経理アウトソーシングの失敗例と回避方法、業者の選び方を解説
人件費などのコスト削減や業務効率化のために経理アウトソーシングを導入する企業が増えています。しかし、「コスト削減になるはずが、かえって費用負担が増えた」「自社の経理担当の人材が育たなくなった」といった失敗例も少なくありません。なぜ経理アウトソーシングの導入で失敗してしまうのでしょうか。
本記事では、よくある失敗の原因を掘り下げ、導入を成功させるためのポイントや経理アウトソーシング業者の選び方を解説します。経理アウトソーシングの導入を迷っている経理担当者はぜひ参考にしてください。
- 経理アウトソーシングでよくある失敗例とリスク
- 経理アウトソーシングでの失敗を回避する方法
- 経理アウトソーシングを選ぶ際の注意点
- まとめ:経理アウトソーシングの導入失敗例から学んで効果的に活用しよう
経理アウトソーシングでよくある失敗例とリスク
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経理アウトソーシングとは、企業が経理業務を外部の専門業者に委託するサービスです。記帳代行、給与計算、請求書発行、決算対応などを専門家が代行します。これにより人件費を含むコスト削減や業務効率化を図れるほか、正確かつ迅速な経理処理が可能になるといったメリットがあります。
このように経理アウトソーシングには多くのメリットがありますが、導入に失敗するケースも少なくありません。よくある失敗例やリスクとして、以下の5つが挙げられます。
- コスト削減にならなかった
- 自社の経理処理に合わせてもらえなかった
- 外注先の専門性が不足していた
- 柔軟に対応してもらえなかった
- 自社の経理担当の人材が育たなかった
コスト削減にならなかった
人件費などのコスト削減を目的として経理アウトソーシングを導入したものの、かえって費用が高くなった失敗があります。具体例を見てみましょう。
A社は月額固定料金で経理アウトソーシングを導入しました。当初の契約では仕訳入力や請求書処理が含まれており、料金体系が明確なため、コストを抑えられると考えていました。しかし、月次損益レポートの作成を依頼したところ、基本料金の業務範囲外だったため、1レポートごとに追加費用が発生することが判明。1レポート5万円、合計で毎月15万円の追加費用となり、結果的に想定よりもコストが増加する結果となりました。
このような失敗を防ぐには、契約前に業務範囲を細かく確認し、想定外の追加費用が発生しないよう事前に見積もりを取ることが重要です。
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出典:CSアカウンティング株式会社 「経理アウトソーシング利用時の不満についてのアンケート調査」
上の表は100社を対象とし、経理アウトソーシングの不満を調査した結果です。最も多かった不満は「期待していたコスト削減につながらなかった」でした。失敗しがちなポイントなので、経理アウトソーシング導入前に契約内容と委託したい業務内容のすり合わせを徹底したいところです。
自社の経理処理に合わせてもらえなかった
次に多く挙げられた不満は、「自社の経理処理に合わせてもらえなかった」でした。ここでは、具体例を2つ挙げます。
B社は経理アウトソーシングで仕訳業務を委託しました。しかし、自社では「販売促進費」として処理していた費用が、委託先では「広告宣伝費」として一括計上されるなど、細かな分類が反映されませんでした。修正には追加費用がかかり、社内で仕訳の確認・修正作業が発生したため、業務負担が増加。結果的にコスト削減にはつながりませんでした。
C社は仕入先への支払いを「月末締め・翌々月末払い(60日サイクル)」で管理し、キャッシュフローを維持していました。しかし、アウトソーシング先は「30日以内の支払い」を標準とし、C社の支払い条件に対応できなかったため、一部の支払い業務を社内に戻すことに。結果的に業務負担が増え、コストの削減にはなりませんでした。
こうした失敗を避けるために、自社に合った経理処理で業務を委託できるよう、導入前に経理アウトソーシング会社と十分に相談することが重要です。
外注先の専門性が不足していた
外注先の専門性の不足もよくある失敗の原因の一つです。こちらも具体例を2つ挙げます。
D社は基本的な経理業務と併せて税務申告を外注しようとしましたが、契約後に外注先に税理士が在籍していないことが判明しました。そのため、外注先では税務申告や税務調査対応ができず、税理士事務所に依頼する必要が生じました。結果として、経理業務と税務申告を別々の業者に依頼することになり、情報共有の手間が増えました。
製造業のF社が経理アウトソーシングを導入したところ、外注先は製造業特有の原価計算や在庫評価に関する知識が不足しており、材料費や労務費の適切な仕訳ができませんでした。修正対応には時間がかかり、社内での確認作業も増加。最終的に一部の経理業務を内製に戻すことになり、負担が増える結果となりました。
このような失敗を回避するには、アウトソーシング先の専門性と業界実績を十分に確認することが重要です。特に税理業務を依頼する際には、税理士資格保有者が在籍しているかを事前に確認しましょう。
柔軟に対応してもらえなかった
経理業務を柔軟に対応してもらえず失敗するリスクもあります。
E社は請求書処理を委託していました。取引先ごとに異なるフォーマットの請求書があり、一部は手書きやPDF形式で送られてくるものもありました。しかし委託先ではシステム上、指定フォーマット以外は対応できませんでした。結局、社内で請求書を手作業で修正・入力する必要があり、業務負担は変わりませんでした。
こうした失敗を防ぐために、経理アウトソーシング会社が柔軟に対応できるか契約前に確認しておきましょう。
自社の経理担当の人材が育たなかった
経理アウトソーシングを委託したことで、自社の人材育成ができなくなるリスクもあります。
F社は仕訳入力や決算対応をすべて外注しました。その結果、社内の経理担当者が実務に関与する機会が減少し、経理スキルが向上しない状況に。また、新しい人材を育成する機会もなくなり、経理担当者が退職した際には引継ぎができず混乱が発生。最終的に、経理業務の一部を社内で対応できるよう体制を見直すことになりました。
この問題を防ぐには、委託する業務と社内で続ける業務をしっかり分けることが重要です。また、アウトソーシングは一時的な業務負担の軽減として活用しつつ、将来的に自社の経理担当者を育てることも考えましょう。
経理アウトソーシングでの失敗を回避する方法
ここまで、経理アウトソーシングの導入による失敗例を見てきました。失敗を防ぐための回避方法を以下4つに整理したのでご確認ください。
- 経理業務の課題と導入目的を明確にする
- 自社の目的に合った経理アウトソーシング会社を選ぶ
- 委託業者と密にコミュニケーションを取る
- 引継ぎの体制を整える
経理業務の課題と導入目的を明確にする
経理アウトソーシングで失敗しないためには、自社の経理業務の課題と導入目的を明確にすることが重要です。 まず、現状の経理課題を整理し、どの業務を外注するか具体的に決めましょう。たとえば、記帳業務のみを外注するのか、税務対応まで依頼するのかによって、求める専門性や費用が大きく異なります。
自社の導入目的に合った経理アウトソーシング会社を選ぶ
経理アウトソーシングでの失敗を避けるには、自社の導入目的に合った業者を選ぶことが重要です。 たとえば、コスト削減を重視する場合は料金体系が明確な業者、専門性を求める場合は税理士や公認会計士が在籍する業者を選ぶといった基準を持つことが大切です。
委託業者と密にコミュニケーションを取る
経理アウトソーシングで失敗を防ぐには、委託業者と密にコミュニケーションを取ることが重要です。 導入前に業務の進め方や対応範囲を詳細に確認し、双方の認識を合わせておくことでトラブルを未然に防げます。定期的な打ち合わせを行い、業務の進捗や課題を共有することも大切です。 また、担当者の変更や決算時の対応など、重要なタイミングで密に連携することで、業務の遅延や誤った処理を防げます。
引継ぎの体制を整える
経理アウトソーシングをスムーズに運用するためには、引継ぎの体制を整えることが重要です。委託業者に業務を引き渡す際、社内の経理担当者とアウトソーシング先がスムーズに連携できるよう、業務フローやマニュアルを整理しておきましょう。また、担当者が変更になる可能性も考慮し、業務の手順や注意点を文書化し、情報共有を徹底することが大切です。引継ぎが不十分だと情報の抜け漏れやミスが発生し、業務の遅延につながるリスクがあります。
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経理アウトソーシングを選ぶ際の注意点
では、経理アウトソーシングを選ぶ際には具体的にどこに注意すればよいのでしょうか。選ぶ際の注意点を以下の3点にまとめました。
- 代行可能な業務範囲を比較する
- サポート体制を比較する
- 導入実績や対応実績を比較する
代行可能な業務範囲を比較する
経理アウトソーシングは業者ごとに対応可能な業務範囲が異なります。税務申告まで依頼したい場合には税理士資格が必要なため、希望する外注先が対応できるか確認しましょう。主に代行可能な業務範囲は以下のとおりです。
- 記帳代行
- 給与計算
- 決算業務
- 請求書発行
- クラウド会計システムの導入サポート
- コンサルティング
サポート体制を比較する
サポート体制も業者ごとに異なるため確認をおすすめします。
- 専任担当者が配置されるか
- 定期的な報告や業務進捗の共有があるか
- リモート型か常駐型か
- サポート内容が契約範囲内か、追加費用が発生するか
特に「専任担当者の配置有無」「定期的な報告や業務進捗の共有の有無」「リモート型か常駐型か」は、委託先とのコミュニケーションの取りやすさに大きく影響します。常駐型は、自社内で委託業者が経理業務に対応するため、最もスムーズにやり取りができます。一方、コストを抑えたい場合は、サポート内容によって追加費用が発生しないか事前に確認しておくことも重要です。
導入実績や対応実績を比較する
経理アウトソーシングを選ぶ際は、導入実績や対応実績を比較することが重要です。特に、自社と同じ業種や規模の企業での導入実績がある業者を選ぶと、スムーズな対応が期待できます。たとえば、製造業なら原価計算や在庫管理に詳しい業者、小売業なら売掛・買掛管理の処理に強い業者が望ましいでしょう。
また、企業規模によっても求められる経理処理が異なります。大企業向けの業者は複雑な会計処理に強い一方で、システム連携が必須になる可能性があります。中小企業向けの業者はコスト面でのメリットが大きいものの、対応範囲に制限があることも。導入後のトラブルを防ぐためにも、過去の導入実績や対応実績を確認し、自社に適した業者を選ぶことが重要です。
まとめ:経理アウトソーシングの導入失敗例から学んで効果的に活用しよう
経理アウトソーシングの導入には、業務範囲の確認やサポート体制の把握が欠かせません。失敗例から学び、自社の課題や目的を明確にし、適切な業者を選ぶことで、コスト削減や業務効率化を実現しましょう。
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