |
回復型賃上げ・雇用拡大枠
「回復型賃上げ・雇用拡大枠」は、厳しい状況の中で雇用拡大や賃上げに取り組む事業者の革新的サービス開発や生産プロセス・提供方法の改善に必要なシステム投資や設備投資などを支援するものです。従業員に対する賃上げを前提とした優遇制度のため、要件を満たせなければ返還を求められる場合があります。
補助金額 | 従業員数5名以下:100万〜750万円 従業員数6〜20名:100万〜1,000万円 従業員数21名以上:100万〜1,250万円 |
補助率 | 2/3 |
追加要件 | 基本要件にくわえ、以下のすべてに該当すること ・前年度の事業年度の課税所得がゼロ以下 ・常時使用している従業員を有する ・補助事業を完了した事業年度の翌年度に給与支給額増加率1.5%、地域別最低賃金+30円以上の目標を達成 |
設備投資 | 税抜き単価50万円以上 |
デジタル枠
DX化推進施策の一環として2022年2月に新設された「デジタル枠」は、DXにDXに資する革新的なサービス・製品開発やデジタル技術を用いた生産プロセス・提供方法の改善に必要なシステム・設備投資を支援するものです。補助率が2/3と高く設定されているため、DXを推進させたいと考えている場合におすすめと言えます。
補助金額 | 従業員数5名以下:100万〜750万円 従業員数6〜20名:100万〜1,000万円 従業員数21名以上:100万〜1,250万円 |
補助率 | 2/3 |
追加要件 | 基本要件にくわえ、以下のすべてに該当すること ・DXに資する革新的な製品・サービスの開発、デジタル技術を活用下生産プロセス・サービス提供方法の改善に該当する事業 ・DX推進に向けた自己診断をIPAに提出 ・応募申請時点でSECURITY ACTIONの1つ星もしくは2つ星を宣言しているか |
グローバル市場開拓枠
「グローバル市場開拓枠」は、海外事業の強化を目的とした製品・サービス開発や生産プロセス、提供方法の改善に必要なシステム投資・設備投資などを支援するものです。
ほかの申請枠と比較すると補助金額の上限が3,000万円と高額なので、海外展開を視野に入れる事業者は活用を検討すべきでしょう。
補助金額 | 100万〜3,000万円 |
補助率 | 1/2(小規模企業者・小規模事業者は2/3) |
追加要件 | 基本要件にくわえ、以下いずれかの要件を満たす投資であること ・海外直接投資類型 ・海外市場開拓類型 ・インバウンド市場開拓類型 ・海外事業者との共同事業類型 |
大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例
「大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例」とは、大幅な賃上げに取り組む事業者に対して文字どおり補助上限額の引き上げが適用されるものです。要件に未達の場合は返還を求められることもあるので注意しましょう。
上限の引き上げ額 | 従業員数5名以下:最大100万円 従業員数6〜20名:最大250万円 従業員数21名以上:最大1,000万円 |
追加要件 | 基本要件にくわえ、以下すべての要件に該当すること ・給与支給総額年率平均1.5%以上増加から、さらに年率4.5%以上増加させる ・地域別最低賃金+30円以上水準にくわえ、事業場内最低賃金を毎年年額+45円以上にすること ・上記の達成に向けた詳細な事業計画を提出すること |
ものづくり補助金の対象者
ものづくり補助金の対象者は、業種別に資本金や従業員数によって定められています。それぞれ補助金額や補助率が異なるため、申請にあたっては正しく理解しておく必要があります。ここからは、ものづくり補助金の対象者について詳しく解説します。
組合関連以外の中小企業者
組合関連以外の中小企業者とは、以下の資本金・常勤従業員数の法人・個人の事業者のことです。
業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
---|---|---|
製造業・建設業・運輸業・旅行業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業 (旅館業・ソフトウェア業・情報処理サービス業を除く) |
5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業 (自動車・航空機用タイヤ・チューブ製造業・工業用ベルト製造業を除く) |
3億円 | 900人 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
組合や特定の法人を除く、一般的な企業・会社・個人事業主がこの区分に分類されます。
組合や法人関連の中小企業者
「組合や法人関連の中小企業者」は、中小企業等経営強化法第2条第1項に規定されている事業者のことです。一部の事業者に対しては、資本金・従業員数に関する条件が設けられています。
組織形態 | 条件 |
---|---|
企業組合 | |
協業組合 | |
事業協同組合・事業協同小組合・協同組合連合会 | |
商工組合・商工組合連合会 | |
商店街振興組合・商店街振興組合連合会 | |
水産加工業協同組合・水産加工業協同組合連合会 | |
生活衛生同業組合・生活衛生同業小組合・生活衛生同業組合連合会 | 構成員2/3以上が5000万円以下の資本金・出資金、常時50人以下の従業員を使用 |
酒造組合・酒造組合連合会・酒造組合中央会・酒販組合・酒販組合連合会・酒販組合中央会 | 酒類製造業者:構成員2/3以上が3億円以下の資本金・出資金、常時300人以下の従業員を使用 酒販組合・酒販組合連合会・酒販組合中央会:構成員2/3以上が5,000万円以下の資本金・出資金、常時50人以下の従業員を使用 |
内航海運組合・内航海運組合連合会 | 内航海運事業を営む者:構成員2/3以上が3億円以下の資本金・出資金、常時300人以下の従業員を使用 |
技術研究組合 |
なお、上記に該当しない組合・財団法人・社団法人・医療法人・法人格なしの任意団体は補助の対象外です。
一部の特定事業者
特定事業者の一部とは、以下の要件に該当する事業者のことです。
(1)資本金・出資の総額が10億円未満、常勤従業員数が下表以下の中小企業等経営強化法に規定されている事業者
業種 | 常勤従業員数 |
---|---|
製造業・建設業・運輸業 | 500人 |
卸売業 | 400人 |
サービス業又は小売業(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く) | 300人 |
その他の業種(上記以外) | 500人 |
(2)生活衛生同業組合・生活衛生同業小組合・生活衛生同業組合連合会
2/3以上が常時300人以下の従業員を使用する者
(3)酒造組合・酒造組合連合会・酒造組合中央会・酒販組合連合会・酒販組合中央会
2/3以上が常時500人以下の従業員を使用する者
(4)内航海運組合、内航海運組合連合会
2/3以上が常時500人以下の従業員を使用する者
(5)技術研究組合
構成員の2/3以上が規定の事業者
その他
ものづくり補助金は、特定非営利活動法人と社会福祉法人も対象に含まれます。それぞれの要件は以下のとおりです。
<特定非営利活動法人>
・中小企業一般の振興・発展に直結する活動に取り組む特定非営利活動法人
・従業員数300人以下
・法人税法上の収益事業を行う特定非営利活動法人である
・認定特定非営利活動法人に該当しない
・交付決定までに補助金事業に係る経営力向上の認定を受けている
<社会福祉法人>
・社会福祉法第32条に記載する所轄庁の認可を受けて設立されている法人である
・従業員数300人以下
ものづくり補助金の対象外となる事業者
ものづくり補助金はすべての事業者が対象となるものではなく、企業規模や法人種別、事業内容によっては利用することができません。対象外となる要件は以下のとおりです。
事業規模 | 大企業は対象外 例:サービス業系企業・資本金5,000万円以上・常勤従業員数100人以上 |
法人 | 組合・財団法人・社団法人・医療法人・社会福祉法人・法人格のない団体など |
事業 | 公序良俗に反する事業、資産性の高い事業 例:キャバクラ・麻雀店・シェアリングビジネス・不動産投資・土地の転売など |
対象外事業者に該当していないか、申請前に要件を確認しておきましょう。
ものづくり補助金の対象となる経費
ものづくり補助金の対象となる経費は定められているため、事前に正しく把握しておく必要があります。補助対象となる経費の例は以下のとおりです。
費目 | 内容 |
機械装置費 | 補助事業に使用される機械・装置などの購入・借用・製作に要する経費 |
システム構築費 | 補助事業のために使用される専用ソフトウェアの購入・借用・製作に要する経費 |
技術導入費 | 事業実施に必要となる知的財産権等導入に要する経費 |
専門家経費 | 補助事業のために依頼した専門家へ支払う経費 |
運搬費 | 運搬・宅配・郵送に要した経費 |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービスの利用にかかる経費 |
原材料費 | 試作品開発の原材料などの購入にかかる経費 |
外注費 | 製品・サービス開発に関する業務を外注した場合の経費 |
知的財産権等関連経費 | 事業に必要な知的財産権の取得にかかる経費 |
補助事業と関連のない経費、車両やパソコンなどの汎用的な経費は補助対象経費には含まれないため注意が必要です。
ものづくり補助金の応募申請方法
ここでは、ものづくり補助金の応募申請方法について解説します。応募申請を検討している方は、事前に応募申請方法を把握しておくとよいでしょう。
公募期間
公募期間とは、補助金の申請書を提出するための応募期間のことです。令和2年3月以降は通年で公募が実施されていますが、各回の公募にそれぞれ期間・締切日が設定されているので、事前に確認しておく必要があります。基本的には応募期間は約2ヵ月、審査期間約1ヵ月で、四半期ごとに公募が行われています。
申請方法とスケジュール
ものづくり補助金の応募申請は電子申請のみのため、操作マニュアルにしたがって申請者自身が内容を確認しながら情報を入力していきます。なお、申請にあたっては「GビズID プライムアカウント」を事前に取得しておく必要があります。
また、令和5年1月に発表された「14次締切分」を例に応募申請のスケジュールを紹介します。
公募開始:1月11日(水)17時~
申請受付:3月24日(金)17時~
応募締切:4月19日(水)17時
採択発表:6月中旬頃の予定
採択の決定後はすべての申請者へ結果が通知されます。採択された場合は対象経費を確認し、補助金の交付申請手続きへ進むという流れです。
ものづくり補助金の申請に必要な書類
ものづくり補助金の申請にあたっては、数多くの書類を提出する必要があります。申請に必要な主な書類は以下のとおりです。
名称 | 内容 |
事業計画書 | A4・10ページ程度で具体的な取り組み内容や将来展望、数値目標をまとめる |
補助経費に関する誓約書 | 補助経費を事業計画書に記載した補助事業に使用する旨の誓約書 |
賃金引上げの誓約書 | 直近の最低賃金と給与支給総額、賃金引き上げを行う旨の誓約書 |
決算書等 | 直近2年間の貸借対照表、損益計算書など |
従業員数の確認資料 | 法人:法人事業概況説明書の写し 個人:所得税青色申告書の写し |
労働者名簿 | 応募申請時の従業員情報 |
「再生事業者」に係る確認書 | 再生事業者の応募申請に必要 |
課税所得の状況を示す確定申告書類 | 回復型賃上げ・雇用拡大枠の応募申請に必要 |
炭素生産性向上計画及び温室効果ガス排出削減の取組状況 | グリーン枠の応募申請に必要 |
大幅な賃上げ計画書 | 大幅な賃上げに係る補助上限額引上の特例の申請時に必要 |
海外事業の準備状況を示す書類 | グローバル市場開拓枠への応募申請に必要 |
その他加点に必要な資料 | 添付資料が必要な場合に任意で用意 |
ものづくり補助金の採択事例
実際にものづくり補助金に採択された事例には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、ものづくり補助金に採択された事業者Aの事例を紹介します。
業界・業種 | 飲食店・宿泊施設経営 |
申請理由 | 新型コロナウイルス感染拡大による売り上げ減少 |
申請目的 | テイクアウト・デリバリーサービスの開発・提供を目的としたIT・設備投資の実施 |
補助金活用内容 | ・注文から調理、会計までを行うシステムの構築 ・専用ホームページの開設による販売促進 ・真空包装機、特殊冷蔵庫の導入による品質向上 |
今後の展望 | ・IT活用による顧客ニーズ分析や商品開発、生産性向上の推進 ・SNSでの動画配信を通じた潜在層へのPR |
【まとめ】補助金で導入するシステムの比較検討はPRONIアイミツで
ものづくり補助金は対象が広く、補助額・補助率も優遇されているため、これから事業を成長・発展させたい方にぴったりの制度です。過去の採択事例ではITツールも含まれているので、ITやIoTに関する設備投資を検討中の事業者も活用すべきでしょう。
「PRONIアイミツ」では、ものづくり補助金の対象となるシステムの比較検討に役立つさまざまな情報を掲載しています。補助金を活用してシステムを導入したいとお考えの方はぜひご活用ください。
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